監査・保証実務委員会実務指針第 77 号
追加情報の注記について
平 成 15 年 3 月 25 日
改正 平 成 16 年 3 月 17 日
改正 平 成 23 年 3 月 29 日
最終改正 平 成 30 年 2 月 16 日
日 本 公 認 会 計 士 協 会
Ⅰ はじめに
1.連結財務諸表規則、財務諸表等規則、中間連結財務諸表規則、中間財務諸表等規
則及びこれらに係るガイドライン(以下「規則等」という。)に基づいて作成され
る連結財務諸表、財務諸表、中間連結財務諸表及び中間財務諸表(以下「財務諸表
等」という。)に記載すべき追加情報の注記に関する実務上の指針を示すことを目
的として、監査第一委員会報告第 47 号「追加情報の注記について」(昭和 60 年3
月 26 日、以下「報告第 47 号」という。)が公表された。その後、従来の個別情報
を中心とした開示制度から連結情報を中心とした開示制度へ転換が図られ、連結財
務諸表等に係る追加情報の記載内容についても多岐にわたることとなり、また、退
職給付に係る会計基準や金融商品に係る会計基準等新たな会計基準が制定された
ほか、監査基準の改訂(平成 14 年1月 25 日企業会計審議会)も行われた。当委員
会はこうした制度改正を受け、追加情報の注記に関する項目、記載内容及び記載方
法について全般的に見直しを行った結果、報告第 47 号を廃止し、新たな実務指針
として平成 15 年3月に本指針を公表した。
2.平成 23 年改正の本指針は、企業会計基準委員会から平成 21 年 12 月に公表され
た企業会計基準第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過
年度遡及会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第 24 号「会計上の変更及
び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(以下「過年度遡及適用指針」という。)
に対応して規則等の改正が行われたため、これらと整合性を図ることを主な目的と
して改正を行ったものである。この他、最近の企業会計基準委員会や日本公認会計
士協会の各種委員会が公表した会計基準等を踏まえ事例等についても所要の見直
しを行っている。
なお、従来、会計方針の記載に併せて注記すべき追加情報としていた「会計上の
見積りの変更」及び「会計処理の対象となる会計事象等の重要性が増したことに伴
う本来の会計処理への変更」は、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針に基
づき対応することとなるため、今回の改正において本指針の記載から削除した。
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Ⅱ 追加情報の定義
3.財務諸表等規則第8条の5(追加情報)では「この規則において特に定める注記
のほか、利害関係人が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に
関する適正な判断を行うために必要と認められる事項があるときは、当該事項を注
記しなければならない。」とされている。また、他の規則等でも同様の取扱いがな
されている(連結財務諸表規則第 15 条、中間連結財務諸表規則第 13 条、中間財務
諸表等規則第6条参照)。
4.会社にとって開示の対象となる会計事象や取引は、業種・業態によって様々であ
り、また、同一会社であっても、その時々において予期し得ぬ事態が起こることが
あるため、規則等が特に定めた記載事項のみでは、利害関係人が財務諸表等によっ
て開示された情報を適切かつ十分に理解できない場合が生ずる。そこで、規則等で
定めている注記事項のほかに追加情報として注記すべきことを規則等は定めてい
る。このように、追加情報とは、会計方針あるいは貸借対照表又は損益計算書等に
注記すべきものとして規則等で具体的に規定しているもの以外の注記による情報
をいい、利害関係人が企業集団又は会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フ
ローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる情報である。
5.本指針で例示した事項は、必ずしも、財務諸表等に注記すべき追加情報を網羅的
に示したものではない。特に規則等では、利害関係人が会社の状況に関する適正な
判断を行うために必要と認められる事項があるときは、当該事項を注記しなければ
ならないとされ、この場合には、当該注記を省略することはできないことに留意す
る必要がある。例えば借入金や社債等に付された財務制限条項が財務諸表等に重要
な影響を及ぼすと認められる場合など、利害関係人が会社の財政状態、経営成績及
びキャッシュ・フローの状況に関して適切な判断を行う上で必要と認めた場合には、
追加情報として財務諸表等に注記しなければならない。
6.なお、本指針に例示された事項に該当する場合であっても、重要性が認められな
い場合にまで、追加情報としての記載を求めるものではない。
Ⅲ 追加情報の分類
1.会計方針の記載に併せて注記すべき追加情報
7.会計方針の記載に併せて注記すべき追加情報は、会計方針と密接な関連を持つ注
記事項であり、会計処理の対象となる新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原
則及び手続を採用する場合が考えられる。新たな事実の発生に伴う新たな会計処理
の採用は、会計方針の変更に該当しない。当該会計処理の採用に関し、会計方針の
記載以外に追加的に開示する必要があると認めた場合は、追加情報として会計方針
の記載に併せて注記する(財務諸表等規則第9条第3項等参照)。
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貸借対照表、損益計算書又はキャッシュ・フロー計算書等に係る注記とするなど、
他の記載個所へ注記する場合には、特定の会計方針の記載と当該注記の記載との関
連を明らかにして、利害関係人の判断を誤らせないよう配慮する必要がある。
(事 例)
・ 新たに倉庫業を開始し、新設した流通倉庫の減価償却方法に既存事業にお
ける有形固定資産の減価償却方法と異なる方法を採用する場合
(記載内容と記載例)
・ 新たに倉庫業を開始し、新設した流通倉庫の減価償却方法に既存事業にお
ける有形固定資産の減価償却方法と異なる方法を採用する場合
当該事実に伴って新たな会計処理を採用した場合は、その旨を会計方針の
記載に併せて注記する。
新規事業として計画しておりました倉庫業に供する建物が完成し、平成×年×月
×日より営業を開始いたしました。当社は従来建物の減価償却は定率法によってお
りましたが、倉庫業に係る建物については定額法を採用することとしました。
2.財務諸表等の特定の科目との関連を明らかにして注記すべき追加情報
8.財務諸表等の特定の科目との関連を明らかにして注記すべき追加情報は、特定の
科目の状況についての説明的注記であるため、財務諸表上の当該科目に記号を付記
する方法その他これに類する方法によって、当該注記との関連を明らかにする必要
がある(財務諸表等規則第9条第5項等)。これらは、資産の使用・運用状況の説
明、特殊な勘定科目の説明、会計基準等で注記を求めている事項、に分類される。
(1) 資産の使用・運用状況の説明
9.資産の使用・運用状況について通常の使用方法によらず、特殊な方法によってい
る場合には、当該事実及び関連する金額を追加情報として注記する。
(事 例)
・ 重要な遊休又は一時休止の固定資産がある場合
(記載内容及び記載例)
・ 重要な遊休又は一時休止の固定資産がある場合
有形固定資産の各科目に含めて表示されている遊休又は一時休止の固定
資産の金額が重要な場合は、遊休又は一時休止の固定資産が含まれている旨
及びその金額を、当該科目との関連を明らかにして注記する。
土地には、未利用用地○○百万円が含まれております。
(2) 特殊な勘定科目の説明
10.財務諸表等の表示に、一般的には使用頻度の少ない特殊な勘定科目を使用してい
る場合など、勘定科目名の記載だけではその内容が明確ではない場合に、追加情報
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として注記することにより当該内容を説明する。
(事 例)
・ 損益計算書における特別損益科目の説明
・ 業種特有の科目の説明
(3) 会計基準等で注記を求めている事項(規則等で規定しているものを除く。)
11.会計基準等で注記を求めている事項とは、規則等で定めている注記事項以外で、
企業会計基準委員会や日本公認会計士協会の各種委員会が公表した会計基準等に
基づいて追加情報として注記する事項である。
(事 例)
・ 企業会計基準委員会による会計基準等による注記事項
・ 監査・保証実務委員会実務指針第 61 号「債務保証及び保証類似行為の会
計処理及び表示に関する監査上の取扱い」による注記事項
・ 会計制度委員会報告第 14 号「金融商品会計に関する実務指針」による注
記事項
・ 監査・保証実務委員会報告第 69 号「販売用不動産等の評価に関する監査
上の取扱い」による注記事項
・ 監査第一委員会報告第 43 号「圧縮記帳に関する監査上の取扱い」による
注記事項
(記載内容と記載例)
・ 監査・保証実務委員会実務指針第 61 号「債務保証及び保証類似行為の会
計処理及び表示に関する監査上の取扱い」による注記事項
財務諸表等における債務保証損失引当金の計上と債務保証の注記との関
係に関して、追加情報を注記する場合がある(監査・保証実務委員会実務指
針第 61 号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上
の取扱い」第4項(3)参照)。
保証債務の履行に伴う損失の発生の可能性が高く、かつ、金額の見積りが
可能な場合には、債務保証損失引当金を計上しなければならないが、損失の
発生の可能性が高いが、金額の見積りが不可能な場合、及び損失の発生があ
る程度予想される場合には、その旨、主たる債務者の財政状態、主たる債務
者と保証人との関係内容、主たる債務者の債務履行についての今後の見通し
等、その状況を適切に説明するために必要な事項を追加情報として注記する。
なお、損失の発生の可能性が高いが金額の見積りが不可能な場合には、これ
らの注記に加えて、金額の見積りが不可能な理由を注記することが求められ
ている。
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下記の各会社の金融機関からの借入金に対して保証を行っております。
A会社 ○○百万円 B会社 ○○百万円 計 ○○百万円
A会社に対する保証債務の一部には、今後の不動産市況の動向により保証履行を
求められる可能性が高いものが含まれております。A会社は資本の欠損の状況であ
りますが、主力銀行の支援下で経営改善策を実施中であることから、保証債務の履
行に伴う損失見積額の算定は困難であります。
3.連結・中間固有の事項
12.連結財務諸表規則、中間連結財務諸表規則及び中間財務諸表等規則で特に定めら
れている注記のほか、利害関係人が企業集団又は会社の財政状態、経営成績及びキ
ャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項に
ついて追加情報として注記することが求められている(連結財務諸表規則第 15 条、
中間連結財務諸表規則第 13 条、中間財務諸表等規則第6条)。
(事 例)
・ 連結決算手続上、親子会社間の会計処理の統一を図るために、親会社の個
別財務諸表の会計処理を連結財務諸表上修正している場合(監査・保証実務
委員会実務指針第 56 号「親子会社間の会計処理の統一に関する当面の監査
上の取扱い」参照)
・ 中間会計期間において諸準備金等の積立て又は取崩しを行わず、諸準備金
等を積み立てたもの又は取り崩したものとみなして税金費用を計算してい
る場合(企業会計基準適用指針第 29 号「中間財務諸表等における税効果会
計に関する適用指針」参照)
4.その他
(1) 期間比較上説明を要する場合
13.期間比較上説明を要する場合とは、財務諸表上の特定の科目群と密接に関連する
注記事項であるが、同時に、これらは会計方針等の補足的説明としての性格を有す
ることから、別の分類とした。
(事 例)
・ 期末日が休日のため、財政状態が通常の期末日の状況と異なる場合
・ 新規事業の開始・取引形態の変更などにより、財政及び経営の状況が前期
と比較して大きく変化した場合
(記載内容と記載例)
・ 期末日が休日のため、財政状態が通常の期末日の状況と異なる場合
期末日が休日で、期末日満期手形残高が重要な場合は、入出金の会計処理
を満期日又は交換日のいずれで行ったか及びその金額を、当該科目との関連
を明らかにして注記する。
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期末日満期手形の会計処理については、満期日に決済が行われたものとして処
理しております。なお、当期末日が金融機関の休日であったため、次の期末日満
期手形を満期日に決済が行われたものとして処理しております。
受取手形 ○○百万円 支払手形 ○○百万円
(2) 後発事象に該当しないが説明を要する事項
14.事業年度中に行われた意思決定又は発生した一連の取引に係る事象について、決
算日後、監査報告書日までの間に当該意思決定に基づく行為又は取引が終結してい
ない状況が生ずることがある。このような場合は、決算日後に発生した事象ではな
いので、後発事象に該当しないが、重要な事象であれば追加情報として注記するこ
とが適切である。
(事 例)
・ 新株式の発行について、当該事業年度中に取締役会の承認決議はあったが、
いまだ払込期日が到来していない場合
・ 過年度に後発事象として開示した事象で、開示した内容を更改又は補正し、
あるいは経過等を引き続き開示する場合
(記載内容と記載例)
・ 当該事業年度中に新株式の発行について取締役会の承認決議はあったが、
いまだ払込期日が到来していない場合
平成××年3月 25 日開催の取締役会におきまして、平成××年5月 15 日を払
込期日とする新株式の発行を決議いたしました。(以下省略)
Ⅳ 規則による異なる取扱い
1.四半期財務諸表等規則における取扱い
15.四半期財務諸表等規則第 22 条及び四半期連結財務諸表規則第 14 条では、財務諸
表等規則及び連結財務諸表規則と同様、追加情報の注記が定められている。当該注
記は、企業会計基準第 12 号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会
計基準」という。)第 19 項(21)及び第 25 項(20)に照らして解釈されるものと
考えられる。
16.我が国の四半期会計基準の注記事項に関する基本的な考え方について、「年度の
財務諸表や中間財務諸表と比較して開示の迅速性が求められていることや、最近の
情報通信技術の発達に伴って過去に公表された財務諸表の入手が容易になったこ
とを踏まえ、中間財務諸表よりも注記事項及び注記内容の簡略化を図ることとし、
前年度と比較して著しい変動がある項目など、財務諸表利用者が四半期財務諸表を
理解する上で重要な事項を注記事項として定めることとした。」とされている(四
半期会計基準第 55 項)。平成 23 年改正の四半期会計基準でも、注記事項に関する
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従来の基本的な考え方を踏襲することを確認した上で、「財務諸表作成者の作成負
担と財務諸表利用者の開示ニーズ及び開示の迅速性の要請とを勘案し、1株当たり
純資産額について開示を求めないこととし、重要な企業結合に関する事項及び企業
集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断す
るために重要なその他の事項についても開示項目の簡素化を図った。」とされてい
る(四半期会計基準第 55-2 項)。
17.また、平成 23 年改正の企業会計基準適用指針第 14 号「四半期財務諸表に関する
会計基準の適用指針」(以下「四半期会計基準適用指針」という。)では、追加情報
の開示に関し、財務諸表作成者の負担を考慮して本指針で記載される事項を準用し
ないこととした上で、「監査委員会報告第 77 号の例示等を参考に、個々の企業集団
又は企業の実態に即して判断することが適切と考えられる。」とされている(四半
期会計基準適用指針第 114 項)。
18.これらを踏まえれば、四半期財務諸表における追加情報の記載事項は、年度の財
務諸表において開示される事項に比べ、その範囲は、通常、限定されるものと考え
られる。例えば、本指針において追加情報の注記として例示した項目のうち四半期
財務諸表に注記する項目は、利害関係人が年度の財務諸表を理解していることを前
提に、年度の財務諸表と比較して著しい変動がある項目や、借入金や社債等に付さ
れた財務制限条項に抵触している状況など、著しい変動の有無に関わらず四半期財
務諸表に重要な影響を及ぼすと認められる項目など、利害関係人が企業集団又は会
社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に判断する上で必要
と認められる項目とすることが考えられる。
2.会社計算規則における取扱い
19.会社法の計算書類及び連結計算書類については、会社計算規則第 98 条及び第 116
条に「その他の注記」として追加情報の注記が規定されている。第 116 条において、
その他の注記は、貸借対照表等、損益計算書等及び株主資本等変動計算書等により
会社(連結注記表にあっては、企業集団)の財産又は損益の状態を正確に判断する
ために必要な事項と規定されており、財務諸表等規則第8条の5及び連結財務諸表
規則第 15 条に規定する追加情報の注記と同様の趣旨の規定であると解される。
20.金融商品取引法と会社法では財務諸表の開示目的、体系の面で必ずしも同一では
ないため、金融商品取引法に基づいて作成される財務諸表等では規則等で注記が義
務付けられているが、会社法上は会社計算規則では明記されていないものがある。
しかし、会社計算規則で明記されていないものであっても、計算書類又は連結計算
書類の利用者が会社の財産又は損益の状況に関する適正な判断を行うために必要
と認められるもの(会計基準等が要求している注記事項、規則等が求めている注記
事項を含む。)については、会社計算規則第 116 条に規定する注記が必要と考えら
れる。
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Ⅴ 適用時期
21.平成 15 年公表の本指針は、平成 15 年3月1日以後終了する連結会計年度及び事
業年度に係る監査並びに平成 15 年9月1日以後終了する中間会計期間に係る中間
監査から適用する。
22.「監査委員会報告第 77 号「追加情報の注記について」の改正について」(平成 16
年3月 17 日)は、平成 16 年3月 31 日以後終了する連結会計年度及び事業年度に
係る監査から適用する。
23.「監査委員会報告第 77 号「追加情報の注記について」の改正について」(平成 23
年3月 29 日)は、平成 23 年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係
る監査から適用する。
24.「監査・保証実務委員会実務指針第 77 号「追加情報の注記について」の改正につ
いて」(平成 30 年2月 16 日)は、平成 30 年に公表された企業会計基準適用指針第
29 号「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針」を適用する中間連
結会計期間及び中間会計期間から適用する。
以 上
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