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保証業務実務指針3000_研究文書第4号「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に.pdf

保証業務実務指針3000研究文書第4号

「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に 対する保証業務に関するガイダンス(試案)」に係る研究文書

2 0 2 2 年 7 月 2 1 日

改正 2022 年 10 月 13 日

日本公認会計士協会

監査・保証基準委員会

(研究文書:第 11 号)

項番号

《Ⅰ 本研究文書について》

《1.本研究文書の範囲》 ..............................................................1

《別紙》「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に対する保証業務

に関するガイダンス(試案)」

《Ⅰ 本研究文書について》

《1.本研究文書の範囲》

1.近年、統合報告書の開示や気候変動への取組を契機としたESG(Environment Social Governance)

投資の促進によって、非財務情報への注目度が高まる中、EER(Extended External Reporting)情

報やEER報告書のニーズが高まっており、併せてEER保証業務に関するニーズについても同様に高

まっている。また、国際的にも非財務報告基準の検討に向けた国際サステナビリティ基準審議会

(ISSB)の設置やEUにおける非財務情報を含めた法定開示の検討等、非財務情報に関する開示や

保証の議論が加速している。

2.このような動きを踏まえ、日本公認会計士協会(以下「本会」という。)は、業務実施者が、保

証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」(以下「保証実

3000」という。)に準拠し、拡張された外部報告(以下「EER」という。)に対して保証業務を実

施する際に理解が必要と思われる事項について、実務的な解説を提供し、会員の理解を支援する

ために我が国におけるEER保証業務ガイダンスの作成に取り組んできた。

3.国際監査・保証業務基準審議会(IAASB)からは、EER保証業務ガイダンスとして、「サステナビ

リティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に対する保証業務への国際保証業務基準3000

(ISAE3000)(改訂)の適用に関する規範性のないガイダンス文書」(Non-Authoritative Guidance

on Applying ISAE 3000 (Revised) to Sustainability and Other Extended External Reporting

(EER) Assurance Engagements。以下「IAASB EER保証業務ガイダンス」という。)が、ISAE3000

を前提として作成され、公表されている。また、我が国においては、国際保証業務基準3000「過去

財 務 諸 表 の 監 査 又 は レ ビ ュ ー 以 外 の 保 証 業 務 」 (International Standard on Assurance

Engagements (ISAE)3000(Revised), Assurance Engagements Other than Audits or Reviews of

Historical Financial Information。以下「ISAE3000」という。) を参考として、我が国における

保証業務の一般規範として保証実3000が公表されている。

そのため、我が国における保証実3000に準拠した保証業務の支援のためにガイダンスを作成す

る上では、IAASB EER保証業務ガイダンスを参考としつつ、我が国の実務を反映し、保証実3000を

前提とした取りまとめを行うこととした。

本研究文書は、会員が遵守すべき基準等に該当しない。また、2022年7月21日時点の最新情報に

基づいている。

4.本会では、我が国におけるEER保証業務のガイダンスの範囲として、IAASB EER保証業務ガイダ

ンスにおいて取り上げられている領域について、一通りの検討を行い、ガイダンスの取りまとめ

を行った。

その内容は、EER保証業務の諸側面における記載例(ILLUSTRATIVE EXAMPLES OF SELECTED

ASPECTS OF EXTENDED EXTERNAL REPORTING (EER) ASSURANCE ENGAGEMENT)に対応する箇所を含ま

ないことを除き、おおむねIAASB EER保証業務ガイダンスに沿ったものであり、取りまとめた内容

は会員が業務を実施する上では有益なものである。しかしながら、その検討の過程において、以下

の課題が識別されており、我が国において一般的に想定される実務に対応する実務ガイダンスと

して公表する上では、これらに関して、更に検討が必要であるとの認識に至った。

(1) EER保証業務については、EERフレームワークやガバナンス等の要因が流動的であり、これを

- 1 -

受けて、今後、EERの新たな実務上の取扱いが生じる可能性が高い。

(2) 保証業務の概念的な説明を主体としており、設例又はQ&A等の形式による本会の実務ガイダン

スとして公表するには、さらなる検討を行い、実務に即した具体的な解説を追加することが必

要である。

(3) 以下のような課題について、国際的な動向も踏まえ、今後更に内容の検討又は解説の追加に

ついて引き続き検討することが必要であると考えられる。

① EER(Extended External Reporting)の概念(拡張された外部報告)の内容の追加説明

② 主題、アサーションと適合する基準と主題情報の関連性に関する追加説明(第3章)

③ EER保証業務における「ローリングプログラム」の実施に当たってのより具体的な設例やガ

イダンスの提供(第3章 第99項から第106項)

④ 報告範囲に関するマテリアリティと虚偽表示の評価に関する重要性の関係についての具体

的な検討(第4章)

⑤ 企業が作成した適合する規準のEER報告書における記載の詳細度についての規準の利用可

能性の観点からの検討(第5章)

⑥ 限定的保証の下限である意味のある保証水準において、最低限入手すべき証拠及び合理的

保証で想定される証拠の具体的な検討(第8章)

⑦ 報告書が複数のグループ企業からの情報を連結して作成されている場合や、企業グループ

外のサプライチェーンの上流・下流からの情報を含めて作成されている場合の具体的な対応

(第8章 第273項)

⑧ 不正による重要な虚偽表示への対応についての追加説明(第9章 第311項から第313項)

⑨ 保証水準に応じて、サンプリングを適用する場合の基本的な考え方の追加説明(第9章 第

317項)

⑩ 虚偽表示の集計及び評価への対応についての追加説明(第9章及び第10章)

・ 定性的な情報に関する虚偽表示

・ 異なる側面で生じた複数の虚偽表示

⑪ 重要性の考え方、特に定性的情報の重要性の考え方に関する追加説明(第10章)

⑫ 単一の保証報告書において、保証水準の異なる複数の結論が記載される場合の具体的な検

討(第12章 第407項から第423項)

5.そのため、本会では、これまでに取りまとめた内容について、実務ガイダンスとせず本研究文書

として公表することとし、(別紙)に添付のとおり、「我が国におけるサステナビリティ及びその

他の拡張された外部報告(EER)に対する保証業務に関するガイダンス(試案)」として会員の参

考に供することとした。本研究文書が、EER保証業務に関する会員の理解や実施の促進に貢献する

ことを期待するとともに、これを契機に、資本市場関係者を含めた利害関係者との非財務情報の

開示・保証に関する議論や会員にとって実務で参考となるように更なる議論を進めていく必要が

ある。

6.本研究文書に別紙として添付された「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張され

た外部報告(EER)に対する保証業務に関するガイダンス(試案)」の利用に当たっては、当該ガ

イダンス試案は、研究文書の一部を構成するものであり、業務を実施するに当たり、会員が参考

- 2 -

とすることができる文書であって、要求事項及び適用指針から構成される会員が遵守すべき基準

等には該当しないことに留意する必要がある。また、その利用にあたっては、《Ⅰ 本ガイダンス

(試案)の適用範囲》第1項から第22項に示された当該ガイダンス試案の範囲、目的、EERの性質、

保証実3000との関係等を理解することが重要である。

以 上

・ 本研究文書(2022 年 10 月 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。

- 保証業務実務指針(序)「保証業務実務指針及び専門業務実務指針並びに関連する公表物の

体系及び用語」(2022 年7月 21 日公表)

- 3 -

《別紙》「我が国におけるサステナビリティ及びその他の拡張された外部報告(EER)に対する

保証業務に関するガイダンス(試案)」

項番号

《Ⅰ 本ガイダンス(試案)の適用範囲》

《1.本ガイダンス(試案)の範囲》 ................................................... 1

《2.本ガイダンス(試案)の目的と利用者》 ........................................... 4

《3.EER の性質並びに「EER 情報」及び「EER 報告書」》 ................................. 6

《4.EER 保証業務に関連して一般的に想定される状況》 .................................. 9

《5.本ガイダンス(試案)と保証実 3000 の関係》 ...................................... 14

《6.本ガイダンス(試案)の使い方》 ................................................. 18

《第1章 適切な適性及び能力の適用》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 ................................................... 23

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 ........................... 26

《3.適切な保証業務に関する適性と主題に関する適性を持つチームの選任》................ 29

《4.業務執行責任者の適性と責任》 ................................................... 37

《5.その他の品質管理に関する考慮事項》 ............................................. 46

《第2章 職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 ................................................... 50

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 ........................... 51

《3.職業的専門家としての懐疑心》 ................................................... 55

《4.職業的専門家としての判断の行使》 ............................................... 64

《5.業務全体にわたる職業的専門家としての懐疑心及び判断》 ........................... 66

《第3章 前提条件の決定及び EER 保証業務の範囲についての合意》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 ................................................... 67

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 ........................... 68

《3.EER 保証業務の前提条件が満たされているかどうかの明確化》 ........................ 72

《(1) 役割・責任の適切性》 ......................................................... 75

《(2) 主題の適切性》 ............................................................... 78

《(3) 規準の適合性》 ............................................................... 82

《(4) 規準の利用可能性》 ........................................................... 84

《(5) 証拠の入手可能性》 ........................................................... 85

《(6) 保証報告書への結論の記載》 ................................................... 86

《(7) 業務の合理性》 ............................................................... 87

《4.業務範囲の合意》 ............................................................... 89

- i -

《(1) 保証対象の検討》 ............................................................. 90

《(2) EER 保証業務の範囲の検討(EER 報告書の一部のみを範囲とする場合を含む)》 ....... 92

《(3) EER 保証業務の範囲の検討(対象範囲が期間ごとに段階的に拡大していく場合)》..... 95

《(4) 一定期間ごとに周期的に変化する範囲の検討(「ローリングプログラム」)》 ........ 99

《(5) 得るべき保証水準の検討(付録3参照)》 ...................................... 107

《5.前提条件が満たされているかどうかを判断する際の検討作業》....................... 110

《(1) 初度保証業務》 .............................................................. 114

《(2) 独立性及び職業倫理に関する考慮事項》 ........................................ 117

《6.前提条件が満たされていない場合の対応》 ........................................ 122

《第4章 報告事項を識別するための企業内プロセスの考慮》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 125

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 130

《3.報告事項を識別するための企業内プロセスの考慮》 ................................ 135

《4.ステップ1:報告事項を識別するための企業内プロセス状況の考慮》................. 137

《5.ステップ1a:作成者が EER 情報の目的をどのように識別したかを考慮する》.......... 142

《6.ステップ1b:作成者が EER 情報の想定利用者をどのように識別したかを考慮する》 .... 144

《7.ステップ2:EER 情報に含める報告事項の選択の考慮》 ............................. 151

《(1) 想定利用者の関心の考慮》 .................................................... 152

《(2) 「マテリアリティ」の考慮》 .................................................. 154

《(3) その他の考慮事項》 .......................................................... 157

《8.複数で目的適合性を有する報告事項の考慮》 ...................................... 162

《9.報告事項を識別するための企業内プロセスの開示》 ................................ 163

《第5章 規準の適合性及び利用可能性の決定》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 165

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 169

《3.規準の適合性及び利用可能性の判断》

《(1) はじめに》 .................................................................. 174

《(2) 業務実施者の考慮事項》 ...................................................... 177

《(3) EER フレームワークが要求する EER 情報の定性的な特性》 ......................... 178

《(4) 適合する規準の特徴》 ........................................................ 180

《4.規準を開発するプロセスの検討》

《(1) 規準の開発方法の検討》 ...................................................... 201

《(2) 制度として確立された規準》 .................................................. 202

《(3) 企業独自の規準と複数の枠組みから選択された規準》 ............................ 205

《5.時の経過に伴う規準の変更の考慮》 .............................................. 211

《6.規準が利用可能になるかどうかの検討》 .......................................... 216

《7.規準が不適切な場合又は利用できない場合》 ...................................... 221

《第6章 主題情報の作成に利用されたプロセス又は主題情報の作成に係る内部統制の考慮》

- ii -

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 222

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 226

《3.主題情報の作成に利用された企業のプロセス又は主題情報の作成に係る内部統制についての理

解》.............................................................................. 231

《(1) EER 情報作成プロセスのガバナンス及び監督》 ................................... 232

《(2) 情報システムと伝達》 ........................................................ 235

《(3) 企業の EER 情報作成プロセスが整備の途上である場合の考慮事項》................. 239

《(4) EER 報告プロセスにおいて外部情報源からデータ又は情報を入手する際の考慮事項》 . 241

《(5) 統制活動》 .................................................................. 244

《4.企業の規模、複雑さ及び性質の考慮》 ............................................ 245

《5.限定的保証及び合理的保証》 .................................................... 247

《第7章 アサーションの利用》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 250

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 252

《3.アサーションの利用》

《(1) アサーションの意味》 ........................................................ 253

《(2) 手続の立案に際しての潜在的な虚偽表示の種類の考慮》 .......................... 258

《第8章 証拠の入手》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 262

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 263

《(1) 十分かつ適切な証拠の入手》 .................................................. 268

《(2) 外部情報源》 ................................................................ 277

《(3) その他の記載内容》 .......................................................... 278

《3.EER 保証業務における集計リスクへの対応》

《(1) 集計リスクの性質及び手続を立案・実施する際の発生の仕方》..................... 279

《(2) 保証手続の立案及び実施における集計リスクの低減》 ............................ 283

《第9章 虚偽表示の重要性の考慮》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 288

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 290

《3.虚偽表示の識別》 .............................................................. 294

《(1) 重要性は利用者の観点から検討される》 ........................................ 295

《(2) 定量的な重要性に関する考慮事項》 ............................................ 299

《(3) 定性的な重要性に関する考慮事項》 ............................................ 301

《4.虚偽表示の集計》 .............................................................. 307

《5.識別された虚偽表示の影響の検討》

《(1) 不正による虚偽表示の影響》 .................................................. 311

《(2) 企業の内部統制システムに対する業務実施者の理解への影響》..................... 314

《6.その他の重要性に関する考慮事項》 .............................................. 315

- iii -

《7.測定又は評価の不確実性》 ...................................................... 319

《第 10 章 定性的 EER 情報への対応》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 323

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 325

《3.定性的 EER 情報の性質》 ........................................................ 329

《4.定性的情報に関する規準の適合性を判断するための具体的な考慮事項》............... 332

《5.定性的情報に関する証拠を入手するための具体的な考慮事項》....................... 337

《6.定性的情報における虚偽表示を評価するための具体的な考慮事項》................... 342

《7.定性的情報がその他の記載内容と併せて表示される場合の具体的な考慮事項》......... 353

《8.定性的情報について保証報告書で伝達する際の具体的な考慮事項》................... 357

《第 11 章 将来志向の EER 情報への対応》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 359

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 362

《3.将来志向の EER 情報の性質》 .................................................... 367

《4.将来志向の EER 情報に関する規準の適合性を判断するための具体的な考慮事項》....... 370

《5.将来志向の EER 情報に関する証拠を入手するための具体的な考慮事項》............... 373

《6.将来志向の EER 情報における虚偽表示を評価するための具体的な考慮事項》........... 387

《7.将来志向の EER 情報について保証報告書で伝達する際の具体的な考慮事項》........... 392

《第 12 章 保証報告書における効果的な伝達》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》 .................................................. 394

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》 .......................... 395

《3.保証報告書における効果的な伝達》 .............................................. 397

《4.保証報告書の内容》 ............................................................ 407

《(1) 適用される規準の識別》 ...................................................... 409

《(2) 固有の限界、強調事項及び「その他の事項」区分の違い》......................... 414

《(3) 適用される職業的専門家としての基準》 ........................................ 417

《(4) 業務実施者の結論の基礎として実施した作業の具体的内容》....................... 419

《(5) 業務実施者の結論》 .......................................................... 421

《(6) 長文式報告書に追加の情報を含める》 .......................................... 423

《例1 無限定の結論を示した合理的保証報告書》

《例2 無限定の結論を示した限定的保証報告書》

《付録1》本ガイダンス(試案)で使用する用語

《付録2》報告の種類、使用される枠組みの例、本ガイダンスの対象となるか否か

《付録3》限定的保証及び合理的保証 EER の設例表

《付録4》拡張された外部報告(EER)に関する信頼性及び信用モデル

- iv -

《Ⅰ 本ガイダンス(試案)の適用範囲》

《1.本ガイダンス(試案)の範囲》

1.本ガイダンス(試案)は、業務実施者が、保証実3000に準拠し、あらゆる規模の企業による幅広

い報告事項に関するEERに対して保証業務を実施する際に理解が必要と思われる事項について、実

務的な解説を提供し、会員の理解を支援するために作成されたものである。

2.保証実3000の原則と要求事項を説明するに当たり、本ガイダンス(試案)では業務実施者が保証

実3000の全文を理解していることを前提とする。なお、保証実3000は、ISAE3000を参考として、我

が国における保証業務の一般規範として公表された。また、本ガイダンス(試案)は、IAASB EER

保証業務ガイダンスを参考として、我が国における保証実3000に準拠した保証業務の支援のため

に作成されたものである。

3.本ガイダンス(試案)の範囲は、業務実施者がEERに対する保証業務(以下「EER保証業務」とい

う。)に保証実3000を適用するに当たり、一般的に想定される課題に対応する上で、本ガイダンス

(試案)の提供が有益であろうと本会が識別した具体的な領域に限定されている。

《2.本ガイダンス(試案)の目的と利用者》

4.本会が本ガイダンス(試案)を発行する目的は、EER保証業務において保証実3000の高品質で一

貫性のある適用を促し、以下を達成することである。

・ EER報告の品質に対する保証業務の影響力の強化

・ 保証報告書への信頼性の向上

・ 想定利用者へのEER報告書に対する信頼性の付与

5.本ガイダンス(試案)の利用者は、保証実3000に準拠してEER保証業務を実施する監査事務所及

び監査事務所が支配する事業体である(保証実3000第1項、第3項及び第4項参照)。EER報告書

の作成者や利用者又は規制当局等、EER保証業務実施者以外の当事者がEER保証業務の様々な側面

を理解する際に本ガイダンス(試案)が役立つこともあるが、本ガイダンス(試案)は、係る当事

者のニーズを念頭に置いて作成されたものではない。

《3.EER の性質並びに「EER 情報」及び「EER 報告書」》

6.EERは、企業活動の財務的及び非財務的な結果に関する情報を提供する様々な形式の報告を包含

している。またEERには、これらの事項に関連する将来志向の情報が含まれる場合もある。このよ

うな情報(以下「EER情報」という。)は、企業が企業自身の経営資源の増加や関係性の発展のた

めに行った活動の結果の情報である場合もあれば、経済、環境、社会の広範かつ健全な発展のた

めに行った活動の結果の情報である場合もある。また、その両方を同時に達成する目的で行った

活動の結果の情報である場合もある。さらには、公的機関や非営利団体の活動の結果の情報であ

る場合や、単独の企業の事業活動の範囲を超える活動の結果の情報である場合もある。したがっ

て、EER保証業務の範囲は、保証業務の前提条件が満たされているかどうかを判断する際に明確に

定義され、十分に検討される必要がある(第3章参照)。

7.EER情報は、貸借対照表又は損益計算書及び関連する開示に典型的に含まれる過去財務情報の範

疇を超えたものである。過去財務情報は、個別企業に関連する財務関連情報であり、主に当該企

- 1 -

業の会計システムから抽出される過年度に発生した経済事象又は過去のある時点における経済的

状況や環境に関する情報である。

8.EER情報は、企業又は組織によって発行される主要な年次の法定開示書類(例:有価証券報告書

や事業報告)の一項目として提示されることがある。また、EER情報は、統合報告書、コーポレー

ト・ガバナンス報告書、サステナビリティ報告書、CSR報告書及びEHS報告書等、企業によって発行

される別個の報告書、規制当局への提出資料又はその一項目に関する提出資料として提示される

こともある。これらの法定開示書類、報告書又は提出資料を「EER報告書」といい、本ガイダンス

(試案)では、EER保証業務がEER報告書全体を対象としない場合、EER保証業務の対象となるEER報

告書内のEER情報を「EER主題情報」と言う。EER主題情報は、EER報告書全体よりも情報が少ないこ

とがあり、また、単一又は複数の指標、項目又は記述である場合もある。他方で、EER主題情報が

企業のEER報告書全体であることもある。

《4.EER 保証業務に関連して一般的に想定される状況》

9.EER情報は、企業が自発的に作成していることが多いが、法令等により報告が義務付けられるこ

とがある。これらEER情報は、法令等若しくは国内外の基準設定主体又はその他団体によって開発

されたEERフレームワーク、基準、ガイダンスにおける規準(以下「枠組みとなる規準」という。)

又は企業自らが定めた規準(以下「企業独自の規準」という。)又はその両者の組合せにより作成

される場合がある。

10.EER情報は、多岐に及ぶ主題又はそれらの様々な側面に対応し得るが、それらは複雑で、客観的

なものや主観的なもの、過去情報や将来志向の情報やその組合せまで多様な特徴を備え、非財務

情報と財務情報の両方を含むことがある。保証実3000は、非財務情報と財務情報の組合せで構成

される可能性のある主題情報報告についての保証業務に対応している。例えば、過去財務情報が

比較的少ない場合でも、EER保証業務が保証実3000に沿って実施されることがある。利用可能なEER

フレームワークの範囲が広いため、EER情報の作成に利用される規準は多岐にわたることがある。

また作成者は、しばしば枠組みとなる規準に加えて、又はその代替として、企業独自の規準を使

用する。その結果、規準の選択又は開発において経営者の偏向が生じる可能性が高まる。したが

って、業務実施者は、EER保証業務を実施するに当たり職業的専門家としての懐疑心を保持・発揮

すること及び判断を行うことが重要である(第2章参照)。

11.規準を適用することで得られたEER主題の様々な側面の測定又は評価結果は、EER情報内に提示

されるが、これらの結果の性質は多岐にわたる可能性がある。主に定量的に提示されるものもあ

れば、主に定性的(説明や記述)に提示されるものもある。いずれの場合も、主要な表示には関連

する説明情報が提供されることがある。その結果、EER報告書の構成や形式は多種多様になること

がある。

12. EER情報は、文章、図表、グラフ、図式、画像又は埋め込み動画等、様々な形式で表示されるこ

ともある。

13.企業におけるEER報告書の作成プロセス及び関連する内部統制システムのうち、統制環境等の構

成要素は、特に企業が初めてEER報告書を作成する場合には完全には整備運用されていないことが

しばしばある(第6章参照)。

- 2 -

《5.本ガイダンス(試案)と保証実3000の関係》

14.保証実3000は、過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務の実施において本会会員が遵

守すべき基準であり、EER保証業務においても保証実3000への準拠が求められる。

15.第14項に関して、本ガイダンス(試案)は、本会の調査研究の成果としてEER保証業務を実施す

る会員の実務の参考に供されるものであり、本会会員が遵守すべき基準を構成しない。そのため

本ガイダンス(試案)は、保証実3000に対する追加的な要求事項及び適用指針を定めるものではな

く、また、EER保証業務の全ての側面に包括的に対応するものでもない。

16.本ガイダンス(試案)がEER保証業務以外の他の種類の保証業務の実施に役立つこともあるが、

本ガイダンス(試案)はそれら業務を念頭に置いて開発されたものではない。保証実3000は保証業

務実務指針3000実務ガイダンス第2号「監査及びレビュー業務以外の保証業務に係る概念的枠組

み(実務ガイダンス)」に記載のとおり、監査事務所が行う監査又はレビュー以外の保証業務に対

応する。様々な種類の主題に対する保証業務の例や、本ガイダンス(試案)がそれらに対応するか

どうかは、付録2に記載されている。

17.保証実3000は、「主題情報の提示を受ける保証業務」と「直接報告による保証業務」の両方で利

用できる(保証実3000第2項参照)。本ガイダンス(試案)は、「主題情報の提示を受ける保証業

務」を前提として作成されている。業務実施者は、業務環境の必要に応じて本ガイダンス(試案)

を「直接報告による保証業務」に適用又は参照することができるが、本ガイダンス(試案)は「直

接報告による保証業務」に焦点を当てて開発されたものではない。

《6.本ガイダンス(試案)の使い方》

18.本研究文書において本ガイダンス(試案)は、保証実3000に従って実施されるEER保証業務の特

定の段階とその他の側面に関連付けて章分けしている。以下の図1は、EER保証業務の実施という

観点から本書を利用する上で役立つ。この図に示されているように、保証業務の実施段階とその

他の側面に沿って章が進むようになっている。第10章及び第11章は、定性的及び将来志向のEER情

報について、保証業務の契約締結から報告までの具体的な考慮事項にそれぞれ対応している。こ

れらの章のガイダンスは、他の章の関連ガイダンスと併せて読まれることを意図している。

19.各章は、本書のガイダンスの「何を」「なぜ」「どのように」という問いに回答するように構成

されている。各章ではまず「本章のガイダンスで扱う事項」において、その章のガイダンスで扱う

事項(「何を」の部分)を説明する。その後、「本章のガイダンスが業務実施者にとって有用とな

る状況」で、本書のガイダンスが業務実施者の役に立つ状況(「なぜ」の部分)についての説明が

続く。

20.各章の残りの部分(「どのように」の部分)は通常、「なぜ」の箇所で浮き彫りになった課題に

対応するための思考プロセスを提供する。この思考プロセスは、業務実施者に役立つ可能性のあ

る考慮事項を明らかにする。また関連する場合には、保証実3000の要求事項や適用指針又は同じ

章若しくは別の章の具体的なガイダンスや事例を参照する。

21.議論されている概念が保証実3000でも言及されている場合には、保証実3000で使用されている

用語を使用する。その他の用語については、必要に応じて本ガイダンス(試案)において識別・定

義し、付録1に定める用語のリストに要約する。

- 3 -

22.図1は、保証実3000に基づくEER保証業務実施の全体像を概略化したものである(緑色の箇所、

列の見出しにある説明と項番を参照)。この図は、保証実3000の各要求事項(緑色の箇所を参照)

及び本書の各章(オレンジ色の箇所を参照)と、それらに関連するEER保証業務の実施における様々

な側面の関係性を示している。またこの図(緑色の矢印を参照)は、各章で扱う保証実3000の要求

事項と、以下の章において参照する章を示している。EER保証業務の実施に関する側面のうち、本

ガイダンス(試案)で扱っていない保証実3000の要求事項については、灰色の文字で記している。

- 4 -

図1 保証業務の段階、基準の要求事項及び本ガイダンス(試案)との関係

- 5 -

《第1章 適切な適性及び能力の適用》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

23.本章では、EER保証業務の実施に必要であろう適性と能力を持つ業務チームの選任と、保証実3000

第31項及び第32項の要求事項を満たすためのガイダンスを提供する。また、業務執行責任者に必

要な適性及び以下に対する責任についてのガイダンスも提供している。

・ 業務チームの適性と業務実施者の利用する外部専門家の適性の組合せを管理する。

・ 業務全体にわたり業務チームのメンバーの作業に関する指示、監督及びレビューを通じ、これ

らの適性を適材適所に配置する。

24.本ガイダンス(試案)は、保証実3000の要求事項に従ってEER保証業務を実行し、業務環境に適

合し、かつ、主題情報に対する想定利用者の信頼を高めるための保証報告書を発行する業務実施

者の適性に焦点を当てている。

25.EER保証業務の実施に必要な適性には、保証業務の技能及び技法に関する適性(以下「保証業務

に関する適性」という。)及び業務の主題とその測定又は評価に関する適性(以下「主題に関する

適性」という。)の両方がある。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

26.「Ⅰ 本研究文書の適用範囲」で示したように、EER報告は、報告形式も報告事項もどちらも多

様である場合がある。また報告は、記述的説明から成る定性的なものや、財務及び非財務数値と

併せて開示される定性的情報の場合もある。主題の測定又は評価に利用されるフレームワーク及

び規準の開発は初期段階にあり、特に企業が初めてEER報告書を作成する際には、EER報告書作成

に関連するガバナンス、プロセス及び内部統制システムの整備が、財務報告関連における整備状

況ほど進んでいない可能性がある。これらの事項は全て、特定の業務環境によって、業務実施の

ために必要とされる保証業務に関する適性及び主題に関する適性(例えば、科学的、工学的又は

その他の技能)のそれぞれに影響を及ぼす。

27.EER保証業務に必要となり得る主題に関する適性の判断には、大半の業務執行責任者が通常有し

ている知識を超える知識が必要な場合がある。そのような場合、業務実施者の利用する専門家の

業務を利用することが多いと考えられる。

28.これら専門家には、主題について十分な情報に基づく専門的な見解をもたらす専門的な技能と

知識があっても、保証実3000に従って保証業務を実施するのに必要な保証業務に関する適性はな

いかもしれない。業務実施者の利用する専門家には保証業務に関する適性は求められないが、割

り当てられた作業と業務の目的を関連付けることができるよう、保証実3000を十分に理解するこ

とが必要である場合がある。

《3.適切な保証業務に関する適性と主題に関する適性を持つチームの選任》

29.保証業務に関する適性は、業務実施者による保証の結論を裏付ける十分かつ適切な証拠を入手

するため、累積的かつ反復的で系統立った保証業務のプロセスの一部として適用されることが求

められる。保証業務に関する適性には、保証実3000のA10項に列挙されている技能及び技法が含ま

れる。したがって保証業務に関する適性は、主題に関する適性とは異なるもので、かつ主題に関

- 6 -

する適性よりも多くの局面で適用される。

30.より範囲が広い、又はより複雑なEER保証業務の場合若しくは主題の測定又は評価に専門技能が

必要な場合において、業務実施者は、適切な保証業務に関する適性及び1名以上の業務実施者の

利用する専門家で構成される複合的なチームによる業務実施が必要と判断する場合がある。業務

執行責任者以外の業務チームの構成員は、程度の差はあるが、それぞれ保証業務に関する適性と

主題に関する適性を有しているかもしれない(第37項から第41項参照)。しかしながら、業務チー

ムのメンバーには、想定利用者の情報ニーズを考慮し、保証業務の計画段階と実施段階において

必要な職業的専門家としての懐疑心を発揮し判断を行使できるよう、保証及び主題の両方に対す

る一定程度の適性と業種及びセクターに関する知識を備えることが求められる。

31.業務実施者と業務実施者の利用する専門家は、更に特定の分野に専門的な適性を有することも

ある。例えば、保証業務実施者が、ITシステムと内部統制の保証、サステナビリティ情報の保証

又は保証サンプリングの手法や理論の専門家である場合や、業務実施者の利用する専門家が生化

学者など環境廃棄物の測定や管理について専門性を有していたり、弁護士が環境法や人権法の専

門家であったりする場合もある。

32.何が十分な主題に関する適性を構成するかは業務特性によるもので、業務環境ごとに異なる。

業務執行責任者として、保証の結論、専門家の業務の利用範囲及びその利用方法に対する責任を

負うに足る十分な主題に関する適性を有しているかどうかは、業務執行責任者の職業的専門家と

しての判断の問題であり、以下の要因が関係することがある。

(1) 企業のEER情報に含める報告事項の識別にかかる判断

(2) EER保証業務の範囲であるとする主題情報の合意にかかる判断

(3) 主題及びその測定又は評価の性質と複雑性

(4) 主題が正確な測定に適している程度又は主題の測定に関して深い知識と判断を必要とされる

高い不確実性が存在するかどうか

(5) 主題に関連する業務執行責任者及び業務チームの適性及び過去の経験

33.以下は、比較的複雑ではない業務の遂行に適用され得る実施者の適性の全体像に関する考慮事

項を幾つか例示したものである。

設例

ある専門サービス会社が、以下に関して自主的に報告し、保証を求めている。

・ ある事務所で使用した電力からの温室効果ガス(GHG)排出量

・ その事務所における従量制水使用量

・ 性別及び等級別の従業員数

この例では、業務執行責任者と一人又は複数のサステナビリティ保証業務の適性と経験を

有する業務実施者が、更なる主題に関する専門知識を必要とせずに、保証実3000の要求事項

を満たす業務を実施できる公算が大きい。

対照的に、あるエネルギー会社が発電所に関連する排水の水質について報告し、それにつ

いて保証を求めたとする。業務執行責任者は、必要に応じて排水の水質測定に伴う手続の立

案及び実施についての支援のため、生物学者、化学者又は物理学者(業務実施者の利用する専

門家)を利用する場合がある。

- 7 -

34.更に複雑な保証業務では、業務実施者が、業務実施に必要な保証業務に関する適性及び主題に

関する適性並びに主な業務チームのメンバーと業務実施においてその作業を利用する他の個人の

保証業務に関する適性及び主題に関する適性との間のスキル・マトリックスの作成が役立つと考

えることがある。またマトリックスは、業務実施者が専門分野の主題に関する適性を必要とする

場合、その適性を業務実施者が自身の事務所内やネットワーク内で利用できるかどうか(業務実

施者の利用する内部専門家)、又は事務所外やネットワークの外部から入手する必要があるかど

うか(業務実施者の利用する外部専門家)を見極めるのに役立つこともある。

35.業務が複雑になるほど、業務全体にわたり、どのように業務実施者の業務と業務実施者の利用

する専門家の業務を併せて利用するかを検討しなければならない。業務実施において適性が適合

するかどうかは、業務に当たる業務実施者及び業務実施者の利用する専門家の以下の状況により

変わり得る。

・ 両者が割り当てられた役割を実施するのに適切な適性を有しているか。

・ 業務実施に当たり、複合的なチームとして効果的に協働しているか。

36.主題情報には、様々な業務実施者の利用する専門家の業務の利用を要するものや、企業が大規

模で多様かつ複雑な組織の場合には、業務実施者に代わって作業の一部を実施するその他業務実

施者を利用するものなど、様々なものがある。この場合、これら業務実施者の利用する専門家や

その他業務実施者と、その作業範囲と実施時期及びその発見事項について明確にコミュニケーシ

ョンを行うことが重要なことがある。

設例

数多くの地域で様々な採掘事業を行っているある大企業が、特に環境報告について保証を

求めている。環境報告には、会社の尾鉱(金属や鉱物の回収過程で生じる副産物)管理、水の

消費量、水質への影響、騒音と振動の影響、生物多様性管理と土壌再生、温室効果ガスの排

出、危険物管理、安全衛生に関する事故及び緊急時対応に関するEER情報が含まれている。

この例では、地盤工学エンジニア、地球科学者、環境科学者、安全衛生の専門家及び法務専

門家など、業務実施者が多くの専門家の業務を必要とすることがある。さらに、企業の他の地

域にある採掘事業について、他の業務実施者の作業の利用が必要かもしれない。

このような場合、業務実施者は以下を行うことが重要である。

・ 業務実施者の利用する専門家又は他の業務実施者に、彼らの作業範囲と実施時期につい

て明確に伝える。

・ 業務実施者が利用する専門家又は他の業務実施者の作業を指示、監督及びレビューする

上で、どの程度まで彼らの作業に関与する必要があるかを検討する。

・ 業務実施者が利用する専門家又は他の業務実施者の作業に関する発見事項について、業

務チームの他のメンバーに伝える。

《4.業務執行責任者の適性と責任》

37.保証実3000第31項(2)及び(3)では、業務執行責任者は、業務実施者が適切な適性と能力を有して

いることを確かめるだけでなく、業務執行責任者が広範囲の研修と実務を通じて培った保証業務

に関する技能及び技法を有し、保証業務の結論に対する責任を引き受けるのに十分な適性を有し

- 8 -

ていることを要求している。

38.業務実施者は、保証実3000第52項の要求事項に従い、専門家の業務が業務実施者の目的に照ら

して適切であると結論付けた場合には、当該専門家の業務を利用することがある。ただし、業務

執行責任者は業務に対する全ての責任を負う。係る責任は、業務実施者の利用する専門家の業務

により軽減されない。業務執行責任者は、以下を実行できるように、幅広い保証業務に関する適

性を有していることに加えて、主題を十分に理解し、主題に関する十分な適性を有している必要

がある。

(1) 必要な場合には、専門家に適切な質問をし、その回答が業務環境において合理的かどうかを

評価する。

(2) 専門家の業務を評価し、必要な範囲で業務チーム全体の業務を併せて利用する。

(3) 到達した結論に責任を負う。

39.同様に業務実施者は、保証実3000第55項の要求事項に従い、企業の内部監査機能の作業が保証

業務の目的に照らして適切であると結論付けた場合、内部監査機能の作業を利用してもよい。

40.保証実3000のA120項からA134項では、業務実施者の利用する専門家の業務について利用する場

合、追加的な適用指針を提供する(業務実施者の利用する専門家の適性及び客観性の評価に関す

る適用指針を含む。)。これらの項は、業務実施者の利用する専門家の業務という点から記載され

たものだが、経営者の利用する専門家や内部監査人によって実施される業務の利用時にも役立つ

場合もある。

41.業務執行責任者にはまた、保証業務の全体的な品質に対して責任を負うことが求められる(保

証実3000第33項参照)。

《指示、監督及びレビュー》

42.業務全体にわたり実施される作業の指示、監督及び査閲について意思決定を下す際に、チーム

メンバーの保証業務に関する適性の程度が低いほど、その作業についての指示、監督及び査閲の

必要性が高まる可能性がある。同様に、保証手続の実施時には、主題に関する適性の程度が低い

ほど、入手された証拠(専門家の業務を利用して入手した証拠を含む)に関して職業的専門家と

しての懐疑心及び判断を行使する際の技能が低くなる可能性がある。

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図2 指示、監督及び査閲と主題及び保証業務に関する適性との関係

43.図2は、業務実施者の中で利用できる保証業務に関する適性、主題に関する適性の程度と適切

な指示、監督及び査閲の関係性を示している。

44.業務環境において必要とされる指示、監督及び査閲の程度と性質は、職業的専門家としての判

断事項であり、次の要因を考慮することがある。

(1) 業務チームの個々のメンバーの保証業務に関する適性と主題に関する適性

(2) 業務全体から見た当該チームメンバーが実施する作業の重要度

(3) 保証業務実施者又は業務実施者の利用する専門家の業務と関連する事項における重要な虚偽

表示リスク

(4) 業務実施者の利用する専門家が業務実施者の事務所の内部者又は外部者か。

(5) 業務実施者の利用する専門家が、自分に割り当てられた作業と業務目的とを関連付けること

ができるほど関連する保証業務実務指針を十分に理解しているかどうか。

(6) 特定の種類のEER保証業務を実施する際に業務実施者が従う手法を事務所が十分に開発して

いるかどうか。

45.例えば、主題がその測定又は評価において一段と複雑である場合又はチームメンバーの作業が

保証業務全体において重要度の高い部分と関連している場合には、主題がそれほど複雑でない場

合又はチームメンバーの作業が保証業務において重要度の低い部分と関連している場合に比べて、

より多くの作業指示、監督、査閲を要し、及びこれらの重要度の高い業務を統合して検討するこ

とが必要となる場合が多い(図3参照)。

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図3 複雑さ及び重要度と指示、監督、査閲との関係

《5.その他の品質管理に関する考慮事項》

46.保証実3000は、業務実施者が少なくとも品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質

管理」(以下「品基報第1号」1という。)で求める品質管理の要求事項の対象となる事務所のメ

ンバーであることを前提としている。これらの要求事項には、事務所が保証実3000のA61項に記載

されている事項に対処する方針と手続の文書化等の品質管理制度を整備し運用しており、事務所

の専門要員に伝達していることが含まれる。係る品質管理要求事項の対象ではない場合、業務実

施者は保証実3000に準拠したEER保証業務を実施できない。

47.業務実施者は監査事務所及び監査事務所が支配する事業体に限られる(第5項参照)。

48.企業が国外又は遠隔地に子会社、部門、支店又は事業所を持っている場合、業務実施者はそれら

について他の業務実施者の作業を利用して保証手続を実施することがある。ただし、業務執行責

任者は、全体的な保証の結論と保証業務の品質管理に引き続き責任を負う。

49.保証実3000第53項は、例えば複数チームや複数の場所で行われる保証業務で他の業務実施者の

業務が利用されている場合に、その作業が保証業務の目的に照らして適切であるかどうかを業務

実施者が評価することを求めている。保証実3000のA120項からA134項の適用指針は、業務実施者

の利用する専門家の業務を利用する場合について記載されたものだが、検討できる様々な要素を

示しており、したがって、この状況においても役立つ適用指針となる場合がある。他の業務実施

者が品基報第1号又はそれと同等と認められる品質管理基準に準拠しているか、同じ事務所ネッ

トワークのメンバーかどうか、その場合にはそのネットワークが品基報第1号に準拠する共通シ

ステムやプロセスの対象かどうかは、他の業務実施者の業務をどの程度指示、監督及び査閲する

1 品基報第 1 号に代わり国際品質マネジメント基準(ISQM)1 が採用される。監査事務所は、2022 年 12 月 15 日までに国

際品質マネジメント基準(ISQM)1 に準じた品質管理システムをデザインし、適用しなければならない。

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のが適切かを判断する際に考慮すべき要素となることがある。

《第2章 職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

50.本章では、以下に関するガイダンスを提供する。

・ 保証実3000第37項及び第38項で要求される職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使がEER

保証業務において重要である理由を説明する。

・ EER保証業務において職業的専門家としての懐疑心を妨げ得るものについて議論し、その設例

を示す。

・ 職業的専門家としての懐疑心を支える行動と技能を示唆する。

・ EER保証業務における職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使について設例を挙げる。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

51.EER保証業務において、以下の行為が困難なことがある。

(1) 想定利用者のニーズの理解(多様な利用者グループはそれぞれ異なる意思決定ニーズを有す

ること)

(2) EER主題の多様な側面と、それらの企業活動に対する影響との間にある複雑な相互関係及びそ

れらの相対的な重要度の理解。企業が大規模で、複雑で、多様であるほど(例:地理的に広がっ

ており、長く多様なサプライチェーンへの依存度合が高い。)、次のことを理解することが難し

くなる可能性がある。

① 主題が業務環境において適切であるかどうか。

② EER情報全体の中で、主題情報の各側面をどの程度重視するか。

(3) 作成者が選択し得る基礎となる主題ごとに、多数の利用可能なEERフレームワーク、規準、作

成の基礎がある場合、当該規準が適切か否かの判断。これは、規制当局による監視を受けず、

EERの主題情報を任意で報告する場合に困難であることがある。

(4) 作成者が使用した仮定と方法が適切かどうかの判断。これは以下の理由による。

① 使用できる許容可能な仮定又は方法が多数ある。

② 主題の測定又は評価が複雑であるか、不確実性を有する。例えば、潜在的な気候関連リスク

について、その発生可能性並びに短期、中期及び長期にわたって企業及びそのサプライチェー

ンに対して予想される財務的及び非財務的影響とともに、測定も評価も複雑で、不確実性が高

い。

(5) 異常な状況や欠如している情報の存在を認識すること。これは以下の理由による。

① EER報告書のフレームワークはまだ開発途上であることが多く、規準の様々な解釈や適用が

可能である。

② 企業のシステム、プロセス及び内部統制がまだ開発途上であるか、又はEER項目に対するガ

バナンスに責任を有する者の関与度合い並びにそれに対する経営者の優先度が、財務実績及

び戦略ほど高くない可能性がある。したがって、虚偽表示(情報の欠如を含む)が、防止又は

発見及び修正されることなく発生する可能性がある。

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(6) 未修正の虚偽表示が個別又は全体として重要かどうかの評価。これは以下の理由による。

① 想定利用者のニーズが多様である可能性がある(あるグループには重要でも別のグループ

には重要ではない。)。

② 主題情報に多くの異なる側面が存在し、虚偽表示の集計及び評価に資する共通の基礎がな

い。

(7) 入手した証拠の十分性と適合性の評価。例えば作成者が、EERの主題情報を作成する際に外部

者によって生成された情報を使用した場合

(8) 主題情報に重要な虚偽表示がないかどうかについて結論の形成

52.上記の要因に加えて、報酬や時間的制約などの他のプレッシャーが、組織風土や、企業又は業務

実施者の事務所の「経営者又はトップの姿勢」と同様に、職業的専門家としての懐疑心の保持の

障害になる可能性がある。報酬や時間的制約及び「トップの姿勢」は、EER保証業務に固有の考慮

事項ではないが、EER保証業務では以下の理由からより広く発生している場合がある。

・ 企業が財務業績や財務報告と同じ程度にはEER項目を重要視していないか、EER項目の報告に

ついての規制上の要求がないために、報酬を低く抑えるようとするプレッシャーが大きくなり、

結果として業務チームに対して時間的圧力がかかる。

・ EER項目を重要視しない企業の「経営者の姿勢」により、主題情報の管理や報告のためのシス

テム及びプロセス開発に配分される資源が少なくなる。

・ EER情報の測定又は評価及び報告について一般的に受け入れられている単一の方法がない場合、

企業又は業務執行責任者が、疑問を持たない、又は問題として受け止めない可能性がある。

53.事務所レベル、業務レベル又は個人レベルの要因の結果として、職業的専門家としての懐疑心

の保持を妨げ得る障害が生じることもある。例えば、偏向、態度、信念、価値観などの個人的な特

性が、特定のEER主題(気候変動の緩和、生物多様性の保全、有害廃棄物の安全な処分、地域社会

の公正な扱い及び性別や民族の平等)に対し、他のEER主題(スタッフの離職、採用慣行)よりも

表れやすいことがある。業務実施者の事務所において、考えられるその他の障害については、図

4に記載している。

54.保証業務に関する適性のみならず業務環境に関する十分な知識は、保証に関する意思決定を下

す際に職業的専門家としての懐疑心を保持し判断を行う上で重要である。保証実3000のA75項から

A84項には、職業的専門家としての懐疑心を保持し判断を行使することがなぜ必要であり、どのよ

うな状況でそれらが重要であるかを示している。

《3.職業的専門家としての懐疑心》

職業的専門家としての懐疑心とは何か

虚偽表示の可能性を示す状況に常に注意し、証拠を鵜呑みにせず、批判的に評価する姿勢(保

証実3000第12項(21)参照)。

55.職業的専門家としての懐疑心は、質問に対してもっともらしく聞こえる表明又は回答を、入手

した他の証拠の裏付けとなる場合を除き、過度に猜疑的でもなく、また、鵜吞みにもしない態度

に基づく。

56.業務実施者の態度として、職業的専門家としての懐疑心を理解することが重要である。したが

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って、EER保証業務における職業的専門家としての懐疑心は、その他保証業務における職業的専門

家としての懐疑心と類似するが、第51項から第53項で説明したように、EER保証業務という側面に

おいて、職業的専門家としての懐疑心を保持する必要性が高い場合がある。

57.不正又は誤謬によるものかを問わず、以下に起因して重要な虚偽表示リスクが高まるため、想

定利用者の利益のための職業的専門家としての懐疑心の重要性が高まる。

・ 事業とEER報告の複雑性の増加

・ 環境変化に適応するために必要な企業の急速な変化

・ 規制の強化

・ 情報の透明性に対する需要の増加

・ 企業行動に対するより大きな企業責任の要求

・ EER報告書の作成者による多くの判断、見積り及び仮定の使用

58.図4は以下を示している。

・ EER保証業務における職業的専門家としての懐疑心の必要性に寄与する要因(第51項から第53

項参照)

・ 職業的専門家としての懐疑心に対して考えられる障害の例

59.図4は考えられる全ての要因又は障害を示すことではなく、業務実施者の職業的専門家として

の懐疑心に影響を与え得るものを示唆することを目的としている。点線の四角は、業務実施者が

追加的に障害又は要因を識別し得ることを示唆している。これらの要因を認識することにより、

業務実施者は適切な措置を講じることでその影響を軽減できる。

- 14 -

図4 職業的専門家としての懐疑心の必要性を高める要因及びその保持に影響を与える可能性のあ

る障害

60.以下の設例は、EER保証業務において業務実施者の外部要因が、業務環境において職業的専門家

としての懐疑心の必要性にどう関係するかを表したものである。

設例:ガバナンスに責任を有する者による関与の欠如

企業のガバナンスに責任を有する者が、環境及び社会課題への対応にほとんど注意を払わ

ず、株主の短期的な経済的利益の最大化と事業の拡大に注目している。ガバナンスに責任を

有する者は、専門技能と知識を持った経営者及び業務執行部門に、環境及び社会課題への対

応を委ねている。経営者報酬には、企業業績の全ての分野について所定の目標を達成すると

支払われる賞与が含まれている。

適切なガバナンス及び監督がないため、環境及び社会課題への対応は重要でないとみなさ

れる可能性があり、財務実績報告ほどの厳密さで報告書が作成されない可能性がある。その

結果、企業の環境又は社会課題への対応が適切に管理されないか、EER情報に誤謬が発生し、

それが発見又は修正されないままになるかもしれない。企業業績に基づく賞与の存在は、ガ

バナンスの欠如と相まって不正による虚偽表示のリスクを高め、それにより、業務実施者が

職業的専門家としての懐疑心を保持する必要性が高くなる。職業的専門家としての懐疑心を

高める必要性を示唆する状況としては、例えば、既に入手した証拠と矛盾する証拠を認識し

た場合、経営者が疑わしい行動をとる場合、証拠や適切な説明を提供しない場合が含まれる

設例:多様な主題と多様な規準

ある採掘会社が、国連の持続可能な開発目標(以下「SDGs」という)との整合性について報

告している。企業は、規準選択の基礎として複数の報告フレームワークを使用しており、また

- 15 -

枠組みとなる規準を補足するために独自の追加規準を開発している。企業は、「貧困をなくそ

う(SDG1)」、「飢餓をゼロに(SDG2)」、「海の豊かさを守ろう(SDG14)」についての報

告を除外するという選択をした。

業務実施者は、選択及び開発された規準が適切であるかどうかを判断することが難しい場

合がある。SDGsは抽象的な原則で幅広い主題の側面に対応しており、使用が義務付けられて

いる一つの報告フレームワーク(一連の規準)は存在しない。また、業務実施者は、企業が上

述した三つの目標に関連した情報を省略することが適切かどうかの判断を行うことが難しい

場合もある。企業は全てのSDGsについて報告する義務はない。しかし、企業が前向きな行動を

取ったSDGsについては報告するが、企業の及ぼす影響がマイナスのSDGsについては報告しな

い場合には、例えば報告が中立かどうかといった規準の適合性が問題になる可能性がある。

したがって、業務実施者には、職業的専門家としての懐疑心を保持できるだけの業界、事業

及びその他業務環境についての十分な知識を持っていることが重要である。例えば業務実施

者が、当該採掘会社の生産プロセスが水路を汚染している可能性があることに気づいていれ

ば、業務実施者は、企業がSDG14(海の豊かさを守ろう)に関する報告を含めなかったことに

ついて疑問を持つことができる場合がある。他の省略したSDGsについても、同様の考慮がな

される可能性がある。

61.以下は職業的専門家としての懐疑心を妨げる可能性のあるEER保証業務における業務実施者の事

務所の内部要因の事例である。

設例:事業に関する不十分な知識

ある業務実施者には、農業セクターにおける広範な財務諸表監査の経験と、ESG報告の保証

業務の経験がある。その業務実施者に、金融機関より、住宅ローン事業について気候関連の物

理的リスク及び移行リスクに関する開示について、EER保証業務の実施が求められている。

業務実施者は保証の技能と適性を有し、気候関連の報告を理解しているが、企業が貸し出

す住宅ローン物件に対する気候変動リスクの影響について、職業的専門家としての懐疑心を

発揮して経営者の仮定に疑問を投げかけることができるほど、金融サービス業界に対する十

分な知識を持ち合わせていない場合がある。

保険の利用可能性、不動産価格、債務超過に直面した場合の消費者行動、顧客のデフォルト

リスク及び各項目の相対的な重要性等の事項に関する経営者の仮定に疑問を投げかけること

を可能にするため、業務実施者が業界に関する十分な知識のみならず特定の企業の事業に関

する知識を持つか、又は業務チームに業界専門家を含める必要性を認識することが重要であ

る。

62.図5は、職業的専門家としての懐疑心を支え、上述の事例にあるような状況において適用でき

る可能性のある行動と技能を示している。点線の四角は、業務実施者が識別し得る追加的な行動

又は技能があることを示すためのものである。

- 16 -

図5 職業的専門家としての懐疑心を支える行動又は技能

63.以下の例は、図5で説明した幾つかの行動と技能が、どのようにして職業的専門家としての懐

疑心を支えるかを示している。

設例

ある業務チームのメンバーが、ある企業の温室効果ガス排出量と廃棄物量が前年から減少

したことについて質問している。経営者は、新型コロナウイルス感染症拡大による2020年の

都市封鎖中は生産が大幅に減少したため、これらの指標も減少したと説明している。

この回答は一部の業種ではもっともらしく聞こえるかもしれないが、当該企業は食料品製

造業者であり、缶詰及びドライフーズを製造している。業務チームのシニアマネージャーは、

探求心(態度を表す行動)とより広範な業務環境の認識(知識と技能)を示し、都市封鎖中に

はこうした商品需要が通常よりも高まると考えられる可能性を示唆した。シニアマネージャ

ーは、温室効果ガス排出量と、生産及び財務報告記録との関係(知識と技能)について批判的

思考(行動)と認識を示し、経営者と再度話す前に、売上高が増加したのか、減少したのかを

確認するために、チームが企業の売上高の記録を確認しておくのがよいと提案した(職業的

専門家としての懐疑心から、チームが他の証拠源を探すという行動につながった。)。

予想どおり売上高は、これまでは休暇後の閑散期であった第一四半期中に特に増加してい

た。業務チームは、経営者にフォローアップ会議を提案し、生産が減少していたのであればど

のようにして売上が増加したのかについて説明を入手し、また、必要に応じ前期末の在庫記

録を請求し、それに相応する生産増がなくても売上増を説明できるだけの高い在庫水準があ

るかを確認する。経営者に対する質問と、追加証拠の入手(行動)というチームが提案したア

プローチは、チームが意思決定を一時停止でき(行動)、物事が正しくないと思われるか、自

身の知識に照らし合わせて合理的でない場合に追加的な質問を厭わないこと(行動)を示し

ている。

- 17 -

シニアマネージャーは、他の状況にあってはもっともらしく聞こえたかもしれない経営者

の説明を、額面どおりに受け入れず、職業的専門家としての懐疑心を発揮した。職業的専門家

としての懐疑心の保持を実践し、行動を指示し、かつその理由を説明することは、経験の浅い

業務チームのメンバーにとっての現場指導の観点でも重要である(行動)。

《4.職業的専門家としての判断の行使》

職業的専門家としての判断とは何か

業務環境に応じた適切な措置について十分な情報を得た上での判断を行う際に、保証業務

に関する実務指針及び倫理基準に照らして、関連する知識及び経験を適用すること(保証実

3000第12項(23)参照)。

64.職業的専門家としての判断を行使する能力を開発する上では、実務経験や現場での指導を行う

ことが重要である場合がある。例えば、業務執行責任者が示す手本を通じて、また、経験豊富な業

務チームのメンバーが経験の少ないチームメンバーに適切な指示、監督及び査閲を行うことによ

り、実務経験や現場での指導を行うことが重要であろう。

65.主題の専門家は、自身の主題に関する専門分野に関する判断を行う。ただし、保証実3000におい

ては、広範囲にわたる研修、知識及び実務経験を通じて習得される業務実施者の保証業務に関す

る適性の一部として、職業的専門家としての判断を具体的に規定している。EER保証業務では、特

に以下の事項について意思決定を下す際に職業的専門家としての判断の行使が必要になる。

(1) 保証業務の前提条件の充足

(2) 重要性

(3) 業務リスク

(4) 関連する保証業務に関する実務指針の要求事項に準拠し十分かつ適切な証拠を取得するに足

る手続の種類、実施時期及び範囲

(5) 得られた証拠の評価及びその証拠に基づく適切な結論の形成

(6) 職業的専門家としての懐疑心を保持する際に取るべき行動

設例

ある企業がEER情報について保証を求めている。作成者は、特に企業の社会的及び環境的影

響を開示し、必要に応じて定量化することを要求する特定の枠組みに企業が準拠していると

主張している。業務実施者は、EER保証業務を新規締結するかどうかを検討している。

業務実施者は、選択されたフレームワークについて過去扱った経験があり、その適用が適

切であると考えている。フレームワークが報告を要求する主題は、作成者が識別した想定利

用者と目的に照らして適切である。作成者との協議を通じ、業務実施者は結論を裏付けるの

に必要な証拠を入手できることが期待される。したがって、前提条件は満たされているよう

に見える。しかしながら、業務実施者は企業に付与された脆弱な生態系における銅の採掘認

可について質問した際、作成者は、まだインフラが全て完成しておらず、操業も始まったばか

りであるため、新しい採掘事業については何も開示しないと述べた。また、同社のグローバル

な事業にはこれよりもはるかに大きなプラチナ及び金の鉱山で採掘があり、この鉱山の重要

性は乏しいとのことである。

- 18 -

業務実施者は、作成者と更に問題について協議し、この問題の報告が重要である可能性が

あるかどうかや、開示しないことが想定利用者の意思決定に影響を与える可能性等を検討し

た。業務実施者は、たとえ定量的には重要性が低いとしても、脆弱な生態系、その生物多様

性、開発による侵害で急速に減少している地元先住民数への影響など、考慮すべき定性的要

因があるとの見解に至った。これらの問題は、結果的に将来的に企業に影響を与える可能性

がある。業務実施者の職業的専門家としての判断において、新しい鉱山に関する情報が開示

されないことは想定利用者に誤解を与える可能性があり、保証の前提条件が満たされないと

考えられる(第3章を参照)。そのため、当業務実施者は、作成者が報告内容の変更を望まな

い場合、本EER保証業務契約を締結しないことを考えている。

《5.業務全体にわたる職業的専門家としての懐疑心及び判断》

66.職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使については、本ガイダンス(試案)の各章において

関連がある場合には、説明が加えられ、かつEER保証業務の各段階における意思決定過程について

具体的に設例が示されている。これらの章の設例において、職業的専門家としての懐疑心の保持

又は職業的専門家としての判断の行使を示す箇所については、文末に以下の印を用いて強調され

ている。ただし、これらは本ガイダンス(試案)において職業的専門家としての懐疑心及び判断の

行使が議論されている箇所を網羅的に示すことを目的としたものではない。

●・・・職業的専門家としての懐疑心

◎・・・職業的専門家としての判断

《第3章 前提条件の決定及び EER 保証業務の範囲についての合意》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

67.本章では、依頼されたEER保証業務に係る、保証実3000第21項から第30項までの保証業務契約の

新規の締結及び更新に関する要求事項の適用についてのガイダンスを提供する。本章では特に以

下に焦点を当てる。

・ 前提条件が満たされているかどうかの明確化

・ 保証業務範囲の合意

・ 保証業務契約の新規契約の締結及び更新に関する要求事項を適用する際の適切な検討作業の

理解

・ 依頼された業務を遂行する際に発生し得る、業務実施者の独立性への潜在的な阻害要因に対

する注意の維持とその管理

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

68.保証業務契約の新規の締結又は更新前に前提条件が満たされているかどうかを明確にすること

は、業務実施者にとって、最初の重要な意思決定の一つである。EER保証業務では、以下の可能性

がある。

・ 主題が複雑で多岐にわたることがあり、主題及び主題情報の特徴が、定量的ではなく定性的

で、過去よりも将来志向である。

- 19 -

・ 企業におけるEER報告書の作成プロセス又はEER報告書の作成に関連する企業の内部統制シス

テムの他の構成要素が完全には開発されていない。

・ 主題の測定又は評価に適用される規準は、適用されることが考えられる多数の枠組みから選

択された枠組み又は枠組みの一部である場合や、企業独自の規準の重要な要素を含む場合があ

る。

69.上記に加えて、任意の保証業務であり、作成者にとってコストの負担が保証業務の重要な考慮事

項であるというような、その他の要因により、保証の主題情報が、企業のEER報告書の一部にすぎ

ないという結果になる可能性がある。これらの要因により、作成者が保証を依頼する主題情報の

範囲や主題情報の作成に偏向が生じる可能性が高まることがある。

70.上記の要因の全部又は一部が存在する場合に、特に初度の保証業務においては、EER保証業務の

前提条件が満たされることを明確化するために、例えば、財務諸表に対する監査業務のように報

告及び保証の領域が確立されている場合よりもより広範な検討作業が必要になることがある。場

合によっては、業務実施者が契約締結の妨げとなり得るような障害が生じることがある。このよ

うな状況では、保証業務の前段階として、企業報告の成熟度を評価し、EER保証業務への準備状況

を評価するような保証業務以外の個別業務を実施することが有用である場合がある。

71.一方でそのような業務は、EER保証業務を実施できるように企業の報告プロセスを十分に改善す

るという点では重要な目的を果たすが、その後当該EER保証業務を業務実施者が実行する際の、独

立性を阻害することもあり得る(第117項から第121項参照)。

《3.EER 保証業務の前提条件が満たされているかどうかの明確化》

72.業務実施者は、特に保証業務の前提条件が存在することを、業務の状況に関する予備知識と作成

者との協議に基づいて確認した場合にのみ、保証業務契約を新規に締結及び更新することが認め

られる。業務実施者は、主題情報の作成に直接関与している者だけでなく、ガバナンスに責任を

有する者との協議を通じて、保証業務の前提条件が存在することを検討することも有益である。

73.継続業務の場合、初度の業務と同じ前提条件が必要だが、業務実施者が企業と業務について既に

十分な知識を持っているため、更新プロセスを簡素化できることがある。業務実施者の考慮事項

は、業務の状況が前期から変化しているかどうかに絞られることがある。

74.前提条件は、保証実3000第24項に規定されている。業務実施者が、前提条件が満たされているか

どうかを明確にするためには、業務の状況に関する十分な予備知識が必要である。また、保証実

3000第41項により、業務実施者は業務の計画段階で規準が業務の状況に適しているかどうかを判

断し、もし適さないことが判明した場合は、保証実3000第42項の要求事項に従うことが求められ

ている(第5章参照)。以下のフローチャートは、保証実3000第24項の要求事項に基づき、業務実

施者が検討すべき質問を記載している。これらの質問は、業務実施者が業務の状況に関して必要

な予備知識を持っていると想定し、それぞれ後続の項で説明している。考慮事項の要約は、本章

末の表に記載されている(第75項から第88項及び第124項参照)。

- 20 -

(保証実 3000 第 21 項から 23 項及び第 26 項から第 30 項参照)

図6 保証業務契約の新規の締結及び更新における考慮事項

《(1) 役割・責任の適切性》(図6フローチャートの B)

75.保証実3000のA36項からA38項まで及び付録は、保証業務における役割と責任に関するガイダンス

を示している。

76.各役割と責任が適切である状況となるための前提条件の一つとして、作成者が主題情報について

合理的な基礎を持ち合わせている必要がある。主題情報の作成プロセスの開発段階は、企業によ

って様々である。役割と責任に関連する前提条件が満たされているかどうかは、業務実施者の職

業的専門家としての判断に基づき、主題並びに規準の性質、程度及び複雑さを考慮の上、企業内

プロセスがこれらの前提条件をどの程度裏付けることができるかによって決まる。

77.主題情報を作成するための企業内プロセスを検討することが、保証業務についてこれらの前提条

件が満たされているかどうかを業務実施者が判断する際に役立つことがある。その際の検討作業

の理解については、第110項から第113項で取り上げており、付録3で手続の例を説明している(第

6章参照)。

《(2) 主題の適切性》(図6フローチャートの C)

78.保証実3000のA39項からA43項は、主題が適切であることが何を意味するかについてのガイダンス

を示している。考慮事項には、結果として得られた主題情報が識別可能であり、適合する規準に

照らして首尾一貫した測定又は評価を行うことができるものであり、かつ、主題情報に対する合

理的保証又は限定的保証の結論を裏付けるために、十分かつ適切な証拠を収集するための手続を

実施することができるかどうかが含まれる。

- 21 -

79.主題の様々な側面を測定又は評価する場合、それらが識別可能であり、適用される規準に照らし

て一貫した測定又は評価が実施できることが必要となる(設例参照)。全ての保証業務には主題

があり、それに対して規準が適用されて主題情報が得られる。第92項から第94項までで述べてい

るとおり、主題、規準及び主題情報の間には一貫した関係が必要である。すなわち、適用される規

準により主題を測定又は評価することによって、保証業務の範囲内の主題情報が得られるはずで

ある。

設例

温室効果ガス排出量の定義は広く受け入れられているため、企業の温室効果ガス排出量は、

識別可能な主題となり得る。更に、企業の活動に起因する温室効果ガス排出量を測定又は推

定する方法が存在する。

同様に、スコープ1とスコープ2の温室効果ガス排出量はいずれも、それぞれに明確な定

義があり、スコープ1とスコープ2の温室効果ガス排出量を別々に測定又は推定する方法が

あるため、識別可能な主題となり得る。

ただし、地球の気温変化を特定の企業の温室効果ガス排出量に帰属させること、また、温室

効果ガス排出量の影響を地球の気温変化を生じさせる他の要因(例えば、森林破壊)から分離

することは困難であるため、広範な地球の気温変化に対する企業活動の影響は、識別可能な

主題とはならない場合がある。

80.保証実3000のA41項に記載されているように、主題(又は主題の側面)により特性が異なり、それ

が、主題を規準に照らして測定又は評価できる精度及び入手可能な心証の程度に影響する。

81.主題の様々な側面の詳細さの度合いは、業務実施者の以下の考慮事項に影響を与える可能性があ

る。

・ EER報告書に含める報告事項を識別する企業内プロセス(第4章)

・ 規準の適合性(第82項から第83項及び第5章参照)

・ 識別された想定利用者の意思決定に影響を与える可能性のある要因(第9章参照)

《(3) 規準の適合性》(図6フローチャートの D)

82.規準の適合性は、保証水準に左右されない。ある規準が、合理的保証業務に適合していない場合、

他の業務の状況が同じであれば、限定的保証業務にも適合しない。同様に、ある規準が、限定的保

証業務に適合している場合、他の業務の状況が同じであれば、合理的保証業務にも適合している。

83.保証実3000のA47項に記載されているように、規準は様々な方法で選択又は策定できる。EERの枠

組みとなる規準は、適合する規準の全ての特性を含んでいるわけではない。このような枠組みは、

財務報告の枠組みと比較すると、EER報告書で扱われるべき主題の範囲や、主題を測定又は評価し

て開示する方法について、十分には規定されていないことが多い。そのような状況では、作成者

は、適合する規準の全ての特性を規準が示すように、規準を更に策定する必要がある(第5章参

照)。

- 22 -

《(4) 規準の利用可能性》(図6フローチャートの E)

84.業務実施者の報告書の発行に際しては、主題がどのように測定又は評価されたかを理解できるよ

うに、規準が想定利用者にとって利用可能であることが必要である。EERフレームワークに大枠の

原則しか規定されていない場合、大枠の原則を遵守する方法には様々なものがある。したがって、

想定利用者は、枠組みとなる規準と企業が策定した規準の両方にアクセスすることができない場

合には、報告されたEER情報に基づいて意思決定を行うことができないと考えられる(第5章参照)。

《(5) 証拠の入手可能性》(図6フローチャートの F)

85.業務実施者は、業務の状況についての予備知識に基づき、自身の結論を裏付けるために必要な証

拠の入手可能性について判断しなければならない。利用可能な証拠の量、質及び証拠の入手可能

性に関する考慮事項へのガイダンスは保証実3000のA52項からA54項に記載している。証拠の入手

に関する更なるガイダンスは、作成者がEER情報を作成する際に第三者(「外部情報源」)からの

情報を使用している場合の考慮事項を含め、第8章に定めている。

《(6) 保証報告書への結論の記載》(図6フローチャートの G)

86.保証業務においては、業務実施者の結論が書面による報告に含まれることを前提としている。ま

た、保証報告書には少なくとも、保証実3000第69項に記載されている基本的な要素が記載されて

いる必要がある(第12章参照)。

《(7) 業務の合理性》(図6フローチャートの H)

87.保証業務の目的は、保証実3000第12項(35)の保証業務の定義に定められている。「合理的」とい

う用語の意味は、保証実3000では明記されていない。しかしながら、保証業務の定義に基づいて、

保証業務の目的は、「・・・主題情報に信頼性を付与すること」であると考えられる。業務実施者

は、依頼された業務が業務の状況に適した方法で利用者の信頼を高めるように立案されている場

合、当該業務には合理的な目的があるとみなすことができる。保証実3000のA55項の考慮事項は、

依頼された保証業務の目的が合理的であるかどうかを決定する際に関係し得る特定の考慮事項を

示している(第92項から第94項参照)。

88.保証業務の前提条件が満たされているか確かめることに加えて、業務実施者は、保証実3000第21

項から第30項までに定められる保証業務契約の新規の締結及び更新に関する他の要求事項も満た

さなければならない。

《4.業務範囲の合意》

89.業務範囲の合意とは、保証の対象及び業務を実施する際に得るべき保証水準を合意するというこ

とである。業務範囲としては、以下のようなものがある。

・ EER報告書全体

・ 環境や社会問題などのEER報告書内の情報の特定の事項又は領域

・ EER報告書内の情報の特定の事項又は領域における個別の項目。例えば、「環境」に関する事

項又は領域における廃棄物の発生や「社会」に関する事項における性別による賃金格差がある。

- 23 -

・ EER情報の様々な側面に対する様々な保証水準。例えば、「社会」に関する事項又はその側面

に関する限定的保証や「環境」に関する事項又はその側面に関する合理的保証がある。

《(1) 保証対象の検討》

90.業務範囲がEER報告書全体であるかその一部のみであるかにかかわらず、業務に合理的な目的が

あることを含む保証実3000第24項に規定されている前提条件並びに保証業務契約の新規の締結及

び更新に関するその他の要求事項が満たされる必要がある。

91.企業がEER報告を始めた当初においては、業務実施者は、EER報告書に含めた全ての情報について

作成者が合理的な基礎を有しているかどうかを判断できない可能性があるために、保証業務の対

象となるEER情報は、EER報告書のうち作成者が合理的な基礎を有している部分のみとなる可能性

がある。合理的な目的があり、他の前提条件が満たされている場合には、保証実3000はより限定さ

れた業務範囲に対する保証業務を認めている(保証実3000のA35項及びA43項参照)。他の状況で

は、作成者は、主題情報が期間ごとに変化する継続的なEER保証業務を依頼する場合がある。例え

ば、作成者は、EER保証業務の範囲について期間を経るごとに広げていくことや(第95項から第98

項参照)又は「ローリングプログラム」によって保証業務の範囲を変更すること(第99項から第

106項参照)を依頼することがある(第5章参照)。

《(2) EER 保証業務の範囲の検討(EER 報告書の一部のみを範囲とする場合を含む)》

92.EER保証業務において、EER報告書全体ではなく、極めて限定された範囲を検討する場合、例えば、

ごくわずかな特定の測定値又は指標のみを個別に扱う場合は、保証業務の前提条件が満たされて

いるかどうかを判断するために慎重な検討を要することがある。

93.保証業務において、主題情報がEER報告書に含まれる全ての情報よりも少ない場合、適用される

規準及び主題は、EER報告書の全ての情報の基礎となる規準及び主題と同じではない。対象範囲は

限定されるが、それでも主題情報、規準及び主題の間の一貫性は必要であり、規準を適用する主

題の範囲が限定されるほど、主題情報の範囲も限定される。

94.EER報告書に含まれる情報のうち、保証が容易な部分又は企業を好ましく見せる部分のみを選択

することは、一般的に適切ではない。EERの主題情報、規準及び主題は、適切な一貫性を保持して

いる必要がある(すなわち、主題を測定又は評価するために適切な規準を適用することで、保証

業務の範囲内の主題情報が得られるはずである。)。業務に合理的な目的があることを含め、依頼

されたEER保証業務の契約を締結するための他の前提条件も満たされている必要がある。業務に合

理的な目的があるかどうかは、業務の状況において規準がどの程度中立的であるかによって影響

を受ける可能性がある。これは、その業務環境においての職業的専門家としての判断の問題であ

ると同時に、業務実施者が職業的専門家としての懐疑心を発揮することが重要になり得る領域で

ある。例えば、限定された範囲の業務に合理的な目的があると考えられる事例は、以下のとおり

である。

設例

水道会社は、顧客満足度、費用対効果、給水停止による損失時間、漏水、飲料水の水質、会

社が排水を放出する海の水質など、多くのKPIを毎年報告している。

- 24 -

昨年、会社は飲料水の水質について多くの苦情を受けてきた。会社の排水の処理及び排水

の試験用に採取するサンプルの数も、現在、規制当局による調査を受けている。

会社は、EER報告書で、主題の様々な側面について報告しているが、EER保証業務範囲を飲料

水と排水のKPIのみに限定することを依頼している(すなわち、EER報告書の特定の領域にお

ける個別の項目群をEER保証業務の範囲として依頼している(第89項を参照))。その理由は、

EER報告書のこれらの側面が、規制当局の調査の対象であり、保証が求められており、想定利

用者にとって関心が高いと思われ、企業は、短期的には、これらに関連するプロセス、システ

ム及び管理の改善に注力したいと考えるためである。このような場合、より限定された業務

範囲が合理的な目的を有することがある。

●◎

《(3) EER 保証業務の範囲の検討(対象範囲が期間ごとに段階的に拡大していく場合)》

95.EER報告書を作成する企業は一般に、EER報告をより定着させ正式なものとするべく、EER報告を

支援するためのガバナンスと内部統制を段階的に変更していく。EERに対する企業のガバナンスと

内部統制が整備途上である場合、作成者は、報告される主題の側面の全て又はEER報告書に含まれ

る情報の全てについては合理的な基礎を保持していない可能性がある。

96.そのような場合であっても、作成者は、前提条件が満たされる可能性のある領域について保証を

受け、保証業務の前提条件が満たされる領域を更に拡大するためにガバナンス、プロセス及びシ

ステムの整備に取り組んでいることをEER報告書で開示したいと考える場合がある。この場合、保

証対象範囲が限定された理由が適切であるか、また依頼された業務に合理的な目的があるかを判

断するためには、作成者がEER報告書に含まれる特定の情報のみを保証範囲に含めたいと考える理

由を検討することが必要である。

97.業務実施者はさらに、EER報告書のうち保証業務の範囲に含まれない情報に関する企業の報告プ

ロセスに不備があることを作成者が認識しているかどうかについて考慮する必要がある。不備を

認識している場合、業務実施者は、保証業務において範囲から除外された情報についてもその他

の記載内容として手続の対象とすることが求められるため、保証業務の契約締結に対する不備の

影響を検討することが必要な場合がある(第10章参照)。

98.EERに対する企業のガバナンスと内部統制が整備途上である場合、企業のEERガバナンス、報告プ

ロセス及びシステムの発展に伴い、次期以降のEER保証業務で、主題情報の範囲に含まれるEER報

告書の情報が増えていくことが予想される。利用者の情報ニーズに適合している場合には、企業

がEER報告の一部のみについて保証を受け続けることには合理的な目的があることも考えられる

が、以下の場合は、企業が当該主題情報を報告する理由及び当該EER保証業務の目的の合理性が、

疑問視される可能性がある。

・ 次期以降のEER保証業務の主題情報の範囲を段階的に拡大する計画に対し遅れをとっている。

・ 利用者の期待に応えていない。

・ EER報告書の更なる情報を、次期以降のEER保証業務範囲に含める努力をしていない。

設例

1年目に、会社は生産工場で水の節水プログラムを開始した。その年末に、会社は、新たな

- 25 -

指標:「節水プログラムに直接帰属する水使用量の減少」についての保証業務を依頼するが、

C工場ではまだプログラムが開始されていなかったため、A工場及びB工場の2工場のみの水使

用量の減少について保証業務を依頼した。会社は、この事実を主題情報で開示している。期間

中の水の消費量の開示については、3工場全ての消費量の開示を行う。この例では、前提条件

が満たされ、業務実施者が保証業務の契約を締結したと想定する。

上記プログラムは、2年目までに3工場全てで完了したが、水の消費量を削減できたのはA

工場及びC工場のみがであった。B工場の報告によれば、C工場よりも早期にプログラムを実施

したにもかかわらず、プログラムの実施前よりも水の消費量が増加した。会社は、水使用量の

増加の理由を調査する間、「節水プログラムに直接帰属する水使用量の減少」指標からB工場

を除外し、A工場及びC工場の水使用量の減少について保証を取得することを依頼している。

その除外の理由が開示されたとしても、B工場を除外した業務が合理的な理由を有している

可能性は低い。なぜなら、利用者は、水の消費量が削減できたかどうかにかかわらず、節水プ

ログラムの結果として生じた水使用量の変化に関心を持つ可能性が高いからである。

●◎

《(4) 一定期間ごとに周期的に変化する範囲の検討(「ローリングプログラム」)》

99.業務実施者は、企業からの依頼により、例えば、一定の期間を通じて主題情報の全て又は大部分

の側面を範囲とするように、保証業務の範囲を体系的に毎年変更するプログラム(以下「ローリ

ングプログラム」という。)に基づいて、保証業務を実施することがある。

100.主題情報のローリングプログラムとは、保証対象の範囲に含まれるEER情報が毎年異なり、特定

のEER情報が保証対象の範囲に含まれるのが数年に一度の場合もあるものをいう。

101.EER報告書の全てが毎年のEER保証業務の範囲内であるが、業務実施者が、毎年、主題情報の異な

る側面について保証手続を実施する場合、これはローリングプログラムではなく、テスト項目の

選択である。

例えば、企業の温室効果ガス排出量について保証を取得するために、業務実施者は、大規模な工

場又はリスクが高いと評価された工場を重点的に、毎年訪問することを選択する場合がある。業

務実施者は、手続に予測不可能性を取り入れるために、毎年、前年と異なる工場を一部選択する場

合がある。このようなアプローチは「ローリングプログラム」ではない。

これは、財務諸表監査において、監査人は、全てではなく特定の事業所のみで棚卸立会等の監査

手続を実施するが、財務諸表全体に対して監査意見を表明することと同様である。

102.対照的に、ローリングプログラムは、継続的な保証業務において、一定期間ごとに保証の対象

が毎年変わることを意味する。ここで、前提条件が満たされているかどうかの判断、EER保証業務

範囲の合意が問題となる。

103.企業がローリングプログラムによる保証業務を依頼した場合、業務実施者は、ローリングプロ

グラムの方針を理解し、契約締結の前提条件に関連して、以下の事項を検討する必要がある場合

がある。

・ ローリングプログラムの方針が具体的に定められているか。

・ ローリングプログラムの方針が合理的な目的を有しているか。

- 26 -

・ ローリングプログラムの対象とする各期間について規準が目的に適合している又は網羅的で

あるか。

・ 保証が期間ごとに異なる報告事項に限定されることが想定利用者の保証ニーズを満たすか。

・ ローリングプログラムの方針及び内容を想定利用者が理解することができるか。

104.企業によりローリングプログラム保証業務を依頼された場合、依頼された業務について前提条

件が満たされているかどうかを判断するには、重要な判断が必要となる可能性があり、業務実施

者が職業的専門家としての懐疑心を保持することが重要となり得る。

105.各期間にローリングプログラムによって保証業務を実施する場合、各期間の保証業務が合理的

な目的を有すると考えられる場合には、想定利用者が、作成者が取ったアプローチと保証対象と

なったEER報告書の情報を理解できるようにするために、表示及び開示に関する規準が重要となり

得る。

設例

ある会社は、多くの非財務KPIに関連して、以下の項目等を報告している。

① 会社の戦略の達成

② 重要なビジネスリスクの評価

③ 報酬方針及び慣行

④ コミュニティプロジェクトへの投資

⑤ 教育関係事業のスポンサー活動

報告書は株主のために作成されているが、株主は①から③の項目に関連するKPIに関心があ

り、それらが意思決定に重要であるとみなしている。株主は、会社が社会的責任を果たしてい

ることを示すために行っていることを知りたいとは考えているものの、①から③の項目に関

連するKPIほどは、④コミュニティプロジェクトへの投資や⑤教育関係事業のスポンサー活動

を重視していない。株主のニーズは、①から③の項目に関連するKPIが毎年保証されることで

満たされ、コミュニティプロジェクトへの投資やスポンサー活動はローリングプログラムで

2年又は3年に1度保証されればよい。この場合、業務実施者は、業務に合理的な目的がある

と判断する場合がある。

●◎

106.徐々に保証業務の範囲が拡大していくプログラム又はローリングプログラムでの保証業務が作

成者によって依頼され、業務実施者が契約を締結した場合、利用者は、それが立案どおり一貫し

て実施されることを期待する可能性がある。ただし、保証のローリングプログラムに従うと、一

定期間に主題情報に含まれない側面に関連するEER報告書の情報が「その他の記載事項」となるた

め、「その他の記載事項」は期によって変化する。業務実施者はまた、依頼された継続的な「ロー

リングプログラム」業務の継続が次期以降の期間には適切でなくなることを示す可能性のある業

務の状況の変化に注意する必要がある。ローリングプログラムが適切でない場合の例を以下に示

す。

設例

ある多国籍飲料会社は、水不足の地域における水使用量が多い。その生産プロセスでは、脆

- 27 -

弱な生態系に有害な影響を与える可能性のある排水を排出するが、各地の環境機関によって、

排水量や水質が安全であると考えられる水準を超えないように注意深く監視されている。

この例では、水使用量と排水をローリングベースの保証に含めることは、そのようなEER保

証業務が想定利用者のニーズを満たさない可能性があるため、合理的な目的を有さない可能

性がある。利用者は、水の消費量を削減し、排水の水質を監視するための、会社の継続的な取

組に関心を持つ可能性が高い。特定の年に一部の現場が保証から除外されるローリングプロ

グラムは、この状況では合理的な目的を反映しないだろう。

●◎

《(5) 得るべき保証水準の検討(付録3参照)》

107.得るべき保証水準(限定的保証又は合理的保証)は、許容できる、又は許容できる程度に低い業

務リスクの水準や、証拠収集手続の一環として実施する手続の種類、実施時期及び範囲について

の業務実施者の考慮事項に影響を与える可能性がある。

108.許容できる、又は許容できる程度に低い業務リスクの水準は、想定利用者の情報ニーズ、規準

及び主題などの業務環境によって異なる場合がある。取得する保証水準に則して実施する手続の

種類、実施時期及び範囲を決定するためには、職業的専門家としての判断及び懐疑心を行使する

に当たり相当な技能が必要となる場合がある。

109.第89項に記載されているように、EER主題情報の側面について異なる保証水準が取得される場合

がある。例えば、第105項の設例で作成者は、ローリングプログラムによる保証を依頼する代わり

に、コミュニティプロジェクトへの投資やスポンサー活動には限定的保証を、会社の戦略の達成

などの上から三つのKPIには合理的保証を要求することもある。

《5.前提条件が満たされているかどうかを判断する際の検討作業》

110.業務実施者は、業務の状況についての予備的知識及び当事者との適切な協議に基づいて、保証

業務の前提条件が満たされているかどうかを判断する。

111.業務実施者が前提条件を満たしているかどうかを判断するためには、主題が複雑であるほど、

又は経営者の偏向の影響を受けやすい場合であるほど、主題情報の合理的な基礎を提供する運用

中のシステム、プロセス及び内部統制を理解する必要性が高まると考えられる(特に合理的保証

業務においては、内部統制の整備及び運用状況を慎重に検討することが考えられる。)。

112.複雑な業務や、作成者が枠組みとなる規準を独自に一部又は全ての規準を策定した状況におけ

る業務では、業務実施者は、通常は業務計画の一部として実施するような幾つかの手続を前倒し

して実施することを望む場合がある。例えば、業務実施者は、情報を記録するプロセスを理解す

るためにウォークスルーすることや非保証業務(「予備調査」(第115項参照)とも呼ばれる。)

の実施を提案したりする場合がある。

113.小規模でそれほど複雑でない業務では、十分な予備的知識を得るために作成者と協議を行うこ

とが適切な場合がある。業務が複雑か、比較的複雑でないかにかかわらず、前提条件についての

判断を下し、かつ、保証実3000が要求する職業的専門家としての懐疑心及び判断を行使するため

に必要な業務実施者の予備的知識には、必要に応じて、以下を十分に理解することが含まれる。

- 28 -

(1) 企業の事業とその事業環境

(2) EER報告書の想定利用者及び彼らの意思決定に影響を与えるもの

(3) 主題と、関連する場合は当該主題と企業が報告する他の主題との関係

(4) 企業がEER報告書内に提示された情報の一部について保証を要求しているかどうか、及びその

要求の理由

(5) 適用されている規準及びそれらがどのように選択又は策定されたか。

(6) EER主題情報がどこに提示されるか、例えば、規制当局への提出書類又は独立した報告書に含

まれるか。

《(1) 初度保証業務》

114.依頼された保証業務が初度業務である場合、特にEER報告書を作成する企業内プロセスが初期段

階で開発途上であるとき又は依頼された業務が複雑であるとき、前提条件が満たされているかど

うかを判断するための取組は、継続業務の場合よりも困難である可能性が高い。

115.状況によっては、業務実施者は、前提条件が満たされているかどうかを判断し、前提条件が満

たされていない場合は、保証業務の契約締結の障害となっている事項に対応するために経営者が

検討すべき措置を識別するため、別の非保証業務を実施する場合がある(第122項及び第123項参

照)。このような業務は、「予備調査」と呼ばれることがある。この業務は、依頼されたEER保証

業務について、合意した条件で契約締結前手続を実施することが中心的な目的であるが、依頼さ

れた保証業務の契約締結を事前に約束するものではない。そのような非保証業務は、実施される

時点で業務の前提条件が満たされているとは判断されていないため、保証実3000に基づいて実施

される保証業務ではない。しかし、そのような業務は、後に依頼された保証業務を実施する際に、

業務実施者の独立性を阻害する可能性がある(第117項から第121項参照)。

116.第115項で説明されているアプローチは、業務実施者が、その状況で依頼されたEER保証業務を

実施する可能性について、作成者に過度な期待を持たせないようにするのに有用かもしれない。

更に、このアプローチは、企業の経営者又はガバナンスに責任を有する者に、保証業務に対し企

業がどれだけ準備できているかについて、有益な情報を提供する。そのような情報は、経営者又

はガバナンスに責任を有する者に、障害が識別された際に更に準備を整えるための措置を講じる

よう促す場合がある。

《(2) 独立性及び職業倫理に関する考慮事項》

117.準備状況評価を実施することは、後に保証業務契約が締結された場合に、依頼されたEER保証業

務において、自己レビュー、自己利益又は擁護により業務実施者の独立性が阻害される可能性が

ある。例えば、依頼されたEER保証業務の主題、主題情報若しくは規準の様々な側面について、又

はEER情報を作成するための企業のプロセス若しくは関連する内部統制について、業務実施者が経

営者又はガバナンスに責任を有する者に提案をすることが、阻害要因となる可能性がある。

118.第115項で説明されているアプローチによって発生する潜在的な阻害要因の性質及び水準は、状

況によって異なる。業務実施者が依頼された保証業務契約を締結しようと考えている場合、どの

ような潜在的阻害要因も、職業倫理に関する規定に従って評価及び対処される必要がある。

- 29 -

119.職業倫理に関する規定は、業務実施者が依頼人に対し、独立性の阻害要因を生じさせる可能性

のある非保証業務を提供する際に概念的枠組みを適用するための具体的な要求事項とその適用に

関する資料を提供している。

120.依頼人の経営者が、経営者の適切な責任として関連する全ての判断と意思決定を行っている場

合、経営者がその責任を果たす際に役立つ助言や提案をすることは、経営者の責任を担っている

ことにはならない。

121.同様に、作成者との協議に基づいて、業務実施者が、企業が既に策定したが文書化していない

規準を文書化する際に作成者を支援する場合、業務実施者の行動は説明を受けた内容の文書化に

限定されるため、その特定の状況において自己レビューの阻害要因は発生しない。しかしながら、

主題情報の提示を受ける保証業務では、関連する職業倫理に関する規定により、規準の選択若し

くは策定又は主題情報の作成に関して、業務実施者が経営者の責任を担うことは禁じられている。

特に、主題情報の提示を受ける保証業務の対象となる主題情報の作成に業務実施者の所属する監

査事務所が関与している場合、自己レビューの阻害要因が生じる可能性がある。

《6.前提条件が満たされていない場合の対応》

122.業務実施者は、保証業務の前提条件が満たされていないことを確認した場合、潜在的な契約当

事者(経営者又はガバナンスに責任を有する者)とこれについて協議することがある。前提条件

を満たすための変更がなされなかった場合、業務実施者は、保証実3000第25項に基づき、法令又は

規則によって要求されない限り、当該業務を保証業務として契約を締結することは認められてい

ない。

123.作成者がその責任を果たしておらず、業務実施者が法令又は規則により保証業務契約の締結を

拒否できない状況では、業務実施者は、限定付結論を表明すべきか、結論を不表明にすべきかを

検討する必要がある。このような状況で行われる業務は、保証実3000に準拠していない。そのた

め、業務実施者は、保証報告書に、当該業務が保証実3000及びその他の関連する実務指針に準拠し

て実施されたことを示すような記載を行ってはならない(保証実3000第25項参照)。

設例

公共機関のサービスパフォーマンス情報に関する調査業務の実施が法令等により定められ

ている場合に、保証業務の前提条件が満たされていないと判断するときであっても、公認会

計士が当該調査業務を実施することがある。そのような場合は、保証実3000に準拠して実施

されたことを示すような記載を行ってはならない。

124.以下の表は、保証の前提条件が満たされているかどうかを判断する際の業務実施者の考慮事項

の要約である。これらの考慮事項は例示的なものであり、業務実施者が、前提条件が満たされて

いるかどうかを明らかにできる唯一の方法を示すことを意図したものではない。AからHは、本章

の冒頭のフローチャートに示されている文字に対応する。

業務実施者の考慮事項

A.業務状況に関する予備的知識:考慮する事項には以下が含まれる。前提条件が満たされて

いるかどうかを明らかにするための、企業、企業の属する業界及びその他の業務の状況に

- 30 -

ついての十分な知識があるか。前提条件が満たされているかどうかを判断することは、業

務の状況との関連で行われる。

B.適切な当事者の役割と責任は、依頼された業務の状況において適切か。例えば、以下が考え

られる。

・ 作成者は、保証報告書の目的及び想定利用者を識別したか。

・ 作成者は主題に責任を負う者及び契約当事者でもあるか、又はこれらの役割は異なる

当事者によって担われるか。異なる当事者によって担われる場合、当事者間の関係には

どのような特性があるか(保証実3000のA36項及び付録参照)。

・ 作成者は、主題に対する責任を認識しているか、又は認識するか(保証実3000のA37項

参照)。

・ 主題情報を作成するための作成者のプロセスは、その情報の合理的な基礎を作成者に

提供し、適切な場合、当該プロセスは、企業の内部統制システムの他の関連する側面によ

って適切に支援されているか。

C.主題の特徴:主題を識別できるか。主題は、結果として得られる主題情報が十分かつ適切な

証拠を入手する手続の対象となり得るように、適用される規準に照らした首尾一貫した測

定又は評価を行うことができるか(保証実3000のA39項からA43項及び第78項から第81項ま

で参照)。

D.適用される規準は業務状況に適しているか。どのような規準が使用されるべきか、それら

はそれ自体で目的適合性、網羅性、信頼性、中立性、理解可能性があるか、それとも、企業

によるさらなる開発が必要か(第82項から第83項及び第4章参照)。例えば、以下が考えら

れる。

・ 規準は、何を報告するか、それをどのように測定又は評価するか、そしてそれをどのよ

うに開示及び表示するかを、主題の様々な側面を含めて指定しているか。

・ EER保証業務範囲内にある主題情報は適切に決定されているか。主題情報がEER報告書

の一部のみで構成されている場合、偏りのない方法で選択されているか(第89項から第

106項参照)。

E.枠組みとなる規準及び企業が策定した追加の規準は、保証実3000のA50項に記載されている

いずれかの方法で想定利用者が利用できるか(第84項及び第5章参照)。

F.保証の結論を裏付けるために必要な証拠を入手できる見込みであるか(保証実3000のA52項

からA54項、品基報第1号第29項、第85項及び第8章参照)、又は、

・ 作成者は、業務実施者が必要とする証拠を入手できないように、業務実施者の作業の範

囲に制限を課したか(保証実3000のA155項(3)参照)。

・ 作成者の誠実性に問題はあるか(品基報第1号第29項参照)。

G.保証の結論は、保証実3000第69項で要求される要素を含む書面による報告書に含まれる予

定か(第86項及び第12章参照)。

H.業務には合理的な目的があるか(保証実3000のA55項及び第87項参照)。

- 31 -

《第4章 報告事項を識別するための企業内プロセスの考慮》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

125.第3章で説明したように、保証業務のための前提条件の一つは、業務の状況に適合している規

準が必要であるということである。序文で説明したように、EER報告は、多様な主題(の側面)を

扱う場合がある。したがって規準は、何を報告するか、どのように測定又は評価するか、どのよう

に開示及び表示するかの規準について、明確な指示を与える必要がある。これには、EER報告書で

扱われるべき報告事項に対する規準が含まれる。

126.EER 保証業務に関して、以下の場合がある。

・ 作成者が従うべき枠組みがない。

・ EERフレームワークは、作成者がEER報告書でどのような報告事項を扱うべきかについて信頼

できる判断を下すための十分に詳細な指示を与えていない。

127.第126項のような状況では、企業は通常、想定利用者の情報ニーズを考慮に入れて、報告事項を

識別するためのプロセスを確立する必要がある。

128.EERフレームワークは通常、第127項のようなプロセスを「マテリアリティ評価」又は「マテリ

アリティプロセス」と称する。ただし、目的適合性と重要性の概念は、どちらも利用者の意思決定

に言及しているが、同義ではない。目的適合性は、規準の適合性を評価する際に考慮されるが、一

方で、重要性は、業務の環境において、潜在的な、識別された虚偽表示に関連して業務実施者が考

慮する意思決定に対する重要度の閾値である(第9章参照)。本研究報告では、第127項で説明し

ているプロセスは、「報告事項を識別するための企業内プロセス」と称され、第129項から164項で

詳しく説明されている。

129.報告事項を識別するために企業が実施するプロセスを業務実施者が考慮することは保証実3000

の要求事項ではないが、業務実施者は、作成者によって適用される規準が業務の状況に適してい

るかどうかを判断しなければならない(第3章及び第5章参照)。これには、EER情報の中から報

告事項を識別する際に作成者が適用する規準が含まれる。したがって、規準の適合性を判断する

際に、報告事項を識別するための企業内プロセスを理解しておくことが、業務実施者にとって役

立つ場合がある。本章では、業務実施者が当該プロセスを理解することが役立つと判断した場合、

業務実施者に対するガイダンスを提供する。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

130.本章は、業務実施者が企業のプロセスを考慮する際のガイダンスを提供することを目的として

いる。また本章では、EER報告において、独立した保証を求める前に企業が十分に準備しておくこ

との重要性を認識し、作成者が従うことのできるプロセスについても説明している。本章が作成

者に有用な場合もあるが、作成者向けのガイダンスではない。

131.保証実3000第12項(2)は、規準を、「主題を測定又は評価するための一定の基準となるものをい

う。」と定義している。したがって、規準は以下を明確化する。

・ 何を報告するか(主題及び主題情報)。

・ どのように測定又は評価されるか。

・ どのように開示及び表示されるか。

- 32 -

132.財務諸表監査においては、作成者によって適用される規準は、一般に公正妥当と認められる企

業会計の基準であり、様々な企業が一貫した財務諸表を作成できるように枠組みを提供している。

同様に、業務実施者がEER情報について保証を得る場合にも、一定の枠組みが必要である。適合す

る規準はそのような枠組みを提供している。

133.EER報告に関して、財務諸表の報告とは実質的に異なる一つの側面は、作成者が、通常、EER情

報に含める事項をどのように判断するかを決定するプロセスを構築する必要があるということで

ある。これは、第126項に記載されているように、EERフレームワークは、EER報告で扱うべき報告

事項について作成者が信頼性の高い判断を行うために十分に詳細な指示を常に与えているとは限

らないからである。

134.枠組みがEER情報に含めるべき報告事項を指定していない場合、報告事項の識別に当たり経営

者の偏向が生じる可能性が少なくない。このような状況においては、EER主題情報を作成する際に

作成者が適用した規準が適切であるか判断する際に、職業的専門家としての懐疑心及び判断を行

使することが重要である(第2章参照)。

《3.報告事項を識別するための企業内プロセスの考慮》

135.第126項で述べたように、EERフレームワークが目的適合性を有する報告事項を十分に詳細に識

別していない場合、その規準自体が主題に適合しているとみなされる可能性は低い。その規準は、

目的適合性又は完全性を欠いている可能性がある。枠組みが報告事項を識別するための抽象的な

原則を含んでいるが、目的適合性を有する報告事項の合理的で整合した識別ができない場合には、

その規準は信頼性も欠く可能性がある。このような状況では、企業は報告事項を識別するための

プロセスを確立する必要があるだろう。

設例

企業は、特定のEERフレームワークの下で報告を行っており、企業が直面する主要なリスク

と不確実性の説明を含めるよう求められているものの、リスク又は不確実性、それらの評価

方法、開示及び表示の方法は指定されていない。ほとんどの場合、リスク等は企業ごとに異な

るため、EERフレームワークはこの識別を行うことができない。

企業は、主要なリスクと不確実性(報告事項)、それらに関するどのような情報を報告する

か、並びにその情報をどのように開示及び表示するかを識別するプロセスを確立する。その

プロセスの結果として、目的適合性、完全性、信頼性、中立性、理解可能性のある主要なリス

クと不確実性に関する情報がもたらされることが期待される(すなわち、適用される規準が

適合している)。

設例

別のEERフレームワークでは、例えば、期間中に従業員が研修に費やした時間など、時間単

位で測定される特定の指標の開示が必要になる場合がある。①「従業員」をどのように定義す

るか、②何が「研修」に当たるか、及び③指標をどのように計算するかに関する詳細な指示

は、枠組みに記載される。

この場合、EERフレームワーク設定者は、想定利用者が何を知りたいのか、及び情報をどの

- 33 -

ように測定又は評価するのかについて既に判断しているため、作成者は、報告事項を識別す

るプロセスを実行する必要はないかもしれない。これは、特定の法令等の要求事項を満たす

ための報告において一般的であり、一部のEERフレームワークには、例えばサステナビリティ

会計基準審議会(SASB)基準のように、特定の業界セクターに目的適合性を有する可能性の高

い指標についての指示が含まれている。

136.作成者が報告事項を識別するプロセスに着手し、業務実施者がそのプロセスを考慮することが

有用であると考える場合、考慮に際して図7のフローチャートが業務実施者に役立つことがある。

作成者が踏むと期待されるステップは左側に記載されている。これらは、報告事項を識別するた

めの企業内プロセスを考慮する際に業務実施者が何を期待できるかの例示の説明である。業務実

施者の考え得る考慮事項は図7の右側に記載されており、下記のガイダンスの各段落においても

言及されている。

《4.ステップ1:報告事項を識別するための企業内プロセス状況の考慮》

137.業務実施者は、以下のような業務の状況の側面を含む、報告事項を識別するための企業内プロ

セスの状況を考慮することから始めることがある。

(1) EER情報の目的(ステップ1a)

(2) 想定利用者(ステップ1b)

(3) 企業とその環境

(4) 規準の選択(EERフレームワーク又は企業により策定されたもの)(第5章参照)

- 34 -

図7 報告事項を識別するための企業内プロセス

138.企業が報告事項を識別するプロセスと企業が下した意思決定を文書化した場合、その文書は業

務実施者の考慮において有用な出発点となる場合がある。そのような文書がない場合、業務実施

者は作成者に質問することで企業のプロセスを理解できることがある。企業がEER報告の内容を決

定するために適切なプロセスを実施していない場合、業務実施者は、このことが保証業務の前提

条件が全て満たされているわけではないことを示唆しているかを考慮する必要がある場合がある

(第122項及び第123項参照)。

139.一部のEERフレームワークは、EER報告の目的を確立し、想定利用者を識別している。その他は、

これらを指定せず、企業に判断を委ねている。

140.EERフレームワークが作成者によって使用されている場合、業務実施者は、EERフレームワーク

に含まれる目的適合性を有する報告事項を識別するための考慮事項について、指示がある場合は

それを考慮できる。

設例

国連ビジネスと人権に関する指導原則に従って人権について報告する場合、含めるべき報

告事項は、企業に対するリスクのみではなく、企業の活動によって影響を受ける人々に対す

るリスクにも主眼を置く。

例えばSASB概念的枠組みなど、一部のEERフレームワークは、企業に財務リスクをもたらす

可能性のある事項を、目的適合性があると解釈する。他のEERフレームワークは、組織が経済、

環境又は社会に与える影響に何が関連するかについての考慮に焦点を当てている。例えば、

グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)は、「マテリアルな項目」とは、組織

が経済、環境、社会に与える著しい影響を反映する項目又は利害関係者の評価や意思決定に

実質的な影響を及ぼす項目であるとしている。

- 35 -

141.第142項から第150項では、業務実施者がEER報告の目的(ステップ1a)と想定利用者(ステップ

1b)をどのように考慮するかについての詳細なガイダンスを提供している。より一般的な、業務

実施者の規準の考慮及び内部統制のシステムに関連するさらなる考慮事項は、それぞれ、第5章

及び第6章に記載している。

《5.ステップ1a:作成者が EER 情報の目的をどのように識別したかを考慮する》

142.作成者の目的は、単一又は複数の想定利用者に、主題に関する確実な情報を報告することであ

る。EER情報の目的の幾つかの例には、以下を報告することが含まれる場合がある。

・ 自然環境に対する企業の影響

・ 一定期間にわたる企業の活動と企業の目的に対する貢献の方法

・ 企業価値創造の手法

・ 企業の将来の活動計画又は将来のパフォーマンスについての意図

143.業務実施者は、EER情報を報告する目的を、作成者が下した判断について考慮する際の背景と

して考える場合がある。

《6.ステップ 1b:作成者が EER 情報の想定利用者をどのように識別したかを考慮する》

144.業務実施者は、EER情報に基づいて、又はEER情報に影響されて想定利用者が下し得る意思決定

の一般的な性質について、作成者が理解し、その理解した内容を文書化したかどうかを考慮する

場合がある。

145.想定利用者と利害関係者は区別される。企業の利害関係者は、以下の可能性がある。

・ 企業と関係及び相互作用を有する。

・ 企業の活動によって直接的又は間接的に影響を受ける。

なお、利害関係者と想定利用者が同じでない状況がある。利害関係者が想定利用者ではない場

合、彼らの関心は、想定利用者である他の当事者によって考慮される場合がある。想定利用者が多

様である場合、EER報告書に関して正当な関心を有する利害関係者が報告書を利用しないと想定さ

れるという理由だけで、彼らの情報ニーズを満たす報告事項についての情報が他の想定利用者に

関連がないと推測されるべきではない。

設例

会社の製造サプライチェーンに関係する児童労働の被害者(利害関係者)は、おそらく会社

の報告書を読む立場にはないが、彼らの利害は、児童労働反対のキャンペーンを行い、その立

場に基づき、会社の顧客に影響を与える慈善団体、政治家又はロビイスト(代理人)によって

代表される場合がある。

146.EER情報の利用者は、単一である場合もあれば、異なる情報ニーズを持つ可能性のある複数の

想定利用者である場合もある。EER情報は、個々の想定利用者のニーズに焦点を当てることはでき

ないが、作成者は、想定利用者を構成する個人がどのような領域に共通の情報ニーズを持ってい

るかを考慮する必要がある場合がある。

147.保証実3000のA17項には、多数の利用者が見込まれる状況では、想定利用者を、「重要かつ共通

- 36 -

の関心を持った主要な利害関係者」に限定する必要がある場合があるなど、幾つかの更なるガイ

ダンスが含まれる。これは、EERフレームワークの特定の要求事項に従い、想定利用者を指定せず

に、社会全体の利益のためにEER情報を公開するときに、役立つ可能性がある。

148.想定利用者が異なれば、情報のニーズや考え方も異なる可能性がある。ある想定利用者に関連

するものは、別の想定利用者には関連しない場合がある。

設例

国立病院がその臨床パフォーマンスについて作成したEER報告書には、以下を含む利用者が

想定される。

(1) 市民に適切な医療が提供されているかどうか、また資源が効率的に利用されているかど

うかを知る必要がある政府

(2) 病院が疾病の管理において自らの役割を果たし、地域社会に医療を提供できているかど

うか、また臨床的に安全かどうかを知りたい(現在又は将来の)患者、一般市民及びより広

範な社会

(3) 病院は癌を患う患者を効果的に治療する能力を有しているかどうかについて個人的関心

を有している癌患者

上の例では、(1)(2)は想定利用者となり得るが、(3)の個人患者は、(2)の患者になり得るこ

とはあっても、その人個人では想定利用者ではない場合がある。

149.EER情報を読むだけでも(その結果、報告された情報に基づいて行動を起こさないと決定した

場合でも)想定利用者はEER情報を有効に利用していると言える。つまり、想定利用者は、そのEER

情報に対して、その結論に達するための正当なニーズを有しており、目的適合性は、想定利用者

が報告された情報に基づいて行動することに左右されるものではない。

150.考えられる利用者グループの例を以下の表に示す。これは網羅的なリストではないが、表内の

グループ、更には企業特有の利用者グループを考慮することで、作成者がEER情報の想定利用者を

どのように識別したかを考慮する際の出発点とみなすことができる。

- 37 -

図8 利用者グループと意思決定のニーズ

《7.ステップ2:EER 情報に含める報告事項の選択の考慮》

151.業務実施者は、作成者が目的適合性を有する報告事項をどのように識別したかを考慮する場合

がある。作成者は、利用したEERフレームワーク、EER報告の目的及び想定利用者を考慮し、当初報

告事項の候補の多くをリスト化した一覧をフィルタリングして業務の状況に関連するものに絞り

込み、複数の段階に分けて、関連する報告事項を識別していると考えられる。

《(1) 想定利用者の関心の考慮》

152.報告事項の目的適合性を考慮する際、一つのアプローチは、想定利用者が関心を持っているか

どうかを直接考慮することである。

153.想定利用者が関心を持つ可能性のある状況の例には、以下のような事項がある。

・ 投資家に企業の株式を売買させる可能性がある。

・ 企業の株価や企業価値を変える可能性がある。

・ 報道対象となった、又は開示された場合に、地域、国内又は全世界において、メディアの注目

を集める可能性がある。

・ 多数の苦情を受けている(例えば、顧客、供給業者又はその他の利害関係者など)。

・ 複数の利害関係者が自発的に言及している。

・ 高い水準の広範な社会的関心又は高い水準の市民感情の対象となっている。

設例

一部の状況における幾つかの例には、人権問題、報告されている企業の汚職への関与、事業

活動の管轄区域で支払われた税額及び役員報酬が含まれる。

・ 同業者及び競合他社によって広く報告される可能性のある事項に関連する。

・ 組織とその利害関係者にとって戦略的に重要な法令等、国際協定又は自主協定の(非)遵守に

- 38 -

関連する。

《(2) 「マテリアリティ」の考慮》

154.想定利用者が関心を持つものを直接識別することによって目的適合性を十分に評価できない場

合、代替的又は補完的なアプローチとして、報告事項に関する候補の重要性を考慮することが挙

げられる。EER情報を報告する目的に応じて、報告事項に関する候補の重要性は、戦略的目標の達

成における企業の業績又は外部への影響に基づいて考慮される場合がある。このアプローチは、

「マテリアリティ」の考慮と称されることがある。

155.外部への影響には、EER情報の目的に関連して適切な個人、組織、より広範な社会又は環境への

影響が含まれる可能性がある。影響は、報告企業の経営者の行動及び意思決定により直接的に、

報告企業の関係を通じて間接的に、又は報告企業の外部から直接的若しくは間接的に、発生する

可能性がある(第9章参照)。

設例

企業は、定期的に大量の汚染物質を河川に放出することに責任を負う場合がある。環境へ

の直接的な影響、場合によっては漁業や水供給のために川を使用している地域社会への影響

があるかもしれない。また、浄化活動のコストや当局からの罰金などの直接的な影響のみな

らず、環境破壊に対する企業の姿勢に不満を持つ顧客からの収入の喪失を通じた間接的な影

響が、企業自身に対して生じる可能性がある。

156.予想される影響を考慮する場合、その目的適合性を高める可能性のある状況には以下の例が含

まれる。

・ 企業にとって重大なリスク又は機会がある(評判を含む、又は企業の操業許可に影響する。)。

・ 直接的に重要な財務上の影響がある(財務諸表の重要性の閾値によって決定される。)。

・ 企業の経営成績に大きな影響を与えるか、又は与える可能性がある。

・ 他の企業の事業又は活動に大きな影響を与えるか、又は与える可能性がある。

・ 天然資源又は環境に重大な直接的な損害をもたらすか、又はもたらす可能性がある。

・ 企業が競争力を高めるための戦略的機会に関連している。

・ 企業又はその利害関係者の主要な組織の価値観、方針、戦略、運用管理システム、目的及び目

標に関連している。

《(3) その他の考慮事項》

157.一部の作成者は、EER報告の目的に関連して、「想定利用者にとっての関心」があり、「影響」

がある報告事項の分析結果を分布図に表示する。このような分布図は、報告事項ごとに、「想定利

用者にとっての関心」と「影響」を二つの基軸として報告事項の位置を表示する。

158.このような報告事項を各軸に対して位置付ける際に行われる判断は、各報告事項が存在又は発

生する可能性と、各報告事項が存在又は発生した際の「想定利用者にとっての関心」又は「影響」

の観点からのそれらの重要度の両方を考慮することにより影響を受ける可能性がある。潜在的な

目的適合性に対し、存在又は発生する可能性とそれらの重要度の複合的な影響を検討する場合、

- 39 -

存在又は発生する可能性と重要度の別個の軸に対して報告事項を位置付けるグラフで表示できる。

・ ある事項の発生が実質的に確実又は事実である場合、その発生する可能性は最大レベルにあ

り、その重要度のみが変数となる。

・ 発生可能性の評価では、その事項が企業又は経営者の管理下にあるか、そうでないかを考慮

する場合がある。

159.影響又は目的適合性の観点から考慮される期間も、しばしば重要な考慮事項である。

設例

これを説明する例として、低地の沿岸地域に工場を所有している企業を挙げる。海面上昇

によって、工場の敷地が5年後に使用できなくなることが予想される。

今後5年間は物理的な影響はないかもしれないが、この情報は、投資の価格に織り込まれ

る可能性が高いため、利用者が企業に短期的な関心を持っているか(例えば、3年間投資予定

の投資家)、長期的な関心を持っているか(例えば、工場を担保として償還期限10年で融資を

提供した銀行)にかかわらず、目的に適合する可能性がある。

業務実施者は、情報を含めるに当たり作成者が選択した期間が適切か、及びそのことがEER

情報において十分に開示されているかどうかを考慮する必要がある場合がある。

160.ステークホルダーエンゲージメントは、作成者の報告事項の識別において重要となる可能性が

ある。利害関係者とのオープンな対話は、受動的な交流や既存の報告事項のリストへのコメント

を求めることよりも良い結果をもたらす可能性がある。ただし、利害関係者がプロセスに効果的

に関与できるように、企業とその活動について適切に情報を提供する必要がある場合がある。

161.業務実施者はまた、報告事項を識別するための企業内プロセス及び報告事項を識別する際の規

準が適合しており、適切に適用されてきたか(すなわち、目的適合性があり、完全で、信頼でき、

中立的で、かつ理解可能なEER情報がもたらされたか。)どうかを考慮する際に、以下の情報源の

幾つかも考慮することが考えられる。

内部情報源には以下が含まれる。

・ 経営者及びガバナンスに責任を有する者との協議

・ 企業が発行した以前の報告書

・ 取締役会又は上級経営者の会議及び委員会の議題及び議事録

・ リスク評価

・ 企業が作成した戦略文書

・ 内部告発者の報告書

・ 社内又は社外顧問弁護士からの連絡

外部情報源には以下が含まれる(第6章及び第8章参照)。

・ 同業者や競合他社が発行した報告書

・ 企業、同業者又は業界の調査結果

・ 供給業者/顧客の苦情

・ 利害関係者へのインタビュー、アウトリーチ活動、ステークホルダーエンゲージメント

- 40 -

・ ウェブサイト及びソーシャルメディアの検索

・ 世界のメガトレンドに関する専門家の見解

・ SDGs(国連の持続可能な開発目標)

・ 規制機関の報告要求事項

《8.複数で目的適合性を有する報告事項の考慮》

162.作成者は、報告事項を識別するプロセスの一環で、例えば一つ又は複数の報告事項が相互に関

連している場合があるため、個別に目的に適合する報告事項と、他の報告事項と合わさった場合

に目的に適合する報告事項の両方を考慮することが適切な場合がある。

設例

退職する従業員に関する情報は、それ自体では目的適合性がなく、数人の顧客からの苦情

や供給業者二社との契約の終了に関する情報も目的適合性はないかもしれない。しかしなが

ら、これらの複数の事象に関する情報が組み合わさると、相互に関連していることが判明し、

企業の経営者に深刻な問題があることを示している場合は、それらの事象に関する情報は、

経営者の問題に関連して目的に適合している可能性がある。

《9.報告事項を識別するための企業内プロセスの開示》

163.プロセスの開示がEERフレームワークで要求されていない場合でも、想定利用者は、作成者が

報告事項を識別するために行ったプロセスを理解することが有用であると判断する場合がある。

したがって、業務実施者は、EER情報に含まれた内容と除外された内容の詳細を記載し、報告事項

を識別するためのプロセスの詳細を報告書又はウェブサイトなどの他の場所で開示するよう作成

者に促すことが適切であると考える場合がある。

164.報告事項を識別するための企業内プロセスが開示されているかどうかに関係なく、報告事項を

識別するための規準は、他の適用される規準とともに、想定利用者が利用できるようにする必要

がある(第5章及び第221項参照)。

《第5章 規準の適合性及び利用可能性の決定》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

165.本章では、規準が業務の状況に適合しているかどうかを判断する際に、EER保証業務の計画段

階において関連するガイダンスを業務実施者に提供する(第24項(2)②及び保証実3000第41項参

照)。本章のガイダンスは、前提条件が満たされているかどうかを業務実施者が判断する場面に

おいて、規準の適合性と利用可能性を検討する際に役立つ場合もある(第3章参照)。本ガイダン

スは、以下の場合に特に関連性がある。

・ 利用可能な枠組みとなる規準は適合していると推定できないため、かかる規準が制度として

確立された規準ではなく、また法令等によって定められたものでもない(保証実3000のA48項参

照)。

・ 枠組みが抽象的な原則を定めているが、それらの原則が、適合する規準を構成する上で十分に

- 41 -

表現されていない。

166.業務実施者はまた、企業独自の規準又は前項の一定の枠組みから選択した規準を考慮する必要

がある場合がある。企業が独自の規準を開発したか、前項の一定の枠組みから選択した場合、そ

の適合性についての業務実施者の判断はより広範囲に及ぶ可能性があり、経営者が下した判断に

おける経営者の主観や偏向の余地を考慮する必要がある場合がある。

167.この判断を行う際、業務実施者は前提条件が満たされているかどうかを判断するに当たり、保

証業務契約の新規の締結又は更新の際に、規準の適合性についての検討を重ねる(第3章を参照)。

168.本章は、また、業務実施者に対し、企業独自の規準又は複数の利用可能な一定の枠組みから選

択された規準が含まれる場合に、当該規準をEER情報の想定利用者が利用できるかどうかを検討す

る際のガイダンスを提供する。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

169.保証実3000第12項(2)の定義では、規準は「主題を測定又は評価するための一定の基準となるも

のをいう」とされている。そのため、EERフレームワークには、例えば以下が含まれる。

・ 報告する事項についての方向性

・ 報告する指標又はその他の事項に関する定義

・ 使用する測定又は評価の基礎及びその他の報告方針(表示及び開示の方針を含む。)

これら全てを併せたものが、EER情報の作成の全体的な基礎となる。

170.制度として確立された規準には、想定利用者の情報ニーズに関連する場合、透明性のある正当

な手続を通じて権限のある、又は認められた専門家団体によって公表された規準が含まれる(保

証実3000のA48項参照)。財務報告の基準は通常、制度として確立された規準であり、それらに組

み込まれている認識、測定、表示及び開示の基準は、企業が適用する会計方針の基礎である。財務

報告の基準と比較して、EERフレームワークは、多くの場合、以下についての指示が少ない。

・ 報告される内容を識別するために利用する規準

・ 報告される内容を測定又は評価し、開示する方法(すなわち、主題に規準を適用する方法につ

いて)

171.保証実3000第12項(2)で「規準」と称される特定のEER保証業務で使用される規準は、EERフレー

ムワークか、企業が独自に開発するか、又はそれらが組み合わされる。制度として確立された規

準(保証実3000のA48項参照)は、その開発において透明かつ包括的な正当な手続を経ており、反

証がない限り、適合している可能性が高い。企業が制度として確立された規準に従っている場合、

業務実施者は、規準が適合していないという反証があるかどうかを検討することがある。

172.必要となる詳細さを欠いている、又はそれ自体で適合する規準を構成するには十分に包括的で

ないEERフレームワークを適用する場合、企業は、他の利用可能な一つ以上のEERフレームワーク

から規準を選択するか、又は独自に企業が開発した規準を使用することもできる。

173.企業が複数の利用可能な枠組みの多様な選択肢の中から規準を選択する場合において、選択さ

れた規準が期間ごと及び企業間の比較可能性を欠いているときには十分に目的適合性がないこと

がある(ただし、場合によっては、短期間の比較可能性の欠如より、企業が独自の意思決定のため

にEER情報を使用する場合にEER情報について透明性の高い報告をすることの方が重要な場合があ

- 42 -

る)。さらに、枠組みの部分的な採用又は企業による規準の開発は、企業の主観又は偏向をもたら

す可能性がある。また、特に主題が複雑な場合、規準も複雑になる可能性がある。複雑さは、主題

が適正かどうか、又は業務実施者の利用する専門家の業務を利用するかどうかについての業務実

施者の判断に影響を与える可能性がある(第1章参照)。そのような主観性又は複雑さは、また、

EER保証業務におけるそのような規準の適合性を判断する際に業務実施者が職業的専門家として

の判断を行い、職業的専門家としての懐疑心を保持する必要性を高める可能性があり(第2章参

照)、結果として、業務実施者はより広範な、又は困難な判断をすることになる場合がある。

《3.規準の適合性及び利用可能性の判断》

《(1) はじめに》

174.適合する規準は、職業的専門家としての判断に基づき、主題について合理的に、首尾一貫した

測定又は評価を実施するために必要である(保証実3000のA11項参照)。適合性は、業務状況との

関連で判断される。適合する規準がなければ、主題情報に関する結論は個人的な解釈に委ねられ

る可能性があり、主題情報が想定利用者にとって役に立たない、又は想定利用者に誤解を生じさ

せるリスクが高まる。

175.適合する規準の五つの特性の説明(保証実3000のA44項参照)は、それらの特性を持つ規準を適

用した結果生じる主題情報の属性を述べている(第180項から第200項参照)。それぞれの特性を示

す必要があるが、それぞれの特性の相対的な重要性と、個々の規準によってそれらが示される程

度は、業務状況によって異なる。

176.適合する規準の特性に加えて、企業によって開発された規準は、それを適用することによって

測定又は評価された主題情報が想定利用者に誤解を生じさせることになる場合には、適合する規

準とはいえないという包括的な原則がある(保証実3000のA49項参照)。

設例

例えば、規準をゲームのルールに似たものと考えるなど、日常生活との関連で規準を検討

することが役立つかもしれない。プレーヤーがゲームで遊ぶ方法を理解できるように彼らに

とって有用なものとなるためには、ルールがゲームに関連しており(目的適合性)、別のゲー

ムの遊ぶ方法などの余分な情報が含まれていない必要がある。様々なプレーヤーが一貫した

方法でゲームを遊ぶことができるよう、ルールは再現性があり(信頼性)、プレーヤーに質問

の余地を残さないように、必要な全てのルールが含まれており(完全性)、それらは主観的で

なく、恣意的に変更されることもなく(中立性)、プレーヤー、また該当する場合には審判員

が理解できるように明瞭で、曖昧さがない(理解可能性)ことが必要である。さらに、ルール

は、ユーザーがゲームの遊ぶ方法を理解するためにアクセスできるように、利用可能である

必要がある。

《(2) 業務実施者の考慮事項》

177.次の図は、規準の適合性と利用可能性を決定する際の、業務実施者の考慮事項を示している。

- 43 -

図9 規準の適合性及び利用可能性の検討

《(3) EER フレームワークが要求する EER 情報の定性的な特性》(第 10 章参照)

178.適用される規準が制度として確立された規準ではなく法令等によっても規定されていない場合

又は一定の基準に抽象的な原則が含まれているがそれらの原則が適合する規準を構成するには十

分表現されていない場合、業務実施者は、それらの規準に、要求されるEER情報の定性的特性がど

の程度含まれているか、また含まれている場合、それらの規準は、保証実3000のA44項に記載され

た適合する規準の特性とどのように比較できるかを検討することが有用と考えることがある。

179.EERフレームワークは、保証実3000で要求される適合する規準の特性とは異なる、又はより具体

的な、適用される規準の特性を黙示的又は明示的に要求する場合がある。EERフレームワークにそ

のような追加の、又はより具体的な規準の特性が含まれている場合でも、適用される規準は、要

求されている適合する規準の五つの特性をそれぞれ示す必要がある。例えば、EERフレームワーク

が、比較可能性や簡潔さなどのEER情報の特性を要求する場合(第195項及び第200項参照)、それ

ぞれの規準は、目的適合性及び理解可能性のより具体的な側面である特性を要求している。すな

わち、保証実3000のA44項に記載されている適合する規準の特性に「関連付ける」ことができると

みなされ、又は保証実3000に定められる五つの特性に対して追加的な特性と認識される場合があ

る。業務実施者は、保証実3000で要求される特性を、適合する規準の異なる特性で代替することは

できない。

《(4) 適合する規準の特徴》

《目的適合性》(保証実3000のA44項(1)参照)

180.目的適合性は利用者の意思決定に関連しているため、業務実施者は、例えば以下の手続を行い、

想定利用者とその情報ニーズについて検討することがある(第3章及び第144項から第153項参照)。

(1) 企業が以下を行ったかどうか、もし行ったのであればその程度を検討

- 44 -

① EER情報の目的に基づいて想定利用者が行うと予想される一般的な決定事項を考慮

② 主題又は主題の様々な側面を識別し、測定又は評価し、それらについて開示する際に適用

される規準によって、EER情報の目的に関連して想定利用者の意思決定を支援する主題情報が

もたらされるかどうかを考慮

(2) 企業が上記(1)の事項を考慮した場合、それらの事項に関する企業の結論を評価

(3) 企業が上記(1)の事項を考慮していない場合、企業に検討を依頼し、必要に応じて、業務実施

者が(1)の問題に直接対応できると合理的に期待できるかどうかを検討

設例

人事関連事項について株主に報告する企業は、法令等によって要求される事項の報告にと

どまっている場合がある。

想定利用者に労働組合又は企業の従業員が含まれる場合、企業は、性別による賃金格差の

報告、労働組合や従業員の関心が高いと思われるジェンダーの多様性、研修、安全・衛生事故

といった事項の報告、またそれらの事項の測定又は評価方法の報告を要求する規準を利用す

ることが適切とみなす場合がある。

統合報告書で人事関連事項を報告するための規準は、企業の人事戦略や、それが全体的な

ビジネス戦略とどのように関連し、組織内での価値創造にどのように貢献するかといった事

項について報告することを要求する場合がある。

規準が業務の特定の状況において目的に適合しているかどうかは、判断の問題である。

181.企業が独自に開発した規準が、想定利用者及びガバナンスに責任を有する者の両方から直接意

見を取り込む厳格な内部プロセスによるものである場合は、そのようなプロセスを経ず、また想

定利用者やガバナンスに責任を有する者の意見を取り入れることなく企業が開発した場合に比べ

て、目的適合性がある可能性が高い(第4章参照)。

182.規準の目的適合性(結果として得られる主題情報が想定利用者の意思決定に役立つかどうか。)

は、業務状況に規準を適用する際の測定又は評価に関する固有の不確実性の水準による影響を受

ける可能性がある。主題情報が測定又は評価に関する高い固有の不確実性の影響を受ける場合、

関連する規準は、不確実性の性質と程度に関する追加の補足情報を要求する場合にのみ目的適合

性を有する可能性がある。主題が測定の不確実性の影響を強く受ける状況では、表示される情報

において不確実性の性質と程度が明確になるように、表示及び開示の規準が比較的より重要とな

る可能性がある。第191項の「精度」の説明及び第9章の第319項から第322項記載される測定の不

確実性についての更なる考察も参考になる。

設例

多様な顧客基盤の間での小売業者の評判に関する情報は、投資家の投資における意思決定

に役立つ可能性がある。会社は、例えば顧客アンケートを使用して、会社の評判に対する顧客

の認識を測定するための規準を開発する場合がある。結果として得られる測定値は、顧客の

一部がアンケートの対象となるため、一定程度の固有の不確実性を反映している可能性が高

い。測定の不確実性の性質と水準に関する情報が開示されていない場合、投資家は、アンケー

ト結果が意思決定を支援する上で十分に有用とは考えない場合がある。このような状況では、

- 45 -

規準は目的に適合しない可能性がある。規準が、アンケートが行われた状況(例えば、総顧客

数に対するサンプルの割合)についての情報を投資家に与えることを要求した場合、規準の

目的適合性は高くなる可能性がある。

183.業務実施者は、規準の目的適合性、及び虚偽表示の重要性の検討について、影響を与える可能

性があることから、情報を集約又は細分化する規準の要求事項を検討する場合もある。EERフレー

ムワークは、集約又は細分化の要求水準を常に詳細に指定しているわけではない。しかしながら、

EERフレームワークには、特定の状況において適切な集約又は細分化の水準を判断するための原則

が含まれる場合がある。

184.規準は、企業の業界又はセクターにおいて適切であると一般に認識されている規準に整合して

いる場合、より目的適合性がある場合がある。ただし、例えば、企業が、同様に信頼性が高く、EER

報告書に含めることによって利用者がより利用可能となる目的適合性のある規準を開発できる場

合には、前述の規準を使用しない正当な理由があると考えられる。

185.業務実施者は、それが機密情報であるとか、企業の評判を損なう可能性があるという理由で、

EER主題情報に関する情報の非開示を認める規準を検討する場合もある。このような規準は、特定

の状況では十分に目的適合性があり網羅的であるとみなされる場合があるが、十分に目的適合性

がない、又は網羅的でない可能性もある。例えば、確立された一定の枠組みは、開示による悪影響

が、公共の利益を上回ると合理的に予想されるような非常にまれな状況では、非開示を認める場

合がある。また、実際に違法な又は違法性が疑われる行為に対する捜査を害する可能性のある情

報など、法令等がそのような情報の公表を排除する場合である。そのような規準は、反証がない

限り、適合しているとみなされる場合がある。

186.適用される規準が機密情報の非開示を認めない場合、通常、そのような非開示は虚偽表示とし

て取り扱われ、かかる虚偽表示の重要性が保証報告書への影響と合わせて考慮される(第9章参

照)。

《完全性》(保証実3000のA44項(2)参照)

187.企業の状況及びEER報告書の目的において重要な(重要性については第9章参照)関連要因(報

告事項を含む。)を省略していない主題情報を入手することにより、想定利用者が意思決定を行

えるように、規準は完全性を備えている必要がある。

188.主題情報がEER報告書全体の一部にすぎない場合(EER保証業務の範囲が一定期間ごとに段階的

に拡大する場合を含む。)又はローリングプログラムの一部である場合(第3章参照)、完全性は

特定の保証業務の範囲内で、主題情報又は主題情報の様々な側面との関連で考慮される。

設例

1年目に、企業は自社製品の製造で消費されるエネルギーに占める「グリーンエネルギー」

の割合について報告し、業務実施者に保証業務を依頼する。2年目に、企業は報告を拡大し、

企業が購入し、自社製品の製造で使用する原材料において主要供給業者が使用するエネルギ

ーに占めるグリーンエネルギーの割合を含める。企業は、拡大した範囲について業務実施者

に保証業務を依頼する。

- 46 -

1年目は、特に、指標の対象とする製造設備と製品の特定、「グリーンエネルギー」と「総

エネルギー」の定義、消費されたグリーンエネルギーの測定方法、消費された総エネルギーの

測定方法、指標の測定単位並びに表示及び開示の規準が含まれている場合、その規準は完全

性を備えている場合がある。

しかし2年目には、1年目の規準は、「主要供給業者」、「購入した原材料」の定義又は供

給業者がどの施設を含めたかなどの事項に対応していないため、完全性を備えた規準ではな

くなる。2年目には、規準の完全性は、業務の契約締結前に、より広い保証業務の範囲におい

て判断される。

189.完全性を備えた規準を適用することによって、報告内容の否定的な情報を含めた全ての関連す

る要素を含む主題情報が得られると期待される(第194項から第197項参照)。

設例

モバイルデータ通信技術を有する大手製造業者は、毎年サステナビリティ報告書を発行し

ており、報告書全体の保証を受けている。この報告書は、主に会社の株主を想定利用者として

いるが、他の利害関係者のための情報に関する特定の側面も含んでいる。同社は、報告の基礎

として、枠組みとなる規準を使用しているが、同社の特定の状況に適合した規準も開発して

いる。

同社は最近、人の健康への影響に対する深刻な懸念に起因して、新世代モバイルデータ通

信の分野で大打撃を被った。製造と装置の設置の停止を余儀なくされ、多くの重要な契約を

失った。同社は、現在、多くの人口密度の高い主要都市を中心に鉄塔を設置している。鉄塔は

稼働しているものの安全性は調査中である。同社は、財務諸表においてこれらの事項の財務

的影響を適切に開示し、説明しているが、サステナビリティ報告書ではこれらについて言及

していない。

会社、供給業者、顧客、そして地域社会に明らかに重大な影響を与える可能性のある情報の

報告を要求しない規準は、枠組みとなる規準であっても企業が開発した規準であっても、こ

の状況では完全性を備えた規準とはいえない。

●◎

190.EER報告書は、過度に包括的であることと、理解可能な程度に簡潔であることとの間で均衡を

取る必要がある。

《信頼性》(保証実3000のA44項(3)参照)

191.信頼性のある規準は、主題の測定又は評価を合理的かつ首尾一貫して行うことを可能にする。

測定又は評価は、業務状況において目的適合性を有するために必要な程度の精度で実施できる(す

なわち、異なる業務実施者が同様の状況で使用した場合、合理的で整合した結果が得られる。)場

合、合理的で整合している。

設例

企業は、市場シェアを報告することを選択する場合がある。経営者は、自社の売上データ及

- 47 -

び業界セクターの外部データ(主要な競合他社の財務諸表を含む。)を用いて情報を計算する

ために自社が開発した手法を用いる。計算には見積りと仮定が含まれるため、完全に正確と

はなり得ない。しかし、その手法によって、目的適合性を有するのに必要な程度の正確な情報

が得られ、それによって会社の市場シェアを公平に開示することができる場合、業務実施者

は、その手法は信頼性のある規準であると結論付けることができる。その手法は規準を構成

するため、想定利用者に対し規準を利用できるように開示される必要がある。

192.信頼性のある規準は、主題について、合理的に整合した測定又は評価が可能となり、合理的に

整合した主題情報が得られるように、曖昧さのない定義に基づく必要があると考えられる。

193.信頼性のある規準は、通常、主題情報の内容を裏付けるために十分かつ適切な証拠を得ること

を可能にするため、保証業務の対象となり得る主題情報が入手できることが期待される。

《中立性》(保証実3000のA44項(4)参照)

194.中立的な規準は、通常、報告される主題について有利な側面と不利な側面の両方を偏りのない

方法で扱うよう策定されている。主題情報の解釈において想定利用者に誤解を生じさせる可能性

がある場合、その規準は中立的な規準とはいえない。

設例

従業員調査の結果について、中立的な規準では、「最良」の結果のみを選択的に報告するの

ではなく、肯定的な回答のある質問と否定的な回答のある質問の両方の結果を報告する必要

がある。加えて、規準では、調査の質問の構成やどのような質問がされたかを指定する必要が

あることがある。これらの側面も、調査結果が主題を中立的に表示するかどうかに影響を与

える可能性があるためである。

195.業績の否定的な側面を取り除くために、報告期間ごとに規準が恣意的に変更又は修正された場

合、規準は中立的ではない。そのような行為は、規準の目的適合性の側面の一つである比較可能

性の原則にも整合していない。

196.規準が表示及び開示に関して扱わない場合、そのような情報の表示又は開示方法に偏向が入り

込む余地がある場合がある。

設例

グラフの軸にグラデーションを使用すると、増加又は減少が実際よりも目立たなくなり、

曲線が「平坦化」される場合がある。

規準では、グラフを使用すべきかどうか、又はどのようなグラデーションを使用すべきか

を指定しなくてもよいが、結果として得られる主題情報が誤解を生じさせるものにならない

ように、表示の原則を企業が定める必要があることがある。

●◎

- 48 -

197.業務実施者は、企業が開発する規準の中立性を判断する際は特に慎重になる必要がある。また、

経営者の偏向という内在的なリスクがあるため、職業的専門家としての懐疑心を保持する必要が

ある。

《理解可能性》(保証実3000のA44項(5)参照)

198.理解可能な規準により、通常、想定利用者が要点を容易に識別し、それらが利用者の意思決定

上、重要であるかを適切に推測できるような主題情報が得られる。要点が効果的にまとめられ、

それらが見分けやすいよう、主題情報が明瞭に配置され、表示されていればより良い。

199.理解可能な規準により、EER報告書は理路整然として、把握しやすく、明瞭かつ論理的になる。

200.規準は、十分に目的適合性があることと、理解可能であることとの均衡をとる必要があると考

えられる。例えば、規準は、主題情報が、想定利用者による意思決定を支援する上で十分に詳細な

水準にある(目的適合性)と同時に、利用者が理解可能なように十分に簡潔である(理解可能性)

ことを要求することがある。

《4.規準を開発するプロセスの検討》

《(1) 規準の開発方法の検討》

201.規準がどのように開発されるかは、それらが制度として確立された規準であるか企業独自の規

準であるかにかかわらず、業務実施者がその適合性を判断するために実施する作業に影響を与え

る可能性がある。規準の適合性を判断するために業務実施者が実施しようとしている作業の性質

と範囲を検討する際に、業務実施者が、枠組みの設定者又は企業が経たプロセス、例えば、そのプ

ロセスがEER報告書の目的といった問題をどの程度扱っているか、プロセスは透明か、ステークホ

ルダーエンゲージメントが伴っているかなどを検討することが有用な場合がある。

《(2) 制度として確立された規準》

202.制度として確立された規準が適合していない可能性を示す兆候が存在する場合、業務実施者は、

規準が適合していると推定することはできず、それらの兆候の影響を考慮して、規準が適合して

いるかどうかを検討するために追加の作業を実施する必要があることがある。

設例

医療規制当局は、全ての病院に対して毎年業績を報告することを義務付けている。透明性

のある正当な手続を経て規制当局が開発した規準は、その時点で施行されている医療に対す

る規制の要求事項を満たすことを目的としている。それらの規準には、各病院による複数の

指標の報告に関する規準並びに「決して起こってはならない事象」及び病院の改善計画に関

する定性的説明が含まれている。ただし、「決して起こってはならない事象」の定義は曖昧で

あり、指標の一つに関する規準は次のようになっている。「入院治療から退院後7日以内に経

過観察又は追加の適切な治療を受けた患者の割合」

規制当局は透明性のある正当な手続を経て規準を開発しているが、現状では規準には適合

していない。例えば、「決して起こってはならない事象」の定義を明確にする必要があり、当

該指標の規準は、「適切」とは何か、「治療」とは何か、7日は日数で測定されるのか24時間

- 49 -

で測定されるのか、「退院」のトリガーは何か、「入院治療」とは何かを指定していない。ま

た、その指標が当年の報告に含まれる、又は除外される期限(すなわち、その情報が報告期間

に含まれるかどうかを決定するのは退院日か、又は経過観察のための来院日のいずれなの

か。)も指定していない。

203.一般的に使用されている一部のEERフレームワークに含まれる規準は、透明性のある正当な手

続を経て、専門家団体として認知されているグローバル組織によって公表されている。これらの

EERフレームワークによって指定される規準は、ほとんどの場合、想定利用者の情報ニーズに対し

目的適合性を有している。

204.しかしながら、場合によっては、規準を作成するためのそのような組織のプロセスが完全に開

発されていないか、かかる手続によって、適合する規準を構成するために必要な程度の詳細さで

表現されていない抽象的な原則を含んだEERフレームワークが法令等によって規定されることが

ある。詳細さが欠如している程度に応じて、企業は、EER情報の開示を通じて、規準の様々な側面

(例えば、一定の基準における選択肢からどのようなエネルギー指標が選択されたか。)を補足

することがある。しかしながら、枠組みが十分な詳細さを欠いている場合は、その枠組みが適合

していないことを示している可能性がある。その結果、制度として確立された規準が透明性のあ

る正当な手続を経て公表された場合であっても、企業は、自らが開発した追加の規準(又は別の

一定の枠組みから選択された追加の規準)を必要とする場合がある。

《(3) 企業独自の規準と複数の枠組みから選択された規準》

《規準を開発又は選択する企業内プロセスの検討》

205.企業が独自の規準を開発する、又は利用可能な複数の枠組みから規準を選択する場合、企業は、

自らが利用する規準について判断するプロセスを適用する。規準を開発又は選択するためのプロ

セスは、企業の情報システムの一部である(第6章及び第237項参照)。

206.企業が、枠組みを補完するために、別の枠組みを選択した、又は独自の規準を開発した場合、

その企業のプロセスにおいて、枠組みの抽象的な原則がどのように適用されたかを考慮すること

が業務実施者に役立つことがある。

207.企業が、複数の枠組みへの準拠を主張するが、それらの枠組みの要求事項に不整合又は矛盾が

ある場合、それらの異なる枠組みの要求事項を全て適切に適用することはできない。不整合がい

ずれかの枠組みの誤用につながる場合、虚偽表示が発生することになる。そのような場合、業務

実施者は、虚偽表示の重要性と、保証の結論の表明への影響を検討する必要がある(第9章参照)。

《EER保証業務の対象の主題情報がEER報告書全体でない場合の考慮事項》

208.企業が開発した規準を検討する際、業務実施者は、保証業務の対象とする主題情報について企

業が開発した規準だけでなく、保証業務の対象ではないがEER報告書に含まれる情報の作成に利用

した規準の理解が必要になることがある(第278項参照)。EER報告書の一部を対象とするEER保証

業務では、業務実施者の考慮事項は、通常、EER報告書に含まれる全ての情報に対して適合する規

- 50 -

準があるかどうかに着目するのではなく、保証業務の対象に含まれていないが含まれるべきであ

った事項を識別することである。

209.業務実施者は以下の検討が可能である。

(1) EER保証業務の範囲内において主題情報からEER情報の目的適合性を有する部分が欠落してい

る可能性があるかどうか、及びそのような欠落が保証業務の合理的な目的に疑問を生じさせて

いるかどうか。

(2) 主題情報が企業の意思決定のプロセスで利用されるかどうか、及びどのように利用されるか。

なお、これに関連して以下の検討が可能である。

① 企業の意思決定に関連する情報が利害関係者にとって重要である場合、企業がその情報を

自らの意思決定に利用すると期待することが合理的な場合がある。

② 企業が意思決定においてその情報を利用している場合、利用者がその情報に関心を持つ可

能性があると期待することは合理的な場合がある。

③ その情報が企業自体の意思決定に利用されない場合、なぜその情報が報告されているのか、

及びEER保証業務の対象となりやすい部分のみ、又は企業が有利に映る部分のみをEER報告書

の主題情報として選択するといった偏向があったかについて疑義が生じることがある。

《前提条件が満たされないことを示す兆候》

210.業務の新規の締結又は更新後に独自の規準を開発する企業のプロセスを考慮した場合、例えば、

当該特定の業務のために規準が開発されている途中である場合など、企業が主題情報に対して合

理的な基礎を有していないことを示す事項が明らかになることがある。そのような状況では、保

証実3000第42項及び第43項の要求事項が適用される場合がある(第3章参照)。

《5.時の経過に伴う規準の変更の考慮》

211.規準の適合性は、必ずしも規準の成熟度又は規準を適用した企業の経験に関連しているわけで

はない。EER報告書を作成した最初の数年間、企業はEER情報を作成するプロセスを開発及び改善

している途中であり、企業独自の規準(おそらくEERフレームワークを補完する目的の規準)は、

報告期間ごとに変化又は発展していく可能性がある。これに関係なく、業務実施者は、EER情報が

EER保証業務の対象となる都度、規準が適合しているかどうかを判断するために職業的専門家とし

ての判断を行う。

212.EER情報を作成する企業内のプロセスが発展途上であり、経営陣が報告を改善するためにプロ

セスを改善している途上である場合、年度ごとに規準及び測定方法が変更されることが一般的で

ある。変更に対して合理的な基礎があり、EER報告書で十分な開示及び説明がなされている場合に

は、規準は理解可能で信頼できるといえることがある。企業の報告が確立されている場合であれ

ばあるほど、規準を変更する理由はより強いものでなければならず、説明はより詳細である必要

がある。

設例

ある企業は、社会貢献のために衛生に関する地域社会の研修プログラムを実施している。

その企業は、研修プログラムが広められた人数について報告している。報告の初年度に、企業

- 51 -

は、以下の規準に基づいて、広められた人数を推定した。(1)研修プログラムに登録した参加

者の数(登録フォームに記録されている。)に(2)最新の国勢調査データに基づく平均的な家

族の人数を乗じる。同社は、作成の基礎及び推定に含まれる不確実性を開示した。

情報を記録するプロセスの開発に伴い、参加者に以下を尋ねる質問を登録フォームに追加

した。

(1) 参加者又は参加者と同居している家族が以前に研修プログラム又は同様のプログラムに

参加したことがあるか

(2) 何人と一緒に暮らしているか、また、研修プログラムで学んだ内容をそのうち何人と積

極的に話し合ったか。企業は、また、参加及びプログラムの完了を記録するための登録シ

ステムを実施した。

初回の報告に使用された規準はその時点では適合していると判断され、保証のための他

の前提条件も満たされていると判断されたが、追加情報により、企業は規準を更新して次

のことを行うことが可能となった。(1)以前に参加したことがある参加者を二重カウントし

ない。(2)プログラムに登録しているが完了していない人を含めず、プログラム全体に参加

した人だけを数える。(3)広められた人数について最新で不確実性の少ない見積りを取得す

る。

適用された追加情報は、企業が利用する測定方法を改善した。このような場合、測定の改

善が報告された情報に差異が生まれた要因であることを利用者が理解できるように、測定の

基礎の変更を開示することが期待される場合がある。

213.企業が制度として確立された規準を含むEERフレームワークを採用していて、それらの規準を

変更又は調整した結果、企業の属するセクターで一般に使用されている規準と異なった規準を採

用することとなった場合、経営者の偏向の可能性を示す兆候及び結果として得られた主題情報が

想定利用者に誤解を生じさせるものとなるリスクの兆候であることがある。

そのような場合、業務実施者は、規準の適合性を判断し、変更に合理的な基礎があるかどうか、

並びに変更がEER報告書で十分に開示及び説明されているかどうかを検討する際に、職業的専門家

として懐疑心を保持し判断を行う。

214.EER情報が成熟すればするほど又はEERフレームワークを作成する企業内のプロセスが成熟すれ

ばするほど、測定方法や関連する開示に対し企業が行った変更及び同業他社が採用する一般的に

受け入れられている慣行からの逸脱は適切でなくなる可能性が高い。ただし、企業の状況に変化

があった場合又は一般に受け入れられている慣行からの逸脱が必要となる企業の事業に固有の特

性がある場合はこの限りではない。企業は、開発した規準が想定利用者の目的に適合しているこ

とについて想定利用者の了承を得ていることが望ましいことがある。

215.規準は、ある報告期間から次の報告期間にかけて比較可能性を考慮して一貫性がある場合、目

的適合性を有しているといえる場合がある。規準を変更した場合、変更の年に、変更の理由の説

明とともに当該変更が開示されることが期待されることがある。変更の影響に関する情報、例え

ば可能な場合、比較情報の修正再表示も、変更の生じた年に開示されることが期待される場合が

- 52 -

ある。ただし、長期的に目的適合性を向上させるために、一時的に比較可能性を減少させること

が適切となる場合がある(第212項参照)。

《6.規準が利用可能になるかどうかの検討》

216.想定利用者が、主題がどのように測定又は評価されたかを理解できるようにするために、規準

を利用できるようにする必要がある。抽象的な原則のみを有するEERフレームワークの場合、抽象

的な原則を遵守できる方法は多数あるため、想定利用者が自身のニーズが満たされているかどう

かを検討できない、又は、抽象的な原則のみを有する枠組みとなる規準と企業独自の規準の両方

にアクセスすることなくして報告された情報に基づいて意思決定を下すことができない可能性が

高い。

217.保証実3000のA50項及びA51項は、規準を利用可能にする方法を示している。業務実施者は、例

えば規準が想定利用者に対して十分に詳細かつ明瞭に開示されるかを含め、規準が公に利用可能

になるか、又は明瞭な方法で利用可能になるかどうかを検討することがある。

218.企業が開発した規準は、他の規準と同じように、想定利用者にとって利用可能である必要があ

る。そのような規準を開発するためのプロセスを開示する一般的な要求事項はないが、一部の枠

組みでは、少なくともプロセスの一部について、そのような開示を要求している場合がある。例

えば、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)フレームワークでは、ステークホル

ダーエンゲージメントのプロセスに関する開示が必要である。枠組みがそれを要求しない場合で

も、業務実施者は、報告事項を識別するプロセスを含む、企業が開発した規準のプロセスの詳細

を開示するように企業に促すことが適切であると考えることがある(第4章参照)。

219.企業は、例えば、確立された公に利用可能なEERフレームワークを利用している場合、EER報告

書において参照する場合がある。企業独自の規準の場合、企業は、規準と報告方針をEER報告書で

公表するか、EER報告書内で言及されるウェブサイトで公開するかを選択できる。

220.想定利用者が一般的な手段に精通していればいるほど、それらの手段の詳細な説明を提供する

必要性が減る可能性がある。想定利用者は一般的な理解によってそれらを知っている可能性があ

るためである。

設例

企業は、温室効果ガス(GHG)プロトコルに従って測定された温室効果ガス排出量に関し

て、その測定方法をEER報告書にて開示しなくとも想定利用者は理解していると想定でき

る。GHGプロトコルに定められた規準には適切に測定に関する情報が含まれており、GHGプ

ロトコルは公に利用可能だからである。

企業がそのように仮定する場合、企業は、GHGプロトコルに定められた、その状況に関連

するあらゆる規準を適用していることが期待される。

《7.規準が不適切な場合又は利用できない場合》

221.保証業務契約が締結された後、適用される規準の一部又は全部が不適切であるか、又は利用で

きないことが判明した場合、業務実施者は、保証実3000第42項の要求事項に従わなければならず、

これは契約締結のあらゆる前提条件に適用される。そのような状況において、業務実施者は法令

- 53 -

等により業務を中止することを許可されてはいないが、規準が不適切であるか、又は利用できな

い場合、保証実3000第43項によって以下の事項が要求される。

・ 規準が不適切な場合、状況に応じて、限定付結論の表明、否定的結論の表明又は結論の不表明

を選択する。

・ 規準が適切ではあるが、企業が規準を利用可能にすることを望まない場合、状況に応じて保

証報告書に規準を記載する(第412項参照)。

《第6章 主題情報の作成に利用されたプロセス又は主題情報の作成に係る内部統制の考

慮》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

222.本章では業務実施者に、主題情報の作成に利用されたプロセスを考慮する際又は業務に関連す

る主題情報の作成に係る内部統制を理解する際のガイダンスを提供する。本ガイダンスは、主題

情報の作成に関する企業のプロセス及び関連する内部統制が整備の途上にある場合又はそのプロ

セスに外部情報源からのデータ又は情報の入手が伴う場合に特に重要となる。

223.保証実3000により、業務実施者は以下の事項を要求される。

(1) 限定的保証業務において、企業のEER情報作成プロセスを考慮すること(保証実3000第47L項

参照)。

(2) 合理的保証業務において、保証業務に関連する主題情報の作成に係る内部統制を理解するこ

と。これには、保証業務に関連する内部統制のデザインを評価し、これらが適用されているかど

うかの評価を含む(保証実3000第47R項参照)。

224.第3章で考察したとおり、企業のEER情報作成プロセスの性質は、企業が当該情報を合理的な

基礎に基づき作成しているかどうかを判断する際に重要な考慮事項となる場合がある。業務を計

画し実施するに当たり、業務の契約締結後に保証業務の前提条件のうちの一つ又は複数が満たさ

れていないことが明らかになった場合、業務実施者は更に、保証実3000第42項により、対応するこ

とが求められる。業務実施者は、保証実3000第47L項又は第47R項の要求事項を履行する際、主題情

報に対する合理的な基礎を企業が有していない可能性を示す追加情報に気づく場合がある。

225.本章のガイダンスは、保証実3000第47L項又は第47R項及び第42項及び第43項の適用について取

り上げているが、前提条件が満たされているか否かを業務実施者が判断する際にも有用であると

考えられる(第3章参照)。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

226.EER情報を報告する企業は、こうした報告のプロセスがより確立された正式なものとなるに従

って、通常、その報告を支援するための内部統制システムを段階的に変更する。企業のEER情報作

成プロセスは、企業の内部統制システムの情報システムと伝達の構成要素の一部となっている。

227.EER報告のプロセスがより確立されたものとなるに従って、EER情報の作成に関連する企業のプ

ロセスを、特定の統制活動及びより強力なガバナンス・監督の対象とする、又はより正式に企業

のリスク評価プロセス及び内部統制システムの監視プロセスに組み込むよう、変更が加えられて

いく可能性がある。このような発展は、同時進行で進められることが多い。

- 54 -

228.企業は、そのEER情報を作成する際、外部の個人又は組織(「外部情報源」)から入手した情報

を利用する場合がある。企業が、そのような情報の記録、照合及び報告に係る独自のプロセス及

び内部統制を適用し運用することが可能な場合も不可能な場合もある。

229.企業は、EER情報を記録、処理及び報告するために、新しい、又は開発中の技術を利用する場合

がある。例えば、企業は、ドローン技術を利用して遠隔地又は広域地で情報を記録したり、日常的

な取引や事象について自動処理機能を利用したりすることがある。企業は、多様な伝達手段によ

り、利用者の要求に応じてアクセス可能な様々な形式でEER情報を報告する場合もある。

230.第226項から第229項で考察された要因はいずれも、保証業務の契約締結並びに業務実施者によ

る保証手続の立案及び実施(業務契約が締結された場合)の双方に影響を及ぼす可能性がある。

《3.主題情報の作成に利用された企業のプロセス又は主題情報の作成に係る内部統制についての

理解》

231.図10で示すように企業の内部統制システムは、通常、相互に関連する五つの構成要素から成り

立っている2。第232項以下では、統制環境、リスク評価プロセス及び内部統制システムの監視プロ

セスは共に検討されている。図10内で示している項番号は、本章内の項番号と一致する。

図10 内部統制システムの構成要素

《(1) EER 情報作成プロセスのガバナンス及び監督》

232.保証実3000は、主題情報作成プロセスのガバナンス及び監督について特別に対応を示している

訳ではないが、EER情報の作成に関して企業が確立しているガバナンス及び監督の仕組みを考慮す

ることは業務実施者にとって有用である場合がある。EER情報の管理及び報告に関する企業のガバ

2 監査基準報告書 315(2021 年改訂)、「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」の第 11 項(12)に基づく。

- 55 -

ナンスの仕組みは、財務実績の管理及び報告に関するガバナンスの仕組ほどには確立していない

か、又は業務の中に組み込まれていない可能性がある。これは、業務実施者が自らの結論を裏付

けるために必要な証拠を入手することができるかどうかと同様に、企業がEER情報に関する合理的

な基礎を得ているかどうかということに影響を及ぼす可能性がある。

233.企業のリスク評価プロセス及び内部統制システムの監視プロセスを含め、ガバナンス及び監督

の仕組みがどの程度正式なものとして確立しているかは、企業の規模や複雑さ及びEERの主題と規

準の性質や複雑さによって異なる可能性がある。

234.企業のガバナンス及び監督を考える場合、業務実施者が考慮する事項には以下が含まれ得る。

業務実施者の考慮事項

(1) 企業の事業上の意思決定に際して利用されるEER事項の管理及び報告において、高品質で

倫理的な実務を奨励するために、適切な「経営者の姿勢」を示すガバナンスに責任を有する

者又は上級経営者(いずれか適切な者)の存在

(2) EER情報の承認(適切な場合)を含むEER情報作成プロセス全体にわたり、適切な段階で

のガバナンスに責任を有する者及び上級経営者の関与

(3) EER情報作成の監視責任を有するガバナンスに責任を有する者のサブグループ(監査役

等)の設置(大規模な企業の場合)

(4) ガバナンスに責任を有する者又は上級経営者(いずれか適切な者)が下した、取締役会

議事録等の文書に記録された重要な決定

(5) EER情報作成プロセスに係る権限と責任の割り当て及びそのような責任に見合った説明

責任の実施

(6) EER情報の作成に利用されるプロセスに関連するリスクを識別・評価し、これに対処する

ために実施されるプロセス

(7) EER情報の作成又は内部統制システムを監視するために実施されるプロセス。これには、

統制活動の有効性の監視及び不備を識別し改善するプロセスが含まれる。

《(2) 情報システムと伝達》

235.情報システムと伝達の構成要素の精巧さの度合い及び内部統制システムの統制活動の構成要素

(第244項参照)についても、企業の規模や複雑さ並びに主題と規準の性質や複雑さによって異な

る可能性がある。

236.保証実3000のA38項には、「主題情報に重要な虚偽表示がないということについての合理的な基

礎を企業が得るために、広範囲にわたって内部統制に依拠することが必要となる場合がある。」

と記載されている。一方で、状況によっては、広範囲な内部統制が必要とされない場合もある。

237.第226項に記載されているとおり、主題情報の作成を目的とした企業のプロセスは、企業の情

報システムの一部である。業務実施者がEER保証業務を実施するに際して考慮する可能性のある情

報システムと伝達の構成要素に係る方針、プロセス及び資源には以下の(1)から(6)が含まれる。

第235項及び第236項で考察されているとおり、一部の企業では、企業が主題情報に対する合理的

な基礎を得るために、広範囲な内部統制を伴った正式なプロセスが必要になる場合がある。業務

実施者は、内部統制システムの整備水準が業務の状況にふさわしいものであるか否かを結論付け

- 56 -

る際に、企業の規模や複雑さを始めとする業務の状況を検討しなければならない場合がある。第

3章には、前提条件が満たされているか否かを判断するに際してのガイダンスがより詳細に示さ

れている。これらの考慮事項は、業務の状況において適切と考えられるあらゆる側面を一覧とし

て網羅することを意図したものではない。

業務実施者の考慮事項

(1) EER情報で扱われる報告事項を特定する企業のプロセス(該当する場合)を含む、規準の

選択又は策定のプロセス(第4章参照)

(2) 報告事項の測定又は評価(報告事項の表示及び開示を含む。)のための規準の選択又は

策定のプロセス。これには、開示をレビューし、開示が適切かつ網羅的であり、必要な場

合、前回の報告期間以降に行われた規準の変更に関する開示が含まれているか否かをレビ

ューするための規準の選択又は策定のプロセス

(3) 報告事項に関するデータ及び情報(定性的情報を含む。)を取得、記録、処理、修正し、

EER情報に含めるためのプロセス。そのようなプロセスには、レビュー担当者がデータと情

報の正確性と網羅性についてチェックを行い、レビューが実施されたという証跡としてそ

れらを承認する内部検証プロセスが含まれる場合がある。

(4) 外部情報源から入手されるデータ及び情報を選定、入手、レビュー及び監視するプロセ

(5) 報告事項に関連する主題情報の作成を支援するための記録と情報源の文書。これらは、

業務実施者が証拠として利用できるように、万全の状態で保管され、利用可能な状態とな

っていること

(6) 上記事項を支援するための企業のITの利用状況

238.企業の情報システムと伝達においては、データ及び情報を収集又は処理するために、しばしば

ITが利用される。企業は、複雑なITアプリケーション、簡便なスプレッドシートや紙媒体に

よる記録又はこれらの組み合わせを使用する場合がある。EER情報作成のために企業が使用してい

るツールを識別することは、業務実施者が、保証実3000第47L項で要求されるEER情報の作成プロ

セスを考慮する際又は保証実3000第47R項で要求される理解をする際に重要な役割を果たすと考

えられる。企業が複雑なITシステムを使用する場合、業務実施者は、IT専門家(業務実施者の

利用する専門家)による作業を利用するか否かを検討しなければならない可能性がある(第1章

参照)。

《(3) 企業の EER 情報作成プロセスが整備の途上である場合の考慮事項》

239.極めて精緻なプロセス又は充実した内部統制システムを備えていることが、保証業務の前提条

件というわけではないが、企業のEER情報作成プロセスは、主題情報に関する合理的な基礎を企業

に提供できる程度に十分なものでなければならない。業務の状況が複雑ではない場合、そのプロ

セスに係る内部統制は非公式又は比較的簡素なものである可能性がある。主題の複雑さが増すほ

ど、主題情報の作成プロセス及び関連する内部統制も複雑になる場合がある。簡素な内部統制と

不適切な内部統制は別物である。企業とその主題及びその測定又は評価が複雑でなければ、簡素

な内部統制で十分な場合がある。

- 57 -

240.企業がEER報告に関する経験を積むに従って、企業の内部統制システムはより精微なものとな

り、EER情報の記録、処理及び報告に新しい技術が利用される可能性がある。第8章で更に説明す

るとおり、情報を記録し報告する方法は変わる可能性があるが、特定の業務の状況において、企

業のEER情報作成プロセス及び主題情報に係る合理的な基礎を提供するために必要な関連する内

部統制の目的が変わることはない。

《(4) EER 報告プロセスにおいて外部情報源からデータ又は情報を入手する際の考慮事項》

241.企業が外部情報源から入手した情報を利用してEER情報を作成する場合、業務実施者による特

別な考慮が適切な場合がある。外部情報源からの情報の例として、顧客満足度の独自調査結果、

外部情報源によって開発され、企業が気候関連リスクを評価するために利用する気候シナリオ分

析ツール又は公表されている換算係数、指数及びベンチマーク情報の利用が挙げられる。

242.業務実施者にとって重要な検討事項には、外部情報の情報源及び保証水準によっては、その外

部情報源から入手した情報に係るプロセス又は内部統制が含まれる可能性がある。企業が外部情

報源より情報を入手する場合、一例として、企業が、その情報源並びに情報の収集及び処理方法

にアクセスする契約上の権利を有することが考えられる。このほか、企業が、外部情報源に提供

した情報及び外部情報源から提供された情報を監視する独自のプロセス及び内部統制を実施する

ことも考えられる。

243.企業が別の種類の外部情報源からの情報、例えば、比較評価目的で使用される業界データ又は

主題情報の計算や評価に利用される指数や係数を利用している場合、企業は、その情報源の評判、

その情報源から得た情報の信頼性、同様の情報に関する別の情報源が存在するか否か、そしてそ

のような別の利用可能な情報源からの情報との整合性がとれているか否かを検討するための独自

のプロセス及び内部統制を整備している場合がある(第8章参照)。

《(5) 統制活動》

244.業務実施者が合理的保証業務を実施するに当たり、検討し得る統制活動の構成単位となる内

部統制の種類には、例として以下の事項が挙げられる。

業務実施者の考慮事項

(1) EER情報作成プロセスに関与する個人間で、企業の規模に適した範囲で職務の分離を要求

する内部統制。例として、情報の作成者と情報のレビュー担当者の分離が挙げられる。

(2) 業務実施者が証拠として使用するデータ、情報又は文書の根拠となる情報源に、企業が

不適切な変更を加えることを防止する内部統制

(3) 取引、発生事由及び事象を識別し、それらを網羅的、正確かつ適時に記録し、適切に分

類するための内部統制(第7章参照)

(4) 測定機器の保守管理(測定装置が校正されており、不正な変更ができないことの確認等)

に係る内部統制

(5) 関連するITシステムが十分な安全性、堅牢性及び信頼性を備え適切な保守管理を受け

ることを(例えば、物理的及び論理的なアクセスを制限することにより)支援するIT統

制並びにデータのバックアップ及び災害復旧に係る内部統制

- 58 -

(6) 測定又は評価の基礎及びその他の報告方針の策定プロセス又は適用プロセスで発生し得

る経営者の偏向の可能性に対応する内部統制

※統制活動に関する考慮事項の詳細例については、付録3参照。

《4.企業の規模、複雑さ及び性質の考慮》

245.企業の内部統制システムについて、どの程度、正式なものが求められるかは、企業の規模と複

雑さに大きく左右される場合がある。小規模かつ複雑ではない企業では、企業が主題情報の合理

的な基礎を確立する責任を果たすために、正式に文書化された方針又は手続を必要としない場合

がある。ただし、多国籍企業等の大企業又は複雑性の高い企業では、この責任を果たすために、よ

り詳細で形式化されたEER報告プロセス及び関連する内部統制が必要となる場合がある。

246.企業の内部統制システムにおける企業のプロセス、内部統制及び記録の性質は、企業の規模と

複雑さによって異なる可能性がある。

設例

従業員の多様性について報告する場合、従業員数25名の小企業では、このデータを1名のス

タッフが管理する簡便なスプレッドシートに記録して保存することが妥当である場合がある。

ただし、世界中に20,000名の従業員を抱える大企業の場合、正確かつ網羅的なデータを収集、

照合、保存し、企業が従業員の多様性に関する情報の合理的な基礎を得るためには、しかるべ

きITシステムを用いた、人事チームの管理のより高度なプロセスが必要となる場合がある。

《5.限定的保証及び合理的保証》

247.限定的保証業務では、業務実施者は主題情報の作成のために利用されたプロセスを考慮する必

要がある。業務実施者が考慮すべき事項の性質と範囲は、EER保証業務の複雑さ及び主題の性質と

複雑さに左右される場合がある。比較的単純で、小規模な業務の場合、重要な虚偽表示が発生し

得る箇所の識別には、質問だけで十分な場合がある。企業及び主題の複雑さが増すに従い、例え

ば、業務実施者の理解を確認するため、企業の主題情報の作成プロセスに関与する人員とともに、

ウォークスルーを実行する等、主題情報作成プロセスを理解するためのより広範な手続が必要に

なる可能性がある。

248.合理的保証業務では、業務実施者は、関連する内部統制のデザイン及びそれら内部統制が適用

されたのか否かを評価する必要がある。すなわち、業務実施者は、関連事項を識別し、内部統制の

デザインが適切か否か、その内部統制がデザインどおりに適用されているか否かを評価するため

の証拠を入手する手続を立案し実施する必要がある。

249.企業の主題情報の作成プロセス及びその作成に係る内部統制に関連する考慮事項の例について

は、付録3参照。

《第7章 アサーションの利用》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

250.本章では、アサーションとは何か、業務実施者が以下の事項を目的としてアサーションをどの

- 59 -

ように利用できるかに関するガイダンスを提供する。

(1) 主題情報において発生し得る様々な種類の潜在的な虚偽表示の考慮。

(2) 主題情報が規準に従って作成されているか否か、又は主題情報に虚偽表示が含まれているか

否かについての証拠を入手する際の業務実施者への支援。

251.保証実3000はアサーションを利用することを求めてはいないが、アサーションは、業務実施者

が、発生し得る虚偽表示の潜在的な種類を考慮し得る方法の一つである(付録3参照)。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

252.EER保証業務では、主題の測定又は評価に使用される規準は、以下のいずれかにより要求され

るものとは異なる主題情報の特徴を有する場合がある。

(1) 財務諸表を作成するために適用される財務報告の枠組み。

(2) 温室効果ガス排出量の測定に使用される規準

その結果、監基報315及びISAE3410「温室効果ガス報告に対する保証業務」に記載されているよう

なアサーションが、EERの主題情報に適用されるか否か、又は業務実施者がEER保証業務で利用でき

るアサーションが異なるものであるか否かについて、考慮する場合がある。

《3.アサーションの利用》

《(1) アサーションの意味》

253.本ガイダンスでは、「アサーション」という用語は、一部の監基報及びIAASB基準におけるアサ

ーションの定義と整合的に用いられている。アサーションは、保証実3000第56項から第60項に従

って企業から入手できる「確認書」とは概念的に別物である。

アサーションは、明示的か否かにかかわらず、主題情報に体現される形で企業により表明され

るものであり、業務実施者が発生し得る様々な潜在的な虚偽表示の種類を考慮する際に利用す

る。

254.アサーションが利用される場合、以下の状況で利用される可能性がある。

(1) 業務の計画及び実施。限定的保証業務の場合、保証実3000第46L項に従って重要な虚偽表示が

生じやすい領域を識別し、合理的保証業務の場合、保証実3000第46R項に従って重要な虚偽表示

リスクを識別及び評価することが含まれる。

(2) 限定的保証業務の場合、識別されたリスク領域に対応する手続の立案及び実施又は合理的保

証業務の場合、評価されたリスクに対応する手続の立案及び実施

(3) 虚偽表示が重要なものか否かの考慮

255.保証実3000では、業務実施者はアサーションを利用する必要はないが、合理的保証業務及び限

定的保証業務のいずれにおいても、発生し得る様々な種類の潜在的な虚偽表示(第258項参照)を

考慮するに当たり、業務実施者がアサーションの利用を有用と考える可能性がある。その場合、

業務実施者は、他の監基報及びIAASB基準で利用されているアサーションの利用を検討することが

できる。

256.以下の表は、監基報315及びISAE3410に含まれるアサーションの区分を示している。取引種類や

その他の事象及び条件に係る監基報315のアサーションは「一定期間」について表示されており、

- 60 -

勘定残高に係るアサーションは「一定時点」について表示されている。ISAE3410のアサーションは

いずれも、「一定期間」において発生する温室効果ガス排出に関連している。

257.規準に従って主題のどの側面を測定又は評価することが求められるか、詳細なレベルでアサー

ションを考慮することが、業務実施者にとって有用となる可能性がある。

表1 監基報及びIAASB基準のアサーション

設例

企業Aは、その主題情報において以下を主張している。

スコープ1及びスコープ2の温室効果ガス排出量の増加は、本年度第1四半期にヨーロッパ

で新たに生産工場を買収したことによるものである。当社の全事業において、生産単位当たり

のGHG排出量は、経営者による監督機能の改善により、前年度から大幅に減少した。

当該企業は、GHG排出量が増加していること、また、その年に新たに生産工場を買収したこと

及び新工場の買収が排出量の増加の理由であることを明示的に主張している。企業は更に、経

営者による措置により、全拠点で生産単位当たりのGHG排出量が減少したことを明示的に主張し

ている。

企業は、特に以下の事項を黙示的に主張している。

・ 報告されているGHG排出が実際に生じた。

・ 報告されたGHGは、企業の規定する報告境界内にある施設によって排出されたものである

(すなわち、企業は排出されたGHGに対して責任を負っている。)。

・ GHG排出量に関する報告は、適切な換算係数を使用してCO2相当量に換算されていること

を含め、正確である。

・ GHG排出量は、排出された一定の期間(カットオフ)についての報告である。

・ 報告境界内で排出された全てのGHGが測定され報告されている(すなわち、網羅的であ

る。)。

・ GHGは、その発生源に応じて、スコープ1又は2の排出量として適切に分類されている(分

類)。

- 61 -

・ GHG排出量は適切に開示及び表示されており、報告は前年度と整合した基準で作成されて

いる。

《(2) 手続の立案に際しての潜在的な虚偽表示の種類の考慮》

《潜在的な虚偽表示の種類と原因》

258.アサーションにより、業務実施者は発生し得る様々な潜在的な虚偽表示の種類を考慮できる。

虚偽表示は、何らかの方法で規準を誤って利用すること、例えば人為的ミス、プロセスの欠陥、経

営者の偏向又は不正の結果として発生する。発生し得る虚偽表示の例として以下が挙げられる。

(1) 虚偽の主張を含む情報(「実在性」、「発生」又は「責任」のアサーション。例えば、企業が

報告した地域社会への投資や環境浄化が実際にはなされなかったか、又は他者によってなされ

たにもかかわらず、「責任」について企業自体が実施したと虚偽の主張をすること)

(2) 誤った期間で記録された情報(「カットオフ」のアサーション。例えば、企業のある期間にお

ける水使用量が実際に使用された期間の前後の期間に記録されること)

(3) 不正確な情報(「正確性」のアサーション。例えば、測定値を記録する際に、不適切に校正さ

れた測定機器の使用、転記誤り若しくはその他の誤り又は不適切な換算係数の使用(例えば、企

業が石炭及び石油火力施設を保有しているにもかかわらず、原子力エネルギーのCO2換算係数を

使用する等)によって引き起こされる。)

(4) 情報の脱漏(「網羅性」のアサーション–例えば、ある会社が三つの鉱山の土地再生プログラ

ムについては報告するが、重大な劣化が発生しているにも関わらず、土地再生を計画していな

い二つの鉱山に関しては言及しない。)

(5) 誤って分類された情報(「分類」のアサーション。例えば、企業が(主に女性の)短期契約者

を常勤正社員として分類した結果、常勤の労働力における性別の割合について誤った報告がな

される。)

(6) 情報の誤解を招く表現又は不明瞭な表現(「表示及び開示」のアサーション。例えば、企業が

大きなフォント、太字又は明るい色のテキストや画像、その他の方法を使用して提示内容を強

調し、「好ましい」情報を過度に目立たせるが、「好ましくない」情報は、小さいフォントや淡

色のフォント、短いテキスト等により余り目立たないように表示する。)

(7) 業績のプラス面に焦点を当て、マイナス面を省略するといった情報の偏向(「表示及び開示」

のアサーション)

259.業務実施者が主題情報に対して計画された手続を実施する際に虚偽表示を識別した場合、業務

実施者はその虚偽表示が重要であるか否かを判断する必要があり、それによりしかるべき措置が

決定される(第9章参照)。

260.業務実施者が関連するアサーションを分類する方法には、上記以外のものもある可能性がある。

起こり得る虚偽表示の種類が考慮されるのであれば、業務実施者は、アサーションの分類方法を

選択できる。例えば、規準には、求められる要件として「結合性(connectivity)」が含まれる場

合があるが、そのような場合、規準に従って、主題の複数の側面の結合性を説明する方法による

主題情報の表示及び開示が求められる。業務実施者は、結合性を満たす規準を適用した結果、表

示及び開示に関するアサーションを「結合性」アサーションとして扱うこともできるし、表示及

- 62 -

び開示アサーションに分類して扱うことも可能である。

261.業務実施者がアサーションを利用しない場合、業務実施者がとり得る代替法の一つは、発生し

得る潜在的な虚偽表示の種類を、以下の方法により検討することである。

(1) 主題の各側面に関連規準を不適切に適用することから生じる主題情報の虚偽表示の性質の検

討(すなわち、主題情報を作成し表示するにあたり問題が生じる可能性のある側面の検討)

(2) そのような潜在的な虚偽表示同士の類似点と相違点の検討

このアプローチにより、業務実施者はあらゆる潜在的な虚偽表示を識別し分類できるため、個々

の虚偽表示による影響と虚偽表示全体による影響の双方を評価できる。

《第8章 証拠の入手》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

262.本章では、証拠の入手を目的とした保証実3000第48L・R項から第49L・R項の要求事項に関するガ

イダンスを提供する。また、必要かつ入手可能と考えられる証拠の内容に関する業務実施者の考

慮事項、手続の立案と実施並びに証拠の十分性と適切性の評価の際の考慮事項についても説明す

る。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

263.序文で考察したとおり、EER報告の主題及びそれを測定又は評価して提示する方法は様々である。

EERの主題情報には、財務情報と非財務情報の両方、そして定性的又は定量的に示された情報が含

まれる場合がある。また、主題情報は、文章、図表、グラフ、図式、画像及び埋め込み動画等、様々

な形式で表示される場合がある。

264.EER報告には、企業外部の情報源から入手した情報(例として、企業のサプライチェーン内の他

企業からの情報、カーボン・オフセットに関する情報、主題を測定若しくは評価する際に使用さ

れるCO2排出係数等の情報を提供する組織又は業界のベンチマークデータを提供する組織等からの

情報)が含まれる場合がある。企業はこの他、自社についての調査の実施や事業による排水の水

質分析等、その活動の一部を第三者機関に外部委託することがある。

265.第6章で考察したとおり、直接的に又は間接的に企業のEER情報作成プロセスに関連する企業の

内部統制は、特に企業が初めてEER情報の作成を開始した段階では十分に発展していない場合が多

い。さらに、定性的情報作成プロセスに係る内部統制は、定量的情報作成プロセスに係る内部統

制ほど厳密ではないことがある。

266.EER報告に限ったことではないが、例えば、企業のEER報告における主題の性質や内容により、関

連する情報の取得及び記録にドローンや衛星画像を使用するといった革新的技術の使用が更に一

般的になるという状況が考えられる。

267.第263項から第266項のような要因はいずれも、業務実施者が証拠収集手続を立案及び実施し保

証の結論を裏付けるためにどれだけの証拠があれば良いかを決定するに際して考慮することがあ

る。

- 63 -

《(1) 十分かつ適切な証拠の入手》

268.保証実3000第48L・R項から第49L・R項では、リスクの考慮及びリスクへの対応に関する要求事項

が定められており、幾つかの点で限定的保証と合理的保証が区別されている。保証実3000で区別

されていない場合、限定的保証と合理的保証のいずれにも同じ要求事項が適用される(付録3参

照)。

269.特定の業務状況では、限定的保証と合理的保証を、二つの別個の種類の保証として捉えるより

も、業務実施者が得る保証水準の程度の結果において異なる位置付けにある保証として捉えるこ

とが有用となる場合がある。限定的保証業務と合理的保証業務のいずれについても、以下の事項

が当てはまる。

(1) 入手した証拠の全体的な心証の程度によって、実際に得られる保証水準が決定される。

(2) 想定利用者の主題情報に対する信頼性の程度は得られた保証の水準に応じて、変化する可能

性がある。それは保証報告書に記載される。

270.限定的保証業務と合理的保証業務のいずれにおいても、業務実施者はリスクを考慮して全体と

して十分な心証の程度を備えた証拠を入手することを目指す。限定的保証業務の場合、実施され

る手続は合理的保証業務に必要な手続に比べて限られているものの、意味のある保証水準を得る

よう計画される。手続の種類は限定的保証と合理的保証で類似する場合もあるが、手続の範囲は

限定的保証業務と合理的保証業務のそれぞれの保証水準に応じて、また、限定的保証業務の個々

の保証水準に応じて異なる可能性がある。限定的保証業務において何が意味のある保証水準であ

るかは、主題情報の信頼性がある程度高まった程度の保証水準から合理的保証業務とほとんど変

わらない保証水準まで一定の範囲内で変化し得る。

271.特定の業務状況では、実施する手続及びその時期と範囲は、許容可能な水準(限定的保証業務

の場合)又は許容できる低い水準(合理的保証業務の場合)にまで業務リスクを低減させる中で

得られる証拠の心証の程度に応じて決定される。保証実3000のA107項からA111項には、手続の種

類、時期及び範囲に関するガイダンスが記載されている。その意思決定に際しては、職業的専門

家として懐疑心を保持し、判断を行使する(第2章参照)。

272.EER保証業務における利用可能な証拠の性質、種類及び情報源は、財務諸表監査で利用可能なも

のとは異なることがある。しかしながら、証拠収集手続の立案と実施における業務実施者の考慮

事項は、EER情報を含むあらゆる種類の主題情報に共通していることが多い。以下に示す考慮事項

は、業務実施者が主題情報に関連する証拠の入手手続を立案及び実施する際及び入手した証拠を

評価する際に役立つ場合がある(第10章及び第11章参照)。

273.実際には、証拠収集プロセスは反復的なものであり、業務の実施中に新たな情報が得られた際

には、以下の考慮事項が再検討される可能性がある。

業務実施者の考慮事項

A.リスクの考慮及びその対応に必要な証拠の考慮には、以下の事項が含まれる場合がある。

(1) どのような方法を用いると、主題が適切に測定又は評価されないことがあるか、またEER

情報の中で適切に表示又は開示されないことがあるか(虚偽表示の種類又は問題の発生原

因)(第7章参照)。

(2) 潜在的な虚偽表示の発生原因となる可能性があるもの、すなわち、重要な虚偽表示のリ

- 64 -

スクを引き起こし得るものは何か。

(3) 企業は、EER情報内の重要な虚偽表示のリスクを、虚偽表示の原因となる可能性のあるも

のを考慮に入れつつ、どのように管理し低減しているか。例えば、虚偽表示の原因となる

可能性のあるものを考慮に入れつつ、虚偽表示を防止又は発見し修正するために、どのよ

うなガバナンス及び監督の構造、システム、プロセス並びに内部統制が存在しているか。

第6章では、主題情報の作成に利用されたプロセス又は主題情報の作成に係る内部統制の

考慮についてのガイダンスが提示されている。

(4) 企業に内部監査機能が備わっているか。備わっている場合、主題情報に関連してどのよ

うな作業が実施され、どのような指摘事項があるか。また、それがリスクの評価にどのよ

うな影響を及ぼすか(保証実3000第45項(2)参照)。

(5) 経営者は、虚偽表示の起こり得る領域の特定やリスクの評価に影響を及ぼす可能性があ

る意図的な虚偽表示や違法行為に関する事実、疑い又は申立てを把握しているか。

(6) 特定の業務において特定の判断を下す場合、証拠にどれほどの正確さ、詳細さ及び広範

さが必要か。例えば、EER情報の正確な測定又は評価が可能な場合、証拠は、EER情報が見積

りによるもので不確実である場合よりも正確でなければならないことがある。

(7) 主題情報に関して必要となる証拠は、拠点が単一である企業に関するものか、又は拠点

が複数ある企業あるいはサプライチェーン(上流、下流又はその両方)に関するものか。

274.業務実施者は、必要となる可能性のある証拠を決定すれば、利用可能な情報源及びその情報源

の特徴が証拠の心証の程度にどのような影響を及ぼすか、そして実施可能な保証手続の種類につ

いて検討することができる。

業務実施者の考慮事項

B. 利用可能な証拠を決定する際の考慮事項には、以下が含まれることがある。

(1) その証拠が、デジタル、書面又は口頭のいずれの形式であるか、一定時点又は一定期間

についてのものか、外部情報源から入手されたものか(第277項参照)、それとも社内で作

成されたものか、企業の帳簿及び記録に体系的に記録されているものか、内部統制の運用

に係るものか又は本質的に重要なものか、更にどの程度信頼できるものか。

(2) 必要となる証拠がサプライチェーン(上流、下流又はその両方)についての主題情報に

関連している場合、それが十分かつ適切な証拠を入手する能力にどのような影響を及ぼす

か。

(3) 証拠にはどの程度の目的適合性と信頼性が必要であり、利用可能な情報源からの証拠に

は必要とされる程度の目的適合性と信頼性が備わっているか。そうでない場合、代わりと

なる情報源又は実施可能な追加的な手続はあるか。

275.特定の手続の目的によっては、業務実施者によって実施される手続の種類、時期及び範囲にも

影響を与える可能性がある。

業務実施者の考慮事項

C. 十分かつ適切な証拠の入手手続を立案及び実施する際の考慮事項には、以下が含まれ

- 65 -

ることがある。

(1) この手続によって何が達成されるか。例えば、主題情報に影響を与える事象が発生した

か否か、又は主題情報が網羅的であるか否かについての証拠が得られるか。手続の目的は、

手続の方向性に影響を与える可能性がある。例えば、ERR情報と別の情報源との照合におい

て、発生したことを確かめるために、EER情報から別の情報源に対して照合が実施されてい

るのか、それとも網羅性を確かめるために、別の情報源から報告されたEER情報に対して照

合が実施されているのか。

(2) 集計リスク及び手続実施上の重要性は、手続を立案又は実施する際の適切な考慮事項か

(第279項から第287項参照)。

(3) 利用可能な情報源のうち、どの情報源から、どれくらいの証拠を入手する必要があるか。

例えば、重要な虚偽表示のリスクが高い場合又は利用可能な各情報源が提供できる証拠が

十分ではない場合、業務実施者は、重要な虚偽表示のリスクが低い場合よりも多くの証拠

を入手しようとするか、あるいは複数の利用可能な情報源から証拠を入手しようとする。

(4) 手続の種類、実施時期及び範囲はどのようなものであり、それが業務実施者の利用する

専門家を含む業務チームが必要とする情報源にどのような影響を及ぼす可能性があるか

(第1章参照)。

276.証拠の収集手続を実施した後、業務実施者は証拠の量及び質、その十分性と適切性を評価する

に際して、職業的専門家として懐疑心を保持し、判断を行使して保証の結論を裏付ける。3保証実

3000のA146項からA157項で、更に詳細なガイダンスが提供されている。

業務実施者の考慮事項

D. 入手した証拠の十分性と適切性を評価する際の考慮事項には、以下が含まれることが

ある。

(1) 予定していた証拠を入手できたか。

(2) 想定された情報とは異なる、又は入手した他の証拠と矛盾するあるいは整合していない

新たな情報があるか。ある場合、計画していた手続の適切性が、新たな情報を考慮して再評

価されているか。

(3) 様々な情報源から入手した証拠が、偏りのない方法で検討されているか。

(4) 更に多くの証拠が必要か。必要な場合、どのような方法で入手するか。

(5) 職業的専門家としての難しい判断が適切に検討されており、必要に応じて難しい、又は

議論のある事項について適切な協議が行われているか。

(6) 主題情報に関する未修正の虚偽表示の影響について、個別にも集計しても、また定量的

にも定性的にも検討されているか(第9章から第11章参照)。

(7) 証拠が、高い精度まで検証できなかった情報を表す場合、報告された情報が選定された

領域は適切か。

(8) 該当する場合、後発事象及びその保証業務への影響が検討されているか。

3 保証業務実務指針 3000 実務ガイダンス第2号「監査及びレビュー業務以外の保証業務に係る概念的枠組み(実務ガイダ ンス)」

- 66 -

《(2) 外部情報源》

277.第264項に記載されているように、EER報告書には、企業外部の情報源から入手した情報が含ま

れる場合がある。これは、職業的専門家としての懐疑心及び判断の行使に影響を与える要因の一

つである(第2章参照)。外部情報源から入手した情報の目的適合性と信頼性を検討する際に重

要となる可能性のある要因としては特に以下の事項が挙げられる。

(1) 企業と外部情報源との関係を通して入手されるEER情報に影響を及ぼす企業の能力

例えば、企業は、契約上の取決めを通して、サプライチェーンに関して報告される情報に影響

を与えることができることがある。

(2) 企業が入手し、EER報告書内で使用する情報の目的適合性及び信頼性を確保するための内部統

制の有無

そのような内部統制について企業が整備していることがある。

(3) EER情報に関する外部情報源の適切性及び評判

これには、信頼性のある情報を提供しているという実績のある情報源から、定期的に情報が提

供されているかどうかが含まれる。

(4) 外部情報源がその基礎として利用した情報及びその情報を作成する際に利用した方法の開示

の有無

例えば、価格算定機関は、価格算定データを蓄積して外部向けの市場価格を報告することはで

きるが、基礎として利用した情報が元の情報源でどのように作成されるかを内部統制すること

はできない。

(5) 情報の用途への適否、情報を作成する際の適用可能な枠組み又は規準の考慮の有無、情報源

となる企業によって首尾一貫した基礎に基づき作成された情報の使用の有無

例えば、格付け機関は企業のESG格付けを公開していることがあるが、企業間で整合した基礎

に基づき作成されていない情報を使用している場合や、実際の企業情報がない状況でモデルを

使用している場合がある。

(6) 外部情報源の性質と権限

情報を公開する法的権限を持つ中央銀行又は政府機関は、特定の種類の権限を有する情報源

である可能性が高い。例えば、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、一般に、気候関連シ

ナリオに関して信頼できる情報源とみなされている。

(7) 外部情報が利用者にとって、目的適合性があり信頼できるものとして広く一般に市場で受け

入れられているという証拠の有無

そのような外部情報は、経営者又は業務実施者も類似の目的で利用している。

(8) 使用される情報と矛盾する可能性のある代替情報

例えば、利用可能な外部情報に、別の類似した情報源がある場合に、類似した情報源が全く異

なる範囲の情報を報告している場合、業務実施者に疑問を抱かせる可能性がある。

《(3) その他の記載内容》

278.保証実3000第62項において、業務実施者はEER報告書内の「その他の記載内容」を通読し、主題

情報又は保証報告書とその他の記載内容との間の重要な相違を識別することが求められている。

- 67 -

「その他の記載内容」に重要な相違又は事実の重要な虚偽表示が確認された場合、業務実施者は

これについて適切な当事者と協議し、追加的な対応を行う必要がある。その他の記載内容にはEER

保証業務範囲内の主題情報以外のEER報告書の情報が含まれる(第10章参照)。

《3.EER 保証業務における集計リスクへの対応》

《(1) 集計リスクの性質及び手続を立案・実施する際の発生の仕方》

279.EER保証業務における手続の立案及び実施に当たって、集計リスクが存在する。集計リスクと

は、修正又は発見されていない虚偽表示の合計が、重要性の基準値を超える可能性をいう。

280.集計リスクが発生するのは、規準を適用する作成者によって、あるいは保証手続を立案及び実

施する業務実施者によって、主題情報が個別の部分に分割(細分化)される場合があるためであ

る。

設例

企業は、四つの生産拠点のEER情報を報告している。EERの主題及びEER情報の報告プロセス

の管理は、グループEER報告マニュアルを規準にして報告を行う拠点の生産マネージャーに委

任される。企業のEER情報の全体としての重要性は、5,000ユニットに設定されており、拠点別

に次のように設定されている。拠点A:2,000ユニット、拠点B:400ユニット、拠点C:850ユニ

ット、拠点D:1,750ユニット。

EER情報の虚偽表示は、各拠点で以下のように識別された。拠点A:930ユニット、拠点B:385

ユニット、拠点C:740ユニット、拠点D:2,960ユニット。これらの虚偽表示は、それぞれ5,000

ユニットをはるかに下回っている。拠点A、B及びCの場合、虚偽表示は各拠点の重要性も下回

っている。ただし、集計すると、四つの拠点の虚偽表示は、企業の全体としての重要性5,000

ユニットを超過している。これにより、EER情報全体として、重要な虚偽表示が含まれている

こととなる。

281.量的要因を勘案する場合、個別に重要な虚偽表示を発見することのみを意図した業務計画を策

定すると、個別には重要ではないが集計すると重要な虚偽表示となる場合があること、さらに、

未発見の虚偽表示が存在する可能性があることを考慮していないことになる(保証実3000のA97項

参照)。

282.虚偽表示が重要であるかどうかを評価するために、虚偽表示を相互に組み合わせて検討する場

合、発見した虚偽表示の合計の重要性を検討する必要がある。状況によっては、業務実施者は集

計リスクが低いと考える場合がある。例えば、企業が、相関性のない個別の指標について報告し

保証を求めている場合、異なる指標間での集計リスクはほとんど又は全くない場合がある。

《(2) 保証手続の立案及び実施における集計リスクの低減》

283.保証実3000第51項では、業務実施者は、明らかに僅少なものを除き、業務の過程で識別した未修

正の虚偽表示を集計又は総合的に評価することを要求されている。保証実3000第65項では、業務

実施者は、未修正の虚偽表示が、個別に、又は集計した場合に重要であるかを含め、主題情報に重

要な虚偽表示がないかどうかについて結論を形成することが要求されている。

- 68 -

284.手続実施上の重要性は、主題情報が細分化された場合に、保証手続を立案し実施する際の「集

計リスク」を低減するために業務実施者が利用することがある。

285.保証実3000のA97項では「手続実施上の重要性」という用語自体は使用されていないが、業務実

施者が手続の種類、実施時期及び範囲を決定する基礎として、重要性の数値とは別に、より低い

数値を決定することが適切となる場合があることが説明されており、主題情報の全体としての定

量的な重要性よりも低い定量的閾値に達するほどの重要性がある虚偽表示を識別するための手続

の立案及び実施が含まれている。定量的な閾値は、集計リスクを適切に低い水準まで下げるよう

に設定される。

286.手続実施上の重要性を利用して手続を実施することにより、定量的に個別には重要でない虚偽

表示が識別される可能性が高くなる。

287.手続実施上の重要性は、質的要因のみにより、あるいは主に質的要因により重要とされる虚偽

表示の識別には対応していない。監基報3204では、質的な内容のみにより重要となり得る全ての虚

偽表示を識別するための監査手続を立案するのは実務的とはいえないと記載されている。ただし、

可能な範囲で、質的要因のみにより、あるいは主に質的要因により重要とされる虚偽表示の識別

の可能性を高めるような手続を立案することは、業務実施者が集計リスクを低減するのに役立つ

場合がある(第9章参照)。

《第9章 虚偽表示の重要性の考慮》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

288.本章では、保証実3000第44項及び第51項の要求事項、特に以下の項目に対応するためのガイダ

ンスを提供する。

(1) 虚偽表示を識別する際の定性的及び定量的考慮事項

(2) EER保証業務の実施中に虚偽表示が識別された場合の業務実施者の責任

(3) 虚偽表示を集計する方法

(4) 虚偽表示の重要性を評価する際に業務実施者が考慮する必要がある可能性のある事項。これ

には、固有の変動リスク又は不確実性に晒される主題情報に関して発生する虚偽表示が含まれ

る。

289.本章では、EER保証業務を計画する際の考慮事項又は手続実施上の重要性の概念については取り

扱わない。後者に関しては第8章の第279項から第287項で扱われている。第10章では、定性的な虚

偽表示の考慮に関するガイダンスを提供し、第11章では、将来志向の情報における虚偽表示の考

慮に関するガイダンスを提供する。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

290.EER報告書の想定利用者は多様であり、様々な情報ニーズを有しており、意思決定に影響を及ぼ

す可能性のある様々な検討を行っている。

291.EER保証業務の主題情報は、EER報告書の全ての場合もあれば、特定の指標等、一部のみである場

合もある。

4 監査基準報告書 320「監査の計画及び実施における重要性」第6項

- 69 -

292.EER報告書の主題の性質は多様であり、主題情報は定量的に測定及び表示される場合もあれば、

(叙述的あるいは説明的な)用語で定性的に、又はその他の形式、例えば図表、グラフ、図式、画

像等あるいは類似の形式(本ガイダンスの序文を参照)で評価及び表示される場合もある。また、

正確に測定できる場合もあれば、測定又は評価の不確実性の程度が異なる場合もある。

293.これらの要因は、業務の状況において何が重要であるかを判断するに際して、またEER保証業務

の対象範囲内にあるEER報告書の部分において識別された虚偽表示の影響を評価するに際して、業

務実施者に課題を提示する。

《3.虚偽表示の識別》

294.EER保証業務の実施中に、業務実施者がEER情報内に虚偽表示を識別した場合、業務実施者はそ

の虚偽表示が重要かどうかの判断を下す必要がある。

《(1) 重要性は利用者の観点から検討される》

295.業務実施者による保証の結論は、主題情報が「全ての重要な点において」適用される規準に準

拠して作成されているかどうかについて述べられている。EERフレームワーク(適用される規準)

が重要性について定義又は説明していない限り、保証実3000は、以下のような枠組みを提供する。

すなわち、脱漏を含む虚偽表示は、個別に又は集計すると、主題情報に基づく想定利用者の意思

決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。虚偽表示は、意

図的である場合又は意図的でない場合があり、定性的である場合又は定量的である場合がある。

296.保証実3000のA91項からA99項には、重要性の考慮事項に関するガイダンスが提示されているが、

これには、以下が含まれている。重要性は想定利用者の情報ニーズに基づいて決定されるため、

想定利用者が同一であり、主題情報の利用目的も同一であれば、合理的保証業務における重要性

は、限定的保証業務における重要性と同一になる。

297.EER保証業務において、想定利用者及び主題情報に基づいて想定利用者が下す決定の種類には大

きな幅がある。特に多数の人々が保証報告書を入手できる場合、(保証報告書の名宛人以外の)そ

の他の者が報告書を利用する可能性があり、業務実施者が全ての利用者を特定できない可能性が

ある(第3章参照)。保証実3000のA17項では、そのような場合、想定利用者は、重要かつ共通の関

心を持った主要な利害関係者に限定されることがあることについてのガイダンスを提供している。

298.ただし、適用される規準により、作成者が利用者の「サブグループ」間の異なる情報ニーズを考

慮するよう求められている場合、それらのサブグループが想定利用者となる。実際には、あるサ

ブグループの方が他のサブグループよりも虚偽表示に対する許容度が高い場合であっても、あら

ゆるサブグループが同じ主題情報に関心を有しているのであれば、虚偽表示に対する許容度が最

も低いサブグループの閾値をもとに重要性を考慮する必要があることがある。

《(2) 定量的な重要性に関する考慮事項》

299.主題情報のうち定量的な部分(例えば数値で表されたKPI)について、重要性の決定の出発点と

なるのは、業務の計画段階で、重要性の閾値を設定することである。これは多くの場合、報告数値

や主題情報に関連して選定されたベンチマークに対して、重要性の割合を適用することによって

- 70 -

行われる。EERフレームワークが重要性の割合の閾値を特定している場合、これは、業務実施者が

業務に係る重要性を決定する際の枠組みを提供する。

300.主題情報が構成要素を持たない個別の指標である場合、業務実施者は、報告される指標全体に

対して直接、一定の比率を適用できる。例えば報告される指標が「水使用量(計量値)」であると

き、業務実施者は、水使用量(計量値)に対して一定比率を適用することができる。主題情報が幾

つかの異なる指標で構成されており、それらを一緒に検討するための基礎となる共通点がほとん

どない場合、例えばコミュニティのプロジェクトへの投資のX%(時間又は金額)、消費エネルギー

のY%(kWh)あるいは再開発された土地のZ%(ヘクタール)などの場合、重要性は各指標に関連し

て個別に検討されることがある。

《(3) 定性的な重要性に関する考慮事項》

301.重要性には、定量的同様、定性的な考慮事項が含まれる。定量的な重要性の閾値は、対象項目が

重要である可能性が高いかどうかについての予備的な判断を下すのに有用である。虚偽表示が数

値において定量的閾値を下回る場合でも、報告される主題情報に重要な影響を及ぼす可能性があ

る。例えば、企業がある誤謬によって規制の要求事項を達成できない場合、定量的な観点では閾

値を下回る場合でも、重要な誤謬だとみなされることがある。

302.主題情報の全ての側面が、同じ重要性の考慮を必要とするわけではない。主題情報の様々な側

面について、同一の想定利用者であっても様々な情報ニーズがあり、虚偽表示に対する許容度も

様々である可能性がある。質的要因の考慮は、業務実施者が、想定利用者にとってより重要性が

高いと考えられる主題情報の側面を識別する際に役立つことがある。

303.業務実施者による重要性の検討は、職業的専門家としての判断事項であり、集団としての想定

利用者に共通する情報ニーズに関する業務実施者の認識によって影響を受ける(保証実3000のA93

項参照)。例えば、想定利用者は、無害な廃棄物の再資源化に関する情報よりも、食品や医薬品の

安全性に関する情報に重要性をおくことがある。これは、無害な廃棄物を再資源化しないことよ

りも、食品や医薬品の生産に関する安全基準が不十分であることの方が、人間の健康にとってよ

り深刻である可能性が高いためである。したがって、食品や医薬品の安全性に関する情報の虚偽

表示に対する想定利用者の許容度は、無害な廃棄物の再資源化に関する虚偽表示に対する許容度

よりも低いと考えられる。

304.主題情報を提示する方法に関して、質的要因を考慮することも重要である。例えば、作成者が

主題情報をグラフ、図式又は画像の形式で提示する場合、重要性の判断には、グラフのX軸とY軸

に異なる尺度を使用することにより、重要な虚偽表示や誤解を招く情報となるかどうかについて

の考慮が含まれる可能性がある(第258項(5)、(6)及び第10章参照)。

305.作成者が識別された虚偽表示の一部又は全てを修正しない場合、業務実施者は集計された虚偽

表示が重要であるかどうかを個別に、あるいは他の未修正の虚偽表示と合わせて評価する必要が

あり、作成者が修正を行わない理由についての理解をした上で、作成者が修正をしない理由及び

その理由が業務状況において正当化できるものであるかについて慎重に検討する必要がある。以

下の「業務実施者の責任」のフロー図では、業務実施者の考慮と責任について説明している。フロ

ーチャート中の括弧内の数字は、別途明記されていない限り、本章の段落番号を表している。

- 71 -

図11 識別された虚偽表示に関する業務実施者の責任

306.識別された虚偽表示を個別に評価した後、業務実施者は、保証実3000第51項により、明らかに僅

少であるもの以外の未修正の虚偽表示を集計することを求められる(以下の例を参照)(第307項

から310項参照)。業務実施者は更に、識別された虚偽表示の内容及び原因が、EER情報の他の部分

に別の虚偽表示が存在する可能性があることを示唆しているか考慮することもある(第311項から

第314項参照)。

設例

定量的な主題情報の「四捨五入された値」に影響を与えないほど虚偽表示が小さい場合に

は、虚偽表示が全ての測定で発生していたとしても、一定の状況下では「明らかに僅少であ

る」とみなされることがある(例えば100ユニットから101ユニットへの変更や3.15ユニット

から3.16ユニットへの変更を報告しない等)。

一方、多数の僅少な虚偽表示が全て同じ領域に影響を及ぼしている場合、それらが量的に

は「明らかに僅少」であっても、内部統制の弱点あるいは測定機器の校正の必要性を示してい

る可能性がある。すなわち、虚偽表示が明らかに僅少であるかを考慮する際に、念頭におくべ

き質的な考慮事項が存在する可能性がある。

一つ又は複数の項目について明らかに僅少かどうかについて何らかの不確実性が存在する

場合、当該虚偽表示は明らかに僅少であると考えられない。

- 72 -

《4.虚偽表示の集計》

307.業務実施者は、未修正の虚偽表示を集計して、それらの虚偽表示を他の未修正の虚偽表示と合

わせて検討できるようにする必要がある。

308.EER保証業務の範囲が、幾つかの指標又はKPIであり、それぞれが異なる主題に関連している場

合、業務実施者は、(1)異なる指標ごとに、虚偽表示に対する想定利用者の許容度も異なる可能性

があり、(2)虚偽表示を集計する共通の基礎がない可能性があるため、異なる指標(主題情報の側

面)ごとに個別に虚偽表示の重要性を評価することがある(第299項及び第300項参照)。

設例

企業のサステナビリティ報告書には、温室効果ガス排出量、水使用量、有害及び無害な廃棄

物、従業員の業務に関連する災害・疾病及びコミュニティへの投資に関する主題情報が記載

されている。これらの主題はそれぞれ、異なった方法により異なった閾値で利用者の意思決

定に影響を及ぼす可能性がある。虚偽表示に対する利用者の許容度は、放射性廃棄物やその

他の有害な廃棄物よりも、無害で分解可能な廃棄物の方が高い可能性があるため、有害な廃

棄物の虚偽表示と無害な廃棄物の虚偽表示を集計することに合理的な根拠がない場合があ

る。

309.業務実施者はまた、EER報告書の各構成要素には重要な虚偽表示が含まれていなくとも、EER報

告書を全体として見た場合に虚偽表示が含まれている可能性があるか考慮することがある。これ

は、例えば、EER報告書のメッセージが全体として誤解を招くものであるか偏向がある場合又は主

題情報が正当な理由なく目立つように、又は目立たぬように表示されている場合に発生する可能

性がある。

310.保証実3000第65項では、業務実施者は、未修正の虚偽表示が個別に、又は集計して重要であるか

を含め、主題情報に重要な虚偽表示がないかについて結論を形成することを求められている。主

題情報に重要な虚偽表示が含まれている場合、業務実施者は保証実3000第74項から第77項の要求

事項に従う。

《5.識別された虚偽表示の影響の検討》

《(1) 不正による虚偽表示の影響》

311.EER情報の報告が財務報告のように十分に確立した分野と同水準まで成熟していない場合、内部

統制は十分に整備されておらず、ガバナンスは限定的で、利用可能な規準は包括的ではない可能

性がある。このような要因により、特に公表された目標を達成するようプレッシャーがかかって

いる場合には、不正リスクが増すことがある。

312.EER報告書の不正による虚偽表示は、以下のような事項に関連している可能性がある。

(1) 罰則や罰金を回避するためのEER情報の虚偽表示、挑戦的又は過度に楽観的な内部目標あるい

は対外的な目標、意図的に不正確な、あるいは誤解を招く製品や企業の公示又は主張。

(2) 業績賞与又は報酬の結果に影響を与えるために、業績又は報酬インセンティブに関連するEER

- 73 -

情報を意図的に偏った方法で報告すること。

313.業務実施者は以下を実施することがある。

・ 業務に関連する不正リスクの程度を考慮する(保証実3000のA85項参照)。

・ 集計された虚偽表示を考慮する場合を含め、業務全体にわたり、不正による虚偽表示が発生す

る可能性に注意を払う。

・ 主題情報に不正による重要な虚偽表示がある可能性を示す兆候がある場合、適切に対応する。

《(2) 企業の内部統制システムに対する業務実施者の理解への影響》

314.合理的な保証業務の場合、業務実施者は、集計された虚偽表示が内部統制の不備に関連してい

るかどうかを検討する場合もある。特に、業務実施者は、集計された虚偽表示の性質や程度が、主

題情報の作成に関連する企業の内部統制システムに対する理解に影響を与えるものかどうかを検

討する場合がある(保証実3000第47R項及び付録3参照)。

《6.その他の重要性に関する考慮事項》

315.第316項から第318項では、業務実施者が重要性を検討する際の考慮事項を説明しており、虚偽

表示が重要であるかどうかを検討する際に役立つ可能性のある事例が示されている。業務実施者

は、仮に主題情報に虚偽表示が含まれていなければ、想定利用者が異なる意思決定をすることが

合理的に期待される程度がどのくらいか考慮する。以下の考慮事項は網羅的なものではなく、最

終的には、特定の状況に基づいて結論を出すために、職業的専門家としての判断が必要となる。

316.重要性は、質的要因及び該当する場合は量的要因に照らして検討される。虚偽表示が重要なも

のである可能性が高いことを示す質的要因には、以下の項目が挙げられる。

主題

(1) 虚偽表示が含まれた主題情報は、重要であると判断された主題のある側面と関連している。

外部要因

(2) 虚偽表示の含まれた情報は、法令等への違反と関連している(特に違反による結果が重大な

場合)。

設例

高額の罰金が科せられた重要な規制違反の事例は、重い罰則を科せられなかった事例より

も、一部の利用者にとって重要である可能性が高い。

他の利用者、例えば、有害な廃棄物の処理に関連する環境規制に企業が違反したことによ

り被害に遭った地域コミュニティは、罰則の重さよりも、規制の違反によって自分たちの健

康や福祉が危険にさらされているかどうかにより関心があると考えられる。

(3) 虚偽表示の含まれた情報が、企業の多くの利害関係者に影響を与える主題に関連している。

ただし、主題が少数の利害関係者だけに影響するものであっても、その影響が重大である状況

も考えられる。

- 74 -

設例

企業の事業からの排水により水道が放射能汚染の被害に遭った小規模コミュニティは、集

団訴訟を起こす可能性があり、企業及び他の利害関係者に重大な影響を及ぼす可能性がある。

主題情報の性質

(4) 虚偽表示の含まれた情報を主要な業績評価指標の一つとして想定利用者が利用しており、又

は当該企業を同業他社と比較するために一般的に利用される項目に関連している。

(5) 虚偽表示の含まれた情報が目標又は閾値に関連する業績を報告する情報に関連しており、そ

の誤謬の大きさが実際の結果と目標との差異に相当する。

設例

最高経営責任者の賞与を決定する業績目標の一つが、75%以上の顧客満足度を達成するこ

とである。報告された顧客満足度は77%であったが、これは3%過大計上されていることが

判明した。目標が実際には達成されていなかったということである。このような状況での虚

偽表示は重要であると考えられる。

但し、目標が90%であった場合、報告された顧客満足度77%が正しくなくとも、目標が達成

されたとは報告されないため、この虚偽表示は重要ではないとみなされることがある。

(6) 情報の虚偽表示により、以前に報告された状態からの大幅な変化又は傾向の報告に逆転が生

じている。

表示

(7) 表示上の虚偽表示が、主題情報に対する誤解や、極めて多様な解釈が可能である明確さを欠

いた表現に係るものである。その結果、想定利用者は、解釈によって異なる意思決定をする可能

性がある。

作成者の行動

(8) 虚偽表示が、誤解を招くことを目的として作成者が意図的に実施した行為の結果として生じ

たものである。

(9) 作成者が、虚偽表示が重要ではないと考えられるという理由以外の理由で、虚偽表示を修正

することに難色を示す。

(10) 作成者が、虚偽表示が重要ではないと主張する場合において、業務実施者がこれに同意しな

い。

317.第316項に例として記載されている考慮事項の多くが、定量的情報と定性的情報のいずれにも当

てはまる。定量的情報の場合、これらを重要性の閾値を検討する際に利用することができる。重

要性の閾値は、母集団からのサンプリングを利用する手続を実施する際に許容される虚偽表示の

程度を含む、手続実施上の重要性の水準に影響を及ぼす(第8章参照)。定性的情報の場合、これ

らは同様に、想定利用者の意思決定が虚偽表示によって影響を受ける程度に基づいて、虚偽表示

が重要かどうかを業務実施者が判断する上で役立つ。

318.重要性の判断をする前に、背景事情を理解することが重要である。例えば、開示の目的又は趣

- 75 -

旨を理解し、規準が意図している主題の測定方法を理解することが重要である。それにより、業

務実施者は以下を検討できる

(1) 開示情報が目的と整合しているか。

(2) 開示情報が明確で理解できるか。

《7.測定又は評価の不確実性》

319.測定又は評価の不確実性が、主題情報に固有の変動性があることを意味する場合、重要性の考

慮事項には影響を与えない。測定又は評価の不確実性が高かったとしても、必ずしも虚偽表示の

リスクが高まるとは限らない。

320.固有の変動性を伴う主題情報は、規準が求める程度に正確であり、固有の不確実性に関する情

報も開示されるのであれば、十分に正確なものであると考えられる。補足情報を開示することに

より、想定利用者が不確実性を理解するのに必要となる重要な背景を示すことができる。補足情

報が開示されない場合、規準が目的適合性のあるものではなくなる可能性があり、主題の構成要

素が適切に開示されない可能性がある。測定上の固有の不確実性について以下に例示する。

設例

企業はXトンのCO2eを排出したが、CO2eを隔離する炭素取引制度を通じて相殺したと報告

し、取引証書が付与される。報告における排出量の測定上の固有の不確実性は±5%前後、隔

離されたCO2eの測定上の固有の不確実性は±12%前後とされている。

測定の不確実性は、主題情報の二つの側面で異なるが、関連する不確実性が適切に開示さ

れていれば、企業の記載は想定利用者のニーズを満たせるだけの十分な正確性が保たれてい

ると言える場合もある。

321.同様に、主題情報の作成と報告には、評価上の固有の不確実性が存在することがある。

設例

企業が、従業員の健康と安全を重視していると記載している。とりわけ、作業所で有毒なガ

スに晒されることに起因する従業員の業務上の疾病を監視し報告している。この主題を評価

する際には、固有の不確実性が数多く存在すると考えられる。例えば、

・ 従業員の健康状態又は生活様式により、有毒なガスに晒されることに起因する疾病にか

かりやすくなる可能性があるが、その程度は不確実又は不明である。

・ 監視地点で測定された有毒なガスの濃度は、実際に有毒なガスに晒されるときの濃度と

同程度であると想定される可能性がある。

・ この関係は直線的なものと想定されるが、濃度の閾値が設定されている場合にはこれを

下回ると影響を無視できる。

そのような評価上の不確実性を開示しないと、情報の想定利用者が不適切な結論を導き出

す可能性がある。

- 76 -

322.不確実性が固有のものではない場合(すなわち、知識の欠如や規準の不適切な適用に起因する

場合)、虚偽表示が発生する可能性がある。これは作成者が、主題を測定又は評価するために利用

可能な情報を、目的適合性を満たすために必要とされるほどには正確に利用していないことから

起こると考えられる。

設例

規準は、企業がスコープ3のGHG排出量の計算を行うに際して、企業の職員が業務上利用し

た航空機の種類(商用機又はプライベートジェット)及び実際の飛行距離を使用すると定め

ていることがある。

しかし、実際の飛行距離を使用する代わりに、企業はフライトを長距離又は短距離に分類

し、各区分のフライト数に異なる平均距離を適用することで、飛行距離を見積もることがあ

る。この不確実性は固有のものではなく、規準の適用に際して見積値を使用したことに起因

する。

見積方法に規準が正しく適用されていない場合、これは見積りの誤り、すなわち虚偽表示

をもたらす可能性がある。

《第 10 章 定性的 EER 情報への対応》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

323.本章では、定性的EER情報の性質及び以下の場合に定性的EER情報の観点から考慮すべき具体的

な事項に関するガイダンスを提供する。

(1) 規準の適合性を判断する場合

(2) 証拠を入手する場合

(3) 虚偽表示を評価する場合

(4) 定性的EER情報がその他の記載内容と併せて開示される場合

(5) 保証報告書において定性的EER情報を伝達する場合

324.将来志向の情報は第11章で別途検討されているが、定性的情報と将来志向の情報は相互に排他

的なものではない。例えば、定性的情報は将来志向の情報である場合も過去の情報である場合も

あり、また、将来志向の情報は定性的にも定量的にも表現される場合がある。業務実施者にとっ

て、本章のガイダンスを、第11章のガイダンスと併せて検討することが有用であると考えられる。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

325.本章は、業務実施者が定性的EER情報を保証する際に役立つと考えられる。EERフレームワーク

及び規準には、定量的EER情報の測定方法に関する指示が記載されている場合があるが、定性的情

報の評価方法に関しては同等の水準の指示が記載されていない可能性がある。そのため、そのよ

うな定性的情報は、定量的EER情報の場合よりも作成者の見解が反映されやすく、また作成者の見

解によって変化しやすいと考えられる。

326.企業がEER情報を作成するプロセスでは、主題情報に関するデータ及び情報の入手が困難な場

合があるため、定性的な主題情報の証拠を入手する際に多くの課題が発生する可能性がある。

- 77 -

327.主題情報を作成するプロセス及び関連する内部統制(該当する場合)は、作成者が主題情報に

ついての合理的な基礎を得るには十分であると考えられるが、業務実施者が自らの結論を裏付け

るために必要となる証拠を得るには十分でない可能性がある。これは、業務実施者が計画する手

続、定性的な主題情報について必要な証拠を入手する業務実施者の能力及び業務実施者の保証の

結論に影響を及ぼす可能性がある。

328.また、定性的情報の表示方法によっては、EER保証業務の対象となる主題情報を「その他の記載

内容」と明確に区別することが困難となる可能性もある。

《3.定性的 EER 情報の性質》

329.定性的EER情報は、定量的に(数値で)ではなく定性的に示される主題情報である。そのような

数値によらない情報には、説明情報、記述、分類又は評価等が挙げられる。主題の様々な側面に係

る主題情報は、定量的にではなく、主として定性的に示される場合がある。主題のある側面が主

として定量的に示されていたとしても、当該側面に関係する主題情報の他の部分(関連する開示

情報等)は、定性的に示されることもある。例として、企業のガバナンス構造、ビジネスモデル、

ゴール又は戦略的目標は、定量的な開示情報により補足されることもあるが、定性的に説明され

る場合がある。

330.定性的情報は主に、文章で示されることが多いが、EER報告書では、その他の形式、例えば埋込

み動画や音声録音等によって示されることもある。また、数値は文章で表現することもできるた

め、文章であったとしても数値でないとは限らない。ある情報が定量的ではなく、むしろ定性的

であるとされる要因は、その情報が数値によらない性質を持つためである。その情報が定量的情

報であるか定性的情報であるかにかかわらず、作成者は、EER保証業務の対象となるEER情報に含

まれる情報の合理的な基礎を得る必要がある。目的適合性があり、網羅的で、信頼性が高く、中立

的で理解可能な規準を適用すれば、適合する規準の特徴を反映した定性的情報となるはずである。

331.ただし、EER情報には、以下のいずれかの情報が含まれる場合がある。

(1) 事実に基づく情報(直接観察可能であるか、又は証拠収集手続が実施できる情報)

(2) 本質的に主観的な情報(直接観察できず、作成者の見解により変動する情報)

(1)は、適合する規準の適用から生じる場合とそうでない場合がある。(2)は適合する規準の適

用によるものではない。

設例:事実に基づく定性的な主題情報の例

・ 「非業務執行取締役で構成される監査役等が当年度に設置された。」

・ 「当社はカナダに工場を購入した。」

主観的なEER情報の例:

・ 「当社は、子供向けの健康的な食品を生産している。」

・ 「当社が及ぼす環境への影響は最小限である。」

・ 「当社は組織全体で柔軟な勤務体制の導入に成功した。」

これらの主観的な情報の具体例は、下線部分の主張が人により異なって解釈される可能性

があるため、曖昧であり、実証不可能である。したがって、これらの説明自体は適合する規準

の適用から生じるものとはみなされず、これらの主張は主題情報の構成要素とはならない。

- 78 -

このような場合には、作成者が規準を更に開発することが必要となる。適合する規準であれ

ば、合理的で一貫した方法により主題を測定又は評価し、その結果、合理的で一貫した主題情

報となる。

上記の主観的なEER情報の最初の例では、報告の目的上、「子供向けの健康的な食品」は、

例えば、「100g当たりの食塩含有量が〇g未満、砂糖含有量が〇g未満の食品」と定義できる。

当該規準が利用可能となれば、「子供向けの健康的な食品」は保証を行うに際して適合してい

ると考えられる。ただし、当該企業が別の生産領域で子供にとって不健康な食品を生産して

いる場合には、開示が必要になる場合もある(情報の網羅性又は中立性)。

業務実施者は更に、企業の「健康的」という定義が誤解を招く可能性がないか、例えば、そ

の定義が国際的に認められた規範と相違していないかも検討する。

●◎

《4.定性的情報に関する規準の適合性を判断するための具体的な考慮事項》

332.文章で示された主題情報は、数値による主題情報と比べ、主題の様々な側面を表す規準を適用

することにより生じるが、規準の適合性に関する要求事項に変更はない。

333.定性的情報に関する信頼性の高い規準は、詳細に定義され、合理的に一貫した方法により主題

を測定又は評価できるように、明確なものである必要がある。

設例

主要な目標の達成を支援する戦略の様々な側面の報告を要求する規準を適用するに当た

り、企業は、当該側面の一つとして、顧客への高水準のサービスの提供を優先する方針である

と報告する場合がある。この情報の背景にある規準は、情報が曖昧であるため、十分に定義さ

れていないと考えられる(したがって、当該規準は信頼できないと考えられる。なぜなら、結

果として得られる情報は、合理的で一貫した方法による主題の評価に基づいていない可能性

があるためである。)。当該規準が、単に企業がそのような方針を有していること(正式に文

書化されているか否かを問わない。)を開示するよう要求しているのか、それとも企業の行動

が当該方針に準拠していること又は当該方針が目標の達成を効果的に支援していることを開

示するよう要求しているのかが不明確である。

334.定性的情報については、文章や画像がその意味するところに固有の曖昧さがあり、文脈と関係

なく表示される可能性があるため、分かりやすく(意図された意味が曖昧でないことを含む。)中

立的な主題情報が得られる規準を適用することが重要である。最も重要なのは、保証実3000のA49

項で考察されているとおり、規準は、想定利用者に誤解を与えるような主題情報を導いてはなら

ないということである。

335.規準が適合しておらず、結果として得られるEER情報が主観的であるため当該情報を保証でき

ない場合、保証実3000第25項では、作成者が当該規準を変更する機会を得られるよう、業務実施者

に対して、作成者と協議することを要求している。第3章及び第5章で詳細に考察されたとおり、

規準が適合していない場合(すなわち、保証実3000で要求される適合する規準の五つの特徴を示

- 79 -

していない場合)、前提条件が満たされない可能性があり、当該業務は保証業務と認められない。

第336項及び第337項も参照。

336.作成者が適合する規準を適用せずに得た定性的情報(すなわち、主題情報ではない。)の変更

に応じようとしない場合、業務実施者は、当該情報をEER報告書から削除するか、又は当該情報が

保証の対象ではない「その他の記載内容」であると明示するか若しくは主題に関する規準を追加

で開発し、保証を受けることができる主題情報を作成するよう作成者に要請することがある。作

成者が以下のいずれかの対応にも応じようとしない場合、業務実施者は、それが保証の結論に対

してどのような影響を与えるかを慎重に検討する必要があると考えられる。

(1) 当該情報を削除すること

(2) 当該情報を「その他の記載内容」として明確に区別すること

(3) 適合する規準を開発すること

保証実3000第62項の要求事項は、「その他の記載内容」に適用される。作成者が当該情報を「そ

の他の記載内容」と明示した場合であっても、業務実施者は、一貫性が保たれているか留意して当

該情報を通読する。その他の記載内容は誤解を招いたり、実際の主題情報の理解を阻害したりす

るものであってはならない。

設例

企業は、規準により、当年度の主要な実績の報告を要求される。「年間最優秀企業賞を受賞

しました」等の単純な主張は、厳密には誤謬がないと考えられるが、以下の場合には依然とし

て誤解を招く可能性がある。

・ 当該賞が、会社全体ではなく、一つの小さな管轄区域での業務に関連する場合

・ 当該賞が、会社から独立した、広く認知され評判が高い機関により授与されたものでは

なかった場合

・ 当該賞が、公正な競争の結果によらない、例えば、全ての企業に参加資格があるわけでは

ない状況で授与された場合

上記の場合には、業務実施者は、「主要な実績」という概念を規準が十分詳細に定義してい

るか(例えば、当該賞の対象となった業務の範囲、授賞機関の評判又は当該賞への参加資格の

範囲等の事項を分かりやすく表示しているか)を考慮する必要があるかもしれない。また、結

果として得られる主題情報が誤解を招かず、規準が適合するように、それらの事項を開示す

ることが規準により要求されているか否かを業務実施者は考慮する必要があるかもしれな

い。

《5.定性的情報に関する証拠を入手するための具体的な考慮事項》

337.定性的な主題情報の証拠を入手する際に、以下に挙げるような多くの検討すべき事項が存在す

る可能性がある。

(1) EER情報を作成するための企業のプロセスの有効性等(第6章参照)。実証手続のみでは主題

情報の発生、網羅性又は中立性に関する証拠が得られない可能性があるため、定性的情報に関

する証拠を入手するには不十分と考えられる。したがって、業務実施者は、内部統制の運用評価

- 80 -

手続を実施することによって証拠を入手できるかどうかを検討する場合があるが、これは限定

的保証業務には当てはまらないことが多い。業務を契約締結するに当たり、業務実施者は、作成

者が合理的な基礎に基づいて主題情報を作成していることを判断する。そのため、業務実施者

は、作成者のEER報告プロセス及び関連する内部統制により、自らの結論を裏付けるために必要

な証拠を入手できるとの合理的な期待を得ることができる。業務の状況が複雑でない場合、相

対的に非公式な内部統制又は簡素な内部統制が存在することがあるが、複雑さが増すほど、EER

報告プロセス及び関連する内部統制は複雑になると考えられる。以下は合理的保証業務の場合

の設例である。

設例

ある病院の救急外来の受付では、患者の詳細情報を、患者の救急外来到着時刻と併せて、コ

ンピューターシステムに直接入力する。更に、専門医による初診時刻と患者の重症度(「軽

症」から「重篤」までの分類)を当該専門医がシステムに直接入力する。当該病院のEER報告

書で報告されているその他の事項として、患者の重症度分類(定性的情報)別に、救急外来到

着後3時間以内に1名の専門医が診察した救急患者の割合(定量的情報)が報告される。

このようなケースでは、情報が同じシステムから抽出されたレポートに基づいている場合、

質問又は実証手続のみでは不十分な可能性があるため、業務実施者は、コンピューターシス

テムへの物理的及び論理的アクセス等の内部統制の運用評価手続を検討することがある。デ

ータ入力又は分類の誤謬が検出されない可能性や、又は担当者がコンピューターに入力され

た記録に対して、事後的に承認されていない変更を加える可能性がある。

また、患者が診療を終えた際に、コンピューター端末に直接、フィードバックを入力できる

場合にも、同様の考慮事項が当てはまると考えられる。この場合、コンピューター端末への物

理的及び論理的アクセスを十分に制御できていないため、報告された「患者の満足度」に関す

るEER情報を対象とした内部統制のテストや、実証的な証拠の入手が不可能となる可能性があ

る。この場合、範囲の制約が存在すると考えられる。

(2) 報告する情報の基礎として内部情報源を利用する場合(例えば、情報が企業のシステムにリ

アルタイムで直接入力され、当該情報を裏付けるハードコピーの文書がない場合又は情報が、

電話、電子メール若しくはその他の内部通信による非公式の伝達により得られる場合等)。これ

らの情報源だけでは不十分と考えられるため、業務実施者は、このような方法で記録又は収集

された情報を裏付けるためにどのような証拠を入手できるかを検討する必要がある場合がある。

例えば、企業がコンピューターシステムに情報を直接取り込んでいる場合、業務実施者は、合理

的保証業務において、情報の入力に関する物理的・論理的なセキュリティ管理及びアクセスコ

ントロール並びに入力の根拠を理解し確認する必要がある場合がある。非公式の伝達を通じて

情報を収集する場合、作成者の帳簿及び記録には、それらの伝達内容を裏付ける十分な証拠が

記録されている必要がある場合がある。

設例

親会社の作成者が、海外子会社から、現地事業での生産工程で有害な汚泥が水域に漏出す

- 81 -

る事故が発生したとの電子メールを受け取る。電子メールには、汚泥の漏出量は少なく、すぐ

に浄化して管理しており、それ以上の措置は必要ないと記載されている。

作成者は、主題情報を作成する際に、当該電子メールの文言をもってEER報告書の基礎とす

る可能性がある。このような電子メールは、EER報告書の主題情報を裏付ける十分な証拠とは

なり得ない。業務実施者は、どのような証拠を追加で入手できるかを検討する必要がある。そ

の証拠として、例えば、現地の環境管理機関が発行する検査及び浄化の証拠文書や浄化後の

有害化学物質量が安全基準内であることの確認書等が考えられる。

(3) 作成される定性的情報の適時性。作成者は、業務実施者に定量的情報を提供することを重視

する場合があるが、業務実施者にとっては、保証業務の早い段階で企業のEER報告書の草案を入

手することが重要と考えられる。報告書を早期に入手することにより、業務実施者が規準の適

合性を評価し、定量的及び定性的な主題情報の双方に関連する証拠を入手する手続を計画・実

施する時間や、また、作成者が適宜、主題情報の調整を行うかどうかを検討する十分な時間を確

保できる。EER保証業務の対象範囲が、定性的・定量的な説明の双方及び関連する開示情報が含

まれるEER報告書の全体であるか一部であるかを問わず、定性的主題情報は、定量的主題情報と

同等に重要な主題情報である。

338.定性的情報におけるアサーションは、明示的な場合も黙示的な場合もある。定性的情報では、

数値的な主題情報に利用されるものとは異なる種類のアサーションが利用される場合があるが、

これは適用される規準によって異なる。同じアサーションが適用できる状況でも(第7章参照)、

定性的情報については、分かりやすさや比較可能性及び同一文書内で企業が表示するその他の記

載内容との整合性等のアサーションが重視される場合がある。

339.定性的情報に関連する業務実施者の作業を検証し文書化する場合、長い文章を分割し、各セク

ションや段落又は文章が異なる事項について述べている場合には、それらを別々に検討すること

が業務実施者にとって有益となる場合がある。この場合、上記のそれぞれに対して異なるアサー

ションが適用できることが多い。定性的情報は、証拠を入手する際に数値情報と同等に厳格であ

る必要がある。一部の証拠は、関連する定量的情報について実施される手続から入手できる場合

があるが、追加作業が必要となる可能性がある。

340.主題情報の個々の企業の主張又は指標は、特に、それらが定性的な主題情報のより広範なセク

ションの一部である場合(それら全てが同等に重要であるとは限らないが)、それぞれが重要で、

個別に検証できる場合がある。また別の状況では、関連する定性的及び定量的な主題情報からな

る文章の各段落を併せて考慮する必要がある場合がある。

341.これを行う実務的な方法として、文章を異なる色でハイライトすることや業務実施者が実施し

た作業及び入手した証拠を文書化したものに記載されている重要な定性的情報についての文章や

セクションを、四角で囲むことが挙げられる。業務実施者は、各定性的情報に対してこの手続を

実施することができ、最終的に保証業務調書を、主題情報の文章の関連部分に紐付けることがで

きる。

- 82 -

《6.定性的情報における虚偽表示を評価するための具体的な考慮事項》

342.保証実3000のA95項には、虚偽表示の重要性を評価する際に考慮される様々な質的要因が示さ

れている。定性的な主題情報の虚偽表示を評価する場合、当該虚偽表示が想定利用者の意思決定

に影響を及ぼすと合理的に予測できるかに焦点を当てて、当該虚偽表示が重要か否かを判断する

際に、第9章 第295項から第298項で考察されている同様の考慮事項が役立つと考えられる。定

性的な主題情報の虚偽表示は、以下の状況により発生すると考えられる。

(1) 不適切な情報が含まれていること。例えば、規準を満たしていない情報又は規準により要求

される情報を阻害し、又は歪曲している情報

(2) 入手可能な証拠によって裏付けられていない情報が含まれていること、又は証拠により記載

すべきであることが示唆されている情報を省略すること

(3) 規準によって要求される情報を省略すること。例えば、適切に開示されていれば利用者が意

思決定を変更する可能性が高い重要な後発事象に関連する情報

(4) 曖昧な説明又は意味が不明確な説明を提示すること

(5) 正確に判断できる情報を曖昧な言葉で表示すること

(6) 前回の報告期間以降、合理的な根拠なく、又は理由を開示することなく、開示又は表示した

情報を変更すること。

(7) 情報の表示方法。例えば、以下のような表示方法が挙げられる。

・ 入手可能な証拠に基づいているものの、文脈から外れ、歪曲した表現を使用し、又は適正な

大きさよりも目立つように若しくは目立たないように表示すること

・ 事実に基づく報告よりも良いイメージを与える誇張表現及び形容詞を使用すること

(8) 選択的な情報に基づき、例えば、以下のような主張を通して、大胆な結論を不適切に導き出

すこと

・ 僅か100社の情報に基づき、「世界中の多数の企業」と表現すること。100という数は「多数」

ではあるが、世界中の企業数と比較した場合には多数ではない。

・ 「昨年から倍増した」は事実かもしれないが、この倍増した元の数値が小さかったことは開

示されていない場合がある。

343.定性的情報に虚偽表示が認められ、作成者がこれを訂正していない場合、業務実施者は、当該

虚偽表示を列記するか又は主題情報の写しに目印を付すことにより、当該虚偽表示を集計するこ

とがある。業務実施過程での虚偽表示の集計方法にかかわらず、業務実施者は、入手した証拠の

評価時及び保証の結論の形成時に、個別に重要な未修正の虚偽表示のみならず、個別には重要で

なくとも、総合的に考慮した場合に主題情報に重要な影響を及ぼす可能性のある虚偽表示も考慮

する必要がある。ただし、主題情報が定量的に測定できない場合には、虚偽表示を単純にまとめ

て、総合的な影響を判断することはできない。

344.定性的な主題情報が、一つの主題のみに関連している場合、虚偽表示はその主題情報に関連す

る範囲内でのみ考慮されるため、個別に重要でない虚偽表示が主題情報に与える複合的な影響を

評価することは比較的簡単であると考えられる。

345.主題情報が、広範にわたる主題の様々な側面を対象とするEER報告書全体である場合、規準が

報告書全体の重要性を考慮する際に未修正の定性的な虚偽表示がEER報告書にもたらす複合的な

- 83 -

影響を評価する方法を見いだすことはより困難であると考えられる。主題情報の様々な部分に関

連する共通要因がない場合、EER報告書に含まれる情報の様々な側面に対してそれぞれ異なる重点

が置かれる、または、想定利用者にとってある側面が別の異なる側面よりも重要である場合があ

る。

346.業務実施者が、想定利用者がどのような人々で、主題情報のどの側面が重要である可能性が高

いかを理解することは、どの虚偽表示が重要であるかについて職業的専門家としての判断を行使

する業務実施者の能力に関連すると考えられる(第3章及び第9章参照)。

347.定量化できない全ての虚偽表示を列記した後、例えば、それらの虚偽表示が共通して、主題の

特定の側面に関連するのか、又は特定の規準に関連するのかによって、それらをグループ化する

ことが可能である場合がある。例えば、企業のESG報告書では、従業員の健康と安全に関して経営

者が述べた定性的な主張の中に個別に重要でない虚偽表示が一つ以上あり、更に従業員のダイバ

ーシティ(多様性)に関連する重要でない別の虚偽表示があるとする。健康と安全及びダイバー

シティはいずれもESG報告書の社会的側面に関連しているため、業務実施者は、これらの虚偽表示

をグループ化し、企業のESG報告書が社会にもたらす複合的な影響を検討できると考えられる。同

様に、水使用量情報の報告のうち、重要でない多数の虚偽表示と事業活動から生じた廃棄物に関

連する別の重要でない虚偽表示は、いずれもESG報告書の環境的側面に関連するため、併せて検討

できると考えられる。

348.ただし、業務実施者がそれらを併せて検討できるかどうかは、規準で要求される集約又は細分

化の水準による。規準により、社会的側面という水準でESG報告が要求されている場合、社会的側

面において生じている虚偽表示の複合的な影響を考慮することが適切であると考えられる。より

細分化された主題情報の報告が規準により要求されている場合、個々の細分化された側面に関連

して生じている虚偽表示は、個々の側面に関連して考慮する必要があると考えられる。

349.業務実施者が更に考慮すべき事項は、虚偽表示が主題情報の個々の側面との関連では重要でな

くとも、集計すると、主題情報を全体として見た場合には重要な虚偽表示となる可能性があると

いうことである。

350.主題又はその他の共通要因によってグループ化できない虚偽表示であっても、共通の方向性、

語調又は傾向を表している場合がある。例えば、主題情報が、虚偽表示の影響により、全体的に実

際よりも良いイメージを与える情報に見えたり、全ての虚偽表示が会社の活動のプラスの取組と

その影響を誇張し、マイナス面を過小に扱っていたりする場合、それらの主題情報は、全体的に、

利用者に誤解を招くような偏向したイメージを与えることとなる。

351.識別された虚偽表示の根本的な原因を理解することは、業務実施者が主題情報に対する虚偽表

示の重要性を評価するのにも役立つと考えられる。例えば、定性的な虚偽表示は、主題情報を作

成する従業員による誤解、見落とし又は誤謬が原因である場合もあれば、経営者が事実を意図的

に虚偽表示することを決定したことによる場合もある。前者は重要とはみなされず、後者は重要

とみなされる可能性がある。

352.他の虚偽表示と同様に、業務実施者は、作成者にそれらの虚偽表示を修正するよう求めること

がある。説明形式で表示された主題情報の場合、虚偽に当たる部分の書換え又は削除が必要とな

ることが多い。作成者が虚偽表示の修正を拒否した場合、業務実施者は、無限定の保証の結論が

- 84 -

適切であるかを検討しなければならない。

《7.定性的情報がその他の記載内容と併せて表示される場合の具体的な考慮事項》

353.EER報告書の一部のみが保証の対象である場合等、主題情報がEER報告書の全体ではなく一部で

あっても、その部分が定性的情報と定量的情報の両方を含む場合がある。そのような場合、保証

の対象となる定性的側面と定量的側面は、いずれも主題情報であり、その主題情報以外の情報は

いずれも「その他の記載内容」となる。想定利用者が保証されている情報と保証されていない情

報を明確に区別できるように、保証の対象となる情報を「その他の記載内容」と明確に区別する

ことが重要である。

354.EER報告書内の「その他の記載内容」にも、画像やその他の視覚的な効果が盛り込まれることが

ある。

設例

「当社は、当社のサービス及び職員に関するフィードバックを得るために、第三者に委託

して、地域住民を対象とした調査を四半期ごとに実施しています。過去〇回の調査では、回答

者の〇%が、当社のサービスと最前線の職員を一貫して「非常に素晴らしい」と評価していま

す。

優れたサービスを地域社会に提供できるように、人材の採用、育成及び研修におけるベス

ト・プラクティスへのコミットメントについて、当社の会長兼CEOが説明する動画をご覧くだ

さい。」

この例では、動画には、規準を適用しておらず、証拠収集手続の対象とすることもできない

主観的なコメントが含まれている可能性がある。これは、「その他の記載内容」とみなされ

る。ただし、業務実施者は、(1)当該動画が保証業務における手続の対象ではないことを保証

報告書に明示し(第12章参照)、(2)動画を閲覧し、保証実3000第62項で要求される主題情報

又は保証報告書との重要な相違が存在する場合には、これを識別する必要がある。

355.業務実施者は、このような「その他の記載内容」が、EER報告書で説明的に表示されている定性

的情報のメッセージ及び語調と整合しているか、又はそれらが矛盾する印象を与えないかを検討

する必要がある。例えば、会社が新しい生産施設を建設するために地域住民を移転させたにもか

かわらず、その地域住民の幸せそうな様子の画像を示すことは整合性がないと考えられる。

356.企業のEER報告書がその財務報告と統合されている場合、業務実施者は、基準が要求する「その

他の記載内容」を通読する責任として、EER報告書と同じ文書内に含まれる情報、すなわち、財務

諸表及び財務諸表に係る説明を通読する責任も負う。業務実施者は、その他の記載内容と主題情

報との整合性を考慮しなければならない。利用する規準によっては、EER報告書に含まれる主題情

報と、同じ主題に関連する「その他の記載内容」との相違が合理的なものである場合があるが、

EER報告書の利用者がその相違の理由を理解できるように、作成者は、その相違について説明又は

調整して開示する必要がある。

- 85 -

《8.定性的情報について保証報告書で伝達する際の具体的な考慮事項》

357.第12章で更に考察するとおり、業務実施者の目的は、規準に照らした主題の測定又は評価の結

果について、想定利用者の信頼性を高める結論を表明することができるように十分かつ適切な証

拠を入手することである。

358.主題を定量化できない場合、それを評価する方法は、定量化できる場合よりも様々な方法が存

在し、また、多くの解釈を成り立たせる可能性があるため、主題情報について想定利用者に誤解

を生じさせる可能性が高くなると考えられる。したがって、業務実施者は、想定利用者に、主題の

評価に利用された規準を理解させることが特に重要であり、どの情報が保証業務における手続の

対象であり、どの情報がそうでないかを含め、保証報告書上で記載することにより想定利用者の

注意を当該規準に向けさせる必要があると考えられる(第12章参照)。

《第 11 章 将来志向の EER 情報への対応》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

359.本章では、以下の場合に、将来志向のEER情報の観点から業務実施者が考慮すべき具体的な事

項に関するガイダンスを提供する。

(1) 規準の適合性を判断する場合

(2) 証拠を入手する場合

(3) 虚偽表示を評価する場合

(4) 保証報告書において将来志向のEER情報を伝達する場合

360.本章のガイダンスは、見積り又は発生の不確実性が伴う将来志向の主題情報に焦点を当ててい

る。

361.定性的情報は第10章で別途検討されているが、定性的情報と将来志向の情報は相互に排他的な

ものではない。例えば、定性的情報は将来志向の情報である場合も過去の情報である場合もあり、

将来志向の情報は定性的にも定量的にも表現される場合がある。業務実施者にとって、本章のガ

イダンスを、第10章のガイダンスと併せて検討することが有用であると考えられる。

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

362.EER報告書には、以下のような様々な形式の将来志向の主題情報が含まれる場合がある。

(1) 将来の状況又は結果に関する情報。これには、予想、予測及び将来的なリスクと機会に関す

る情報、例えば、脱炭素社会への移行に関連するものが含まれる場合がある。

(2) 企業の意図又は戦略に関する情報

363.将来志向の情報は、他の主題情報と同様に、主題に規準を適用して作成されるが、主題(将来

の事象、出来事又は活動)の不確実性は、過去の情報の主題より高く、評価の精度は一般に低くな

ると考えられる。そのため、考えられる仮定や結果の範囲が広範となり、評価の規準が適合して

いるかを判断することは困難となる可能性がある。様々な結果が考えられ、そのいずれもがあり

得る場合、主題情報がどうあるべきで、利用者の意思決定にどのような影響を与える可能性があ

るかを知ることは困難である。

364.将来志向の主題情報が基礎としている仮定を裏付ける証拠がある場合もあるが、そのような証

- 86 -

拠自体が一般的に将来志向であるため、過去の事象及び状況に関して通常入手可能な証拠とは異

なり、推測を伴う性質を有している。

365.主題に関連する固有の不確実性、それを評価するために利用される規準と仮定及び入手可能な

証拠の推測を伴う性質により、考えられる結果の範囲が広範となり、主題情報に重要な虚偽表示

があるか否かを識別することも困難となる可能性がある。

366.一部の将来志向の情報は事実であるため、そのような将来志向の情報、例えば、契約条件によ

って決定される企業の債務期日情報等には、不確実性の極めて高い情報は含まれていない。この

ような種類の情報に対する保証業務の実施は、業務実施者にとって特に困難とは考えられないた

め、本章の残りの部分では、見積り又は発生の不確実性が伴う将来志向の情報についてのみ検討

する。

《3.将来志向の EER 情報の性質》

367.将来の状況又は結果を予想又は予測する主題情報は、まだ発生しておらず、発生しない可能性

がある、又は発生済みであるが今後の進展の予測がつかない事象及び活動に関連するものである。

368.将来志向の主題情報は、以下のような事項を説明するものと考えられる。

(1) 後日観察可能な事象又は活動

(2) 実現しない可能性のある仮定に基づく事象又は活動

369.後日観察可能な将来志向の情報については、予想、予測若しくは意図が、その後に発生した事

実をどの程度正確に反映していたか、又は予想した若しくは予想しなかった将来のリスクや機会

がどの程度実現したかを将来のある時点で観察できる。仮定の情報には、予想、予測又は意図に

関する条件が含まれる。例えば、企業が特定の契約を獲得したという条件で、当該企業の利益が

翌年に5%増加すると予測されることがある。

設例

観察可能な主題情報と仮定の主題情報の違いは、予想と予測(ISAE3400「見込財務情報の調

査」第4項及び第5項の定義に基づく。)の違いによって説明される。

予想(Forecast)は、情報の作成日において経営者が発生すると期待する将来の事象及び経

営者が取ろうとしている活動に関する仮定を基礎として作成される(最善の見積りに基づく

仮定)。

予測(Projection)は、発生するとは限らない将来の事象及び経営活動に関する仮定又は仮

定と最善の見積りの組合せに基づくものである。このような情報は、当該事象及び活動が発

生したと仮定した場合に、情報の作成日の時点で考えられる結果を示している。これをシナ

リオ分析ともいう。

《4.将来志向の EER 情報に関する規準の適合性を判断するための具体的な考慮事項》

370.将来志向の情報の作成に適用される規準は、主題に関して、過去情報に関連して報告された情

報とは異なる情報を必要とする場合又はそのような異なる情報を入手するよう設定されている場

合がある。そのような情報の例としては、主題のある側面に関する将来の状態や状況の説明又は

状態や状況の将来における経年変化が挙げられる。

- 87 -

371.将来志向の情報の作成に適用される規準がEER保証業務に適合していると判断されるか否かは、

第5章で説明されているその他の規準と同じ方法で判断できる。

372.業務実施者は、規準を適合したものとするために、用いた仮定並びに不確実性の性質、原因及

び程度についての開示の規準が必要であると結論付ける場合がある。固有の不確実性を伴う主題

情報に対する保証業務を実施することは依然として可能であると考えられる。これらの状況での

考慮事項は、適切に開示されることにより想定利用者に固有の不確実性が伝わるか否かである。

《5.将来志向の EER 情報に関する証拠を入手するための具体的な考慮事項》

373.将来志向の主題情報に関する考慮事項は、測定、評価又は発生に関する固有の不確実性が伴う

過去の主題情報と類似している可能性が高いため、第7章のガイダンス及び第8章に記載した業

務実施者の考慮事項が広く適用できる。作成者が将来志向の情報をより主観的に決定した場合、

経営者の偏向のリスクがあるため、手続を立案する際に、中立性、表示及び理解可能性に関する

考慮事項の重要性が相対的に高まると考えられる。

374.規準が、企業の将来の戦略、目標又はその他の計画についての記載(明示的なアサーション)

を要求しているとき、業務実施者は、当該戦略、目標又は計画が達成されるか否かについての証

拠を入手できない、又はその結果について結論を出すことができない可能性が高い。それでもな

お、業務実施者は、誤解を生じさせる可能性のある主題の側面を除外するために、以下の事項を

評価するための手続を立案することがある。

(1) 経営者又はガバナンスに責任を有する者は、当該戦略に従う意思があるか否か。

(2) 当該目標又は計画が実在するか否か。

(3) 計画された戦略又は目標には合理的な基礎が存在するか否か。

375.適切な証拠は、例えば、報告された戦略又は他の計画が企業の実際の内部向けの戦略又は計画

と整合しているか否かについて、ガバナンスに責任を有する者の会議内容を記録した文書や経営

者が当該戦略の採用又は当該目標への同意を得るために既に取り組んでいる活動を記録した文書

の形式で入手できると考えられる。

376.企業がその計画を実行する能力を有していること、又はそれを実行するための手段を開発する

予定であることのより黙示的なアサーションが存在するか、又は実行能力に関する明示的な規準

が別に存在する可能性がある。目標が達成されるかどうかという点に関して、保証を提供するこ

とはできない一方で、業務実施者は、仮定を形成するプロセス、システム、内部統制及びそれらの

基礎データを考慮すること等により、作成者が将来の活動又は事象について行っているアサーシ

ョンが合理的な基礎に基づいているか否かに関する証拠を入手するための手続を立案することが

できる。

設例

企業が、新たに立ち上げた戦略について報告し、報告書全体の保証を求めている。業務実施

者は、企業がその報告書の以下の段落に記載する主張の証拠をどのように入手できるかを検

討している。

当年度の初めに、2050年までに「ネットゼロ」企業になるという目標を発表しました。この

目標を達成するために、当社は、新たな戦略により、当社の事業を、石油の採掘と精製から、

- 88 -

クリーンで安全なエネルギーの未来の先導役になるよう変えていくことを目指します。これ

まで当社は、0.5GWの再生可能エネルギーの発電設備容量を開発しており、今後8年間で、こ

れを10倍に増やすことを目指しています。また、脱炭素技術への投資を年間10億ドル超(現在

の投資額の4倍)増やすことで、当社の水素市場のシェアを2030年までに5%に拡大すること

を目指しています。

業務実施者は、入手しようとする証拠について記録した。当該記録には、特に以下の事項が

記載されている。

・ 戦略を発表した文書の写し又は媒体検索:文書が公表されているかを確認し、その関連

する戦略が、企業が事業運営のために実際に文書に記録している戦略と同じであるかを確

認する。

・ 現在の発電設備容量0.5GWの施設建設レポート:当該施設は使用可能であり、実際に使用

されているか。使用されている場合、現在発電されている再生可能エネルギーに関してど

のような証拠があるか。

・ 用いられる仮定は、当該事業と業界に関する既知の情報を踏まえ不合理ではないか(再

生可能エネルギーの10倍の増加との主張に合理的な基礎があるか否かについては、想定さ

れる設備と投入資金を考慮し、業務実施者の利用する専門家の支援を受ける。)。

・ 今後8年間に施設を増設する計画の証拠。例えば、議事録、締結済みの契約書、作成され

た計画書、確約された融資等は存在するか。現在の発電設備容量を獲得するまでにかかっ

た期間を考慮し、8年は現実的な期間であるか。

・ 会社は、今後8年間で毎年10億ドルの資金をどこから調達する予定であるか。例えば、確

約された銀行からの借入の証拠等は存在するか。

・ クリーンエネルギーへの現在の投資を含め、どのような情報がベースラインとして使用

されているか。

・ 当該戦略は、既存のコミットメントにどのような影響を与えるか。

・ そのコミットメントの内容は何か。

377.同様に、将来のリスクや機会に関する情報の報告が規準により要求される場合、合理的保証業

務に関してアサーションレベルでの重要な虚偽表示のリスクには、リスクと機会が存在すること

(実在性のアサーション)及びリスクと機会の一覧が、想定利用者の意思決定を支援するリスク

と機会を網羅していること又は網羅性のアサーションに関連していることが含まれる可能性が高

い。適切な証拠は、企業のリスク一覧表又はガバナンスに責任を有する者の協議記録を参照する

ことで入手できる。ただし、リスク一覧表と協議記録の管理に係るプロセスと内部統制が、これ

らの情報源を証拠として使用するための合理的な基礎を提供することが重要である(第6章参照)。

378.業務実施者は通常、リスクと機会が実現するか否かについての心証を得ることはできないが、

状況によっては、リスクと機会の性質、例えばその可能性や考えられる影響に関する情報につい

ての心証を得ることができる場合がある。これが可能か否かは、適用される規準が適合している

か、及び適切な証拠が入手可能であるかによって決まる。共通の課題は、リスクと機会の可能性

- 89 -

及び考えられる影響が、企業が把握していない要因又は企業の内部統制外にある要因により、大

幅かつ急速に変化する可能性があることである。

379.将来の状況又は結果に関する主題情報は、まだ発生しておらず、発生しない可能性がある、又

は発生済みであるが今後の進展の予測がつかない事象及び活動に関連するものである。業務実施

者は、予想又は予測される結果が達成又は実現されるか否かを判断することはできない。業務実

施者は、そのような判断の代わりに、以下の事項に焦点を当てる場合がある。

(1) 予想の場合、主題情報の作成に使用される仮定に合理的な基礎が存在するか(第377項の例を

参照)。

(2) 仮定の場合、その仮定がその情報の目的と整合しているか。

(3) 将来志向の主題情報は、仮定に基づき、適用される規準に従って作成されているか否か。

380.ただし、業務実施者は、そのような証拠自体が推測を伴う可能性があることを念頭に置く必要

があり、仮定が変更された場合、結果がどれほど大きく変化するかを検討するために感応度分析

が求められる場合があると考えられる。

381.将来の状況や結果に関する主題情報を考慮する場合、第8章で検討される思考プロセスと同じ

プロセスを適用できる。業務実施者は、どのような決定が予定されているか、どのように主題情

報が適切に測定若しくは評価、表示又は開示できないのか、重要な虚偽表示を引き起こす可能性

のある要因は何か、及びどのような方法で企業の経営者は当該リスクを管理・低減するかを質問

することがある。

382.入手可能な証拠に関する業務実施者の考慮事項には、特に以下の事項が含まれる可能性がある。

(1) 企業が主題情報の報告に関してどのようなガバナンス及び監督を行っているか。また、企業

が行った仮定と予想の根拠に使用されるデータ又はその他の情報の合理的な基礎を提供するシ

ステム、プロセス及び内部統制が存在するか否か(第6章参照)。

(2) 企業が行った仮定の根拠としてどのような情報源が使用されているか。また、それらの情報

源の信頼性

(3) 企業がどのような統計的手法、数学的手法又はコンピューター支援のモデリング手法を使用

したか(使用している場合)。また、仮定を形成及び適用するために使用した方法

(4) 企業が使用した技法と手法がどれほど信頼できるか。また、それらが予想の対象となってい

る主題とどれほど関連しているか。

(5) 作成者の過去の経験と将来を予想する能力

(6) 作成者が過去に行った予想の正確性。予想した結果と実際の結果との間に大きな差異がある

場合にはその理由。作成者が過去に信頼できる予想を行っており、主題が本質的に変動するも

のでない又は変更されるものでない場合には、作成者が過去に信頼できる予想を行っていない

場合又は予想を行う際に主題が変動するかどうかを考慮していなかった場合よりも、説得力が

増す可能性がある。

(7) 将来志向の情報の対象となる期間。対象期間が長くなるほど、最善の見積りを行う能力が低

下するため、仮定はより不確かなものとなる。

(8) 変化に対する主題の固有の感度及び発生し得る変化に対する仮定の感応度

(9) 企業がどの程度、将来の状況を単独で又は部分的に内部統制しているか、又はそれらが企業

- 90 -

の内部統制外であるか否か。

(10) 仮定とその仮定に基づく主題情報の適切な作成の双方を裏付けるために作成者が有する証

拠及び文書、並びにその証拠がどの程度説得力があるか。

(11) 記載されている結果の達成に対し、作成者が示している進捗の程度又は結果の達成を可能に

するための計画と経営資源が整っているか否か。

(12) EER情報に含まれる、仮定、計算方法及びベースラインに関する開示情報

(13) 業務チームに主題に関する専門知識又はその他の専門知識が必要か否か。必要な場合には、

その専門知識の情報源

383.十分かつ適切な証拠を入手するための手続を立案及び実施する際、並びに入手した証拠の十分

性と適切性を評価する際の考慮事項は、第8章に記載されている考慮事項と同様であり、将来志

向の情報が説明的に表示される場合も、第10章に記載されている考慮事項と同様である。

384.ただし、証拠が推測を伴う性質を有する場合には、事実の場合よりも、証拠により形成される

心証を判断することはより困難になると考えられる。経営者による確認書は、十分かつ適切な証

拠に代わるものではないが、将来志向の情報の保証業務に関しては、対象となる情報が経年に蓄

積されていたとしても、保証報告書の日付現在の仮定が引き続き適切であることを確認するため

に企業のガバナンスに責任を有する者から確認書を入手することの重要性が比較的増すと考えら

れる。

385.将来志向の情報は、過去の情報よりも固有の不確実性が高いため、結果が、考えられる結果の

合理的な範囲内にあるか否かを評価することも許容される場合がある。

386.将来志向の情報に関しては、利用者が主題情報と関連する固有の不確実性を理解できるように

表示及び開示することが重要となる。主題情報の表示及び開示が適切であるか否かに関する業務

実施者の考慮事項には、以下の事項が含まれる可能性がある。

(1) 将来志向の情報が、有益かつ中立的で、誤解を招かないように表示されているか否か。

(2) 使用された仮定とその仮定の根拠が明確に開示されているか否か。

(3) 将来志向のEER主題情報がある一定の期間で示されている場合、その期間内の時点を決定した

根拠が開示され、当該期間が偏向した又は誤解を招く方法により選択されていないか。

(4) 将来志向の情報の作成日が明確であり、その作成日時点で仮定が適切であると表明されてい

るか否か。

(5) 利用者が起こり得る事態の影響を理解できるように、関連する不確実性と感応度が開示され

ているか否か。

(6) 比較情報が表示される場合、当期間中に仮定又は主題の作成根拠に変更があったか否か、そ

の変更が、変更理由及び主題情報への影響と併せて開示されているか否か。

《6.将来志向の EER 情報における虚偽表示を評価するための具体的な考慮事項》

387.第363項で考察されたとおり、将来志向の情報は通常、過去の情報よりも測定、見積り及び評価

の不確実性が高くなる。そのため、考えられる測定又は評価の結果が広範にわたることとなり、

仮定が以下に該当する状況となっていることを識別することが困難となる可能性がある。

(1) 合理的でないこと(予想の場合)

- 91 -

(2) 非現実的であり、情報の目的と整合していないこと(予測の場合)

388.業務実施者にとって、以下に挙げられる例のように、虚偽表示が発生し得る過程又は「どのよ

うな虚偽表示になり得るのか」を検討することが役立つことがある。

(1) 仮定を適用する根拠として使用されるデータ又はその他の情報が、関連性がなく、網羅的で

なく、信頼できないと考えられる場合

(2) 仮定に、関連性のない情報が含まれているか、重要な考慮事項が省略されているか、又は不

適切な重点付けが行われている場合

(3) 使用される仮定が伝達しようとする決定事項と整合していない場合

(4) 基本データ若しくは情報に対して、又は定量化が可能な情報の計算において、意図的である

か否かを問わず、仮定が誤って適用されている場合

389.場合によっては、虚偽表示は、上記の状況の組合せに起因する可能性があり、それを個別に識

別することが困難となることがある。

390.業務実施者はまた、作成者が以下のいずれかを行った場合に、仮定若しくは方法の選択又は主

題情報の表示方法に、その後のEER保証業務に影響を及ぼすと考えられる経営者の偏向の兆候が存

在するか否かを検討することがある。

(1) 合理的な根拠なく、使用された仮定若しくは方法を変更している場合又は状況に変化があっ

たという主観的な評価を下している場合

(2) 観察可能な市場の仮定と不整合な仮定を使用している場合

(3) 経営者の目標に有利となる、又はそのようなパターンや傾向を示す重要な仮定を選択してい

る場合

391.主題情報の測定又は評価に使用される仮定及び主題情報に伴う不確実性について、想定利用者

が自らの意思決定への影響を理解できるように、また主題情報が誤解を生じさせるものとならな

いように、作成者が当該仮定及び不確実性を適切に開示しているか否かを検討することも重要と

考えられる。

《7.将来志向の EER 情報について保証報告書で伝達する際の具体的な考慮事項》

392.第10章及び第12章で考察するとおり、業務実施者の目的は、主題情報(すなわち、規準に照ら

した主題の測定又は評価の結果)について、想定利用者の信頼性を高めるような結論を表明する

ために十分かつ適切な証拠を入手することである。

393.主題に伴う見積り又は評価の不確実性の程度が高くなる場合には、不確実性が低い場合よりも

様々な見積り又は評価が存在し、また、多くの解釈を成り立たせる可能性がある。この結果、主題

情報について想定利用者に誤解を生じさせる可能性がある。したがって、業務実施者は、想定利

用者に、主題の評価に利用された規準を理解させることが特に重要であり、主題の測定又は評価

に関連する固有の限界を、適用される規準に照らして説明すること等により、保証報告書におい

て想定利用者の注意を当該規準に向けさせる必要があると考えられる(保証実3000第69項(5)参

照)。

設例 保証報告書の記載例

A社は、将来の事象と経営者の活動に関する一連の仮定を使用して、○○及び××[識別さ

- 92 -

れた主題情報]に関連する結果の予測を行った。予想された事象は、想定どおりに発生しない

ことが多いため、実際の結果は、予測された結果と異なる可能性がある。また、予測された結

果と実際の結果との差異は重要である可能性がある。

《第 12 章 保証報告書における効果的な伝達》

《1.本章のガイダンスで扱う事項》

394.本章では、利用者が以下の事項を理解できるように、保証実3000第69項の要求事項に準拠する

書面による保証報告書において業務実施者が効果的に情報を伝達する方法についてのガイダンス

を提供する。

(1) 保証報告書の対象となる利用者

(2) EER保証業務の主題

(3) 主題の測定方法又は評価方法

(4) EER保証業務の実施方法

(5) 主題情報に関する保証の結論

《2.本章のガイダンスが業務実施者にとって有用となる状況》

395.本章のガイダンスは、業務実施者がEER保証報告書を作成する際に有用となるように記載されて

いる。

396.保証実3000第69項には、保証報告書が含めるべき特定の基本要素が明示されている。ただし、保

証実3000では、報告のための標準的な様式は要求されておらず(保証実3000のA160項参照)、追加

の情報を記載することが認められている。本章のガイダンスは、想定利用者の理解を促すために

業務実施者が効果的に情報を伝達する際の一助となりうるものであり、以下の事項について取り

扱う。

(1) 保証報告書における必要な要素の表示方法

(2) 業務実施者が、保証実3000で要求される基本的な要素のほかに、EER保証報告書への記載を検

討することのできる追加の情報

(3) 保証報告書における当該追加の情報の表示方法

《3.保証報告書における効果的な伝達》

397.保証業務とは、業務実施者が、想定利用者の主題情報についての信頼の程度を高めるために形

成した結論を表明するに足る、十分かつ適切な証拠を入手することを目的とする業務である(保

証実3000第12項(35)参照)。

398.保証報告書は、保証の結論を伝え、その結論の根拠を説明するものであり、業務実施者が保証

業務の結果を想定利用者に伝達する手段である。そのため、保証の結論に対する想定利用者の理

解のために明確に伝達することが必要である。

399.二者択一で表現された保証の結論(例えば、主題情報が、適用される規準に従って作成されて

いるか否かという結論)では、想定利用者の理解を促すために第400項に記載されているような追

加の情報が提供されなければ、EER保証業務で生じる複雑さを十分に伝えることはできない(406

- 93 -

項参照)。

400.第396項に記載されているとおり、保証実3000では、保証の結論に関して以下の事項を目的とし

て、保証実3000により要求される基本的な要素に加えて、特定の業務状況に合わせた追加の情報

を保証報告書に記載することが認められている。

(1)根拠の説明

(2)保証の結論に関する適切な背景事情の提示

401.追加の情報を記載するかどうかは職業的専門家としての判断が必要となる。これには、保証報

告書の報告形式を保証実3000のA161項に記載されているように、短文式とするか長文式とするか

といったことも含まれる。短文式の報告書には通常、保証実 3000第69項で要求されている基本的

な要素のみが記載されるが、追加的な要素が僅かに記載されることもある。長文式の報告書には、

業務実施者の結論に影響を及ぼすことを目的としていない広範にわたる追加の情報や必要な要素

が漫然と述べられている場合がある。

402.保証実3000第68項で要求されているとおり、追加の情報を記載する場合、業務実施者の結論と

は明確に区別し、当該結論に影響を及ぼすものではないことが明らかになるように表現する。

403.EER報告書は、様々なグループの利用者向けに作成されることがあり、企業がある期間中に排出

した温室効果ガスのような、ある単一の側面から、以下に示した情報を含む企業の戦略、ビジネ

スモデル及び業績に至るまで、性質の異なる主題の様々な側面を対象とすることがある。

・ 財務情報及び非財務情報

・ 過去及び将来志向の情報

404.主題の様々な側面が比較的均一な場合でも、以下の事項に留意する。

(1) 測定又は評価することが複雑であるか、測定又は評価の不確実性の影響を受ける可能性があ

り、想定利用者がそのことに気付かないことがある。

(2) 測定又は評価するために使用される規準は、確立された枠組みにおいて規定されるか、企業

独自の規準又は企業による更なる開発の有無にかかわらず様々な枠組みから選択される可能性

があり、主題情報がどのように作成されたのかを利用者が理解するのが困難となることがある。

(3) 主題情報は、従来の独立した報告書の形式で提示される場合もあれば、ページ間にハイパー

リンクを設定し、ウェブサイトの複数のページにわたり提示される、あるいは外部のウェブサ

イトに提示される場合もある。また、部分的に叙述的に提示されることもあれば、グラフ、画

像、埋込み動画又は類似のものを使用して提示されたりする場合もある。そのような提示は、

EER保証業務の対象となっている事項とそれ以外に対する利用者の理解を妨げることがある。

405.保証実3000第69項に基づき、保証報告書の内容を想定利用者に明確に伝えるために以下を考慮

する。

・ 想定利用者が保証の結論の背景となる事情を理解できるか。

・ 想定利用者が保証業務の対象となっている情報について不適切な仮定を行うことがないか。

・ 想定利用者が業務実施者の結論の根拠を理解できるか。

・ 想定利用者が主題の測定又は評価に関連する限界を理解できるか。

これらを踏まえ、業務実施者が考慮すべき重要な事項として、以下の事項が挙げられる。

(1) 保証報告書の想定利用者及び保証報告書の目的

- 94 -

(2) 特に保証の範囲がEER報告書の全体ではない場合について保証業務の対象となる情報

(3) 主題情報の測定又は評価に対して適用された規準

(4) 主題の測定又は評価に関連する固有の限界

(5) 業務中に実施された手続の性質と範囲

(6) 得られた保証水準(限定的保証又は合理的保証)及びそれが主題情報に対する想定利用者に

与える保証への影響

406.保証報告書に必須の(又は基本的な)要素のほかに追加情報を記載するか否かを決定する際に

は、追加情報の記載により、特定の業務状況において必要とされる要素についての想定利用者の

理解が深まるか否かを考慮することが有用となる。業務状況等に応じて、業務実施者が記載する

ことが可能な追加情報の例には以下のようなものがある。

(1) 保証報告書の想定利用者及び保証報告書の作成目的

(2) 保証業務を実施するために必要な適性と、その適性が業務にどのように活用された方法(例

示1及び2参照)

(3) 業務実施者による重要性に関する考慮事項及びその考慮事項が定性的又は定量的な主題情報

に関連するもの(第423項参照)

(4) 主題情報の提示を受ける保証業務では、独立した業務実施者が主題情報について結論を表明

することが想定されているため、業務実施者が主題情報の作成に関与できない理由の説明(例

示1及び2参照)

(5) 主題情報で表示又は開示されている事項で、利用者が主題情報を理解するために欠くことの

できない重要な事項であると業務実施者が判断した強調事項(例示1及び2並びに第415項参照)

(6) 主題情報で表示又は開示された事項以外で、想定利用者による業務の理解、業務実施者の責

任又は保証報告書に関連していると業務実施者が判断した事項を伝達するための「その他の事

項」区分の挿入(第416項参照)

《4.保証報告書の内容》

407.本章末尾の保証報告書の例示1及び2には、以下の事項が提示されている。

(1) 合理的保証報告書及び限定的保証報告書のそれぞれに必要な要素(保証実 3000第69項参照)。

(2) 業務実施者が想定利用者の理解に役立つと考える追加情報の例(灰色がかった青色のボック

ス内に表示)。

408.報告書の例に示されている事項について本章の本文で詳細が説明されている場合、以下のガイ

ダンスの関連する項番号は、報告書の例の明るい青色又は灰色がかった青色のボックスに記載さ

れている。例示された報告書と設例は、業務実施者がとり得る唯一のアプローチを示したもので

はない。

《(1) 適用される規準の識別》

409.第3章及び第5章で検討したとおり、規準が想定利用者にとって利用可能な状態にあることが、

保証のための前提条件である。想定利用者はそれにより主題情報が作成された際の基礎を理解す

ることができるからである。業務実施者は、業務の開始時に、作成者には規準を識別したり、適用

- 95 -

される規準に照らして主題を測定又は評価したりするだけでなく、想定利用者がこの規準を利用

できるようにする責任もあることについて、注意喚起することが有用である。

410.適用される規準が特定の目的のために策定されている場合には、その旨、及びその結果として、

主題情報がその他の目的に適合しない可能性について、想定利用者に注意喚起する記載が保証実

3000第69項(3)で要求される。

411.作成者が規準を利用可能にすることを望まず、このことが保証業務の契約締結後に判明した場

合、保証実3000第42項及び第43項に準拠して対応する必要がある。業務実施者は、この場合、作成

者と協議し、業務実施者の納得のいくように解決できるかどうかを確認する必要があり、未解決

にしたまま業務を続行する場合、業務実施者は、保証報告書で作成者が規準を利用可能にしてい

ないことについて報告するかどうか、報告するとすればどのように行うかを決定する必要がある。

412.規準が主題情報に含まれていない、又は公開若しくは言及されていないか、作成者により、そ

れ以外の適切な方法で利用可能にされていない(第5章参照)場合には、業務実施者は、この規準

を保証報告書に含めて、主題情報がどのように作成されたかを想定利用者が理解できるようにす

ることが必要となる場合がある。想定利用者が規準を利用できるようにするのは作成者の責任で

あるため、保証報告書に規準を含めることは望ましくない。ただし、業務実施者が、規準を保証報

告書に含めなければならない場合には、保証報告書に規準の概要を含めただけでは、想定利用者

が、主題情報の作成の基礎を理解できない可能性がある。そのため、保証報告書に含める規準を、

公開された、又は作成者の報告書で利用可能にされた場合と同程度の詳細さにすることが必要と

なることがある。

413.作成者が主題情報の報告に、複数の枠組みを使用することがある。このような場合、作成者が

各枠組みに関連する規準を要約したり、組み合わせたりするのではなく、個別に利用できるよう

にすると、利用者の理解が促進される。業務実施者は、保証報告書の保証の結論でこの規準を個

別に明示する。

《(2) 固有の限界、強調事項及び「その他の事項」区分の違い》

414.固有の限界を説明することは、保証報告書に強調事項区分を含めることとは異なる。作成者に

よって開示されたかどうかに関係なく、主題の測定又は評価には固有の限界が存在する。しかし

ながら、作成者にとって、主題情報内でそのような固有の限界を詳細に開示することは有用かも

しれない。例えば、気候変動シナリオが現実となるかどうか、及びそれがどのような影響を及ぼ

すかについては、固有の不確実性がある。測定又は評価の固有の不確実性が、利用者が主題情報

を理解する際の基本となる場合もある。この場合、これらの固有の不確実性を主題情報内に記述

することが必要となることがある(強調事項についての検討は以下を参照)。

415.強調事項とは、主題情報に表示又は開示されている事項について、想定利用者が主題情報を理

解する基礎として重要であるため、業務実施者が想定利用者の注意を喚起する必要があると判断

した事項である。業務実施者が強調事項を含めることにより、この事項への注意喚起を行うには、

作成者が、この事項を主題情報に表示又は開示する必要がある(保証実3000第73項参照)。除外事

項付結論の代わりに強調事項を使用することはできない。

416.想定利用者の理解に関連するため、業務実施者が伝達する必要があると判断した場合、業務実

- 96 -

施者は、主題情報に表示又は開示されていない事項について、その他の事項区分を含めることが

できる(保証実3000第73項参照)。除外事項付結論の代わりにその他の事項区分を使用することは

できない。

《(3) 適用される職業的専門家としての基準》

417.不正確な、又は制限的な用語を含む業務実施者の記載(例えば、「業務は、保証実3000を参照し

て(又はこれに基づいて)実施された」など)は、保証報告書の利用者の判断を誤らせることがあ

る(保証実3000のA171項参照)。利用者は、「保証実3000に準拠して」行われた保証業務と、「保

証実3000を参照して」又は「保証実3000に基づいて」行われた保証業務を区別できない可能性があ

る。前者は保証実3000の全ての要求事項を満たすが、後者は保証実3000の特定の側面のみに当て

はまる可能性があり、利用者が必ずしもこれに気づいているとは限らない。保証実3000の要求事

項全てが遵守されているわけではない場合、保証報告書における保証実3000への言及は一切認め

られない(保証実3000第15項参照)。

設例

次のような記述は認められる。

私たちは、日本公認会計士協会が発行した保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務

以外の保証業務に関する実務指針」に準拠して、限定的保証業務を実施した。

次のような記述は、保証実3000では認められない。

・「私たちは、保証実3000を考慮して、業務を実施した」

・「私たちの保証業務は保証実3000に基づいて実施された」

418.業務実施者が2種類の基準、例えば保証実3000とAccountAbility AA1000 ASの両方に従って業

務に従事している場合、この業務実施者は、両方の要求事項を満たすことができるかどうか、又

はAccountAbility AA1000 ASの要求事項が保証実3000の要求事項と矛盾する可能性があるかどう

かの検討が必要となる場合がある。これらが矛盾せず、かつ、保証実3000の要求どおり(第421項

参照)、AccountAbility AA1000 ASで提示された、いかなる追加的な情報も保証の結論に影響し

ないことが明らかな場合、業務実施者は保証報告書で両基準に言及してもかまわない。前述のと

おり、保証実3000に言及する場合には、保証実3000の要求事項を全て満たす必要がある。

《(4) 業務実施者の結論の基礎として実施した作業の具体的内容》(保証実3000第69項(11)参照)

419.実施した作業の具体的な内容は、業務実施者の結論の基礎を得るために何を実施したのか保証

報告書の想定利用者が理解できるようにする。多くの保証業務について、理論上、手続には無数

の組合せがあり得るが、それらを明瞭かつ明確に伝えることは難しい。保証実3000のA177項が、実

施した作業の概要に関する詳細さの程度について考慮する事項を示している。

420.利用者には、限定的保証の手続の方が、合理的保証業務について説明した手続よりも包括的で

あるように見える場合があるため、なぜそうであるのかを説明することが、業務実施者にとって

有用であることがある。例えば、利用者の理解を助けるため、次の設例のように限定的保証と合

理的保証の違いを保証報告書に記載することがある。特に合理的保証と限定的保証の両方が同じ

保証報告書に記載されている場合にはこれが有用である。

- 97 -

設例

「限定的保証は、主題情報の信頼性がある程度高まった程度の保証水準から、合理的保証

業務とほとんど変わらない保証水準まで、幅がある。そのため、保証水準を想定利用者が理解

できるように、業務実施者が実施した手続の種類、実施時期及び範囲を以下に記載する。」

《(5) 業務実施者の結論》

421.保証の結論の表明は保証業務の目的であり、主題情報に関する想定利用者の信頼を高めるよう

に行われる。しかし、以下のような場合がある。

(1) 限定的保証の結論を表明するために保証実3000で使用されている「否定形」の言葉遣いを、

利用者が容易に理解できない可能性がある。したがって、業務実施者は、実施した手続の限定的

性質のために「否定形」の結論(信じさせる事項が全ての重要な点において認められなかった。)

が合理的保証よりも低い水準の保証を表していることを説明することが望ましい。これは、業

務実施者に信じさせ得る事項が何もなかったということではなく、むしろ、手続の限定的性質

のため、その手続において、必ずしもあらゆるものが識別されたわけではないという意味であ

る。

(2) 保証実3000第69項(12)は、結論を合理的又は限定的保証の結論として表現するように要求し

ている。別の方法で表現された結論、例えば、「中」又は「高」水準の保証であると言ったり、

「私たちは~と結論付ける」と述べたりすることは、保証実3000の要求事項を満たさない。

(3) 業務実施者は、保証報告書に提言やその他の発見事項を含めるのが望ましいと考える場合が

ある。これは保証実3000で認められているが、業務実施者は、このような提言や発見事項が想定

利用者にとってどの程度有用であるか、それらが保証の結論を損ねることがないかについて検

討する場合がある。

(4) 発見した良い事例を含めた場合、利用者がこれを保証の結論の一部と誤解する可能性がある。

また、業務実施者の提言を含めることは、それらの事項が主題情報を作成する際に適切に取り

扱われなかったことを示唆する、又は主題情報に関する業務実施者の結論に関する除外事項と

誤解される可能性がある。

設例

例えば、次の表現では、結論が何であるかが明確である。

本報告書の「実施した作業の要約」に記載されている実施した作業及び手続並びに私たち

が入手した証拠に基づいて、主題情報が報告規準に準拠して作成されていないと私たちに信

じさせる事項が全ての重要な点において、認められなかった。

次の表現は保証実3000の要求事項に準拠しておらず、その意味するところが不明確である

と同時に利用者に誤解を与える可能性がある。

私たちは、○○株式会社が総合的なサステナビリティの報告に取り組んでおり、会社のサ

ステナビリティへの影響を詳細に報告することにおいて大きな進歩を遂げていることに注目

している。○○株式会社のサステナビリティ報告書に記載されている情報は、公平で正確で

ある。

- 98 -

422.EER報告書の一部が限定的保証の対象であり、残りの部分が合理的保証の対象である場合、限定

的保証の対象部分と合理的保証の対象部分とを利用者が理解しやすいように、それぞれの保証の

対象となる主題情報を明確に識別する必要がある。また、業務実施者は、主題情報に関連してど

の手続が実施されたかが利用者に明確になるように、保証の各水準に対して実施した手続を詳し

く説明する場合がある。それぞれに関連する結論も、想定利用者向けに区別する必要がある。

設例

作成者は、限定的保証の対象となる主題情報を一つのマークで識別するか、又は「限定的保

証の対象となる主題情報」という表題の一つの段落又は表で識別し、合理的な保証の対象と

なる主題情報を別のマークで別途識別するか、又は「合理的保証の対象となる主題情報」とい

う表題の表で識別できる。以下の記載例は、業務実施者が主題の識別されている場所に言及

し、これにより、個々の結論が何であるか、またそれはどの主題情報に関連しているのかを明

確にした例である。

限定的保証の結論

「保証の結論の根拠として実施した作業の要約」に記載されているように、業務実施者が

実施した手続及び入手した証拠に基づいて、〇年度報告書の「主題情報」項の「限定的保証の

対象となる主題情報」表に提示されている特定の持続可能性に関する情報が報告規準に準拠

して作成されていないと業務実施者に信じさせる事項がすべての重要な点において認められ

なかった。

合理的保証の意見

業務実施者は、〇年度報告書の「主題情報」項の「合理的保証の対象となる主題情報」表に

提示されている、特定の持続可能性に関する情報は、すべての重要な点において報告規準に

準拠して作成されているものと認める。

《(6) 長文式報告書に追加の情報を含める》

423.業務実施者が、長文式報告書には、例えば、重要性に関する考慮事項についての情報など追加

の情報を記載し、これにより、保証業務の実施に際して虚偽表示に対する許容度がどの程度あっ

たのかを想定利用者に対して明らかにするのが適切であると考えることもある。

設例

業務実施者は職業的専門家としての判断に基づき、主題情報の重要性を次のように決定した。

スコープ1の温室効果ガス排出量:○○株式会社が報告したスコープ1の温室効果ガス排

出量のX%

この閾値は、個別の虚偽表示又はより小さな複数の虚偽表示の合計のいずれの場合であっ

たとしても、〇トンのCO2相当量という虚偽表示があった場合には、スコープ1排出量が全て

の重要な点において報告規準に準拠して作成されていないという結論が導かれることを意味

する。

定性的情報については、重要性に関する検討事項で、公平性、理解可能性、偏向の有無を含

む定性的事項を考慮する。

- 99 -

《例1 無限定の結論を示した合理的保証報告書》

《年次報告書に含まれるサステナビリティ情報に関する合理的保証業務》

以下の報告書は例示のみを目的としており、網羅的あるいは全ての状況に適用可能であるわけ

ではない。保証報告書は、業務の状況に応じて調整する必要がある。

独立業務実施者の保証報告書(注1)

○○○○株式会社

取締役会 御中(注2)

×年×月×日

○○監査法人

[○○事務所(注3)]

代表社員 公認会計士 ○○

社 員 公認会計士 ○○

(注4)(注5)

範囲

当監査法人は、20X1 年 12 月期年次報告書の[X]から[Y]頁の「社会的影響」及び「サステナビ

リティ指標」の章に記載されている、○○株式会社(以下「会社」という。)のサステナビリテ

ィ情報について合理的保証業務を実施した。本保証業務は、前年度以前の期間や、20X1 年度年

次報告書に含まれるその他の情報又はサステナビリティ情報や 20X1 年度年次報告書に付された

リンクからアクセス可能なその他の情報(画像、音声ファイル、埋込み動画など)は対象として

いない。

意見(注6)

当監査法人は、20X1 年 12 月期年次報告書の[X]から[Y]頁の「社会的影響」と「サステナビリ

ティ指標」の章に記載された会社のサステナビリティ情報は、全ての重要な点において、報告フ

レームワーク(第 X 版)及び年次報告書『サステナビリティ報告 20X1 に対するアプローチ』の

注記[X]から[XX]に提示された作成の基礎に準拠して作成されているものと認める(後述の「会

社がサステナビリティ情報をどのように作成したかを理解すること」参照)。(注7)

当監査法人は、前年度以前の期間に関する情報や、20X1 年度年次報告書に含まれるその他の

情報、又はサステナビリティ情報や 20X1 年度年次報告書に付されたリンクからアクセス可能な

その他の情報(画像、音声ファイル、埋込み動画など)に関する保証の結論を表明しない。

強調事項(注8)

サステナビリティ情報に関する注記 X に記載されているとおり、生産現場 Y で発生した危険

物質の流出に伴い長期的な影響が生じ得ることに関する不確実性及びそれに伴う措置が会社に

対して講じられる可能性がある。当該事項は、当監査法人の意見に影響を及ぼすものではない。

- 100 -

会社がサステナビリティ情報をどのように作成したかを理解すること

サステナビリティ情報を評価及び測定するための、広く使用され一般に公正妥当と認められ

た報告フレームワーク、あるいは確立された手法を認める権威ある機関が存在しないため、多

様な測定技法が許容され、これが企業間及び時系列での比較可能性に影響を与える可能性があ

る。(注9)

このため、サステナビリティ情報は、会社が当該情報の作成に使用した報告フレームワーク

(第 X 版)及び年次報告書『サステナビリティ報告 20X1 に対するアプローチ』の注記[X]から

[XX]に提示された作成の基礎(これら双方で「規準」という)と併せて読み、理解する必要があ

る。

サステナビリティ情報の作成における固有の限界(注10)

サステナビリティ情報の注記 Y で述べられているように、当該サステナビリティ情報には、

気候関連シナリオに基づく情報が含まれる。当該シナリオに基づく情報は、固有の不確実性に

さらされている。それは、将来顕在化しうる気候関連の物理的リスク及び移行リスクの発生可

能性・時期・影響に関する科学的・経済的知識が不完全なためである。

会社の責任(注11)(注12)

会社の経営者は以下の責任を負う。

・ サステナビリティ情報の報告に関連し、適用される法令等を考慮しながら、サステナビリ

ティ情報の作成に適合した規準を選定又は策定すること。

・ 「規準」(報告フレームワーク(第x版)及び年次報告書『サステナビリティ報告 20X1 に対

するアプローチ』の注記[x]から[xx]に提示された作成の基礎)に準拠し、サステナビリティ

情報を作成すること。

・ 不正か誤謬かを問わず、重要な虚偽表示のないサステナビリティ情報の作成に関連する情

報を対象とする内部統制を設計、導入、運用すること。

業務実施者の責任(注11)(注12)

当監査法人は以下に対して責任を負う。

・ 不正か誤謬かを問わず、サステナビリティ情報に重要な虚偽表示がないかどうかについて、

合理的保証を得るための業務を計画し実施すること。

・ 入手した証拠に基づいて、独立した立場から結論を形成すること。

・ ○○株式会社の取締役に当監査法人の結論を報告すること。

当監査法人は、経営者が作成したサステナビリティ情報に対して、独立した立場から結論を

形成するが、サステナビリティ情報の作成への関与は許されていない。なぜなら、当該関与によ

り、当監査法人の独立性が損なわれる可能性があるからである。

適用される職業的専門家としての基準(注13)

- 101 -

当監査法人は、日本公認会計士協会が発行した保証業務実務指針 3000「監査及びレビュー業

務以外の保証業務に関する実務指針」に準拠して合理的保証業務を実施した。

業務実施者の独立性と品質管理

当監査法人は、日本公認会計士協会の公表する倫理規則及びその他の職業倫理に関する規定

を遵守して業務を実施した。当該規則及び規定は、独立性、誠実性、公正性、職業的専門家とし

ての能力及び正当な注意、守秘義務並びに職業的専門家としての行動の原則を提供している。

(注 14)

当監査法人は、日本公認会計士協会が公表した品質管理基準報告書第1号「監査事務所にお

ける品質管理」に準拠して、職業的専門家としての基準及び適用される法令等の遵守に関する

方針及び手続並びにその文書化を含む品質管理のシステムを整備及び運用して業務を実施し

た。(注 15)

当監査法人の作業は、保証業務実施者、エンジニア、環境科学者を含む様々な専門家を集め、

独立したチームによって実施された。私たちは特に、会社の気候関連シナリオの合理性を判断

するために、環境科学者の作業成果を利用した。保証の結論に対する全責任は当監査法人が負

う。(注 16)

保証についての意見の根拠として実施した作業の要約

合理的保証業務には、サステナビリティ情報に関する証拠を入手するための手続の実施が含

まれる。選択された手続の種類、実施時期、及び範囲は、不正か誤謬かを問わず、サステナビリ

ティ情報における重要な虚偽表示のリスクの評価を含め、職業的専門家としての判断に委ねら

れる。リスク評価を行うに当たり、当監査法人は、会社によるサステナビリティ情報の作成に係

る内部統制を考慮した。合理的保証業務には以下も含まれる。

・ サステナビリティ情報作成の基礎として、会社が規準を使用した状況の適合性の評価(注

17)

・ 測定及び評価方法ならびに適用した報告方針の適切性、及び会社が実施した見積りの合理

性の評価

・ サステナビリティ情報における開示、及び当該情報の全般的な表示の評価

当監査法人が入手した証拠は、私たちの結論の基礎を形成するには十分かつ適切であると考

える。

その他の法令等の要求事項に関する報告(一部の業務にのみ適用)

[保証報告書の本区分の形式と内容は、 当監査法人のその他の報告責任の性質によって異な

る]

以 上

(注1)保証実 3000 第 69 項(1)参照

- 102 -

(注2)通常は契約当事者が考えられる(保証実 3000 第 69 項(2)参照)。

(注3)事業所の都市名を記載する場合は、「○○県□□市」のように記載する。

(注4)業務実施者が電子署名を行う場合には、保証報告書にその氏名を表示すると考えられる。

(注5)① 本文例は、業務実施者が無限責任監査法人の場合を前提としている。業務実施者が有

限責任監査法人の場合、業務契約において業務実施者が特定されている場合、又は監査

法人の場合において報告書署名者に関する内規がある場合には、これらに応じて代表社

員の肩書を省略するなど、適宜必要な修正を行う。

② 業務実施者が公認会計士の場合は、以下とする。

○○○○公認会計士事務所

○○県□□市(注3)

公認会計士○○○○(注4)

(注6)合理的保証についての結論については、第 421 項及び保証実 3000 第 69 項(12)参照

(注7)適用される規準の識別については、第 409 項から第 413 項及び保証実 3000 第 69 項(4)参照

(注8)強調事項区分は、業務実施者が、想定利用者の理解の基礎として重要であると職業的専門

家として判断する、主題情報に表示又は開示されている事項への注意を喚起する(第 415 項

参照)。

(注9)想定利用者が、使用されている特定の規準に従って、主題情報を理解できるようにするた

めの説明(保証実 3000 の A163 項参照)

(注 10)固有の限界については、第 414 項及び保証実 3000 第 69 項(5)参照

(注 11)それぞれの責任については、保証実 3000 第 69 項(7)参照

(注 12)それぞれの役割を明確化し、また、証明業務において、業務実施者が主題情報の作成に関

与できない理由を説明することにより、保証は「ギャップを埋める」ためにあると認識され

ないようにするための、追加的な説明

(注 13)業務が保証実 3000 又は主題に係る特定の基準に準拠して実施された旨の記載については、

第 417 項及び保証実 3000 第 69 項(8)参照

(注 14)業務実施者が、独立性及びその他の職業倫理に関する規定を遵守していることの記載につ

いては、保証実 3000 第 69 項(10)参照

(注 15)業務実施者が所属する事務所が品基報第1号又は要求水準が同等以上のその他の要求事項

を適用していることの記載については、保証実 3000 第 69 項(9)参照

(注 16)責任の分担を示唆することなく、業務実施者が利用する専門家に言及する。

(注 17)業務実施者の結論の基礎として実施した手続の説明的概要については、保証実 3000 第 69

項(11)参照

《例2 無限定の結論を示した限定的保証報告書》

《年次報告書に含まれるサステナビリティ情報に関する限定的保証業務》

以下の報告書は例示のみを目的としており、網羅的又は全ての状況に適用可能であるわけではな

い。保証報告書は、業務の状況に応じて調整する必要がある。

- 103 -

○○○○株式会社

取締役会 御中(注2)

独立業務実施者の保証報告書(注1)

×年×月×日

○○監査法人

[○○事務所(注3)]

代表社員 公認会計士 ○○

社 員 公認会計士 ○○

(注4)(注5)

範囲

当監査法人は、20X1 年 12 月期年次報告書の[X]から[Y]ページの「社会的影響」及び「サステ

ナビリティ指標」の章に記載されている、○○株式会社(以下「会社」という。)のサステナビ

リティ情報について限定的保証業務を実施した。

本保証業務は、前年度以前の期間に関する情報や、20X1 年度年次報告書に含まれるその他の

情報又はサステナビリティ情報や 20X1 年度年次報告書に付されたリンクからアクセス可能なそ

の他の情報(画像、音声ファイル、埋め込み動画など)は対象としていない。(注6)

限定的保証の結論(注7)

「保証の結論の根拠を得るために実施した作業の要約」に記載されているように、当監査法

人が実施した手続及び入手した証拠に基づいて、20X1 年 12 月期年次報告書の[X]から[Y]ペー

ジの「社会的影響」と「サステナビリティ指標」のセクションに記載された会社のサステナビリ

ティ情報が、報告フレームワーク(バージョン X.1)、及び年次報告書『サステナビリティ報告

20X1 に対するアプローチ』の注記[X]から[XX]に提示された作成の基礎に準拠して作成されて

いなかった、と当監査法人に信じさせる事項が全ての重要な点において認められなかった(後

述の「○○株式会社がサステナビリティ情報をどのように作成したかを理解すること」参照)。

(注8)

当監査法人は、前年度以前の期間に関する情報や、20X1 年度年次報告書に含まれるその他の

情報又はサステナビリティ情報や 20X1 年度年次報告書に付されたリンクからアクセス可能なそ

の他の情報(画像、音声ファイル、埋込み動画など)に関する保証の結論を表明しない。

強調事項(注9)

サステナビリティ情報に関する注記 X に記載されているとおり、生産現場 Y で発生した危険

物質の流出に伴い長期的な影響が生じ得ることに関する不確実性及びそれに伴う措置が○○株

式会社に対して講じられる可能性がある。当該事項は、当監査法人の結論を限定するものでは

ない。

- 104 -

○○株式会社がサステナビリティ情報をどのように作成したかを理解すること

サステナビリティ情報を評価及び測定するための、広く使用され一般に公正妥当と認められ

た報告フレームワーク又は確立された手法を認める権威ある機関が存在しないため、多様な測

定技法が許容され、これが企業間及び時系列での比較可能性に影響を与える可能性がある。(注

10)

このため、サステナビリティ情報は、○○株式会社が当該情報の作成に利用した報告フレー

ムワーク(バージョン X.1)、及び年次報告書『サステナビリティ報告に対するアプローチ』の

注記[X]から[XX]に提示された作成の基礎(これら双方で「規準」)と併せて読み、理解する必要

がある。

サステナビリティ情報の作成における固有の限界(注11)

注記 X で述べられているように、当該サステナビリティ情報には、気候関連シナリオに基づ

く情報が含まれる。当該シナリオに基づく情報は、固有の不確実性にさらされている。それは、

将来顕在化し得る気候関連の物理的リスク及び移行リスクの発生可能性・時期・影響に関する

科学的・経済的知識が不完全なためである。

○○株式会社の責任(注12)(注13)

○○株式会社の経営者は以下に対して責任を負う。

・ サステナビリティ情報の作成に適合する規準を選定又は開発すること。

・ 「規準」(報告フレームワーク(バージョン X.1)及び年次報告書『サステナビリティ報告

20X1 に対するアプローチ』の注記[X]から[XX]に提示された作成の基礎)に準拠し、サステナ

ビリティ情報を作成すること。

・ 不正か誤謬かを問わず、重要な虚偽表示のないサステナビリティ情報の作成に関連する情

報を対象とする内部統制をデザインし、適用、運用すること。

業務実施者の責任(注12)(注13)

当監査法人は以下に対して責任を負う。

・ 不正か誤謬かを問わず、サステナビリティ情報に重要な虚偽表示がないかどうかについて

の限定的保証を得るための業務を計画及び実施すること。

・ 当監査法人が実施した手続及び入手した証拠に基づいて、独立した立場から結論を形成す

ること。

・ ○○株式会社の取締役に当監査法人の結論を報告すること。

当監査法人は、経営者が作成したサステナビリティ情報に対して、独立した立場から結論を

形成するが、サステナビリティ情報の作成への関与は許されていない。なぜなら、当該関与によ

り、当監査法人の独立性が損なわれる可能性があるからである。

適用される職業的専門家としての基準(注14)

- 105 -

当監査法人は、日本公認会計士協会が発行した保証業務実務指針 3000「監査及びレビュー業

務以外の保証業務に関する実務指針」に準拠して限定的保証業務を実施した。

業務実施者の独立性と品質管理

当監査法人は、日本公認会計士協会の公表する倫理規則及びその他の職業倫理に関する規定

を遵守して業務を実施した。当該規則及び規定は、独立性、誠実性、公正性、職業的専門家とし

ての能力及び正当な注意、守秘義務並びに職業的専門家としての行動の原則を提供している。

(注 15)

当監査法人は、日本公認会計士協会が公表した品質管理基準報告書第1号「監査事務所にお

ける品質管理」に準拠して、職業的専門家としての基準及び適用される法令等の遵守に関する

方針及び手続並びにその文書化を含む品質管理のシステムを整備及び運用して業務を実施し

た。(注 16)

当監査法人の作業は、保証業務実施者、エンジニア、環境科学者を含む様々な専門家を集め、

独立したチームによって実施された。私たちは特に、○○株式会社の気候関連シナリオの合理

性を判断するために、環境科学者の作業成果を利用した。保証の結論に対する全責任は当監査

法人が負う。(注 17)

保証についての意見の根拠として実施した作業の要約

[限定的保証業務では、当監査法人は、その判断において、実施した手続の種類及び範囲の概

要を記載し、利用者が保証当監査法人の結論の根拠を理解することに有効と思われる追加情報

を提供することが重要である。次のセクションはガイダンスとして提供されているものであり、

手続の例は、実施した作業を利用者が理解するために重要と思われる手続の種類又は範囲のい

ずれをも完全に網羅しているわけではない]

当監査法人は、サステナビリティ情報の重要な虚偽表示が発生する可能性が高いと識別され

た領域に対応するように、作業を計画及び実施することが要求される。当監査法人は、職業的専

門家としての判断に基づいて手続を実施した。サステナビリティ情報に関する限定的保証業務

の実施に際して、当監査法人は以下を行った。(注 18)

・ サステナビリティ情報作成の基礎として、○○株式会社が規準を使用した状況の適合性の

評価

・ 質問を通じて、サステナビリティ情報の作成に係る○○株式会社の統制環境、プロセス及

び情報システムについての理解を得た。ただし、内部統制について、特定の統制活動のデザイ

ンの評価や、適用に関する証拠の入手、運用状況の有効性についての検証は行わなかった。

・ ○○株式会社の見積り方法が適切で、一貫して適用されていたかどうかについての評価を

行った。ただし、当監査法人が実施した手続には、見積りの基礎となるデータの検証や、○○

株式会社の見積りを評価するために別途、独自の見積りを行う等の作業は含まれない。

・ ○○株式会社の製造工場 20 か所のうち4か所の現地視察を実施した。視察先は、これらの

工場のサステナビリティ情報がグループのサステナビリティ情報にどの程度寄与している

か、前期以降、工場のサステナビリティ情報に想定外の変動が生じたか、また前期に視察され

- 106 -

ていない工場かどうかを基に選定した。

・ 視察した各工場において、必要に応じて、根拠となる記録の中から、又は根拠となる記録に

対して、限定的な数の項目の検証を実施した。

・ 期間中に燃焼される燃料の発熱量に基づいて、放出が予想される GHG と、実際に放出され

た GHG を比較する分析手続を実施した。その後、経営者に質問を行い、当監査法人が識別し

た重大な差異について説明を受けた。

・ サステナビリティ情報の表示及び開示について検討した。

限定的保証業務で実施される手続は、合理的保証業務よりもその種類と時期が多様であり、

その範囲が狭い。その結果、限定的保証業務で得られる保証の水準は、合理的保証業務が実施さ

れていたなら得られたであろう保証よりも相当に低い。

その他の法令等の要求事項に関する報告(一部の業務にのみ適用)

[保証報告書の本区分の形式と内容は、 当監査法人のその他の報告責任の性質によって異な

る]

以 上

(注1)保証実 3000 第 69 項(1)参照

(注2)通常は契約当事者が考えられる(保証実 3000 第 69 項(2)参照)。

(注3)事業所の都市名を記載する場合は、「○○県□□市」のように記載する。

(注4)業務実施者が電子署名を行う場合には、保証報告書にその氏名を表示すると考えられる。

(注5)① 本文例は、業務実施者が無限責任監査法人の場合を前提としている。業務実施者が有

限責任監査法人の場合、業務契約において業務実施者が特定されている場合又は監査法

人の場合において報告書署名者に関する内規がある場合には、これらに応じて代表社員

の肩書を省略するなど、適宜必要な修正を行う。

② 業務実施者が公認会計士の場合は、以下とする。

○○○○公認会計士事務所

○○県□□市(注3)

公認会計士○○○○(注4)

(注6)保証水準、主題情報及び必要な場合には主題(保証実 3000 第 69 項(2)参照)

(注7)限定的保証の結論については、第 421 項及び保証実 3000 第 69 項(12)参照

(注8)適用される規準の識別については、第 409 項から第 413 項及び保証実 3000 第 69 項(4)参照

(注9)強調事項区分は、業務実施者が、想定利用者の理解の基礎として重要であると職業的専門

家として判断する、主題情報に表示又は開示されている事項への注意を喚起する(第 415 項

参照)。

(注 10)想定利用者が、使用されている特定の規準に従って、主題情報を理解できるようにするた

めの説明(保証実 3000 の A163 項参照)

(注 11)固有の限界については、第 414 項及び保証実 3000 第 69 項(5)参照

- 107 -

(注 12)それぞれの責任については、保証実 3000 第 69 項(7)参照

(注 13)それぞれの役割を明確化し、また、証明業務において、業務実施者が主題情報の作成に関

与できない理由を説明することにより、保証は「ギャップを埋める」ためにあると認識され

ないようにするための、追加的な説明

(注 14)業務が保証実 3000 又は主題に係る特定の基準に準拠して実施された旨の記載については、

第 417 項及び保証実 3000 第 69 項(8)参照

(注 15)業務実施者が、独立性及びその他の職業倫理に関する規定を遵守していることの記載につ

いては、保証実 3000 第 69 項(10)参照

(注 16)業務実施者が所属する事務所が品基報第1号又は要求水準が同等以上のその他の要求事項

を適用していることの記載については、保証実 3000 第 69 項(9)参照

(注 17)責任の分担を示唆することなく、業務実施者が利用する専門家に言及する。

(注 18)業務実施者の結論の基礎として実施した手続の説明的概要については、第 420 項及び保証

実 3000 第 69 項(11)参照

- 108 -

《付録1》本ガイダンス(試案)で使用する用語

用語

本ガイダンスでの意味(括弧内は、本ガイダンスで用語が最初に使用

された段落を表す)

集計リスク

未修正の虚偽表示と未検出の虚偽表示の合計が重要性の基準を

超える確率(第279項)

アサーション

企業が明示的又はその他の方法により、主題情報において具体

的に示した表明であり、発生し得る様々な種類の潜在的な虚偽

表示を業務実施者が検討する際に使用する。(第253項)

保証業務に関する適性

保証業務の実施に必要な適性。保証業務の技能及び技術の

EER

EER保証業務

EER情報

EER報告書

EER主題情報

企業独自の規準

外部情報源

両方の適性を含む。(第25項)

拡張された外部報告(第1項)

EERに対する保証業務(第3項)

企業の活動の財務的及び非財務的な結果に関する情報。これら

に関連する将来志向の情報も含まれる。(第6項)

EER情報は一つの報告書として提示される。

EER報告書におけるEER情報のうち、EER保証業務の対象とな

る部分(第8項)

企業によって開発された規準(第9項)

EER報告書の作成で作成者が使用するデータ又は情報を提供す

る(作成者にとって)外部の個人又は組織(第228項)

枠組みとなる規準

法令等、国際的又は国内の基準設定者又は他の機関によって確

立されたEERフレームワーク、基準又はガイダンスにおける規準

(第9項)

手続実施上の重要性

主題情報全体としての定量的な重要性よりも低い定量的な閾値

であり、集計リスクを適切に低い水準に抑えるように設定され

る。(第285項)

作成者

報告事項

測定者又は評価者でもある主題に責任を負う者

目的適合性のある主題(又はその側面)(第169項)

主題に関する適性

業務の主題及びその測定又は評価における適性(第25項)

主題の専門家

主題及びその測定又は評価に関する専門家(第45項)

- 109 -

入手可能な報告の枠組み 又は基準の例 ・WBCSD/WRI 温室効果ガス(GHG)プ

JICPA 実務指針又は IAASB 基準

本ガイダンスの対象か?

・ISAE 3410(ISAE 3000(改訂)への準拠が

対象

《付録2》報告の種類、使用される枠組みの例、本ガイダンスの対象となるか否か

主題

温室効果ガス排出量

統合報告 知的資本 IFRS に基づいて作成された 財務諸表に関する経営者 による説明

公共部門サービスの成果又 は金額に見合った価値を 示す計算書

サステナビリティ (環境、社会、ガバナンス)

各国の課税制度

コンプライアンス

ロトコル

必須)

・IIRC 統合報告フレームワーク ・保証実 3000 ・WICI 無形資産報告フレームワーク ・保証実 3000 ・IASB 実務記述書「経営者による説明」 ・保証実 3000

・法令等又は基準

・保証実 3000

・CDSB フレームワーク ・GSSB GRI スタンダード ・SASB スタンダード ・TCFD フレームワーク ・法令等 ・GSSB GRI スタンダード:税金 ・法令等 ・契約条件等 ・我が国において一般に公正妥当と認

・保証実 3000

・保証実 3000 ・監基報 800/805 ・保証実 3000

対象 対象 対象

対象

対象

対象 対象外 対象外

・我が国において一般に公正妥当と認めら

対象外

過去の財務諸表

められる企業会計の基準

れる監査の基準

・COSO 内部統制 – 統合的フレームワ

・保証実 2400 ・保証実 3402(保証実 3000 への準拠が必

対象外

サービス組織の内部統制

ーク

須)

・AICPA SOC 2 Trust サービス規準

・保証実 3000

- 110 -

《付録3》 限定的保証及び合理的保証 EER の設例表

保証実3000は、限定的保証と合理的保証の2種類の保証水準を考慮する。この二つが具体的にどのように違うのかを理解するのは難しいこと がある。更に、合理的保証業務の作業内容は一般に、財務諸表監査の保証水準に似ていると考えられるので分かりやすいが、限定的保証業務で 対象とする保証水準は幅があり、主題情報の信頼性がある程度高まった程度の保証水準(下限の水準)から、合理的保証業務とほとんど変わら ない保証水準(上限の水準)までが考えられる。

次の表は、合理的保証と限定的保証はどのように異なるか、及び保証水準の下限に近い限定的保証と上限に近い限定的保証はどのように異な るかについて、主題情報が水使用量である場合の例を用いて表したものである。ただし、これらは一例にすぎず、ここに提示されている手続で 十分又は保証実3000の要求事項を満足させる唯一の手段であることを示唆したものではない。実務上、業務実施者の手続の種類、時期及び範囲 は、業務状況における職業的専門家としての判断により決まる問題であり、評価されたリスク(合理的保証業務の場合)又は重要な虚偽表示の 生じる可能性が高いと識別された領域(限定的保証業務の場合)を基礎とする。

表の左端の列は、保証実3000の対象である保証業務契約締結前の段階から保証報告書作成までのEERの保証業務の要求事項を示している。そ の隣の列は、保証実3000の要求事項の出典と、本ガイダンス(試案)で詳細に説明されている章を示している。その次の2列は、限定的保証及 び合理的保証の手続と考慮事項の例を示している。

限定的保証の場合、保証業務は、業務実施者の判断で、意味のある保証水準を得られるように計画されている。特定の業務において何が意味 のある保証水準であるかは、想定利用者の情報ニーズ、規準及び業務の主題を含む、個々の保証業務の状況に基づいた職業的専門家としての判 断を表している(保証実3000のA5項からA8項参照)。また、限定的保証のために実施される手続については、以下の点に注意することも重要で ある。 ・ 手続は、合理的保証までは至らないが、限定的保証水準の下限から上限までの間のどこかに位置する。 ・ リスクに関する考慮事項によっては、主題情報の様々な側面に応じて、手続が異なる可能性がある。

限定的保証業務で業務実施者の得る保証水準は多様であるため、想定利用者が、業務実施者の結論を理解するためには、実施した手続の種類、 時期及び範囲の完全な理解が不可欠であり、業務実施者の保証報告書には、実施した手続の概要が含まれる(第419項及び第420項並びに第12章 文例2参照)。

表の限定的保証の列では、矢印を使用して、限定的保証の保証水準の違いにより業務実施者の手続がどのように異なるか、その概要を伝えよ うとしている。これらの矢印は、業務実施者が選択するオプションや事前に決定されたレベルを示唆することを意図したものではない。むしろ、 その目的は、現状において意味のある限定的保証の水準を得るために、主題及び業務環境に関する理解を得る際及び重要な虚偽表示の生じる可 能性の高い領域を識別し、対応する際に業務実施者が適切と判断するであろうと考えられる様々な手続の例を示すことである。矢印には、次の 手続の例が含まれる。 ・ 左側にある水色の矢印は、業務実施者が、保証業務の状況において意味のある限定的保証の水準を得るために必要であると判断した手続

が、限定的保証の水準の下限に近いときに、業務実施者が実施する手続の例を含んでいる。

・ 中央の青色の矢印に含まれるのは追加的な手続の例で、保証業務の状況において意味のある限定的保証の水準を得るために必要な手続が、

限定的保証の水準の中央に位置するときに、左側の矢印に記載された手続に加えて実施される。

・ 右側の濃い青色の矢印に含まれるのは追加的な手続の例で、保証業務の状況において意味のある限定的保証の水準を得るために必要な手続

が、限定的保証の水準の上限に近いときに、他の二つの矢印に記載された手続に加えて実施される。 右端の列(最も濃い青色の列)は合理的保証手続の例である。

- 111 -

灰色の行は、保証実3000の要求事項が限定的保証と合理的保証で同じであることを示している。

参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

限定的保証

合理的保証

合理的保証を実現するために、業務実施者 は広範な手続を実施する。

合理的保証

限定的保証(合理的保証よりも低い保証水準だが、それでもなお意味のあ る保証水準)を実現するため、業務実施者は保証の結論を表明するための 手続を実施するが、この手続は保証の水準範囲に応じて変化することがあ る。 限定的保証 左側(水色の矢印)は、限定的保証の下限(つまり、主題情報に関する想 定利用者の信頼の程度を、明らかに重要でない水準以上の程度まで高める 可能性が高い保証)における手続の例を含む。 矢印の色が濃くなるとともに、追加的な手続の例が追記されている。右側 の濃い青色の矢印には、「合理的保証」に向けて保証が限定的保証の範囲 の上限に近づいたときに実施される追加的な手続の例が含まれる。

手続の種類、時期及び範囲は、保証業務における職業的専門家としての 判断の問題であり、それは実施したリスク評価に基づき、かつ重要な虚 偽表示が発生する可能性があると業務実施者が認識した領域に基づくも のである。

前提条件

適性と能力

保証実3000 第24項 (1)、(2)、 第3章 保証実3000 第31項 (2)、(3)、 第32項、 第1章

前提条件の有無を判断する手続は以下に基づいて行われる。 ・ 業務状況に関する予備的知識 ・ 作成者との協議 規準が合理的保証に適合していない場合、限定的保証にも適合しない。その逆も同様である。 業務執行責任者は、保証の結論に対する責任を持つために十分な保証業務の技能、知識及び経験を持ち、業務チーム及 び業務実施者の利用する外部専門家が、全体として、保証業務を実施するために必要な職業的専門家としての適性を持 つと確信する必要がある。このような適性は、保証水準ではなく、例えば、EER主題とその測定又は評価の複雑性によっ て決定される。

- 112 -

職業的専門家と しての懐疑心及 び判断の行使、 並びに保証の技 能及び技法

計画段階での規 準の適合性

重要性

主題及び業務環 境の理解

保証実3000 第37項から 第39項 第2章

保証実3000 第41項から 第43項、 第4章、 第5章 保証実3000 第44項、 第9章

保証実3000 第45項、 第3章、 第4章、 第5章、 第6章、 第7章

職業的専門家としての懐疑心及び職業的専門家としての判断を行使し、反復的で系統だった保証業務のプロセスの一部 として、保証業務に関する技能及び技法を適用する必要性は、限定的保証及び合理的保証の両方で同じである。

業務実施者は、業務計画策定の一環として、規準がその業務に適合しているかどうかを判断する。業務実施の内容は、 例えば、 EER主題の複雑さや多様性、報告境界の複雑さや範囲などに左右される。規準の適合性に関する考慮事項には、 企業の報告境界を判断する方法、提起される主題、許容される数量化又は評価の方法、表示及び開示の規準などが含ま れる。

重要性に関する考慮事項は、限定的保証及び合理的保証の両方で同じである。その理由は、重要性に関する事項は、業務 実施者が業務リスクに対応するために実施する手続の種類又は範囲に基づくものではなく、想定利用者の情報ニーズ(す なわち、何が想定利用者の意思決定にとって重要か、何が判断を変えるのか。)に基づくものだからである。重要性は、 量的及び質的要因の双方との関連において考慮される。

理解すべきこと 業務実施者は、以下について質問する必要がある。 ・作成者が、主題情報に影響を及ぼす意図的な虚偽表示や違法行為に関する事実、疑い又は申立てを把握しているかど

うか。

・作成者が内部監査機能を有しているかどうか。有している場合、主題情報に関する内部監査機能の活動と主な発見事

・作成者が、主題情報の作成に際して専門家を利用したかどうか。 また、業務実施者は、手続の立案及び実施の基礎として、主題と業務環境を理解する。これには、特に、会社の性質とそ の業界、EER保証業務に関連する規制などの外部要因(例えば、企業の供給業者、顧客、受託会社、競合企業、企業が活 動する地域の政治的、地理的、社会的及び経済的環境)、前期からの変化、また場合によっては将来の期間に予想され る変化の理解が含まれることがある。

保証実3000 第46項L/R、 第48項 L(1)、 第48項 R(1)、

理解の程度 EER情報の重要な虚偽表示の生じる可能性が高い領域を識別する上で十分 であること。すなわち、EER主題情報全体レベル及びEER情報の重要な側面 を識別する上で十分な程度である。 主題及び業務環境を理解し、EER情報の重要な虚偽表示の生じる可能性の ある領域を評価するための手続は、それだけでは保証の結論の根拠となる 証拠を提供しない。

理解の程度 発生し得る虚偽表示の種類の以下二つのそ れぞれのレベルで、EER情報における重要な 虚偽表示リスクを識別及び評価する上で十 分であること: ・ EER主題情報全体レベル

- 113 -

参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

一部の限定的保証業務では、業務実施者は、重要な虚偽表示リスクを識別し、 評価するために十分な理解を得ることもあるが、特定の保証実によって具体 的にそのように要求されていない限り、その必要はない。

・ EER情報の重要な側面で発生し得る虚 偽表示の種類のレベル(発生し得る虚偽 表示の種類を考慮するには、アサーショ ンの利用が有効であろう。)

第3章、

第4章、 第5章、 第6章、

第7章

下図の矢印は、限定的保証の保証水準全体にわたる手続の例である。保証業 務の状況において意味のある保証水準を得るために必要な手続は様々であ り、下図の矢印内に示された手続を含むが、これらに限定されない。特定業 務において何が意味のある保証水準であるかは、想定利用者の情報ニーズ、 規準及び業務の主題を含む、保証業務の状況に応じた職業的専門家としての 判断に基づく(保証実3000のA5項からA8項参照)。

例えば、左側の列にある手続の実施に加え て、業務実施者は以下について経営者に質 問する場合がある。 ・水道メーターの校正頻度及びその実施者

並びに他の水源からの水の測定方法

・達成すべき目標があるかどうか(例えば、 情報の虚偽表示を招くインセンティブを 提供するような規制目標又は内部業績目 標)。

・企業が標準的な業界規準に従った標準的 な業界指標を報告しているかどうか。ま た、企業が報告した水使用量について、 業界の類似企業の水使用量とどのように 比較しているか。

- 114 -

業務実施者は以下の手続を行うこともあ る。 ・細分化したレベルで分析的手続を実施 ・担当者が実施している手続を観察又は文 書を閲覧、設備を実査(例えば、水道メ ーターを実査し、メーターの校正に関す る文書化記録を閲覧する。)

主題及び業務環境を理解し、EER情報の重要 な虚偽表示の生じる可能性のある領域を評 価するための手続は、それだけでは保証の 結論の根拠となる証拠とはならない。

経営者に質問し、作成された水 使用量の情報は誰に報告されて いるのか、その目的、生産過程 で水はどのように使用されてい るのか、使用されている水源は 何か(例えば、メーター付き水 道、掘削井戸、水路から取り込 まれた雨水貯留槽など)、前期 以降、何らかの変化があったか どうかを理解する。

経営者に質問し、生産過程は断 続的なのか連続的なのか、排水 はリサイクルされ、生産過程で 再利用されるのか、節水に対す る社会的又は環境的プレッシャ ーはあるのか、企業が報告した 水使用量の情報は、業界の類似 企業の水使用量と比較して、多 いか又は少ないかを理解する。 概括的な分析的手続を(集計レ ベルで)実施する。

細分化したレベルで分析的手 続を実施し(例えば、企業の 各施設の水使用量の情報を、 各施設の生産量と比較して、 施設のレベルで異常な水使用 量を識別するなど)、前期以 降、何らかの変化があったか どうかを理解する。合理的保 証の列に記載されている手続 を、状況に必要な範囲で実施 することを検討する。

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参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

内部監査、専門 家、又は業務チ ーム以外の他の 業務実施者の業 務を利用するか どうかを考慮

保証実3000 第32項 (2)、(3)、 第45項 (2)、(3) 第1章

このような当事 者(上の行を参 照)の作業を利 用する場合の客 観性及び適性の 評価

保証実3000 第52項 (1)、(2)、 第53項、 第55項 (1)、(2)、 第1章

内部監査、専門家又は業務チーム以外の他の業務実施者の業務を利用するかどうかについての考慮事項は、限定的保証、 合理的保証とも同じである。

適性、能力及び客観性を評価する際は、例えば、次に挙げる事項を考慮することがある。 ・ 誰に報告するのか(例えば、内部監査部門は取締役会又は監査役等に報告する。)。 ・ 倫理や独立性、専門家としての継続教育、業務に関する資格などに関連する専門機関の会員資格 ・ 当該専門家により執筆、公表された論文又は専門家の業界団体若しくはその他団体の会員資格 ・ 他の業務実施者の所属組織は、同じネットワーク又は事務所の中にあるのか、それとも当該業務実施者所属組織外

か。また、当該組織はどのような品質管理手続を実施しているか。 ・ 作成者である企業との個人的な関係又は職業的専門家としての関係 ・ 他の業務実施者が、他の業務実施者を能動的に監督する規制環境で活動しているかどうか。 ・ その他当事者の業務に対し、業務実施者が関与可能であると期待している関与の程度

プロセス、及び (必要な場合 は)内部統制の 理解

保証実3000 第47項L/R、 第4章、 第6章

主題情報の作成プロセスを理解するために、当該業務に関するプロセスに ついての質問が必要になることがある。一部の限定的保証業務では、業務 実施者は主題情報の作成に対する内部統制を理解することを選択すること があるが、このようなケースは多くない。 また、業務実施者は、内部統制のデザインを評価したり、限定的保証のた めにこのような内部統制が業務に適用されているかどうかを判断したり する必要はない。

限定的保証の列にある事項に加えて、業務 実施者は、例えば、以下を理解する。 ・重要な虚偽表示リスクを(例えば、アサ ーションレベルで)評価するために理解 する必要があると判断された保証業務に 関連する統制活動

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参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

ただし、一部の限定的保証業務では、業務実施者は、内部統制のデザインを 評価し、このような内部統制が業務に適用されているかどうかを判断すると 選択することもあるが、特定のISAE又は保証実によって具体的にそのように 要求されていない限り、その必要はない。 下図の矢印は、限定的保証の保証水準全体にわたる手続の例である。保証業 務の状況において意味のある保証水準を得るために必要な手続は様々であ り、下図の矢印内に示された手続を含むが、これらに限定されない。特定業 務において何が意味のある保証水準であるかは、想定利用者の情報ニーズ、 規準及び業務の主題を含む、保証業務の状況に応じた職業的専門家としての 判断である(保証実3000のA5項からA8項参照)。

・企業による内部統制のモニタリング

前項についての理解を得るに当たり、業 務実施者は、保証業務に関連する内部統 制のデザインを評価し、このような内部 統制が業務に適用されているかどうかを 判断するために、EER情報の責任者への質 問に加えて、諸手続を実施する必要があ る。業務実施者の実施事項としては、以 下が想定される。

・経営者などに質問して、企業のリスク評 価プロセス(すなわち、企業が、水使用 量の管理と報告に関連するリスクをどの ように識別するか。)を理解し、そのプ ロセスに関する文書、リスク委員会の議 事録及び識別されたリスクを低減するた めに実施されたフォローアップ措置につ いての文書を閲覧する。

・関連する内部統制の運用がどのようにデ ザインされているかの説明について、操 作マニュアルを閲覧する(例えば、マニ ュアルに「測定値を記録するには、入力 権限のある生産担当者がコンピューター システムにデータを直接入力する。各施 設の名前と場所及び測定単位はシステム のフィールドに事前に入力されている。 全てのフィールドに値が入力され、この 入力値が、各フィールドに対して事前に 設定された範囲内に収まっていなけれ ば、次の画面に進むことはできない」と 記述されることがある。)。

- 117 -

・ユーザー受入テスト(UAT)及びUATで識 別されたデザインの不備の改善に関する 文書を閲覧する。

・内部統制の運用方法に関する担当者の研

修の証拠を閲覧する。

・実施されているプロセスと内部統制の理 解度を確認するためにウォークスルーを 実施する。

・実施されている内部統制を観察する(例 えば、水使用量のメーターをどのように 検針しているか、及びそのデータをコン ピューターシステムへどのように入力し ているかを見せるよう生産担当者に依頼 することが想定される。これにより、業 務実施者は、デザインされたとおり入力 が必須である事前定義フィールドがある かどうか、及び入力しようとした測定値 が、事前に定義された範囲から外れてい た場合にはどうなるかを観察できる。)。

経営者に、例えば以下の項目を質問する。 ・どのように報告境界を決定し、そ こに含める施設を識別しているの か。

・どのように水使用量を測定し、記 録しているのか(例えば、誰が水 道メーターの検針をしているの か、マスバランスをどのように計 算しているか、など)。

・表示及び開示のための規準に照ら してどのように照合、確認及び報 告をしているか。

経営者に質問し、以下を理解する。 ・「経営陣の姿勢」を含む統制環境。 システムは確立されているか開発 中か、自動か手動か、分散されてい るか本社等で一括運用されている か。

・使用される情報システムとインター フェース(例えば、水源や使用され ているシステムが異なる水の使用 量をどのように照合するか。)

経営者に質問し、以下を 理解する。

・報告の伝達の役割と責任 ・企業のEERリスク管理プロセ スの状況(例えば、水が不 足している地域では、水の 使用量は注意深く監視及び 管理される。)

・規準に従ってEER情報を作成 するために実施されている 統制活動

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参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

証拠を入手する ための手続の立 案及び実施

保証実3000 第48項 L/R、 第49項 L/R、 第8章、 第11章

業務実施者は、その領域が重要な虚偽表示が存在する可能性が高い領域と して識別された理由を考慮することがある。理由は様々であるが、例えば 以下のような事項が考えられる。 ・主題に固有の性質開示又は測定若しくは評価における不確実性若しくは 判断又は主題の側面が見逃される可能性がある。例えば、メーターから 直接水の使用量を読み取った場合よりも、マスバランスの計算を行った 場合の方が、情報に、重要な虚偽表示が存在する可能性が高まることが ある。

・組織の複雑さ、その所有と支配の形態又はその地理的な広がり ・十分に自動化されていない、又はまだ開発中のシステムやプロセス。こ れらにより、ヒューマンエラーやプロセス欠陥、不正介入などの発生す る可能性が高まる。

・虚偽表示に対する動機等。例えば、営業免許の維持や罰金の回避には、

具体的な業績目標の達成が必要な場合など。

重要な虚偽表示が存在する可能性が高いほど、より説得力ある証拠が必要 になる。

一部の限定的保証業務では、重要な虚偽表示リスクに対応するため、業務 実施者は追加的な保証手続を立案し、実施することもあるが、主題情報に 重要な虚偽表示が存在する可能性が高いと認められる事項に気付いた場 合を除き、その必要はない。

下図の矢印は、限定的保証の保証水準全体にわたる手続の例である。

保証業務の状況において意味のある保証水準を得るために必要な手続は 様々であり、下図の矢印内に示された手続を含むが、これらに限定されな い。 特定の業務において何が意味のある保証水準であるかは、想定利用者の情 報ニーズ、規準及び業務の主題を含む、保証業務の状況に応じた職業的専 門家としての判断である(保証実3000のA5項からA8項参照)。

重要な虚偽表示リスクの評価に対応して、 更に手続を立案及び実施する際に、業務実 施者は、このようなリスク評価の理由を考 慮することがある。概括的な理由は、左の 列に提示されているものと類似しているか もしれないが、理由がより詳しく(例えば、 アサーションレベルで)考慮されることも あるので、次のような点が考慮されること がある。 ・測定機器(水道メーターなど)の能力に 固有の限界がある又は調整の頻度が不十 分

・主題情報の測定、評価又は開示において 発生したエラー又は不適切な判断。これ らは、見積りの実施時に使用した仮定、 見積りの基となった不正確又は不完全な 基礎データの使用又は複雑な計算が絡む 状況(水の汲上げ量の計算に物質収支ア プローチを使用する場合など)が影響す る。

・主題で識別できない側面が見逃されるか もしれないリスク。その理由には、例え ば、通常の業務以外の出来事や取引、作 成者が情報を第三者に依存している(例 えば、取水量の計算を外部の検針員やエ ンジニアリング会社などに委託してい る。)、漏水や廃水の漏れが検知されて いないなどが考えられる。

・内部統制のデザインにおける不備や有効 でない内部統制の運用により、どのよう にエラーやプロセス欠陥、不正介入など の発生する可能性が高まるか。

- 119 -

質問を行い、その他の手続きを実 施して、重要な虚偽表示が存在す る可能性の高い領域に対応する。 質問と手続の結果に基づいて、追 加の手続が必要かどうかを判断す る(保証実3000のA112項からA116 項参照)。

更に広い範囲にわたる様々な手続を 実施する。例えば、業務実施者が推 定値を設定し、この推定値を実際の 主題情報と比較できる場合など、主 題とその他の関連情報の間に関係が あるときには、分析的手続が適切な ことがある。

・細分化したレベルで分析的手続を実 施し、分析的手続の基礎として使用 されているデータの信頼性に対する 手続を実施する。

・詳細テストを実施する。ただし、合 理的保証業務よりも狭い範囲に対し て行う(つまり、テストの種類は同 じかもしれないが、テストのために 選択されるサンプルや施設の数が少 ない。)。

- 120 -

業務実施者は、EER主題固有の特徴による重 要な虚偽表示の可能性(固有リスク)を考 慮し、その他手続の種類、時期及び範囲の 決定に際し、内部統制の運用状況の有効性 に依拠するかどうかを検討する。

業務実施者は、以下のいずれかの場合に、 (内部統制上リスクに対応する目的で)内 部統制の運用状況の有効性に関する十分か つ適切な証拠を得るための手続を立案、実 施する。 ・EER保証業務に関連する内部統制が有効

に運用されていると想定する場合

・運用評価手続以外の手続のみでは、発生 しうる種類の虚偽表示のレベル(アサー ションレベル)で十分かつ適切な証拠を 提供できない場合 例えば、水使用量の測定に、高度に自動 化されていて、人間の介入をほとんど又 は一切必要としないプロセスが含まれて いることがある。それは、関連する情報 の記録、処理、報告を電子的な形式での み行う場合や、活動データの処理を情報 技術に基づいて、業務又は財務報告シス テムに組み込む場合などである。このよ うな場合、証拠は電子的な形式でしか入 手できず、その十分性と適切性は内部統 制の有効性に左右される。

依拠している内部統制からの逸脱が発見さ れた場合、業務実施者は具体的な質問を行 い、現在の問題と今後想定される結果を理 解し、以下を判断する。 ・実施した運用評価手続により、内部統制 への依拠に関する適切な基礎を提供する かどうか。

・追加的な運用評価手続が必要かどうか。 ・関連する内部統制の運用状況の有効性に 依拠することが保証されないため、重要 な虚偽表示リスクに対応する他の手続が 必要かどうか。

業務実施者は、重要な虚偽表示リスクの評 価と関係なく、EER主題情報の重要な側面に ついて、関連する内部統制(もしもあれば) に関するテストに加え、分析的手続又は詳 細テストを立案し、実施することがある。 例えば、業務実施者は、(例えば、企業に 代わって、第三者のエンジニアリング会社 に水使用量を測定してもらう場合など)外 部確認手続を実施するかどうかを検討する ことがある。確認手続が実施される場合、 通常、確認書の依頼から、確認書の回答の 受領まで、EER主題情報の作成者が関与しな いように、実務者の直接の内部統制(管 理?)の下で実施される。 重要な虚偽表示リスクが高いほど、業務実 施者は証明力の強い証拠を入手する必要が ある。

- 121 -

将来志向の情報 を含む見積りに 関する手続

保証実3000 第48項 L/R、 第49項 L/R

下図の矢印は、限定的保証の保証水準全体にわたる手続の例である。保証 業務の状況において意味のある保証水準を得るために必要な手続は様々 であり、下図の矢印内に示された手続を含むが、これらに限定されない。 特定の業務において何が意味のある保証水準であるかは、想定利用者の情 報ニーズ、規準及び業務の主題を含む、保証業務の状況に応じた職業的専 門家としての判断である(保証実3000のA5項からA8項も参照)。

重要な虚偽表示リスクの評価に応じて、手 続には、例えば、以下のような評価が含ま れる。 ・企業が、見積りに関係して適用する規準 の要求事項を適切に適用したかどうか。 ・見積手法は適切で、首尾一貫して適用さ れたか。また、変更があった場合には、 状況に適しているかどうか。

見積りの性質を考慮に入れ、以下の一つ以 上を実施することがある。 ・企業が使用した見積手法及びその根拠と なったデータをテストし、以下を評価 -定量化方法の適切性 -使用された仮定の合理性

・企業が使用した見積手法を対象とする内

部統制の運用状況の有効性をテスト

・ 対象企業の見積値を評価するための、 業務実施者の見積値又は業務実施者の許 容範囲の設定。その目的は以下のとおり である。 -作成者が使用した仮定や見積手法とは 異なる仮定又は見積手法を使用した場 合、作成された見積値又は許容範囲が 関連性ある変数を確実に考慮に入れ、 企業の見積値との差異を評価する上で 十分な程度に、作成者の仮定又は見積 手法を理解する。

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参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

経営者への質問 ・見積りを作成するに当たり、どのような 仮定を立て、仮定を適用する基礎として どのような情報源を使用したか。

・方法が一貫して適用されているかどうか、 又は前期から変更があったかどうか、及び それらの変更の影響はどのようなものだっ たか。

見積りに対して分析的手続を実施する。

・使用した仮定の情報源、仮定が合理的で あると判断する根拠、作成者が検討した 代替案及び代替案が却下された理由を考 慮する。

・使用した方法が適切かどうか、及び企 業が見積りに関連して適用される規準 を適切に適用したかどうかを評価す る。

-範囲が適切であると結論付けられた場 合(例えば、長期的な見通しに立って 将来志向の不確実な情報を検討する場 合)、全ての結果が合理的とみなされ る範囲に収まるまで、入手可能な証拠 に基づいて範囲を絞っていく。

必要に応じて、右側の合理的保証の 列の列に示した一つ以上の手続を実 施する。

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参照

ガイダンス、考慮事項の説明及び手続例

定量的虚偽表示 の集計と評価

保証実3000 第51項、 第9章

未修正の定量的虚偽表示を集計する(明らかに僅少なものを除き、発生した虚偽表示の規模、内容及び状況を考慮して、 未修正の虚偽表示が個別に、又は集計して重要かどうかを判断する。)。

定性的虚偽表示 の集約と評価

保証実3000 第51項、 第9章

未修正の定性的虚偽表示を集約する(例えば、定性的情報における当該箇所、状況及び虚偽表示とみなされた理由を一 覧にする。)。未修正の定性的虚偽表示が、それに関連するEER主題情報の側面並びにEER情報全体に与える影響を考慮 する。虚偽表示の発生した内容及び状況を考慮の上、未修正の虚偽表示が個々に重要かどうか、また、他の未修正の虚 偽表示と合わせて重要かどうかを判断する。

その他の記載内 容

保証業務の結論 の形成

保証報告書

保証実3000 第62項、 第8章、 第10章、 第11章、 第12章

保証実3000 第64項から 第66項 第8章、 第9章、 第10章、 第11章

保証実3000 第67項から 第71項

主題情報及び保証報告書が含まれる開示書類にその他の記載内容も含まれる場合、業務実施者は、主題情報又は保証報 告書との重要な相違を識別するため、当該その他の記載事項を通読しなければならない。

業務実施者の結論を裏付ける十分な証拠がない場合、業務範囲の制約が存在することから、除外事項付結論又は契約解 除が必要である。

合理的な正当性がない限り、業務実施者は、業務の契約条項の変更に同意 することはできない(例えば、使用した水源の一部を除外するように作成 者が要求し、その証拠が不十分な場合)。

第12章及び限定的保証報告書の例を参照

合理的な正当性がない限り、業務実施者は、 業務の契約条項の変更に同意することはで きない。合理的結論を導くための十分かつ 適切な証拠の入手が不可能であることは、 合理的保証業務から限定的保証業務への変 更理由としては容認されない。 第12章及び合理的保証報告書の例を参照

- 124 -

《付録4》 拡張された外部報告(EER)に関する信頼性及び信用モデル

《序文》

1.本付録では、EER報告書に関する信頼性及び信用という概念を考察し、報告書の信頼性を高める

四つの要因を示す。本書の目的は、外部保証が、どのようにEER情報の信頼性、ひいてはその利用

者の信用を高める役割を果たし得るかを示すことにある。

2.本書の想定利用者は、保証業務実施者、EERの作成者及びEERの利用者である。

3.信頼性とは、利用者により認識される情報の特性であり、それにより情報が信用できるかどう

かに関する利用者の心証を形成するものである。信頼性以外の要因も情報に対する利用者の信用

に影響を及ぼすことがある。例えば、企業が過去において約束を果たしてきたという実績は信用

を高める可能性がある一方で、同じ企業が、自己利益や利益相反があると認識された場合には、

信用が損なわれる可能性もある。

4.EER報告書においては、以下が存在する場合、一般的に信頼性を高める要因となる可能性が高い

と考えられる。

・ 強固なEERフレームワーク:透明性があり、EERフレームワークを適用した結果のEER報告書が

利用者のニーズに応えていると、利用者に信頼性をもたらす強固な基盤を提供するもの

・ 報告プロセスに対する強力なガバナンス:適切な監督の下での強固なプロセス及び内部統制

が適用され、かつこれに関与する者には適性があり、利益相反による影響を受けないというこ

とを利用者に納得させられるもの

・ 一貫性のある幅広い情報:EER報告書の提供する情報が報告書内で整合しているだけでなく利

用者の幅広い知見とも整合している、と利用者を納得させられるもの

・ 外部の専門家による業務及びその他の報告書:独立した外部の専門家による業務報告書及び

利用者が入手可能なEER報告書に関するその他の外部情報

5.これらの要因が示すとおり、外部保証は単独ではEER報告書の信頼性を高める手段の一つにすぎ

ないが、他の要因と相まってその効果はより大きくなる。

《四つの主要因》

6.本書では、前述のとおり示されたEER報告書の信頼性を高める可能性がある四つの要因(以下「四

つの主要因」と呼ぶ。)を図1に示した上で、それぞれについて詳述する。

- 125 -

図1 信頼性及び信用の概要

信頼性及び信用はどのようにして確立されるか

四つの主要因

1. 強固なEERフレームワーク:EERフレームワークは他の何よりも重要であり、その目的は利用者の情報ニ

ーズと密接に結び付いている。

2. 強力なガバナンス:強力なガバナンスに基づく監

視の下、報告プロセス、内部統制及び潜在的な外部

専門家による業務が実施される。

3. 一貫性のある幅広い情報:利用者は、自らが入手

できる幅広い情報源とEER報告書に整合性がある

かどうかを独自に評価する。

4. 外部の専門家による業務及びその他の報告書:利

用者は、外部保証又はEER報告書に関連するその他

の専門家による業務に基づいて発行された第三者

による報告書を入手することもできる。

アウトカム及びアウトプット

1. 強固な EER

フレームワーク

・規準-報告書に関する 5W1H

2. 強 力 な ガ

・監督及び管理機能

バナンス

・内部監査を始めとした「ディフ

ェンスライン」を持つ有効な内

内部利用者の

部統制システム

信頼性及び信用

・外部の専門家による業務の利用

質の高い

外部報告書

・透明性

o 報告フレームワーク

o ガバナンス

3. 一貫性のあ

る幅広い情報

・内外の情報源

・専門家による業務報告書の発行

o 保証

o その他

これらの四つの主要因に透明性があることで、EER報告

書に対する外部利用者の信頼性及び信用(アウトカム)

が生まれ、かつ高まる。

4. 外部の専門 家による業務及 びその他の報告 書

EER報告書が健全なEERフレームワーク(重要な判断を

要する領域を含む)に基づいて作成されたことを立証

できる強力なガバナンスが存在すれば、EER報告書の信

頼性を確立するプロセスを内部利用者に対して透明に

することができ、EER報告書が質の高い外部報告書(ア

ウトプット)であり、公表に適したものであるとする

内部利用者の信頼性及び信用(アウトカム)が生まれ、

かつ高まる。

これらの事項に関する外部に対する透明性並びにEER

報告書及び関連する外部の専門家による業務報告書の

発行によって、外部利用者はEER報告書が幅広い情報と

整合していることを確認できる。

外部利用者の

信頼性及び信用

凡例:

四つの要因

アウトプット

アウトカム

- 126 -

《要因1:強固な EER フレームワーク》

7.経営者には適用されるEERフレームワークに準拠して外部報告書が作成されることを確保する責

任がある。EER報告書の信頼性に対する利用者の認識は、報告書の作成に用いられたEERフレーム

ワークの質及び透明性に影響される。

8.健全なEERフレームワークがあることで、企業はコミュニケーションにおいて効果的なEER報告

書を作成するための指針が得られる一方、利用者に対してはEER報告書がニーズを満たしていると

いう信頼を与えられる。したがってEERフレームワークでは、以下の事項を扱っていることが多い。

・ 報告目的:想定利用者、範囲及び用途(EER報告書における「誰が」、俯瞰的レベルでの「何

を、いつ、どこで」及び「なぜ」)

・ EER報告書に含めるべき内容(EER報告書における詳細レベルでの「何を、いつ、どこで」)

・ 以下を含む情報の質的特性

- 内容の描写法(測定、定量的又は定性的評価若しくは評価技法及び説明)(「どのように」

に関する技術上の側面)

-

EER報告書における効果的なコミュニケーション原則(「どのように」に関するコミュニケー

ション上の側面)

9.以下の表は、信頼性のある報告をもたらす可能性の高いEERフレームワークの機能の特性及び保

証実3000のA44項に示された適合する規準の特性との関係をまとめたものである。

信頼性のある報告をもたらす可能性が高い

適合する規準に関する IAASB の特性

EER フレームワークの特性

EER 報告書の範囲、想定利用者及び想定された

目的適合性

利用に関する利用者の期待を反映させた目的を

定めている。

EER 報告書の想定目的に照らしたとき、想定利

目的適合性、完全性、信頼性

用者にとって目的適合性の高い報告すべき内

容、要素の全てを整合的に含み、かつ信頼性を

もって描写している。

作成者の偏向リスクの可能性を本質的に高める

中立性、完全性、信頼性

不確実性、曖昧性及び判断に関する領域がある

ことを認識し、これに対処するための適切な開

示及び中立性の原則を確立している。

これらの事項に関して透明(公開され)、明快

目的適合性、理解可能性

(曖昧さがなく)かつ簡潔(容易に理解可能)

な報告を促進し、関連のある企業間及び時系列

の実質的な比較可能性を実現する。

10.以下に該当し、かつ、適用された枠組みの質を利用者が信頼している場合もEER報告書の信頼性

を高めることができる。

・ EERフレームワークに想定利用者及びその他ステークホルダーの利益が適切に反映されること

- 127 -

を確保するため、枠組み開発の適切な手続に、ステークホルダーとのやり取りが含まれる。

・ EERフレームワークの開発に関して、潜在的な利益相反に対処する有効なガバナンスが存在す

る。

・ EERフレームワークが周知され、一般的に理解され、ステークホルダーに広く受け入れられて

いる。

11.EERフレームワークが異なれば、その目的も著しく異なる可能性がある。EERフレームワークの

目的と利用者のニーズの適合度合いは信頼性に影響する重要な要因であるため、報告目的の透明

性は重要である。

12.EERフレームワークによって内容及び描写法(「規準」)が定められている場合、報告に整合性

がもたらされる一方で、企業がEER報告書を企業の個別状況に合わせて作成しにくくなる可能性が

ある。報告書の目的を満たすために企業の個別状況に合わせた作成が重要になる場合には、EERフ

レームワークにおいて、目的適合性の高い内容又は描写法を企業が決定するための判断について、

原則主義に基づく要求事項を規定できる。

13.この場合、かかる判断の必要性及び当該規準の潜在的な曖昧さによって、EERフレームワークは

本質的に企業の偏向リスクにさらされやすくなる可能性がある。例えば、原則主義に基づく要求

事項においては、以下のことが考えられる。

・ 内容及び描写法を識別するには、何を報告するか、どの描写方法が適切かということに関して

重要な判断を伴うことがある。これらの判断に当たっての明確な原則があること(目的適合性

に関する強力な原則(EERフレームワークによっては「マテリアリティ」と呼んでいる場合があ

る)及びそれが効果的に適用されることを可能にするためのステークホルダーエンゲージメン

トに関する要求事項等)、並びにこれらに関する、及びこれらの実施に当たってのプロセスに透

明性があることは、EER報告書の重要な信頼性要因になり得る。

・ 描写法の適用においては、見積りや定性的評価を行うに当たって重大な不確実性への対処を

伴うことがあり、企業の重要な判断が必要となり得る。こうした不確実性及び判断に対応する

ため、EERフレームワークでは、関連事項の開示を求め、また、企業の偏向リスクの可能性が本

質的に高まることに対処するため中立性の原則を確立し適用を求めることができる。

14.類似分野に適用されるEERフレームワークが幾つも存在する場合、EER報告書の利用者に混乱が

生じる可能性があり、また、利用者が企業を効果的に比較する能力を損なう可能性がある。

《要因2 強力なガバナンス》

15.強力なガバナンスには、効果的なリスク管理プロセス及び質の高い報告プロセスを含め、強力

な内部統制システムを監視する健全な統治体制が存在する。経営者及びガバナンスに責任を有す

る者5は、EER報告書内の情報が信頼でき、適時に提供されるものであることを確保するために必要

な内部統制を確立する責任を有している。経営者又はガバナンスに責任を有する者は、自身の責

5 監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」参照。企業の戦略的方向性と説明責任を果たしているか どうかを監視する責任を有する者又は組織をいう。これには、財務報告プロセスの監視が含まれる。国によっては、ガバナンスに責任 を有する者には、経営者を含むことがある。

なお、我が国においては、会社法の機関の設置に応じて、取締役会、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会がガバ ナンスに責任を有する者に該当するが、品質管理基準報告書及び監査基準報告書においては、原則として監査人のコミュニケーション の対象は、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会を想定し「監査役等」と記載している。一方、海外の構成単位の監 査に関連する場合は、ガバナンスの構造の多様性を考慮して「ガバナンスに責任を有する者」を使用している。

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任について外部報告書の中で明示的な主張を行うことが求められるか、又はこれを任意に行うこ

とがある。

16.したがって、経営者及びガバナンスに責任を有する者の適性及び説明責任は、信頼性及び信用

を高める上で必要となる強力なガバナンスの重要な要素である。特定の状況においては、外部専

門家の利用が適切とされることもあり、これによって更に信頼性を高めることが可能になる。

17.企業の戦略的方向性及び説明責任に関する責務を監視する責任を有するガバナンスに責任を有

する者による監督には、従来財務諸表を中心としてきた企業の外部報告プロセスの監督が含まれ

る。EERが進化を続けるにつれ、ガバナンスに責任を有する者の責任は広がる可能性がある。上場

企業及びその他大企業においては、企業の外部報告プロセスの監督に関連する業務の大半は監査

役等が担っていることが多い。経営者とガバナンスに責任を有する者との間で、透明性があり、

かつ建設的な関係を築くことで外部報告の信頼性を高めることができる。ガバナンスに責任を有

する者(監査役等がある場合は監査役等を含む。)は、その責務を果たすに当たって、外部報告書

の有用性及び質に関する想定利用者の認識を把握するため、想定利用者と対話することがある。

18.一部の企業では、統治プロセスの一環として、要求された開示の作成に当たって適切に経営者

又はガバナンスに責任を有する者を補佐し、企業の開示に関する内部統制及び手続が正しく確実

に実施されるように個別のディスクロージャー委員会を設置している。これらの活動により外部

報告書の質を支えることができる。

19.強力な内部統制システムは一般的に以下を基礎としている。

・ 監督機能(ガバナンスに責任を有する者)及び経営者が積極的に質の高い外部報告の実施を

支え、有効な内部統制を生み出す社風を定着させる統制環境

・ 内容の描写法を可能にするための意思決定を支える上で十分な質の関連データ及び情報を入

手及び処理する効果的な情報システム

・ 外部報告の質を脅かすリスクの識別と評価、並びに、当該リスクに対応する統制活動の業務

への適用及び有効な運用

・ かかる内部統制の有効性を判断するための全体的な定期監視活動

・ 適切な情報提供及びコミュニケーション(ビジネスプロセスに関するより幅広い内容を含む。)

20.多くの企業では、自社の業務監査若しくは外部報告プロセス又は外部報告書そのものの自社の

業務監査又は外部報告プロセス若しくは外部報告書そのものの監査の支援に内部監査を利用して

いる。内部監査人もまた、企業内のEERプロセスの成熟とともに自身の役割がどのように進化する

か探求している。6EER報告プロセス又はそのアウトカムであるEER報告書に対する内部の信頼性及

び信用を支えるために、専門業務を提供する外部専門家は、ガバナンスに責任を有する者の下、

保証業務又はその他の専門業務を実施する場合がある。

21.ステークホルダーエンゲージメントも、企業の戦略を伝え、開示対象となる課題を識別すると

いう点において、ガバナンスプロセスの重要な一部を構成する可能性がある。

22.経営者は想定利用者、特に投資家と様々な方法で定期的にコミュニケーションを図り、関わり

を持つことができる。利用者と目に見える形で積極的に関わることが、経営者にとって、質の高

6 内部監査人協会(Institute of Internal Auditors)(2013)「統合報告と内部監査の新たな役割(Integrated Reporting and the

Emerging Role of Internal Auditors)」

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い外部報告の実現に対する一層の動機付けとなり、その結果として信頼性が高まる可能性がある。

23.ステークホルダーとの対話は、企業の戦略を明確化し、対処すべき最も関連性の高い課題を識

別した上で、これらを外部報告書で開示するプロセスの中で重要な位置を占めている。このよう

な対話の重要性は多くのEERフレームワークに反映されており、企業のEERの「マテリアリティプ

ロセス」7に影響を及ぼしている。また、企業は、社外取締役の統治体制にステークホルダーの代

表を含めること又はこれらの事項について取締役会に助言する専門家によるアドバイザリーグル

ープを別途設置することがある。

24.EERプロセスを支えるガバナンス体制の異なる要素(構造、プロセス、人)に透明性がもたらさ

れると、外部利用者にとって外部報告書の信頼性が高まる可能性がある。これには、企業内で報

告プロセスに関与する個人及びそのプロセスを管理する個人に関する透明性の他、これら個人の

誠実性及び適性に関する利用者の認識に関する情報が含まれることがある。

《要因3 一貫性のある幅広い情報》

25.利用者が入手可能な企業に関する情報及びその環境に関する情報について、各種情報源の間に

不整合がある場合、EER報告書の信頼性に影響が及ぶ可能性がある。

26.EER報告書内の情報と利用者が入手できると考えられる他の情報源との整合性を考慮すること、

又は明らかな不整合について説明することで、企業はEER報告書の信頼性を高めることができる。

27.幅広い情報の信頼性に影響を及ぼす要因、例えば、根本となる情報源の独立性及び客観性に関

する認識、情報の通信媒体(例えば有名な通信社)又はその情報が過去に入手されたもので信頼

できるとの認識が既にあるなど、EER報告書と幅広い情報との間に不整合がある場合、利用者にと

ってどちらがより信頼性が高いかの判断に影響を及ぼす可能性がある。

《要因4 外部の専門家による業務及びその他の報告書》

28.企業は、強力なガバナンスを通してのみならず、専門家による業務又はその他の外部情報を得

ることを通して外部報告書の信頼性の向上を追求する。信頼性は職業会計士によってもたらされ

るだけでなく、様々な専門家による業務及びその他様々な提供者(エンジニア等)から得られた

外部情報によってももたらされる。かかる専門家による業務により、保証業務の対象となるEER報

告書又はその他の専門家による業務に基づくEER報告書若しくはその他の外部情報が提供される

可能性がある(上記第20項参照)。これらは、一般に公開されるか、その業務に関与する内部当事

者のみに利用が制限される。

29.状況に応じて適切な、そして利用者にとって最も関連性が高い専門家による業務の種類は利用

者のニーズ(内部利用者であるか外部利用者であるかによって大きく異なる。)、外部情報の性質

及び企業のEERプロセスの成熟度によって決まる。

30.このような専門家による業務及びその他の外部情報がどのようにEER報告書の信頼性を高めるか

は、当該情報の特徴及び当該業務を提供する者の個人的特質に左右される。例として以下のもの

がある。

7 EERガイダンスである『拡張された外部報告(EER)に対する保証業務への国際保証業務基準3000(改訂)の適用に関する規範性のない

ガイダンス』では、このプロセスは「報告事項を特定するための企業のプロセス」という。

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・ 実証されている、又は一般に周知されている適性

・ 客観性及び独立性

・ 職業的専門家としての懐疑心及び職業的専門家としての判断

・ 業務の履行における品質

・ 該当する場合、業務を実施する業務実施者及び事務所による、業務及び事務所レベルでの品

質管理

・ 業務実施者に適用される職業的専門家としての基準

・ 該当する場合、規制当局による監視及び専門家による業務の監督

・ 報告の明瞭性及び実施された業務の透明性

31.専門家による業務又はその他の外部情報の形式及び企業の複雑性によって必要とされる能力は

異なるが、一般的に能力には以下が含まれることが望ましい。

・ 関連するEERフレームワークに関する知識

・ 主題に関する知識

・ 適用される職業的専門家としての基準に関する知識

32.専門家による業務を実施する者又はその他の外部情報を提供する者の適性に関する透明性によ

ってEER報告書の信頼性が増す可能性がある。特定の種類の業務(例えば、保証業務)では、業務

実施者が独立性及びその他関連する職業倫理に関する規定を満たすことが要求される。

33.外部の専門家による業務又はその他の外部情報による結果がEER報告書においてどのように報告

されるかによって、外部の業務又は外部情報がEER報告書の信頼性をどの程度高めるかが影響され

る。信頼性を高める可能性のあるコミュニケーションの主な特徴は、かかるコミュニケーション

が理解可能であること、偏っていないこと、並びに該当する場合は報告期間の比較可能性及び他

企業のEER報告書との比較可能性があることである。

34.業務実施者の事務所及び業務の実施に関する品質管理について国内外の基準及び関連する職業

倫理に関する規定に明確に言及することによって外部情報がEER報告書の信頼性の程度を高める

可能性がある。

35.情報の信頼性が高められるかどうかは、外部専門家による業務(保証業務が提供されている場

合は保証業務を含める。)に関する利用者の理解に影響されてしまう場合がある。そのため、この

ような業務の性質及び業務が主題情報(又はEER報告書)への信頼性を高める程度について、利用

者の理解を深めることが重要である。

36.業務範囲及び表明された結論を理解するために保証報告書の読み方について知見がない場合、

特に業務実施者が提供できる業務の範囲や保証業務実施者が従う職業的専門家としての基準に違

いがあるため、利用者に混乱や誤解が生じる危険性がある。

以 上

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