監査基準報告書 450
監査の過程で識別した虚偽表示の評価
監基報 450
2 0 1 1 年 1 2 月 2 2 日
改正 2 0 1 5 年 5 月 2 9 日
改正 2 0 1 9 年 6 月 1 2 日
改正 2 0 2 1 年 1 月 1 4 日
改正 2 0 2 2 年 1 0 月 1 3 日
最終改正 2 0 2 4 年 9 月 2 6 日
日 本 公 認 会 計 士 協 会
監査・保証基準委員会
(報告書:第 17 号)
項番号
Ⅰ 本報告書の範囲及び目的
1.本報告書の範囲 ................................................................... 1
2.本報告書の目的 ................................................................... 2
3.定義 ............................................................................. 3
Ⅱ 要求事項
1.識別した虚偽表示の集計 ........................................................... 4
2.監査の進捗に伴い識別した虚偽表示の検討 ........................................... 5
3.虚偽表示に関するコミュニケーション及び修正 ....................................... 7
4.未修正の虚偽表示が及ぼす影響の評価 ............................................... 9
5.経営者確認書 .................................................................... 13
6.監査調書 ........................................................................ 14
Ⅲ 適用指針
1.虚偽表示の定義 .................................................................. A1
2.識別した虚偽表示の集計
(1)「明らかに僅少」な虚偽表示 ..................................................... A2
(2) 財務諸表における虚偽表示 ...................................................... A3
(3) 注記事項の虚偽表示 ............................................................ A4
(4) 虚偽表示の集計 ................................................................ A5
3.監査の進捗に伴い識別した虚偽表示の検討 .......................................... A7
4.虚偽表示に関するコミュニケーション及び修正 ..................................... A10
5.未修正の虚偽表示が及ぼす影響の評価 ............................................. A13
6.経営者確認書 ................................................................... A26
7.監査調書 ....................................................................... A27
Ⅳ 適用
監基報 450
《Ⅰ 本報告書の範囲及び目的》
《1.本報告書の範囲》
1.本報告書は、識別した虚偽表示が監査に与える影響と、未修正の虚偽表示が財務諸表に与える
影響を評価する際の実務上の指針を提供するものである。
監査基準報告書 700 「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」では、監査意見の形成に当たり、
財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないということについての合理的な保証を得たかどうか
を判断するための監査人の責任を述べている。
監査基準報告書 700 が要求する財務諸表に対する監査人の意見は、本報告書に従って、未修正
の虚偽表示が財務諸表に与える影響について監査人が行った評価に基づいて形成される(監基報
700 第 10 項及び第 11 項参照)。
監査基準報告書 320 「監査の計画及び実施における重要性」では、財務諸表監査の計画及び実施
における重要性の概念の適用に関する実務上の指針を提供している。
《2.本報告書の目的》
2.本報告書における監査人の目的は、以下の事項のとおりである。
(1) 識別した虚偽表示が監査に与える影響を評価すること。
(2) 未修正の虚偽表示が財務諸表に与える影響を評価すること。
《3.定義》
3.本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。
(1) 「虚偽表示」-報告される財務諸表項目の金額、分類、表示又は注記事項と、適用される財務
報告の枠組みに準拠した場合に要求される財務諸表項目の金額、分類、表示又は注記事項との
間の差異をいう。虚偽表示は、誤謬又は不正から発生する可能性がある。監査人が、財務諸表が
全ての重要な点において適正に表示されているかどうかに関して意見表明する場合、虚偽表示
には、監査人の判断において、財務諸表が全ての重要な点において適正に表示されるために必
要となる、金額、分類、表示又は注記事項の修正も含まれる(A1 項参照)。
(2) 「未修正の虚偽表示」-監査人が監査の過程で集計対象とした虚偽表示のうち、修正されな
かった虚偽表示をいう。
《Ⅱ 要求事項》
《1.識別した虚偽表示の集計》
4.監査人は、明らかに僅少なものを除き、監査の過程で識別した虚偽表示を集計しなければなら
ない(A2 項及び A6 項参照)。
《2.監査の進捗に伴い識別した虚偽表示の検討》
5.監査人は、以下の場合、監査の基本的な方針及び詳細な監査計画を修正する必要があるかどう
か判断しなければならない。
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監基報 450
(1) 識別した虚偽表示の内容とその発生の状況が他の虚偽表示が存在する可能性を示唆しており、
それらを合算した際に重要な虚偽表示となり得る他の虚偽表示が存在する可能性を示唆してい
る場合(A7 項参照)
(2) 監査の過程で集計した虚偽表示の合計が、監査基準報告書 320 に従って決定した重要性の基
準値に近づいている場合(A8 項参照)
6.監査人の要請により、経営者が、取引種類、勘定残高又は注記事項を調査して、発見された虚偽
表示を修正した場合においても、監査人は、未発見の虚偽表示があるかどうか判断するため追加
的な監査手続を実施しなければならない(A9 項参照)。
《3.虚偽表示に関するコミュニケーション及び修正》
7.監査人は、監査の過程で集計した全ての虚偽表示について、適切な階層の経営者に適時に報告
し、これらの虚偽表示を修正するよう経営者に求めなければならない(A10 項及び A11 項参照)。
8.経営者が、監査人によって報告された虚偽表示の一部又は全てを修正することに同意しない場
合、監査人は、経営者が修正しない理由を把握した上で、全体としての財務諸表に重要な虚偽表
示がないかどうかを評価しなければならない(A12 項参照)。
《4.未修正の虚偽表示が及ぼす影響の評価》
9.監査人は、未修正の虚偽表示が与える影響を評価する前に、監査基準報告書 320 に従って決定
した重要性の基準値が、実績値に照らして依然として適切であるかどうかを検討しなければなら
ない(A13 項及び A14 項参照)。
10.監査人は、個別に又は集計して、未修正の虚偽表示が重要であるかどうかを判断しなければな
らない。監査人は、この評価を行うに当たって、以下を考慮しなければならない。
(1) 全体としての財務諸表及び関連する取引種類、勘定残高又は注記事項に対する虚偽表示の大
きさと内容、並びに虚偽表示が発生した特定の状況(A15 項から A21 項参照)
(2) 過年度の未修正の虚偽表示が全体としての財務諸表及び関連する取引種類、勘定残高又は注
記事項に与える影響(A22 項参照)
《監査役等とのコミュニケーション》
11.監査人は、未修正の虚偽表示の内容とそれが個別に、又は集計して監査意見に与える影響につ
いて、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)に報
告しなければならない。未修正の虚偽表示のうち重要な虚偽表示がある場合には、監査人は、監
査役等が経営者に重要な虚偽表示の修正を求めることができるように、未修正の重要な虚偽表示
であることを明示して報告しなければならない(A23 項から A25 項参照)。
12.監査人は、監査役等に、過年度の未修正の虚偽表示が関連する取引種類、勘定残高又は注記事項
及び全体としての財務諸表に与える影響について報告しなければならない。
- 2 -
監基報 450
《5.経営者確認書》
13.監査人は、経営者に、未修正の虚偽表示の与える影響が個別にも集計しても全体としての財務
諸表に対して重要性がないと判断しているかどうかについて、経営者確認書に記載することを求
めなければならない。経営者確認書には、未修正の虚偽表示の要約を記載するか、又は添付する
ことを求めなければならない(A26 項参照)。
《6.監査調書》
14.監査人は、以下の事項を監査調書に記載しなければならない(A27 項参照)。
(1) 明らかに僅少な虚偽表示と取り扱う金額(第4項参照。監査基準報告書 230 「監査調書」第7
項から第 10 項及び A6 項参照)
(2) 監査の実施過程で発見した全ての虚偽表示と修正の有無(第4項、第7項及び第 11 項参照)
(3) 未修正の虚偽表示が個別に又は集計して重要であるかどうかに関する監査人の結論及びその
根拠(第 10 項参照)
《Ⅲ 適用指針》
《1.虚偽表示の定義》(第3項(1)参照)
A1.虚偽表示は、以下の結果生じることがある。
(1) 財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り
(2) 金額又は注記事項の脱漏(不適切な、又は不完全な注記及び財務報告の枠組みにおいて明示
的に要求されていないが、注記を求める趣旨に照らして必要と考えられる注記がなされていな
い場合を含む。)
(3) 事実の見落とし又は明らかな誤解から生じる会計上の見積りの誤り
(4) 監査人が合理的でないと考える会計上の見積り又は監査人が不適切と考える会計方針の選択
及び適用に関する経営者の判断
(5) 情報の不適切な区分、集計又は細分化
(6) 適正表示の枠組みに基づき作成された財務諸表の場合、枠組みでは明示的に求められていな
いが、適正表示の目的を達成するために必要な注記が行われていない場合
不正による虚偽表示の例示は、監査基準報告書 240 「財務諸表監査における不正」に記載されて
いる(監基報 240 の A1 項から A5 項参照)。
《2.識別した虚偽表示の集計》(第4項参照)
《(1)「明らかに僅少」な虚偽表示》
A2.第4項は、「明らかに僅少」なものを除き、監査の過程で識別した虚偽表示を集計することを求
めている。 「明らかに僅少」とは、「重要性がない」ということではない。「明らかに僅少」な虚偽
表示は、重要性があると判断される虚偽表示と比べて金額的にごく少額な水準である、又は内容
が全く異なる虚偽表示である。すなわち、 「明らかに僅少」とは、個別にも集計しても、金額、内
容又は状況のいずれにおいても、明らかに些細なことをいう。
- 3 -
ある虚偽表示について、「明らかに僅少」であるかどうかについて何らかの疑義がある場合は、
監基報 450
「明らかに僅少」ではないと判断する。
《(2) 財務諸表における虚偽表示》
A3.監査人は、財務諸表に重要な影響を与えないことが明らかであると想定されるため集計する必
要がないと判断する虚偽表示の金額を、財務諸表における「明らかに僅少」な額として定める場
合がある。第4項で要求されているように、監査人は「明らかに僅少」な虚偽表示の額として設定
した金額を超えない虚偽表示であっても、内容又は状況から判断すると「明らかに僅少」ではな
いと判断される場合には、当該虚偽表示は第4項に従い集計されることとなる。
《(3) 注記事項の虚偽表示》
A4.注記事項に関する虚偽表示も、また、個別にも集計しても、又は金額、内容若しくは状況を考慮
しても「明らかに僅少」である場合がある。監査人は、「明らかに僅少」ではない注記事項の虚偽
表示については、当該虚偽表示に関連する注記事項及び財務諸表全体に与える影響を評価するた
めに集計する。A16 項は、定性的な注記事項に関する虚偽表示に重要性があると判断される場合の
例を示している。
《(4) 虚偽表示の集計》
A5.A3 項及び A4 項に従い内容又は状況を考慮して集計された虚偽表示は、金額に関する虚偽表示の
ように合算することはできない。しかし、第 10 項に従い監査人は、個別に又は集計して(他の虚
偽表示と合わせて)虚偽表示が重要であるかどうかを判断することが求められている。
A6.監査人が、監査の過程で集計した虚偽表示の影響を評価し、経営者及び監査役等に虚偽表示を
報告する際、確定した虚偽表示、判断による虚偽表示及び推定による虚偽表示に区分することが
有益な場合がある。
・ 確定した虚偽表示とは、虚偽表示としての事実が確かめられた場合の虚偽表示をいう。
・ 判断による虚偽表示とは、監査人が合理的又は適切でないと考える財務諸表における認識、
測定、表示及び注記事項(会計方針の選択及び適用を含む。)に関する経営者の判断から生じる
差異をいう。
・ 推定による虚偽表示とは、母集団における虚偽表示の監査人の最善の見積りであり、サンプ
ルにおいて識別した虚偽表示から母集団全体の虚偽表示を推定した額をいう。推定による虚偽
表示の決定とその結果の評価についての指針は、監査基準報告書 530 「監査サンプリング」に記
載している(監基報 530 第 13 項及び第 14 項参照)。
《3.監査の進捗に伴い識別した虚偽表示の検討》(第5項及び第6項参照)
A7.虚偽表示は、単発的に発生するとは限らない。例えば、監査人が識別した虚偽表示が、内部統制
が機能していないこと、又は企業が広範囲に適用している仮定や評価方法が不適切であることか
ら生じている場合、他の虚偽表示が存在する可能性を示唆している。
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監基報 450
A8.監査の過程で集計した虚偽表示が監査基準報告書 320 に従って決定した重要性の基準値に近づ
いている場合、未発見の虚偽表示と監査の過程で集計した虚偽表示の合計が、重要性の基準値を
上回るリスクを監査上許容可能な低い水準に抑えられないことがある。未発見の虚偽表示が存在
する原因には、サンプリングリスクとノンサンプリングリスクがある (監基報 530 第4項(2)及び
(3)参照)。
A9.監査人は、経営者に対して、監査人が識別した虚偽表示の原因を理解するため取引種類、勘定残
高又は注記事項の調査や、実際に発生した虚偽表示の金額を確定するための手続の実施、及び財
務諸表への適切な修正を要請することがある。
監査人は、例えば、サンプルにおいて識別した虚偽表示から母集団全体の虚偽表示を推定した
とき、経営者にその虚偽表示の調査を要請することがある。
《4.虚偽表示に関するコミュニケーション及び修正》(第7項及び第8項参照)
A10.適切な階層の経営者に対して適時に虚偽表示に関するコミュニケーションを実施することは、
経営者が取引種類、勘定残高及び注記事項について虚偽表示があるかどうかを評価し、虚偽表示
であることに同意するかどうかを監査人に伝え、必要な措置を講ずることが可能になるため、重
要である。
通常、適切な階層の経営者とは、虚偽表示を評価し、必要な措置を講ずる責任と権限を有する者
をいう。
A11.監査人によって報告されたものを含め、全ての虚偽表示を修正することにより、経営者は、正
確な会計帳簿と会計記録を維持することができ、さらに、過年度において重要でなかった未修正
の虚偽表示の累積的な影響に起因する将来における財務諸表の重要な虚偽表示リスクを抑えるこ
とができる。
A12.監査基準報告書 700 は、監査人に、財務諸表が全ての重要な点において、適用される財務報告
の枠組みに準拠して作成され表示されているかどうか評価することを求めている。この評価には
経営者が虚偽表示を修正しない理由を把握し、経営者のバイアスの兆候等企業の会計実務の質的
側面を検討することが含まれる(監基報 700 第 12 項参照)。
《5.未修正の虚偽表示が及ぼす影響の評価》(第9項及び第 10 項参照)
A13.監査基準報告書 320 に従った監査人の重要性の基準値の決定は、通常、期中で行われるため、
企業の業績の見込みに基づくこととなる。したがって、監査人は、未修正の虚偽表示を評価する
前に、監査基準報告書 320 に従って決定した重要性の基準値を実績値に基づき改訂することが必
要となる場合がある。
A14.監査基準報告書 320 には、監査人が、監査の進捗に伴い、重要性の基準値(設定している場合、
特定の取引種類、勘定残高又は注記事項に対する重要性の基準値)を改訂すべき情報を認識した
場合の指針が記載されている(監基報 320 第 11 項参照)。監査人が未修正の虚偽表示が与える影
響を評価する前に、通常、重要性の基準値の改訂は行われる。
監査基準報告書 320 に従って決定した重要性の基準値について監査人が検討した結果(第9項
参照)、重要性の基準値が当初設定した金額を下回る額に改訂された場合、監査意見の基礎となる
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監基報 450
十分かつ適切な監査証拠を入手するために、手続実施上の重要性と、リスク対応手続の種類、時
期及び範囲の適切性を再検討する。
A15.監査人は、金額に関する個々の虚偽表示が関連する取引種類、勘定残高又は注記事項に与える
影響を検討する。特定の取引種類、勘定残高又は注記事項に対する重要性の基準値を設定してい
る場合、監査人は、個々の虚偽表示の金額が当該重要性の基準値を上回っているかどうかを検討
する。
A16.監査人は、定性的な注記事項に関する個々の虚偽表示が、関連する注記事項及び財務諸表全体
に与える影響を検討する。定性的な注記事項に関する虚偽表示に重要性があるかどうかは、職業
的専門家としての判断を伴う事項であり、適用される財務報告の枠組み及び企業の特定の状況を
考慮して判断される。例えば、以下のような場合に監査人は虚偽表示に重要性があると判断する
場合がある。
・ 減損損失の認識に至った事象又は状況について注記していない場合(例えば、鉱業を営む企
業において、金属又はコモディティに対する需要の長期的な著しい低下など。)
・ 財政状態計算書(貸借対照表)、損益計算書、包括利益計算書、持分変動計算書(株主資本等
変動計算書)又はキャッシュ・フロー計算書における重要な項目に関する会計方針の記述が不
正確な場合
・ 保険及び銀行業務を行う企業において、自己資本管理の目的、方針及び手続に関する記述が
不正確又は不完全な場合
・ 国際的な取引活動を行う企業において、為替レートの変動に対する感応度に関する記述が不
十分な場合
A17.第 10 項で要求されるように、未修正の虚偽表示が内容的に重要であるかどうかを決定する場
合、監査人は金額及び注記事項に関する未修正の虚偽表示を考慮する。そのような虚偽表示は、
個別に、又は他の虚偽表示と合わせて重要であると判断される場合がある。例えば、注記事項に
おいて識別された虚偽表示について、監査人は以下を考慮することがある。
(1) 識別された虚偽表示が単純であったとしても、反復的又は広範囲に発生しており、リスク評
価に影響するものであるかどうか。
(2) 識別された多くの虚偽表示が同一の事項に関連しており、総合的に判断すると当該事項の財
務諸表利用者の理解に影響を与えるかどうか。
監査基準報告書 700 の第 13 項(4)は、監査人に、関連しない情報又は注記された事項の適切
な理解を曖昧にする情報を含めることにより、財務諸表の全体的な表示が損なわれていないか
どうかを検討することを求めており、集計した虚偽表示の検討は、当該第 13 項(4)に従って財
務諸表を評価する際にも役立つ。
A18.個々の虚偽表示が重要であると判断した場合、当該虚偽表示を他の虚偽表示と通常相殺できな
い。例えば、売上の重要な過大計上があり、その利益影響額が同額の費用の過大計上によって相
殺される場合でも、全体としての財務諸表において、重要な虚偽表示が存在することになる。
同じ勘定残高又は取引種類の虚偽表示を相殺することが適切な場合もある。ただし、重要性が
ない虚偽表示を相殺することが適切であると判断する場合でも、未発見の虚偽表示が存在するリ
スクに留意する。また、同じ勘定残高又は取引種類において多数の重要性がない虚偽表示を識別
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監基報 450
した場合、監査人は、当該勘定残高又は取引種類に対する重要な虚偽表示リスクを再評価しなけ
ればならないことがある。
A19.勘定科目等の分類に係る虚偽表示が重要であるかどうかの判断には、質的な事項の評価を伴う。
質的な事項には、例えば、勘定科目等の分類に係る虚偽表示が借入契約等に係る財務制限条項に
与える影響、個々の勘定科目又は小計項目に与える影響、主要比率に与える影響が含まれる。
監査人は、勘定科目等の分類に係る虚偽表示が重要性の基準値(設定している場合、特定の取引
種類、勘定残高又は注記事項に対する重要性の基準値)を上回っていても、全体としての財務諸
表との関連では、重要ではないと判断する場合がある。例えば、貸借対照表の表示科目の分類の
誤りは、その金額が、関連する貸借対照表の表示科目の計上額に比べて少額であり、かつ当該分
類の誤りが、損益計算書又は主要比率に影響を与えていない場合、全体としての財務諸表との関
連では重要ではないと判断する場合がある。
A20.監査人は、虚偽表示が重要性の基準値を下回る場合でも、当該虚偽表示が、個別に、又は監査
の過程で集計した他の虚偽表示と合わせて検討した結果、重要であると評価することがある。当
該評価に影響を与える状況には、以下が含まれる。
・ 虚偽表示が、法令遵守に影響を与えている。
・ 虚偽表示が、借入に係る財務制限条項又はその他の契約条項の遵守に影響を与えている。
・ 虚偽表示が当年度の財務諸表に与える影響は重要ではないが、翌年度以降の財務諸表に重要
な影響を与える可能性が高い会計方針の不適切な選択又は適用に関連している。
・ 虚偽表示があることによって、一般的な経済情勢や産業動向に基づいた利益又は他の趨勢の
変化を認識できない状況になっている。
・ 虚偽表示が、企業の財政状態、経営成績又はキャッシュ・フローの状況の評価に使用する比率
に影響を与えている。
・ 虚偽表示が、セグメント情報に影響を与えている(例えば、企業の事業活動や収益力に重要な
役割を果たしていると認識されているセグメントに対して虚偽表示が重要である。)。
・ 虚偽表示が、経営者の報酬を増加させている(例えば、虚偽表示により、報酬や賞与の要件を
満たしている場合)。
・ 虚偽表示が、既に公表した業績見込み等の財務諸表利用者に示された情報に照らして重要で
ある。
・ 虚偽表示が、特定の当事者との取引に関係している(例えば、経営者に関連する関連当事者と
の取引)。
・ 開示に関する規則等において特に定められている事項のほか、財務諸表利用者が企業の財政
状態、経営成績又はキャッシュ・フローの状況に関して適切な判断を行うために必要と監査人
が判断する事項が注記されていない。
・ 虚偽表示が、年次報告書に含まれるその他の記載内容(例えば、有価証券報告書における「業
績等の概要」、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析」に含まれる情報)に関連し、
財務諸表利用者の経済的意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる。監査基準報告書 720
「その他の記載内容に関連する監査人の責任」は、その他の記載内容に関連する監査人の責任
に関する実務上の指針を提供する。
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上記の状況は例示であり、全てがあらゆる監査業務に関連しているとは限らず、また必ずしも
網羅されているとは言えない。さらに、上記の状況に該当する場合であっても、虚偽表示が重要
であるという結論に必ずしも至るわけではない。
A21.監査基準報告書 240 は、不正に起因する又はその可能性がある虚偽表示について、財務諸表に
関連して金額的重要性がない場合でも、他の監査の局面との関係に留意して、当該虚偽表示が示
す意味を検討しなければならないことについて記載している(監基報 240 第 34 項参照)。財務諸
表の注記事項に関する虚偽表示も、例えば、以下の場合、不正を示唆することがある。
・ 経営者の判断にバイアスがあることにより、誤解を招くような財務諸表の注記が行われてい
る場合
・ 財務諸表の記載の適切な理解を妨げることを目的に、重複する又は有益でない注記が幅広く
行われている場合
取引種類、勘定残高及び注記事項における虚偽表示の検討を行う際、監査人は監査基準報告書
200「財務諸表監査における総括的な目的」第 14 項に従い、職業的懐疑心を保持する。
A22.過年度の重要性がない未修正の虚偽表示の累積的影響は、当年度の財務諸表に重要な影響を与
えることがある。過年度の未修正の虚偽表示が当年度の財務諸表に与える影響を監査人が評価す
る方法には、複数の方法が考えられるが、同じ方法を使用することにより、期間の比較可能性を
保つことができる。
《監査役等とのコミュニケーション》(第 11 項参照)
A23.監査役等にコミュニケーションを行う場合には、全ての監査役等に適切に情報が伝わるように
配慮する。
A24.個別に重要性がない未修正の虚偽表示が多数ある場合、監査人は、個別の未修正の虚偽表示の
詳細をそれぞれ報告することに替えて、未修正の虚偽表示の数と金額的影響の合計額を報告する
ことがある。
A25.監査基準報告書 260「監査役等とのコミュニケーション」は、監査人が要請した経営者確認書
の草案について監査役等にコミュニケーションを行うことを監査人に対して要求している(監基
報 260 第 16 項(4)参照)。監査人は、虚偽表示の金額と内容、及び翌年度以降の財務諸表に見込ま
れる影響を考慮し、虚偽表示を修正しない理由と当該虚偽表示の示す意味について、監査役等と
協議することがある。
《6.経営者確認書》(第 13 項参照)
A26.経営者は、重要な虚偽表示がある場合には当該虚偽表示を修正し、財務諸表を修正する責任が
ある。したがって、監査人は、経営者に、虚偽表示について経営者確認書への記載を要請すること
が求められる。
経営者が特定の未修正の虚偽表示について、それが虚偽表示であることに同意しない場合、経
営者は、経営者確認書に以下のような記載を追加することがある。
「私たちは、項目××及び××が虚偽表示であることに同意しない。理由は以下のとおりであ
る。[理由の記述]」
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このような経営者確認書を入手した場合でも、監査人は、未修正の虚偽表示が与える影響につ
監基報 450
いて結論付けることが必要である。
《7.監査調書》(第 14 項参照)
A27.監査人は、未修正の虚偽表示に関する監査調書の記載に際し、以下を考慮することがある。
(1) 未修正の虚偽表示の合計額が与える影響の検討
(2) 特定の取引種類、勘定残高又は注記事項に対する重要性の基準値を設定している場合は、未
修正の虚偽表示が、当該基準値を上回っているかどうかの評価
(3) 未修正の虚偽表示が、主要比率又は趨勢、並びに法令及び契約条項の遵守 (例えば、借入に係
る財務制限条項)に与える影響に関する評価
《Ⅳ 適用》
・ 本報告書 (2011 年 12 月 22 日)は、2012 年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同
日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。
・ 本報告書(2015 年5月 29 日)は、2015 年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同
日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。
・ 本報告書(2019 年6月 12 日)は、2020 年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同
日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。ただし、2019 年4月1日以後開始
する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から早期適用する
ことができる。
・ 本報告書 (2021 年1月 14 日)は、2022 年3月 31 日以後終了する事業年度に係る監査から適
用する。ただし、2021 年3月 31 日以後終了する事業年度に係る監査から早期適用することがで
きる。
以 上
・ 本報告書(2022年10月13日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。
- 監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022年7月
21日改正)
・ 本報告書(2024年9月26日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。
- 監査基準報告書260「監査役等とのコミュニケーション」(2024年9月26日改正)
- 監査基準報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」(2024年9月26日改正)
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