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監査基準報告書220_監査業務における品質管理.pdf

監査基準報告書 220

監査業務における品質管理

監基報 220

2 0 1 1 年 1 2 月 2 2 日

改正 2 0 1 3 年 6 月 1 7 日

改正 2 0 1 5 年 5 月 2 9 日

改正 2 0 1 9 年 2 月 2 7 日

改正 2 0 2 1 年 8 月 1 9 日

改正 2 0 2 2 年 6 月 1 6 日

改正 2 0 2 2 年 1 0 月 1 3 日

改正 2 0 2 3 年 1 月 1 2 日

最 終 改 正 2 0 2 4 年 9 月 2 6 日

日 本 公 認 会 計 士 協 会

監査・保証基準委員会

( 報 告 書 : 第 6 号 )

項番号

Ⅰ 本報告書の範囲及び目的

1.本報告書の範囲 ...................................................................1

2.監査事務所の品質管理システム及び監査チームの役割 .................................2

(1) 適用の柔軟性 ...................................................................8

(2) 監査責任者の責任 ...............................................................9

3.適用時期 ........................................................................10

4.本報告書の目的 ..................................................................11

5.定義 ............................................................................12

Ⅱ 要求事項

1.品質の管理と達成に対する監査責任者の責任 ........................................13

2.独立性を含む職業倫理に関する規定 ................................................16

3.監査契約の新規の締結及び更新 ....................................................22

4.業務運営に関する資源 ............................................................25

5.業務の実施 ......................................................................29

(1) 指揮、監督及び査閲 ............................................................29

(2) 専門的な見解の問合せ ..........................................................35

(3) 審査 ..........................................................................36

(4) 審査を実施しない監査業務 .................................................. 36-3JP

(5) 監査上の判断の相違 ............................................................37

i

監基報 220

6.モニタリング及び改善 ............................................................39

7.品質の管理と達成に対する全体的な責任 ............................................40

8.監査調書 ........................................................................41

9JP.監査事務所間の引継 .......................................................... 42JP

10JP.共同監査 .................................................................... 43JP

Ⅲ 適用指針

1.本報告書の範囲 ..................................................................A1

2.監査事務所の品質管理システムと監査チームの役割 ..................................A2

(1) 監査事務所の品質管理システムに関する監査チームの責任 ..........................A4

3.定義 ...........................................................................A15

(1) 監査チーム ...................................................................A15

(2) 監査事務所 ...................................................................A26

(3) 「ネットワーク」及び「ネットワーク・ファーム」 ...............................A27

4.品質の管理と達成に対する監査責任者の責任 .......................................A28

(1) 品質の管理と達成に対する全体的な責任 .........................................A28

(2) 監査業務の全過程を通じた十分かつ適切な関与 ...................................A30

(3) コミュニケーション ...........................................................A31

(4) 職業的専門家としての懐疑心 ...................................................A33

(5) 監査チームの他のメンバーへの手続又は業務の割り当て ...........................A37

5.独立性を含む職業倫理に関する規定 ...............................................A38

(1) 職業倫理に関する規定 .........................................................A38

(2) 職業倫理に関する規定の遵守に対する阻害要因の識別と評価 .......................A43

(3) 職業倫理に関する規定に対する違反 .............................................A45

(4) 適切な措置の実施 .............................................................A46

(5) 監査報告書日以前の実施 .......................................................A47

6.監査契約の新規の締結及び更新 ...................................................A49

7.業務運営に関する資源 ...........................................................A59

(1) 人的資源 .....................................................................A62

(2) テクノロジー資源 .............................................................A63

(3) 知的資源 .....................................................................A68

(4) 十分かつ適切な業務運営に関する資源 ...........................................A70

(5) 監査チームの適性及び能力 .....................................................A71

(6) 不十分又は不適切な業務運営に関する資源 .......................................A75

8.業務の実施 .....................................................................A80

(1) 適用の柔軟性 .................................................................A80

(2) 指揮、監督及び査閲 ...........................................................A81

(3) 専門的な見解の問合せ .........................................................A99

(4) 審査 ........................................................................ A103

ii

監基報 220

(5) 監査上の判断の相違 .......................................................... A107

9.モニタリング及び改善 .......................................................... A109

10.品質の管理と達成に対する全体的な責任 .......................................... A113

11.監査調書 ...................................................................... A117

12JP.監査事務所間の引継 ........................................................ A121JP

13JP.共同監査 .................................................................. A122JP

【付録】監査チームの範囲に係るイメージ図

iii

監基報 220

《Ⅰ 本報告書の範囲及び目的》

《1.本報告書の範囲》

1.本報告書は、個々の監査業務における品質管理に対する監査人の特定の責任及び監査責任者の

関連する責任に関する実務上の指針を提供するものである。なお、中間監査は年度監査の一環と

して実施されるものであるため、中間監査の品質管理は、年度監査の品質管理の一環として実施

する。本報告書は、関連する職業倫理に関する規定と併せて適用される(A1 項及び A38 項参照) 。

1-2JP.本報告書では、国際監査・保証基準審議会の公表する ISA220 において規定された、「本報告

書の範囲及び目的」、「要求事項」又は「適用指針」には含まれていないが、日本公認会計士協会が

本報告書の起草に当たり追加した規定については、項番号に「JP」の文字を付している。

一方、ISA220 において規定されているが、本報告書において導入されていない規定については、

「欠番」としている。

また、本報告書には、監査における不正リスク対応基準(以下「不正リスク対応基準」という。)

に準拠して監査を実施する際に遵守が求められる要求事項と関連する適用指針(項番号の冒頭に

「F」が付されている。)が含まれている(監査基準報告書 200「財務諸表監査における総括的な目

的」第 21 項(3)参照)。

不正リスク対応基準に準拠して監査を実施する際に遵守が求められる要求事項と関連する適用

指針は、不正リスク対応基準が適用されない監査業務においても、業務の状況に応じて、参考とな

ることがある。

《2.監査事務所の品質管理システム及び監査チームの役割》

2.品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」における監査事務所の目的は、監査

事務所が実施する品質管理基準報告書第1号の適用対象業務に関し、以下の合理的な保証を提供

するために、監査事務所が品質管理システムを整備し運用することである(A13 項及び A14 項参照)。

(1) 監査事務所及び専門要員が、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って自ら

の責任を果たすとともに、当該基準及び法令等に従って監査業務を実施すること。

(2) 監査事務所又は監査責任者が状況に応じた適切な監査報告書を発行すること(品基報第1号

第 14 項参照)。

3.本報告書は、監査事務所が品質管理基準報告書第1号及び品質管理基準報告書第2号「監査業務

に係る審査」に従っていることを前提にしている(A2 項及び A3 項参照)。

4.監査事務所の品質管理システムにおいて、監査責任者が指揮する監査チームは、本報告書の要求

事項を遵守することにより、以下の事項について責任を有する(A4 項から A11 項参照)。

(1) 監査事務所から伝達された、又は入手した情報を用いて、監査業務に適用される品質リスク

に対する監査事務所の対応(すなわち、監査事務所の方針又は手続)を実施する。

(2) 監査業務の内容及び状況を考慮して、監査事務所の方針又は手続で定められている以上の対

応を、個々の業務でデザインし適用するかどうかを決定する。

(3) 監査事務所の品質管理システムの整備及び運用を裏付けるために、監査事務所の方針又は手

続によって伝達されることが求められる監査業務からの情報を監査事務所に伝達する。

5.他の監査基準報告書の要求事項を遵守することにより、個々の業務での品質管理に関連する情

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監基報 220

報が提供される場合がある(A12 項参照)。

6.公共の利益は、個々の監査業務について、本報告書及び他の監査基準報告書の目的の達成を通じ

て、より質の高い監査を一貫して実施することにより実現される。より質の高い監査は、職業的専

門家としての基準及び適用される法令等に従って、業務を計画し、実施し、また報告することによ

って達成される。職業的専門家としての基準の目的を達成し、適用される法令等における要求事

項を遵守するためには、職業的専門家としての判断を行使し、また職業的専門家としての懐疑心

を保持及び発揮することが含まれる。

7.監査チームは、監査基準報告書 200 第 14 項、第 15 項及び A17 項から A21 項に基づき、職業的

専門家としての懐疑心を保持して監査を計画及び実施し、職業的専門家としての判断を行使する

ことが要求される。職業的専門家としての判断は、監査業務の内容及び状況を踏まえた品質管理

を行い、高い品質を達成するための適切な行動を十分な情報に基づき決定する際に行使する。職

業的専門家としての懐疑心は、監査チームが下す判断の質を支え、その判断を通じて、監査チーム

が個々の監査業務の高い品質を達成するための全般的な有効性を裏付ける。職業的専門家として

の懐疑心を適切に保持及び発揮することは、監査チームの行動やコミュニケーションを通じて示

される場合がある。このような行動やコミュニケーションには、無意識の偏向や業務運営に関す

る資源の制約等、職業的専門家としての懐疑心が適切に保持及び発揮されない原因となり得る障

害を緩和するための特定の手順が含まれる場合がある(A33 項から A36 項参照)。

《(1) 適用の柔軟性》

8.本報告書の要求事項は、個々の監査の内容及び状況によって、例えば以下のように適用すること

を意図している。

(1) 複雑でない企業の監査など、監査が全て監査責任者によって実施される場合、本報告書の一

部の要求事項は監査チームの他のメンバーの関与を条件としているため関連しない(A13 項及び

A14 項参照)。

(2) 監査が全て監査責任者によって実施されるものではない場合又は性質及び状況が複雑な企業

の監査の場合には、監査責任者は、手続又は業務に関する立案又は実施を監査チームの他のメ

ンバーに割り当てることがある。

《(2) 監査責任者の責任》

9.監査責任者は、本報告書の要求事項の遵守について説明責任を含む最終的な責任を負う。「監査

責任者は~に対する責任を負わなければならない」という表現は、監査責任者が、監査チームの適

切な技能又は経験を有するメンバーに、手続又は業務に関する立案又は実施を割り当てることが

認められる要求事項に対して使用される。上記以外の要求事項については、本報告書では監査責

任者自身が要求事項を満たし、責任を果たすことを明確に想定している。なお、その際に監査責任

者は監査事務所又は監査チームの他のメンバーから情報を入手する場合がある(A22 項から A25 項

参照)。

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監基報 220

《3.適用時期》

10.本報告書の適用時期は以下のとおりである。

・ 本報告書(2011 年 12 月 22 日)は、2012 年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同

日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。

・ 本報告書(2013 年6月 17 日)は、2014 年3月 31 日以後終了する事業年度に係る監査から適

用する。なお、不正リスク対応基準に基づく指針(項番号の冒頭に「F」が付されているもの)

及び第 25-2 項については、2013 年 10 月1日から適用する。

・ 本報告書(2015 年5月 29 日)は、2015 年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同

日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。

・ 本報告書(2019 年2月 27 日)は、以下の時期から適用する。

- 違法行為に関連する要求事項(F14-3 項及び A7-2 項)は、2019 年4月1日以後開始する事

業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。

- 監査上の主要な検討事項に関連する適用指針(A24-2 項)は、2021 年3月 31 日以後終了す

る事業年度に係る監査から適用する。ただし、2020 年3月 31 日(米国証券取引委員会に登録

している会社においては 2019 年 12 月 31 日)以後終了する事業年度に係る監査から早期適用

することができる。

- 上記以外の改正は、2020 年3月 31 日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。

・ 本報告書(2021 年8月 19 日)は、2021 年9月1日から適用する。

・ 本報告書(2022 年6月 16 日)は、2023 年7月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の

監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。なお、

公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024 年7月1日以後に開始す

る事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中

間監査から適用する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る

中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。その場合、品質管理基準委員会報告書

第1号(2022 年6月 16 日)及び品質管理基準委員会報告書第2号(2022 年6月 16 日)と同時

に適用する。

・ 本報告書(2023 年1月 12 日)は、2024 年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の

監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。また、

公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024 年7月1日以後に開始す

る事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中

間監査から適用する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る

中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。その場合、品質管理基準委員会報告書

第1号「監査事務所における品質管理」(2022 年6月 16 日)及び品質管理基準委員会報告書第

2号「監査業務に係る審査」(2022 年6月 16 日)と同時に適用する。なお、2022 年6月 16 日

付けで改正された品質管理基準に関する事項は、品質管理基準委員会報告書第1号(2022 年6

月 16 日)及び品質管理基準委員会報告書第2号(2022 年6月 16 日)と同時に適用する。

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《4.本報告書の目的》

11.本報告書における監査人の目的は、監査業務の品質が達成されることを合理的に確保するため、

監査人が以下の事項に関する品質管理を個々の監査業務において行うことである。

(1) 職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って監査人としての責任を果たし、監

監基報 220

査を実施すること。

(2) 状況に応じた適切な監査報告書を発行すること。

《5.定義》

12.本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。

(1) 「監査責任者」-監査事務所に選任された、監査業務の実施の責任者、すなわち、専門要員の

うち、監査業務とその実施及び発行する監査報告書に対する責任を負う社員等をいう。

(2) 「審査」-審査担当者によって監査報告書日以前に実施される、監査チームが行った重要な判

断及び到達した結論についての客観的評価をいう。

(3) 「審査担当者」-審査を実施するために監査事務所が選任した社員等、監査事務所内の他の者

又は外部の者をいう。

(4) 「監査チーム」-個々の監査業務を実施する全ての社員等及び専門職員、並びに当該業務にお

いて監査手続を実施する他の全ての者から構成される。監査人の利用する外部の専門家(監査

基準報告書 620「専門家の業務の利用」第6項)は含まない(A15 項から A25 項参照)。

(5) 「監査事務所」-公認会計士法に基づき登録された個人事務所又は監査法人をいう(A26 項参照)。

(6) 「ネットワーク」-監査事務所よりも大きな組織体であって、所属する事業体の相互の協力を

目的としており、かつ以下のいずれかを備えている組織体をいう。

ア.利益の分配又は費用の分担を目的にしていること。

イ.共通の組織により所有、支配及び経営されていること。

ウ.品質管理の方針又は手続を共有していること。

エ.事業戦略を共有していること。

オ.ブランド名を共有していること。

カ.業務運営に関する資源の重要な部分を共有していること(A27 項参照)。

(7) 「ネットワーク・ファーム」-ネットワークに所属する監査事務所又は事業体をいう(A27 項

参照)。

(8) 「社員等」-監査事務所において、専門業務の業務執行権を有する全ての個人をいう。したが

って、監査法人の場合は監査法人の社員をいい、個人事務所及び共同事務所の場合は業務執行

責任者として業務を行っている者をいう。

(9) 「専門要員」-監査事務所に所属する社員等及び専門職員全体をいう。

(10) 「職業的専門家としての基準及び適用される法令等」-専門業務を実施するに当たって遵守

しなければならない基準及び適用される法令等をいう。監査基準・不正リスク対応基準(法令に

より準拠が求められている場合)・監査基準報告書・監査に関する品質管理基準・品質管理基準

報告書、公認会計士法・同施行令・同施行規則、金融商品取引法、会社法、日本公認会計士協会

が公表する会則・倫理規則・報告書・実務指針・通達その他から構成される。

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監基報 220

(11) 「我が国における職業倫理に関する規定」-監査事務所並びに監査チーム及び審査担当者が

従うべき職業倫理に関する規定をいい、公認会計士法・同施行令・同施行規則、日本公認会計

協会が公表する会則、倫理規則及びその他の倫理に関する規定から構成される。なお、「職業倫

理に関する規定」と表記することもある。

(12) 「(品質管理システムに関連する)対応」-品質リスクに対処するために監査事務所がデザイ

ン及び適用している方針又は手続

① 方針とは、品質リスクに対処するために、すべきこと、又はすべきでないことを示すものを

いい、文書化されていることもあれば、伝達の中で明示的に述べられていることもあり、行為

や意思決定を通じて黙示的に示されていることもある。

② 手続とは、方針を実行するための行為をいう。

(13) 「専門職員」-専門業務に従事する社員等以外の者をいう。監査事務所が雇用する専門家(会

計又は監査以外の分野において専門知識を有する個人)を含む。

《Ⅱ 要求事項》

《1.品質の管理と達成に対する監査責任者の責任》

13.監査責任者は、監査事務所が定める品質管理システムに準拠し、実施する監査業務の全体的な品

質の管理と達成に対する責任を負わなければならない。これには、業務において監査事務所の組

織風土や監査チームのメンバーに期待される行動を強く意識付ける環境を整備する責任が含まれ

る。その際、監査責任者は、重要な判断や到達した結論が業務の内容及び状況を踏まえて適切かど

うかを判断する根拠が得られるよう、監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与しなければ

ならない(A28 項から A37 項参照)。

14.監査責任者は、第 13 項に記載された環境を整備するに当たり、監査事務所の品質に対するコミ

ットメントを反映した、明確で一貫した効果的な行動に対する責任を負わなければならない。ま

た、監査責任者は、以下を強調することを含め、監査チームのメンバーに期待される行動を定め、

伝達しなければならない(A30 項から A34 項参照)。

(1) 全ての監査チームのメンバーが個々の業務における品質の管理と達成に貢献する責任を負う

こと。

(2) 監査チームのメンバーとしての職業倫理、価値観及び姿勢の重要性

(3) 監査チーム内のオープンかつ活発なコミュニケーションの重要性及び監査チームのメンバー

が報復を恐れることなく懸念を提起することを可能とする支援の重要性

(4) 監査業務の全過程を通じて監査チームのメンバーが各々職業的専門家としての懐疑心を保持

及び発揮することの重要性

15.監査責任者は、本報告書の要求事項に関連する手続又は業務の立案や実施を監査チームの他の

メンバーに割り当てることにより、本報告書の要求事項を遵守しようとする場合、業務を割り当

てられた監査チームの他のメンバーへの指揮、監督及びその作業の査閲を通じて、依然として監査

業務の品質の管理と達成に対する全体的な責任を負わなければならない(第9項及び A37 項参照)。

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監基報 220

《2.独立性を含む職業倫理に関する規定》

16.監査責任者は、監査業務の内容と状況を考慮して、適用される我が国における職業倫理に関する

規定を理解しなければならない。これには独立性に関する規定が含まれる(A38 項から A42 項及び

A48 項参照)。

17.監査責任者は、監査業務の内容と状況を考慮して、適用される職業倫理に関する規定及び以下を

含む監査事務所の関連する方針又は手続を、監査チームの他のメンバーに認識させることに対す

る責任を負わなければならない(A23 項から A25 項及び A40 項から A44 項参照)。

(1) 独立性を含む我が国における職業倫理に関する規定の遵守に対する阻害要因の識別、評価及

び対処

(2) 独立性を含む我が国における職業倫理に関する規定への違反を引き起こす状況及び監査チー

ムのメンバーが当該違反に気付いた場合の責任

(3) 監査チームのメンバーが企業の違法行為に気付いた場合の責任(監査基準報告書 250「財務諸

表監査における法令の検討」参照)

18.監査責任者は、関連する職業倫理に関する規定の遵守に対する阻害要因の存在に気付いた場合に

は、監査事務所、監査チーム又は他の情報源から得た関連する情報を用いて、監査事務所の方針又

は手続に準拠して当該阻害要因を評価し、適切な措置を講じなければならない(A43 項から A44 項

参照)。

19.監査責任者は、監査業務の全過程を通じて、必要に応じて質問等を行うことにより、監査チーム

のメンバーが職業倫理に関する規定、監査事務所の関連する方針又は手続に違反していないかに

ついて注意を払わなければならない(A45 項参照)。

20.監査責任者は、監査事務所の品質管理システム又は他の情報源を通じて、監査業務の内容と状況

に応じて適用される我が国における職業倫理に関する規定が遵守されていないことに気付いたと

きには、適切な者へ専門的な見解の問合せを行うなどの適切な措置を講じなければならない(A46

項参照)。

21.監査責任者は、監査報告書日以前に、独立性を含む我が国における職業倫理に関する規定が遵守

されているかどうかを判断することに対する責任を負わなければならない(A38 項及び A47 項参照)。

《3.監査契約の新規の締結及び更新》

22.監査責任者は、監査契約の新規の締結及び更新に関する監査事務所の方針又は手続に従っている

こと、並びに到達した結論が適切であることを判断しなければならない(A49 項から A52 項参照)。

F22-2JP.監査責任者は、監査契約の新規の締結及び更新に当たり、不正リスクを考慮して監査契約

の締結及び更新に伴うリスクを評価すること、並びに当該評価の妥当性について、新規の締結時、

及び更新時はリスクの程度に応じて、監査チーム外の適切な部署又は者により検討することが、

監査事務所の定める方針及び手続に従って適切に行われていることを確かめなければならない。

23.監査責任者は、監査基準報告書に従って監査業務を計画及び実施する際並びに本報告書の要求

事項を遵守する際には、監査契約の新規の締結及び更新のプロセスで得られた情報を考慮しなけ

ればならない(A53 項から A56 項参照)。

24.監査責任者は、監査契約の新規の締結又は更新の前に監査事務所が認識していれば契約の締結

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を辞退する原因となるような情報に監査チームが気付いた場合、監査事務所及び監査責任者が必

要な対応をとることができるように、監査事務所に当該情報を速やかに報告しなければならない

監基報 220

(A57 項参照)。

《4.業務運営に関する資源》

25.監査責任者は、業務を実施するための十分かつ適切な業務運営に関する資源が、監査チームに適

時に割り当てられている、又は利用可能であるかについて、監査業務の内容及び状況、監査事務所

の方針又は手続並びに業務中に発生する可能性のある変更を考慮して判断しなければならない

(A59 項から A70 項及び A73 項から A74 項参照)。

26.監査責任者は、監査チームのメンバー及び監査人が利用する外部の専門家が、全体として監査業

務を実施するための十分な時間を含む、適性及び適切な能力を有しているかを判断しなければな

らない(A62 項、A71 項から A72 項及び A73 項から A74 項参照)。

27.監査責任者は、第 25 項及び第 26 項の要求事項を遵守した結果、割り当てられた、又は利用可

能な業務運営に関する資源が監査業務の状況において不十分又は不適切であると判断した場合に

は、業務に追加又は代替の資源を割り当てる必要性について適切な者に伝達することを含む適切

な措置を講じなければならない(A75 項から A78 項参照)。

28.監査責任者は、監査業務の内容及び状況を考慮して、監査チームに割り当てられた又は利用可能

な業務運営に関する資源の適切な利用に対する責任を負わなければならない(A63 項から A69 項

参照)。

《5.業務の実施》

《(1) 指揮、監督及び査閲》

29.監査責任者は、監査チームのメンバーへの指揮、監督及びその作業の査閲に対する責任を負わな

ければならない(A80 項参照)。

30.監査責任者は、指揮、監督及び査閲の内容、時期及び範囲について以下の事項を判断しなければ

ならない(A81 項から A89 項、A94 項から A97 項参照)。

(1) 監査事務所の方針又は手続、職業的専門家としての基準並びに適用される法令等に従って計

画し(監査基準報告書 300「監査計画」第8項(1)参照)、実施していること。

(2) 監査業務の内容及び状況並びに監査事務所から監査チームに割り当てられた、又は利用可能

な業務運営に関する資源に対応していること。

31.監査責任者は、監査業務の適切な時点で以下の事項を含む監査調書を査閲しなければならない

(A90 項から A93 項参照)。

(1) 重要な事項(監査基準報告書 230「監査調書」第7項(3)参照)

(2) 監査の実施中に識別された、専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない

事項を含む重要な判断並びに到達した結論

(3) 監査責任者が職業的専門家として監査責任者の責任に関連すると判断したその他の事項

32.監査責任者は、監査報告書日以前に、監査調書の査閲及び監査チームとの討議を通じて、到達し

た結論と監査意見を裏付けるのに十分かつ適切な監査証拠が入手されたかを判断しなければなら

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監基報 220

ない(A90 項から A94 項参照)。

33.監査責任者は、監査報告書日以前に、財務諸表及び監査報告書、該当する場合には監査上の主要

な検討事項の記述を含む監査報告書とそれに関連する監査調書を査閲し、発行する監査報告書が

状況に応じて適切であるか判断しなければならない(監査基準報告書 700「財務諸表に対する意見

の形成と監査報告」、同報告書 701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の

報告」及び同報告書 705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」参照)。

34.監査責任者は、経営者、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下、監査役

若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会を「監査役等」という。)又は規制当局への正式

な書面又は電磁的記録によるコミュニケーションの内容を、発行前に査閲しなければならない

(A98 項参照)。

F34-2JP.監査責任者は、監査事務所が不正リスクに適切に対応できるように定めた監査業務に係る

監督及び査閲に関する方針及び手続に従って監査業務を監督し、査閲が行われていることに対す

る責任を負わなければならない。

F34-3JP.監査責任者は、同一の企業の監査業務を担当する監査責任者が全員交代した場合、監査事

務所の定める業務の実施における品質を保持するための方針及び手続に従って、監査の過程で識

別した不正リスクを含む重要な事項の伝達が行われていることを確かめなければならない。

《(2) 専門的な見解の問合せ》

35.監査責任者は、以下の事項を行わなければならない(A99 項から A102 項参照)。

(1) 監査チームによる以下の専門的な見解の問合せの実施に対する責任を負うこと。

① 専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項及び監査事務所の方針

又は手続で専門的な見解の問合せが必要とされている事項

② 監査責任者が職業的専門家として専門的な見解が必要と判断した①以外の事項

(2) 監査チーム内及び監査チームと監査事務所内外の適切な者との間で、監査チームのメンバー

が監査の実施中に専門的な見解の問合せを適切に実施したことを確かめること。

(3) 専門的な見解の問合せの内容及び範囲並びにその結論について助言者と合意していることを

確かめること。

(4) 助言者と合意した結論に従って業務を実施していることを確かめること。

F35-2JP.監査責任者は、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況が識別された場合又は不正によ

る重要な虚偽表示の疑義があると判断された場合には、監査チームが必要に応じ専門的な見解の

問合せを適切に実施する責任を負わなければならない。

《(3) 審査》

36.監査責任者は、審査が必要な監査業務に関して、以下の事項を行わなければならない(A103 項

参照)。

(1) 審査担当者が選任されていることを確かめること。

(2) 審査担当者に協力すること及び監査チームの他のメンバーにその責任を伝達すること。

(3) 監査の実施中に識別した重要な事項及び重要な判断(審査中に識別されたものを含む。)につ

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監基報 220

いて審査担当者と討議すること。

(4) 審査が完了した日以降を監査報告書日とすること。(A104 項から A106 項参照)

F36-2JP.監査責任者は、不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断された場合には、監査事務

所の定める方針及び手続に従って審査担当者が選任されていることを確かめなければならない。

《(4) 審査を実施しない監査業務》

36-3JP.監査責任者は、審査を実施しない監査業務に関して、監査意見が適切に形成されていること

を確認できる他の方法が、監査事務所の方針又は手続に従って適切に行われていることを確かめ

なければならない(A106-2JP 参照)。

《(5) 監査上の判断の相違》

37.監査チームは、監査チーム内で、又は監査チームと審査担当者若しくは専門的な見解の問合せの

助言者を含む監査事務所の品質管理システムにおいて活動を実施する者との間で、監査上の判断

の相違が生じた場合、監査事務所の方針又は手続に従って監査上の判断の相違に対処し、これを

解決しなければならない(A107 項及び A108 項参照)。

38.監査責任者は、以下の事項を行わなければならない。

(1) 監査事務所の方針又は手続に従って、監査上の判断の相違への対処及び解決に対する責任を

負うこと。

(2) 到達した結論を文書化し、この結論に従って業務を実施しているかどうかを判断すること。

(3) 監査上の判断の相違が解決した日以降を監査報告書日とすること。

《6.モニタリング及び改善》

39.監査責任者は、以下の事項に対する責任を負わなければならない(A109 項から A112 項参照)。

(1) 監査事務所から伝達された、監査事務所のモニタリング及び改善プロセスからの情報(該当

する場合、ネットワーク及びネットワーク・ファーム全体のモニタリング及び改善プロセスか

らの情報を含む。)を理解すること。

(2) 第 39 項(1)に規定されている情報の監査業務への関連性と影響を判断し、また適切な措置を

講じること。

(3) 監査業務の全過程を通じて、モニタリング及び改善プロセスに関連する可能性のある情報に

注意を払い、またそのような情報をモニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者に伝

達すること。

F39-2JP.監査責任者は、監査チームが監査の実施において、不正リスクに関連して監査事務所内外

から監査事務所に寄せられた情報をどのように検討したかについて、監査事務所の方針及び手続

に従って監査事務所の適切な部署又は者に書面又は電磁的記録で報告しなければならない。

《7.品質の管理と達成に対する全体的な責任》

40.監査責任者は、監査報告書日以前に、監査業務の品質の管理と達成に対して負っている全体的な

責任を果たしたことを確かめなければならない。その際、監査責任者は以下の事項について判断

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監基報 220

しなければならない(A113 項から A116 項参照)。

(1) 監査責任者が、重要な判断及び到達した結論は監査業務の内容及び状況を踏まえて適切であ

るかどうかを判断するための根拠が得られるよう、監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に

関与していること。

(2) 本報告書の要求事項の遵守に当たり、監査業務の内容及び状況、その変更、並びに監査事務所

の関連する方針又は手続を考慮していること。

《8.監査調書》

41.監査人は、監査基準報告書 230 第7項から第 10 項及び A6 項の適用において、以下の事項を監

査調書に含めなければならない(A117 項から A120 項参照)。

(1) 以下に関して識別した事項、専門要員との関連する討議及び到達した結論

① 独立性を含む我が国における職業倫理に関する規定における責任を果たすこと。

② 監査契約の新規の締結及び更新

(2) 監査の実施中に行われた専門的な見解の問合せの内容及び範囲並びに得られた結論、さらに

その結論に従ってどのように業務を実施したか。

(3) 監査業務が審査の対象となる場合、監査報告書日以前に審査が完了したこと。

《9JP.監査事務所間の引継》

42JP.監査人の交代に際して前任の監査事務所の監査責任者は、監査事務所が定める後任の監査事

務所への引継に関する方針又は手続に準拠して、監査業務の十分な引継を行わなければならない。

また、後任の監査事務所の監査責任者は、監査事務所が定める前任の監査事務所からの引継に

関する方針又は手続に準拠しなければならない(A121JP 項参照)。

42-2JP.監査責任者は、監査事務所の定める監査事務所間の引継に関する方針又は手続に従って、監

査チームが実施した引継の状況について監査事務所の適切な部署又は者に報告されていることを

確かめなければならない。

《10JP.共同監査》

43JP.監査責任者は、他の監査事務所と共同して監査業務を行う場合には、監査事務所が定める共同

監査に関する方針又は手続に準拠しなければならない(A122JP 項参照)。

《Ⅲ 適用指針》

《1.本報告書の範囲》(第1項参照)

A1.本報告書は、グループ財務諸表の監査を含む、全ての財務諸表監査に適用される。監査基準報告

書 600「グループ監査における特別な考慮事項」は、グループ財務諸表の監査に適用され、構成単

位の監査人が関与する場合に適用される特に考慮すべき事項を扱っている。さらに、監査基準報

告書 600 は、財務諸表監査において、監査チームに他の監査事務所の者が含まれる場合に、必要

に応じて適用されることがある。例えば、監査基準報告書 600 は、遠方にある事業所の棚卸資産

の実地棚卸の立会、固定資産の実査又はシェアード・サービス・センターにおける監査手続の実施

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監基報 220

に他の監査事務所の者を関与させる場合に役立つことがある。

《2.監査事務所の品質管理システムと監査チームの役割》(第2項から第9項参照)

A2.品質管理基準報告書第1号は、監査事務所における品質管理システムの整備及び運用に関する

実務上の指針を提供するものである。

A3.監査事務所は、品質管理システムの構成要素を説明するために、異なる用語又は枠組みを用いる

ことがある。

《(1) 監査事務所の品質管理システムに関する監査チームの責任》(第4項参照)

A4.監査業務での品質管理は、監査事務所の品質管理システムにより裏付けられ、また監査業務の具

体的な内容と状況により影響を受ける。監査事務所は、品質管理基準報告書第1号に従って、業務

の実施に関する監査チームの責任について監査チームが理解し責任を果たすことを可能にする情

報を監査チームに伝達する責任を負う。これには、複雑な専門的又は倫理上の事項を伴う特定の

状況において指定された者へ専門的な見解の問合せを行う場合や、特定の事項に関連する監査手

続を実施するために特定の業務に監査事務所が指定した専門家を関与させる場合の方針又は手続

について情報を伝達することが含まれる(例えば、金融機関の監査において監査事務所が指定す

る信用リスクの専門家が、予想信用損失引当金の監査手続に関与することを監査事務所が規定す

る場合がある。)。

A5.監査事務所での対応には、ネットワーク、ネットワーク内の他の監査事務所又は組織によって確

立された方針又は手続が含まれる場合がある(ネットワークの要求事項又はネットワーク・サー

ビスについては、品質管理基準報告書第1号第 49 項(2)が参考となる。)。本報告書の要求事項は、

監査チームが監査業務においてネットワークの要求事項(例えば、ネットワーク・ファームが開発

した監査手法の利用に関する要求事項)を適用又はネットワーク・サービスを利用できるように、

監査事務所が必要な措置を講じる責任を負うことを前提としている。品質管理基準報告書第1号

では、監査事務所は、監査事務所の品質管理システムにおいて、ネットワークの要求事項又はネッ

トワーク・サービスがどのように関連するかを判断し、どのように考慮するかを決定する責任を

有する(品基報第1号第 49 項(1)参照)。

A6.品質リスクに対処するために、個々の監査業務で実施されるものではなくとも、本報告書の要求

事項の遵守に関連して監査事務所が対応するものがある。例えば、本報告書の要求事項を遵守す

る際に監査チームが依拠できる監査事務所の対応には、以下の事項が含まれる場合がある。

・ 専門要員の採用及び専門的な研修プロセス

・ 監査事務所による独立性の監視に利用するITアプリケーション

・ 監査契約の新規の締結及び更新に利用するITアプリケーションの開発

・ 監査手法及び関連する監査の指針と実施ツールの開発

A7.個々の監査業務には特有の内容及び状況があり、監査の実施中に状況が変化する可能性がある

ため、監査事務所は個々の監査業務で発生する可能性のある品質リスクの全てを識別することは

できず、また関連する適切な対応の全てを規定することもできない。したがって、監査チームは本

報告書の目的を達成するために、監査事務所の方針又は手続で定められている以上の対応を個々

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監基報 220

の監査業務においてデザインし適用するかどうかを決定するに当たり、職業的専門家としての判

断を行使する。なお、監査基準報告書 200 では、財務諸表監査の計画と実施において職業的専門

家としての判断を行使することが監査人に要求されている。

A8.個々の監査業務での対応が必要かどうか、及び対応が必要な場合、どのような対応をすべきかに

関する監査チームの判断は、本報告書の要求事項、監査業務の内容と状況についての監査チーム

の理解及び監査の実施中における状況の変化に影響を受ける。例えば、当初割り当てられた、又は

利用可能な専門要員に加えて、適切な経験を有する専門要員の関与を監査責任者が要請する原因

となる業務中の予期しない状況が生じることがある。

A9.本報告書の要求事項を遵守するための監査チームによる対応として、監査事務所の対応を実施

することと、監査事務所の方針又は手続に定められている以上の業務特有の対応をデザインし適

用することのどちらに重点を置くかは様々である。例えば、監査事務所が監査業務に関連する特

有の状況で利用する監査手続書(例えば、業界特有の監査手続書)を整備する場合において、実施

する手続の時期及び範囲を決定すること以外に個々の監査業務において監査手続書に補助的な監

査手続を追加する必要がほとんど又は全くない場合がある。他方、本報告書の監査業務の実施に

関する要求事項を遵守する上で、監査チームは、業務に関する特有の内容と状況に対処するため

の対応を個々の監査業務でデザインし適用すること(例えば、監査事務所の監査手続書では想定

されていない重要な虚偽表示リスクに対処するための手続を立案し実施すること。)に重点を置く

場合がある。

A10.通常、監査チームは、以下の場合を除き、本報告書の要求事項を遵守するに当たり、監査事務

所の方針又は手続に依拠することができる。

・ 監査チームの理解及び実務上の経験により、監査事務所の方針又は手続が、業務の内容と状況

に効果的に対処しないことが示される場合

・ 監査事務所又は第三者から当該方針又は手続が有効ではない旨の通知がある場合。例えば、監

査事務所のモニタリング活動、外部の検証又はその他の関連する情報源から監査事務所の方針

又は手続が有効に運用されていないことを示す旨の通知がある場合

A11.監査責任者が品質リスクに対する監査事務所の対応が特定の監査業務において有効ではないこ

とに気付いた場合(監査チームのメンバーから報告された場合を含む。)や、監査責任者が監査事

務所の方針又は手続に依拠できないことを認識した場合、当該情報が監査事務所のモニタリング

及び改善プロセスに関連するものであることから、監査責任者は第 39 項(3)に従って、速やかに

当該情報を監査事務所に伝達する。例えば、監査チームのメンバーが監査ソフトウェアのプログ

ラムにセキュリティ上の弱点があることを認識した場合、そのような情報を適切な専門要員に適

時に報告することにより、監査事務所が監査ソフトウェアのプログラムを更新し、再公開するた

めの措置を講じることが可能になる。十分かつ適切な業務運営に関する資源に関して、A70 項を参

照する。

《① 個々の監査業務での品質管理に関する情報》(第5項参照)

A12.他の監査基準報告書の要求事項を遵守することにより、個々の監査業務での品質管理に関する

情報が提供される場合がある。例えば、監査基準報告書 315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」

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監基報 220

で要求される企業及び企業環境の理解において、本報告書の要求事項の遵守に関係する可能性が

ある情報が提供される。そのような情報は、以下の事項の決定に関連する可能性がある。

・ 高リスク領域における適切な経験のある監査チームメンバーの活用や、複雑な問題に対処す

るための専門家の関与等、特定の監査領域に対する人的資源の配分

・ 複数拠点での実地棚卸の立会に割り当てる監査チームメンバーの人数等、特定の監査領域に

割り当てる人的資源の量

・ 評価した重要な虚偽表示リスクの程度に応じて監査チームメンバーが実施した作業の査閲の

内容、時期及び範囲

・ 予定監査時間の配分。これには重要な虚偽表示リスクが多数存在する領域又は高リスク領域

に、より多くの時間を配分することや、より経験のある監査チームメンバーの時間を割り当て

ることが含まれる。

《② 適用の柔軟性》(第2項及び第8項参照)

A13.小規模な監査事務所では、監査事務所の方針又は手続により、監査事務所に代わって監査責任

者が指定され、監査事務所の品質リスクへの対応の多くをデザインする場合がある。それにより、

監査事務所の品質管理システムの一環として品質リスクへの対応をより効果的にデザインし、適

用する手法となる場合があるからである。また、小規模な監査事務所の方針又は手続は、簡略化さ

れている場合がある。例えば、比較的監査業務数の少ない非常に小規模な監査事務所では、独立性

を監視するために、監査事務所全体のシステムを構築する必要性がないと判断し、監査責任者が

個々の業務で独立性を監視する場合がある。

A14.監査チームの他のメンバーへの業務の指揮、監督及び査閲に関連する要求事項は、監査責任者

以外の監査チームのメンバーがいる場合にのみ関連する。

《3.定義》

《(1) 監査チーム》(第 12 項(4)参照)

A15.監査チームの構成は様々な形態を取り得る。例えば、監査チームのメンバーは、同一拠点に所

属する場合もあれば、異なる拠点に所属する場合もあり、また実施している活動ごとに幾つかの

グループに分けられることがある。監査チームがどのように構成されるかにかかわらず、監査業

務において監査手続(監査基準報告書 500「監査証拠」の A10 項参照)を実施する者は監査チーム

のメンバーである。

A16.本報告書では、監査チームを監査業務において監査手続を実施する者に焦点を当てて定義して

いる。監査意見及び監査報告書を裏付けるために必要な監査証拠は、主として監査の過程で実施

した監査手続から入手する(監基報 200 の A27 項参照)。監査手続は、リスク評価手続(監査基準

報告書 315 には、リスク評価手続に関する要求事項が記載されている。)及びリスク対応手続(監

査基準報告書 330「評価したリスクに対応する監査人の手続」には、運用評価手続及び実証手続を

含むリスク対応手続に関する要求事項が記載されている。)から構成される。監査基準報告書 500

において説明されているように、監査手続には、閲覧、観察、確認、再計算、再実施、分析的手続

及び質問が含まれており、多くの場合はそれらを組み合わせて実施する(監基報 500 の A14 項か

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監基報 220

ら A25 項参照)。また、監査証拠を入手するための特定の手続は、監査基準報告書 520「分析的手

続」等の他の監査基準報告書に記載されている。

【付録】では、本報告書における監査チームの範囲に係るイメージ図を示している。

A17.監査チームには専門要員が含まれ、また監査手続を実施する以下に所属する者も含まれる場合

がある。

(1) ネットワーク・ファーム

(2) ネットワーク・ファームではない監査事務所又は他のサービス・プロバイダー(品基報第1号

第 16 項(22)参照)

例えば、他の監査事務所の者は、グループ財務諸表の監査業務において構成単位の財務情報に

関する監査手続を実施する場合や、遠方にある事業所の棚卸資産の実地棚卸の立会又は固定資

産の実査を行う場合がある。

A18.監査チームには、監査手続を実施するサービス・デリバリー・センターの者も含める場合があ

る。例えば、反復的又は特定の性質を有する業務については、適切な技能を有する者のグループに

よって実施されることがあり、その場合には、それらの者は監査チームに含まれる。サービス・デ

リバリー・センターは、監査事務所、ネットワーク、同一ネットワーク内の他の監査事務所又は組

織によって設立され、例えば、確認手続を実施するための機能が集中化される場合がある。

A19.監査チームには、会計又は監査の特殊な領域で専門知識を有するメンバーとして監査手続を実

施する者も含まれる。例えば、法人税等の会計処理の専門知識を有する者や、通例でない、又は予

期せぬ関係を識別するために自動化されたツール及び技法によって作成される複雑な情報の分析

において専門知識を有する者が含まれることがある。ただし、当該専門知識を有する者に専門的

な見解の問合せのみを行った場合は、当該専門知識を有する者は監査チームのメンバーではない。

なお、専門的な見解の問合せについては、第 35 項、F35-2JP 項及び A99 項から A102 項に記載され

ている。

A20.監査業務が審査の対象となっている場合、審査担当者及び審査を実施する他の者は監査チーム

のメンバーではない。ただし、これらの者は、特定の独立性に関する要求事項の対象となる場合が

ある。

A21.監査業務において監査人が利用する外部の専門家は、監査チームのメンバーではない。監査基

準報告書 620 は、監査人が専門家の業務を利用する場合における要求事項及び適用指針を提供す

るものである。監査人は、監査基準報告書 620 の要求事項を遵守するために、監査人の利用する

専門家の業務に関して監査手続を実施する必要がある(監基報 620 第 11 項及び第 12 項参照)。

A21A.他の監査事務所と共同して監査業務を行う場合、他の監査事務所の監査責任者とその監査チ

ームが、監査基準の目的上、「監査責任者」と「監査チーム」を構成する。ただし、本報告書は、

共同監査人間の関係や、他の共同監査人の作業に関して各共同監査人が実施する作業について取

り扱わない。

《① 監査責任者の責任》(第9項及び第 12 項(4)参照)

A22.本報告書には、監査責任者自身が要求事項を満たし、責任を果たすことを明確に想定している

要求事項がある。監査責任者は、当該要求事項を遵守するために監査事務所又は監査チームの他

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監基報 220

のメンバーからの情報(例えば、意思決定又は判断のための情報)を必要とすることがある。例え

ば、監査責任者は、監査チームのメンバーが全体として監査業務を実施するために適性及び適切

な能力を有しているかどうかを判断することが求められる。監査責任者は、監査チームの適性及

び能力が適切かどうかを判断するために、監査チームがまとめた情報や監査事務所の品質管理シ

ステムからの情報が必要なことがある。

《② 監査チームのメンバーによる監査事務所の方針又は手続の適用》(第9項、第 12 項(4)及び第

17 項参照)

A23.監査事務所の監査チームのメンバーは、監査事務所の品質管理システムの観点から、監査業務

に適用される監査事務所の方針又は手続を適用する責任を負う。監査チームのメンバーであって

も他の監査事務所に所属する者は、監査責任者の所属する監査事務所の社員又は専門職員ではな

いため、監査事務所の品質管理システム及び監査事務所の方針や手続の適用対象とはならないこ

とがある。さらに、他の監査事務所の方針又は手続は、監査責任者の所属する監査事務所の方針又

は手続とは類似していない場合がある。例えば、指揮、監督及び査閲に関する方針又は手続は、特

に、他の監査事務所が、監査責任者の所属する監査事務所とは異なる法制度、言語及び組織風土を

持つ国又は地域にある場合には、異なることがある。したがって、監査チームに他の監査事務所の

者が含まれる場合、監査事務所又は監査責任者は、当該者の業務に対して監査事務所の方針又は

手続を適用するために、異なる措置が必要なことがある。

A24.特に、監査事務所又は監査責任者は、他の監査事務所の者について以下の事項を理解する際に、

監査事務所の方針又は手続において、専門要員に適用するものとは異なる措置を講じることが要

求される場合がある。

・ 監査業務を実施するための適性及び適切な能力を有していること。例えば、当該者は監査事務

所の採用及び研修のプロセスの対象者とはならないため、他の監査事務所又は資格認定団体や

登録機関から情報を得る等、他の行為を通じてこの判断を行うことができると監査事務所の方

針又は手続で定める場合がある。なお、監査基準報告書 600 第 26 項及び A62 項から A67 項に

は、構成単位の監査人の適性と能力を把握するための指針が記載されている。

・ グループ監査業務に関連する職業倫理に関する要求事項を理解していること。例えば、当該者

は、職業倫理に関する規定に関連した監査事務所の方針又は手続に関する監査事務所の研修の

対象者とはならないため、当該要求事項を理解させるための研修以外の措置(監査業務に適用

される職業倫理に関する規定を含む情報、マニュアル又は指針を当該者に提供する等)を監査

事務所の方針又は手続で定める場合がある。

・ 独立性を確認すること。例えば、専門要員ではない者は、監査事務所の独立性に関するシステ

ムに直接アクセスして独立性の宣誓を完了することができないことがある。当該者は文書によ

る確認等の他の方法で監査業務に関連する自己の独立性の証拠を提供することができると監査

事務所の方針又は手続で定める場合がある。

A25.監査事務所の方針又は手続が一定の状況において特定の活動(例えば、特定の事項に関する専

門的な見解の問合せ)を行うことを要求する際に、監査事務所の関連する方針又は手続を専門要

員ではない者に伝達することが必要になる場合がある。これにより当該者はその状況が生じた場

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監基報 220

合に監査責任者に注意を促すことができ、監査責任者は監査事務所の方針又は手続を遵守するこ

とが可能になる。例えば、ある構成単位の監査人がグループ監査業務において構成単位の財務情

報について監査手続を実施しており、またグループ監査人の方針又は手続において専門的な見解

の問合せの対象となる、グループ財務諸表に関連した、専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見

解が定まっていない事項を識別した場合、構成単位の監査人はグループ監査人に当該事項につい

て注意を促すことが可能になる(第 35 項参照)。

《(2) 監査事務所》(第 12 項(5)参照)

A26.本報告書における「監査事務所」の定義は、職業倫理に関する規定において定められた定義と

異なることがある。

《(3) 「ネットワーク」及び「ネットワーク・ファーム」》(第 12 項(6)及び 12 項(7)参照)

A27.本報告書における「ネットワーク」又は「ネットワーク・ファーム」の定義は、職業倫理に関

する規定において定められた定義と異なることがある。職業倫理に関する規定は「ネットワーク」

及び「ネットワーク・ファーム」という用語に関する指針を提供している。ネットワーク及びネッ

トワーク内の他のネットワーク・ファームは様々な形で構成されることがあるが、いずれの場合

も監査事務所には含まれない。本報告書のネットワークに関する規定は、監査事務所には該当し

ないネットワーク内の組織にも適用される。

《4.品質の管理と達成に対する監査責任者の責任》(第 13 項から第 15 項参照)

《(1) 品質の管理と達成に対する全体的な責任》

A28.品質管理基準報告書第1号は、品質管理システムの整備及び運用を支える監査事務所のガバナ

ンスとリーダーシップに関する品質目標を設定することを監査事務所に求めている。品質を管理

し達成する監査責任者の責任は、品質へのコミットメントを示す監査事務所の組織風土によって

支えられる。監査責任者は、本報告書の第 13 項及び第 14 項の要求事項に対処する際、監査チー

ムの他のメンバーに直接伝達するほか、範を示すなどの自らの行動を通じてコミュニケーション

を強化することがある。

監査チームのメンバーが業務を実施するに当たり期待される行動を示すことで、品質へのコミ

ットメントを示す組織風土は更に醸成、強化される。

《適用の柔軟性》

A29.監査事務所の品質へのコミットメントを示す監査責任者の行動の内容及び範囲は、監査事務所

及び監査チームの規模、構造、地理的分散及び複雑さ、並びに監査業務の内容及び状況を含む様々

な要因によって異なる場合がある。少数のメンバーから成る小規模な監査チームでは、直接的な

交流や行動を通じて望ましい組織風土に影響を与えるだけで十分な場合がある。一方、多くの拠

点に分散している大規模な監査チームでは、より正式なコミュニケーションが必要になる場合が

ある。

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監基報 220

《(2) 監査業務の全過程を通じた十分かつ適切な関与》

A30.監査責任者は、以下を含む様々な方法により監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与し

たことを示すことができる。

・ 本報告書の要求事項を遵守して、監査チームのメンバーへの指揮、監督及びその作業の査閲の

内容、時期及び範囲に対する責任を負うこと。

・ 業務の内容及び状況によって、これらの指揮、監督及び査閲の内容、時期及び範囲を変更する

こと。

《(3) コミュニケーション》

A31.コミュニケーションは、監査チームが本報告書の要求事項を遵守するために適時に関連する情

報を共有する手段であり、監査業務における品質の達成に貢献する。コミュニケーションは、監査

チームのメンバー間又は監査チームのメンバーと以下の者との間で行われる場合がある。

(1) 監査事務所

例えば、監査事務所の品質管理システムにおいて活動を実施する者で、これには監査事務所の

品質管理システムに関する最高責任者や品質管理システムの整備及び運用に関する責任者を含む。

(2) 監査に関与する他の者

例えば、監査人の利用する外部の専門家(監基報 620 第 10 項(3)及び A30 項参照)

(3) 監査事務所外部の関係者

例えば、経営者、監査役等又は規制当局

A32.監査チームのメンバーとの効果的なコミュニケーションとして何が適切な手段であるかについ

ての監査責任者の決定は、監査業務の内容と状況に影響を受ける場合がある。例えば、適切な指

揮、監督及び査閲を容易にするために、監査事務所はITアプリケーションを提供し、地理的に異

なる拠点で業務を実施する際の監査チームのメンバー間のコミュニケーションを促進する場合が

ある。

《(4) 職業的専門家としての懐疑心》(第7項参照)

A33.監査責任者は、監査チームの各メンバーが監査業務の全過程を通じて職業的専門家としての懐

疑心を保持及び発揮することの重要性を強調する責任を負う。ある監査業務に特有の状況が、監

査手続の立案及び実施並びに監査証拠の評価に際し、職業的専門家としての懐疑心の適切な保持

及び発揮を妨げる監査チームへのプレッシャーとなり得る場合がある。したがって、監査基準報

告書 300 に従い監査の基本的な方針を策定するに当たり、監査チームはそのような状況が監査業

務に存在するかどうか、存在する場合にはそのような障害を緩和するために監査事務所又は監査

チームがどのような行動をとる必要があるかを検討する場合がある。

A34.個々の業務での職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮に対する障害には、以下のものが

あるが、これらに限定されない。

・ 予算の制約。これにより、リスクの理解、評価及び対応を効果的に行うために、また情報に基

づき経営者の主張への疑問を持つために、専門知識又は特殊な技能が必要な企業の監査で必要

とされる十分な経験のある、又は専門的な資質のある人的資源(専門家を含む。)の利用が妨げ

- 17 -

監基報 220

られる可能性がある。

・ 厳しい期限。これにより、指揮、監督及び査閲を行う者だけでなく、業務を実施する者の行動

にも悪影響がある可能性がある。例えば、時間に関する外部からのプレッシャーは、複雑な情報

を効果的に分析することへの制約になる可能性がある。

・ 経営者からの協力の欠如や過度のプレッシャー。これにより、監査チームが複雑な、又は見解

が定まっていない事項を解決することに悪影響を及ぼす可能性がある。

・ 企業及び企業環境、内部統制システム及び適用される財務報告の枠組みに対する不十分な理

解。これにより、監査チームが適切な判断を行い、十分な情報に基づいて経営者の主張に疑問を

持つことが制限される可能性がある。

・ 記録、施設、特定の従業員、顧客又は取引業者等へのアクセスの困難性。これにより、監査チ

ームによる監査証拠の情報源の選択に偏向が生じ、より容易にアクセスできる情報源からの監

査証拠を求める可能性がある。

・ 自動化されたツールや技法への過度の依存。これにより、監査チームが監査証拠を批判的に評

価しない結果となる可能性がある。

A35.監査人の無意識又は意識的な偏向は、監査手続の立案及び実施や監査証拠の評価等において、

監査チームの職業的専門家としての判断に影響を及ぼす場合がある。監査人の無意識の偏向は、

職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮、さらには本報告書の要求事項を遵守するために監

査チームが行使する職業的専門家としての合理的な判断を妨げる場合があり、例えば以下の偏向

(バイアス)が含まれる。

・ 可用性バイアス

すぐに思い浮かんだ事象や経験又は容易に引用可能な事象や経験を、そうではないものより

も重視する傾向

・ 確証バイアス

既存の考えに矛盾する、又は疑問を呈する情報よりも、それを裏付ける情報を重視する傾向

・ 集団思考

創造性や個人の責任を妨げるように、集団として検討又は意思決定を行う傾向

・ 過信バイアス

リスク評価や他の判断又は意思決定の正確性に関する自身の能力を過大に評価する傾向

・ アンカリング効果によるバイアス

最初に入手した情報を重視し、その後に入手した情報を過小に評価する傾向

・ 自動化バイアス

人による推論や矛盾した情報によって、生成物の信頼性や目的適合性について疑わしい場合

であっても、自動化されたシステムによる生成物を好む傾向

A36.個々の監査業務における職業的専門家としての懐疑心の発揮に対する障害を緩和するための監

査チームの行動には、以下が含まれることがある。

・ 業務に追加の、又は異なる業務運営に関する資源が必要となる監査業務の内容又は状況の変

化に注意を払い、監査業務への資源の配分の責任を負う監査事務所内の者に対して、追加の、又

は異なる資源を要請する。

- 18 -

監基報 220

・ 監査人の無意識又は意識的な偏向に対する脆弱性がより大きくなる可能性がある事例や状況

(より高度な判断を伴う領域等)について、監査チームに明示的に注意を促し、監査手続の立案

及び実施に際して監査チームのより経験のあるメンバーに助言を求めることの重要性を強調する。

・ 監査チームの構成を変更する。例えば、より高い技能や知識又は特定の専門的な知見を有する

経験豊富な者を業務に割り当てるよう要請する。

・ 交渉に困難を伴う経営者に対処する際に、より経験のある監査チームのメンバーを関与させる。

・ 監査チームが監査における複雑な、又は主観的な領域に対応できるように、専門的な技能と知

識を有する監査チームのメンバー又は監査人が利用する専門家を関与させる。

・ 以下の領域に関して、より経験のある監査チームのメンバーの関与、より多くの対面による監

督又は特定の監査調書のより詳細な査閲によって、指揮、監督又は査閲の内容、時期及び範囲を

変更する。

- 複雑な、又は主観的な判断を伴う監査領域

- より質の高い監査を達成する上でリスクのある領域

- 不正リスクのある領域

- 識別された違法行為又はその疑い

・ 以下に関する期待を明確にする。

- 監査チームの経験の浅いメンバーが、頻繁かつ適時により経験のあるメンバー又は監査責

任者に助言を求める。

- 監査業務の全過程を通じて、より経験のあるメンバーは経験の浅い監査チームのメンバー

からの相談を受け、その考察、助言又は支援の要請に対して積極的かつ適時に応じる。

・ 経営者が過度のプレッシャーを課す場合又は監査チームが監査証拠を入手するための記録、

施設、特定の従業員、顧客、取引業者等へのアクセスに困難を伴う場合に監査役等とコミュニケ

ーションを行う。

《(5) 監査チームの他のメンバーへの手続又は業務の割り当て》(第 15 項参照)

A37.手続又は業務が監査チームの他のメンバーに割り当てられた場合、監査責任者は、監査業務の

全過程を通じて、十分かつ適切に関与していることを、以下を含む様々な方法で示す場合がある。

・ 責任と権限の内容、割り当てた業務の範囲及びその目的について、業務を割り当てられた者へ

の伝達、他の必要な指示及び関連する情報の提供

・ 業務を割り当てられた者への指揮及び監督

・ 業務を割り当てられた者の到達した結論を評価するための作業の査閲。これは、第 29 項から

第 34 項の要求事項に加えて行われる。

《5.独立性を含む職業倫理に関する規定》(第 16 項から第 21 項参照)

《(1) 職業倫理に関する規定》(第1項及び第 16 項から第 21 項参照)

A38.監査人は、監査基準報告書 200 第 13 項及び A13 項から A16 項により、財務諸表監査業務に関

連する職業倫理に関する規定(独立性に関連するものを含む。)を遵守することが要求されている。

我が国における職業倫理に関する規定は、業務の内容や状況により異なる。例えば、独立性に関連

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監基報 220

する特定の要求事項は、上場企業の監査を実施する場合にのみ適用されることがある。監査基準

報告書 600 には、本報告書に加えて、職業倫理に関する規定についての構成単位の監査人とのコ

ミュニケーションに関して、要求事項と適用指針が規定されている。

A39.監査業務の内容と状況によっては、例えばマネーロンダリング、汚職又は贈収賄等の違法行為

に関連する特定の法令等又は職業倫理に関する規定の解釈が業務に関連する場合がある。

A40.監査チームが監査業務の内容及び状況に適用される職業倫理に関する規定を理解し遵守する上

で、監査事務所の情報システム及び監査事務所から提供される業務運営に関する資源が役立つ場

合がある。例えば、監査事務所は、以下の事項を行うことがある。

・ 独立性に関する要求事項を監査チームに伝達する。

・ 職業倫理に関する規定についての研修を監査チームに提供する。

・ 監査事務所及び業務の性質と状況に応じて、職業倫理に関する規定と解釈指針がどのように

適用されるかについてのマニュアル及び指針(すなわち、知的資源)を整備する。

・ 職業倫理に関する規定の遵守を管理し監視する専門要員を割り当てる(例えば、品質管理基準

報告書第1号は、監査事務所が、独立性の保持が要求される全ての専門要員から、独立性の保持

のための方針又は手続の遵守に関する確認書を、少なくとも年に一度入手することを要求して

いる)。又は、職業倫理に関する規定に係る事項について専門的な見解の問合せに対応する。

・ 監査チームのメンバーが、監査事務所内の適切な者又は監査責任者に対して、関連し信頼でき

る情報を伝達するための以下の方針又は手続(監査チームの方針又は手続等)を定める。

- 監査及び監査以外の保証業務の実施期間中に、監査事務所が独立性に対する阻害要因を識

別できるようにするために、非保証業務を含む、関与先に提供する業務の契約とその範囲に関

する情報を伝達する。

- 監査事務所が、独立性の阻害要因が許容可能な水準かを評価し、また、許容できない水準で

ある場合には、当該阻害要因の除去又は軽減によって対処できるように、独立性への阻害要因

を生み出す可能性のある状況及び関係を伝達する。

- 独立性を含む我が国における職業倫理に関する規定への違反があれば速やかに伝達する。

A41.監査責任者は、職業倫理に関する規定を遵守する上で監査事務所の方針又は手続に依拠するか

どうかを判断する際に、A40 項に記載されている情報、コミュニケーション及び業務運営に関する

資源を考慮することがある。

A42.職業倫理に関する規定についての監査チームのメンバー間のオープンかつ活発なコミュニケー

ションは、以下についても役立つ場合がある。

・ 監査業務にとって特に重要となる可能性のある職業倫理に関する規定について、監査チーム

のメンバーの注意を喚起する。

・ 監査チームの職業倫理に関する規定の理解と遵守及び監査事務所の関連する方針又は手続に

関する事項について、監査責任者に最新の情報を提供する。

《(2) 職業倫理に関する規定の遵守に対する阻害要因の識別と評価》(第 17 項及び第 18 項参照)

A43.品質管理基準報告書第1号に従った、監査チームのメンバーの独立性を含む、我が国における

職業倫理に関する規定に関連した監査事務所による品質リスクへの対処には、職業倫理に関する

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監基報 220

規定の遵守に対する阻害要因を識別、評価及び対処するための方針又は手続を定めることが含ま

れる。

A44.職業倫理に関する規定には、阻害要因の識別と評価及びそれらへの対処方法に関する規定が含

まれる場合がある。例えば、提示された監査報酬が余りにも低く、職業的専門家としての基準に従

って業務を実施することが困難な場合には、倫理規則等の職業倫理に関する規定における基本原

則のうち、職業的専門家としての能力及び正当な注意の原則を遵守することに関して、自己利益

という阻害要因が生じる可能性がある。

《(3) 職業倫理に関する規定に対する違反》(第 19 項参照)

A45.監査事務所は、品質管理基準報告書第1号に従い、職業倫理に関する規定への違反を識別、伝

達、評価及び報告し、また当該違反の原因と結果に適時に対応することに関する方針又は手続を

定めることが要求されている。

《(4) 適切な措置の実施》(第 20 項参照)

A46.適切な措置には、例えば、以下が含まれる。

・ 職業倫理に関する規定への違反に係る監査事務所の方針又は手続に従う。これには、該当する

場合、懲戒処分を含む適切な措置を講じるための、適切な者とのコミュニケーション又は専門

的な見解の問合せが含まれる。

・ 監査役等とコミュニケーションを行う。

・ 規制当局又は専門家団体とコミュニケーションを行う。特定の状況では、規制当局とのコミュ

ニケーションが法令等により要求されることがある。

・ 法律専門家に助言を求める。

・ 適用される法令等において可能な場合には、当該監査契約を解除する。

《(5) 監査報告書日以前の実施》(第 21 項参照)

A47.監査基準報告書 700 は、監査報告書において、監査人が、我が国における職業倫理に関する規

定に従って、会社から独立しており、また、監査人が要求事項に従って、監査人としてのその他の

倫理上の責任を果たしている旨を記載することを要求している(監基報 700 第 28 項(3)参照)。本

報告書の第 16 項から第 21 項で要求される手続を実施することにより、監査報告書における当該

記載の基礎が得られる。

A48.欠番

《6.監査契約の新規の締結及び更新》(第 22 項から第 24 項参照)

A49.品質管理基準報告書第1号は、監査事務所に対し、監査契約の新規の締結及び更新に関する品

質目標を設定することを求めている。

A50.以下のような情報は、監査責任者が監査契約の新規の締結及び更新に関して到達した結論が適

切であるかどうかを判断する際に、役立つ場合がある。

・ 企業の主な株主、主要な経営者及び監査役等の誠実性と倫理観

- 21 -

監基報 220

・ 監査業務を実施するための、十分かつ適切な業務運営に関する資源が利用可能かどうか。

・ 経営者及び監査役等は監査業務に関連する自身の責任を認識しているかどうか。

・ 監査チームは、監査業務を実施するための十分な時間を含む適性及び能力を有しているかど

うか。

・ 当年度又は過年度の監査業務の実施中に発生した重要な事項が、契約の更新に影響を及ぼす

かどうか。

A51.品質管理基準報告書第1号は、監査事務所が監査契約の新規の締結及び更新を決定するに当た

り、監査事務所に対して、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って業務を実施

する監査事務所の能力を判断することを求めている。

監査責任者は、監査契約の新規の締結及び更新に関して到達した結論が適切であるかどうかを

判断する際に、監査事務所が検討した情報を利用することがある。監査責任者は、到達した結論の

適切性に懸念を抱く場合、監査契約の新規の締結及び更新のプロセスに関与した者と当該結論の

根拠について討議することがある。

A52.監査責任者が監査事務所における監査契約の新規の締結及び更新プロセスに直接的に関与して

いる場合、監査責任者は、当該結論に到達した際に監査事務所が入手又は利用した情報を把握し

ている。そのような場合には、監査責任者は、監査事務所の方針又は手続に従っていること、並び

に到達した結論が適切であることについての判断の根拠が得られている場合がある。

A53.監査契約の新規の締結及び更新のプロセスで得られた情報は、監査責任者が本報告書の要求事

項を遵守し、また適切な措置について十分な情報を得た上で判断を行う際に役立つ場合がある。

このような情報には、以下が含まれることがある。

・ 企業の規模、複雑性及び性質に関する情報(グループ監査であるかどうか、企業が属する産業

及び適用される財務報告の枠組みを含む。)

・ 期中及び最終段階における企業の報告日程

・ グループ監査に関連して、親会社と企業及び事業単位との間の支配関係の性質

・ 企業又は企業が属する産業において、過年度の監査業務以降、必要とされる業務運営に関する

資源の性質並びに監査チームの業務の指揮、監督及び査閲の方法に影響を及ぼす変化が生じた

かどうか。

A54.監査契約の新規の締結及び更新において入手した情報は、本報告書だけでなく、例えば以下の

ような他の監査基準報告書の要求事項を遵守する際に関連する場合がある。

・ 監査基準報告書 210「監査業務の契約条件の合意」第7項において要求されている監査業務の

契約条件の理解

・ 不正か誤謬かにかかわらず、監査基準報告書 315 及び監査基準報告書 240「財務諸表監査にお

ける不正」に従った重要な虚偽表示リスクの識別と評価

・ 監査基準報告書 600 に従った、グループ財務諸表の監査を実施する場合のグループ及びグル

ープ環境の理解並びに構成単位の監査人に対する指揮、監督及びその作業の査閲

・ 監査基準報告書 620 に従った、監査人の利用する専門家の関与の有無及び方法の決定

・ 監査基準報告書 260「監査役等とのコミュニケーション」及び監査基準報告書 265「内部統制

の不備に関するコミュニケーション」における企業のガバナンス構造

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監基報 220

A55.倫理規則及び監査基準報告書 900「監査人の交代」により、監査人予定者は監査契約の締結の

前に、監査契約の締結の可否を判断するために知っておく必要があると前任監査人が判断した事

実又は状況に関して、当該情報の提供を前任監査人に依頼することが求められている。状況によ

っては、監査人予定者の要請に基づき、前任監査人は違法行為又はその疑いに関する情報の提供

を監査人予定者に求められる場合がある。例えば、違法行為又はその疑いが原因で前任監査人が

監査契約を継続しなかった場合、前任監査人は監査人予定者の要請に基づき、監査人予定者が監

査契約の締結の可否を判断する前に知っておく必要があると前任監査人が判断した違法行為又は

その疑いに関する全ての事実と情報を監査人予定者に提供することが求められている(監基報 900

第 13-2 項参照)。

A56.法令等により監査事務所が監査契約の新規の締結又は更新の義務を負う場合、監査責任者は、

監査業務の内容及び状況に関して監査事務所が入手した情報を考慮する場合がある。

A57.第 24 項における必要な対応を決定する際に、監査責任者及び監査事務所は、監査契約を継続

することが適切であると判断する場合があり、その場合には個々の監査業務でどのような追加の

対応(例えば、より多くの専門職員又は特定の専門知識を有する専門職員の選任)が必要であるか

を判断する。監査責任者が当該追加の対応が適切に行われたことに懸念を抱く場合又は納得して

いない場合には、監査上の判断の相違を解決するための監査事務所の方針又は手続が適用される

場合がある。

A58.欠番

《7.業務運営に関する資源》(第 25 項から第 28 項参照)

A59.品質管理基準報告書第1号において、監査業務の実施を支援するために監査事務所から割り当

てられた、又は利用可能な業務運営に関する資源には、以下が含まれる。

・ 人的資源

・ テクノロジー資源

・ 知的資源

A60.業務運営に関する資源は、主に監査事務所によって割り当てられ、又は利用可能とされる。し

かしながら、監査チームが監査業務のために資源を直接的に入手する場合もある。例えば、構成単

位の監査人が法令、規則又はその他の理由によって構成単位の財務諸表に対して監査意見を表明

することを要求され、また構成単位の監査人が構成単位の経営者からグループ監査人のために監

査手続を実施するように選任される場合である(監基報 600 の A10 項参照)。このような場合、監

査責任者は、十分かつ適切な資源が割り当てられているか、又は利用可能であるかを判断するた

めに、構成単位の監査人に情報を依頼する等の対応が監査事務所の方針又は手続によって要求さ

れる場合がある。

A61.第 25 項及び第 26 項の要求事項を遵守するに当たって、監査責任者は、監査チームに割り当て

られた、又は利用可能な業務運営に関する資源によって、職業的専門家としての能力及び正当な

注意の原則を含む職業倫理に関する規定を遵守できるかどうかを検討する場合がある。

- 23 -

監基報 220

《(1) 人的資源》

A62.人的資源には、監査チームのメンバー(A5 項及び A15 項から A21 項参照)が含まれ、また、監

査人が利用する外部の専門家が含まれる場合がある。

《(2) テクノロジー資源》

A63.監査業務において十分かつ適切な監査証拠を監査人が入手する際に、テクノロジー資源の利用

が役立つ場合がある。テクノロジー・ツールの利用により、監査人が効果的かつ効率的に監査を管

理することや、監査人が大量のデータを容易に評価することができるようになる。例えば、テクノ

ロジー・ツールの利用により、監査人はより深い洞察の提供、異常な傾向の識別又は経営者の主張

に対する効果的な批判的検討ができるようになり、それにより職業的専門家としての懐疑心を保

持及び発揮する能力を高めることができる。監査チームは、会議の実施やコミュニケーションの

ためのツールとしてテクノロジー・ツールを利用することもある。

しかしながら、テクノロジー資源の不適切な利用は、監査人が意思決定の目的で利用するテク

ノロジー・ツールにより作成された情報に過度に依存するリスクを高め、又は守秘義務の原則等

の職業倫理に関する規定の遵守に対する阻害要因を生じさせる可能性がある。

A64.監査手続を実施するために監査事務所により承認されたテクノロジー・ツールを利用する場合

に、監査チームに求められる責任や考慮事項が監査事務所の方針又は手続に含まれることがある。

また、アウトプットの評価や分析を行う際に、専門的な技能や知識を有する者の関与が監査事務

所の方針又は手続で求められる場合がある。

A65.監査手続を実施する際に、監査責任者が他の監査事務所に所属する者に特定の自動化されたツ

ール及び技法の利用を要求する場合、これらの自動化されたツール及び技法の利用に当たり、監

査チームの指示に従う必要があることを当該者とのコミュニケーションにおいて示す場合がある。

A66.監査事務所の方針又は手続により、特定のITアプリケーション又はITアプリケーションの

一部の利用が明確に禁止される場合がある(例えば、まだ監査事務所がその利用を明確に承認し

ていないソフトウェア)。また、監査事務所は、未承認のITアプリケーションを利用する前に、

その利用が適切であるかどうかを判断するため、監査事務所の方針又は手続によって、監査チー

ムに以下のような特定の措置を講じることを要求する場合がある。

・ 当該ITアプリケーションを利用するための適性と適切な能力の保持

・ 当該ITアプリケーションの運用とセキュリティの検証

・ 監査ファイルに含める特定の事項の文書化

A67.監査責任者は、監査業務におけるITアプリケーションの利用が業務に照らして適切であるか

どうか、また適切である場合のITアプリケーションの利用方法について検討する際に、職業的

専門家としての判断を行使することがある。監査事務所によって明示的に承認されていない特定

のITアプリケーションについて、監査業務での利用が適切であるかどうかを判断する際の考慮

事項には以下が含まれる。

・ 当該ITアプリケーションの利用及びセキュリティが監査事務所の方針又は手続に準拠して

いること。

・ 当該ITアプリケーションが意図したとおりに運用されていること。

- 24 -

監基報 220

・ 専門要員が当該ITアプリケーションを利用するために必要な適性と能力を有していること。

《(3) 知的資源》

A68.知的資源には、例えば、監査手法、監査の指針、実施ツール、標準的な監査手続書、調書や報

告書様式、チェックリスト等が含まれる。

A69.監査業務における知的資源の利用により、職業的専門家としての基準、法令等及び関連する監

査事務所の方針又は手続の一貫した適用と理解が容易になることがある。このため、監査事務所

の方針又は手続に基づいて、監査チームは、監査事務所の監査手法、監査の指針及び特定の実施ツ

ールを利用することが求められる場合がある。

また、監査チームは、他の知的資源、例えば、業種特有の監査手法又は関連する実務上の指針等

の利用が、当該業務の内容及び状況に適切かつ適合しているかを検討する場合がある。

《(4) 十分かつ適切な業務運営に関する資源》(第 25 項参照)

A70.十分かつ適切な業務運営に関する資源が、監査チームに割り当てられているか、又は利用可能

であるかを判断する際に、通常、監査責任者は、A6 項に記載されている監査事務所の関連する方

針又は手続(業務運営に関する資源を含む。)に依拠することができる。例えば、監査責任者は、

監査手続を実施するために監査事務所により承認されたテクノロジー・ツールを利用する場合、

監査事務所から伝達された情報に基づき、監査事務所の技術開発、適用及び保守プログラムに依

拠することができる。

《(5) 監査チームの適性及び能力》(第 26 項参照)

A71.監査責任者は、監査チームが適性及び適切な能力を有しているかを判断する際に、監査チーム

の以下の事項を考慮する場合がある。

・ 業務の内容と複雑さの程度が類似した監査業務への従事及び適切な訓練を通じて得られた監

査業務の理解の程度並びにこれまでの実務経験

・ 職業的専門家としての基準及び適用される法令等についての理解

会計又は監査の特定の領域に関する専門知識

・ 企業が利用するITに関する専門知識、監査業務を計画し実施する際に監査チームが利用す

る自動化されたツールや技法に関する専門知識

・ 被監査会社が属する産業に関する知識

・ 職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮並びに職業的専門家としての判断能力

・ 監査事務所の定める方針又は手続についての理解

A72.監査人の利用する外部の専門家は、監査チームのメンバーではない。監査基準報告書 620 第8

項には、監査人の利用する外部の専門家の適性及び能力の評価に関する要求事項が含まれている。

FA72-2JP.監査チームに期待される適性及び適切な能力を検討する場合、監査責任者は、監査事務所

が提供する不正に関する教育・訓練を通じて得られた、専門要員の知識及び能力の程度を考慮す

ることがある。

- 25 -

監基報 220

《プロジェクト管理》

A73.大規模又は複雑な企業の監査等、監査チームのメンバーが多数存在する場合、監査責任者は、

プロジェクト管理において、専門的な技能又は知識を有する者を関与させることがあり、監査事

務所の適切なテクノロジー資源及び知的資源を活用することがある。一方で、監査チームのメン

バーが少なく複雑でない企業を監査する際には、監査チームのメンバーが簡略化された方法でプ

ロジェクト管理を達成することがある。

A74.プロジェクト管理の技法やツールは、監査チームによる監査業務の品質の管理において、例え

ば以下のように役立つことがある。

・ 職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮を阻害し得る予算又は時間の制約を緩和するこ

とにより、監査チームが職業的専門家としての懐疑心を保持及び発揮する能力を高める。

・ より専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項が生じ得る監査の最

終段階において、時間の制約を効果的に管理するための監査業務の適時な実施を促進する。

・ 主要なマイルストーンの達成を含む、監査計画に対する監査の進捗の状況を監視する(監基報

300 第8項参照)。これは、監査計画と割り当てられた業務運営に関する資源を適時に見直す必

要性を、監査チームが前もって把握することに役立つ。

・ 監査チームのメンバー間のコミュニケーションを促進する(例えば、構成単位の監査人及び監

査人の利用する専門家との取決めの調整)。

《(6) 不十分又は不適切な業務運営に関する資源》(第 27 項参照)

A75.品質管理基準報告書第1号は、監査事務所全体に存在する組織風土を通じた、監査事務所の品

質へのコミットメントについて規定している。当該品質へのコミットメントは、より質の高い監

査業務を一貫して実施することにより、公共の利益に資する監査事務所の役割と、監査事務所の

財務上及び業務上の優先事項を含む監査事務所の戦略的意思決定及び行動における品質の重要性

を認識し強化する。

また、品質管理基準報告書第1号は、必要となる業務運営に関する資源の計画を作成し、監査事

務所の品質へのコミットメントと整合した方法で、資源を入手、配分又は割り当てることに関す

る監査事務所の責任についても規定している。しかしながら、一定の状況において、監査事務所の

財務上及び業務上の優先事項により、監査チームに割り当てられた、又は利用可能な資源に制約

が生じる場合がある。このような状況でも、資源の制約によって、個々の監査業務での品質の達成

に対する監査責任者の責任(監査事務所によって割り当てられた、又は利用可能な資源が監査業務

を実施するために十分かつ適切であるかについて判断することを含む。)が軽減されることはない。

A76.欠番

A77.個々の監査業務で追加の業務運営に関する資源が必要かどうかに関する監査責任者の判断は、

職業的専門家としての判断に係る事項であり、本報告書の要求事項及び監査業務の内容と状況の

影響を受ける。A11 項に記載されているように、監査責任者は、特定の状況において、品質リスク

に対する監査事務所の対応が特定の監査業務について有効ではないと判断することがある。これ

には、監査チームに割り当てられた、又は利用可能な資源が不十分である場合が含まれる。この場

合、監査責任者は、第 27 項及び第 39 項(3)に従って、そのような状況であることを適切な者に伝

- 26 -

監基報 220

達することを含む適切な措置を講じる必要がある。例えば、監査事務所から提供された監査ソフ

トウェアに、最近公表された産業の規制に関する新規又は改訂後の監査手続が組み込まれていな

い場合、そのような情報を監査事務所に適時に伝達することにより、監査事務所は、当該ソフトウ

ェアを迅速に更新して再公開するための措置を講じることや、監査チームが監査業務の実施にお

いて新しい規制に準拠することを可能にする代替の資源を提供できるようになる。

A78.割り当てられた、又は利用可能な業務運営に関する資源が監査業務の状況に照らして不十分又

は不適切であり、追加又は代替の資源が利用できない場合の適切な措置には、以下が含まれるこ

とがある。

・ 指揮、監督及び査閲の内容、時期及び範囲に関する監査計画を変更する(A94 項参照)。

・ 適用される法令等において可能な場合には、経営者又は監査役等と報告期限の延長について

協議する。

・ 監査責任者が監査業務に必要な資源を入手できない場合、第 27 項に従って適切な者に伝達し

た結果生じた監査上の判断の相違を解決するための監査事務所の方針又は手続に従う。

・ 適用される法令等において契約の解除が可能な場合、監査契約を解除するための監査事務所

の方針又は手続に従う。

A79.欠番

《8.業務の実施》

《(1) 適用の柔軟性》(第 29 項参照)

A80.監査責任者のみで監査が実施されない場合又は内容及び状況が複雑な企業の監査の場合、監査

責任者が指揮、監督及び査閲を監査チームの他のメンバーに割り当てることが必要になる場合が

ある。ただし、監査業務の品質の管理と達成に対する監査責任者の全体的な責任の一環として、ま

た、監査責任者が十分かつ適切に関与するために、監査責任者は、指揮、監督及び査閲の内容、時

期及び範囲が第 30 項に準拠していることを判断する必要がある。

そのような状況において、構成単位の監査人を含む専門要員又は監査チームのメンバーは、監

査責任者が第 30 項で規定されている判断を可能にするための情報を監査責任者に提供する場合が

ある。

《(2) 指揮、監督及び査閲》(第 30 項参照)

A81.品質管理基準報告書第1号では、監査事務所は、監査チームへの指揮、監督及び作業の査閲の

内容、時期及び範囲に対処する品質目標を設定することが要求されている。また、品質管理基準報

告書第1号では、監査チームのより経験のあるメンバーが、経験の浅いメンバーの業務について、

指揮、監督及び査閲を行うように計画し、実施することが要求されている。

A82.監査チームへの指揮、監督及び作業の査閲は、品質目標に関する監査事務所の対応であるが、

個々の監査業務で実施するものであり、監査責任者が監査業務の品質管理に当たり、その内容、時

期及び範囲を調整する可能性がある。したがって、監査業務の内容及び状況を考慮すると、指揮、

監督及び査閲の方法は個々の監査業務で異なり得る。これには、一般的に、監査事務所の方針又は

手続への対処と業務固有の対応とを組み合わせる方法が含まれる。

- 27 -

監基報 220

A83.監査チームのメンバーへの指揮、監督及びその作業の査閲を行うことは、監査責任者が本報告

書の要求事項を満たし、第 40 項に準拠して監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与してい

るという結論を裏付ける。

A84.監査チームのメンバー間での継続的な討議とコミュニケーションによって、経験の浅いメンバ

ーは監査責任者を含むより経験のあるメンバーに適時に質問を行うことが可能になり、第 30 項に

準拠した効果的な指揮、監督及び査閲が行われるようになる。

《① 指揮》

A85.監査チームへの指揮には、以下のような責任を監査チームのメンバーに伝達することが含まれ

る。

・ 自らの行動及びコミュニケーションを通じて、個々の監査業務における品質の管理と達成に

貢献すること。

・ 監査証拠の入手と評価に当たって職業的専門家としての懐疑心を保持及び発揮する際に、監

査証拠を鵜呑みにせず、監査人の無意識の、又は意識的な偏向に留意すること(A35 項参照)。

・ 我が国における職業倫理に関する規定を遵守すること。

・ 一つの監査業務に複数の監査責任者が関与している場合の各監査責任者の責任

・ 監査手続を実施する監査チームの各メンバーの責任並びに監査チームの経験の浅いメンバー

の作業を指揮、監督及び査閲する監査チームのより経験のあるメンバーの責任

・ 監査の基本的な方針及び詳細な監査計画において示された実施すべき作業の目的並びに立案

した監査手続の種類、時期及び範囲に関する詳細な指示を理解すること。

・ 品質の達成に対する阻害要因に対処し、監査チームに期待される対応を行うこと。例えば、予

算や業務運営に関する資源の制約によって、監査チームのメンバーが計画した監査手続を変更

したり、実施しないことがあってはならない。

《② 監督》

A86.監督には、以下のような事項が含まれる。

・ 以下の監視を含む、監査の進捗状況を把握すること。

- 監査計画に対する進捗

- 作業の目的が達成されているかどうか。

- 割り当てられた業務運営に関する資源が継続して適切であるか。

・ 監査の実施中に生じた論点に対して適切な措置を講じること。これには、例えば、当該論点が

当初の想定よりも複雑な場合に、立案した監査手続を監査チームのより経験のあるメンバーに

再度割り当てることが含まれる。

・ 専門的な見解の問合せが必要な事項又はより経験のある監査チームのメンバーが検討を必要

とする事項を特定すること。

・ 監査チームのメンバーの技能又は能力の向上を支援するための指導や OJT を行うこと。

・ 監査チームのメンバーが報復を恐れることなく懸念を提起する環境を整備すること。

- 28 -

監基報 220

《③ 査閲》

A87.作業の査閲は、本報告書の要求事項に対処したという結論の裏付けとなる。

A88.作業の査閲を行う場合には、例えば、以下の事項を考慮する。

・ 監査事務所の方針又は手続、職業的専門家としての基準並びに適用される法令等に従って作

業を行っているかどうか。

・ 重要な事項を詳細に検討しているかどうか。

・ 専門的な見解の問合せを適切に実施しており、その結論を文書化し、かつその結論に従って業

務を実施しているかどうか。

・ 監査手続の種類、時期及び範囲を変更する必要があるかどうか。

・ 到達した結論は、実施した作業によって裏付けられているか、またそれが適切に監査調書に記

載されているかどうか。

・ 入手した監査証拠は、意見表明の基礎となる十分かつ適切なものであるかどうか。

・ 監査手続の目的は達成されているかどうか。

A89.監査事務所の方針又は手続には、以下に関する具体的な要求事項が含まれる場合がある。

・ 監査調書の査閲の内容、時期及び範囲

・ 個々の状況において適切と考えられる査閲の種類(例えば、個々の監査調書を査閲するのか、

又は選択した監査調書を査閲するのか。)

・ 監査チームのメンバーのうち、誰がどの種類の査閲を実施する必要があるのか。

《④ 監査責任者による査閲》(第 30 項から第 34 項参照)

A90.監査基準報告書 230 で要求されるように、監査責任者は査閲日及び査閲の対象を文書化しなけ

ればならない(監基報 230 第8項(3)参照)。

A91.監査責任者は、監査業務の全過程を通じて、適切な段階で監査調書を適時に査閲することによ

り、監査報告書日以前に重要な事項について納得した上で解決することが可能となる。監査責任

者は、必ずしも全ての監査調書を査閲する必要はない。

A92.監査責任者は、監査チームが重要な判断を必要とする領域を特定する際に、職業的専門家とし

ての判断を行使する。監査事務所の方針又は手続には、重要な判断であると通常想定される事項

が明記されている場合がある。監査業務に関する重要な判断には、例えば以下のような、監査の基

本的な方針、詳細な監査計画、業務の実施、並びに監査チームが到達した全体的な結論に関する事

項が含まれることがある。

・ 重要性の基準値の決定に関する事項等、監査計画に関する事項

・ 以下を含む監査チームの構成に関する事項

会計又は監査の専門領域において専門知識を有する専門要員

- サービス・デリバリー・センターの人員の利用

・ 外部の専門家を含む専門家の業務を利用するかどうかの判断

・ 契約の新規の締結及び更新プロセスにおいて得られた情報の監査チームによる検討及びその

情報への対応案

・ 固有リスク要因の検討及び固有リスクの評価において、監査チームによる重要な判断を必要

- 29 -

監基報 220

とする状況を含む、監査チームのリスク評価プロセス

・ 関連当事者との関係及び取引並びに関連当事者に関する注記事項に係る監査チームの検討

・ 監査チームが業務における重要な領域に関して実施した手続の結果。例えば、特定の会計上の

見積り、会計方針又は継続企業の前提に関する結論

・ 専門家が実施した業務及び専門家が導き出した結論に対する監査チームの評価

・ グループ監査に関する以下の事項

- グループ財務諸表の監査の基本的な方針及び詳細な監査計画

- 構成単位の監査人に対する指揮、監督及びその作業の査閲の方法を含む構成単位の監査人

の関与に関する意思決定

- 構成単位の監査人が実施した作業及び構成単位の監査人が導き出した結論に対する評価

・ 監査の基本的な方針及び詳細な監査計画に影響を与える事項への対応方法

・ 監査の実施中に識別した修正された、又は未修正の虚偽表示に関する重要性の判断及びその

対処

・ 監査報告書の監査意見及び「監査上の主要な検討事項」区分又は「継続企業の前提に関する重

要な不確実性」区分等に記載される事項

A93.監査責任者は、その他の事項に関する査閲の要否を決定する際に、例えば以下に基づいて、職

業的専門家としての判断を行使する。

・ 監査業務の内容と状況

・ 査閲の対象の作業を実施した監査チームのメンバー

・ 最近の検証における指摘事項

・ 監査事務所の方針又は手続における要求事項

《⑤ 内容、時期及び範囲》

A94.指揮、監督及び査閲の内容、時期及び範囲は、監査事務所の方針又は手続、職業的専門家とし

ての基準及び適用される法令等に従って計画され、実施される必要がある。例えば、監査事務所の

方針又は手続には以下が含まれる場合がある。

・ 必要な是正措置を適時に実施することが可能となるよう、期中に実施される作業については

手続の実施と同時に遅滞なく指揮、監督及び査閲を行うこと。

・ 監査責任者が査閲する特定の事項及び監査責任者の査閲が想定される状況又は業務を監査事

務所が指定すること。

《⑥ 適用の柔軟性》

A95.指揮、監督及び査閲の方法は、例えば、以下の状況に応じて異なることがある。

・ 企業及び監査対象領域に関する監査チームのメンバーの過去の経験

例えば、企業の情報システムに関連する手続が前期に業務を実施した同じ監査チームのメンバ

ーによって実施され、情報システムに重要な変更がない場合には、監査チームのメンバーへの指

揮と監督の範囲と頻度をより少なくし、また、関連する監査調書の査閲を詳細に行わなくともよ

いことがある。

- 30 -

監基報 220

・ 監査業務の複雑性

例えば、監査業務を複雑なものにする重要な事象が発生した場合、監査チームのメンバーへの指

揮と監督の範囲と頻度を増やし、また、関連する監査調書の査閲をより詳細に行うことがある。

・ 評価した重要な虚偽表示リスク

例えば、重要な虚偽表示リスクが高い場合、監査チームのメンバーへの指揮と監督の範囲と頻度

を増やし、また、作業の査閲をより詳細に行うことがある。

・ 監査業務を実施する各監査チームのメンバーの適性と能力

例えば、経験の浅い監査チームのメンバーには、業務の実施において、より詳細な指揮と、より

頻繁な、又は対面によるコミュニケーションが必要な場合がある。

・ 実施した作業の査閲の想定される方法

例えば、状況によっては、必要な指揮をする上で対面によらない査閲は効果的ではなく、対面に

よるコミュニケーションによって補うことが必要な場合がある。

・ 監査チームの構成及び監査チームのメンバーの拠点

例えば、サービス・デリバリー・センターに配置された者への指揮と監督及びその作業の査閲は、

監査チームのメンバーが同一拠点にいる場合よりも、様式化、体系化されることがある。また、

監査チームのメンバー間のコミュニケーションを容易にするためにITを利用することがある。

A96.監査業務の状況の変化を識別することにより、指揮、監督又は査閲の内容、時期又は範囲に関

する計画の再評価が必要な場合がある。例えば、複雑な取引によって財務諸表全体レベルの重要

な虚偽表示リスクが高まる場合、監査責任者は、当該取引に関連して計画した作業の査閲の程度

を変更しなければならない場合がある。

A97.監査責任者は、第 30 項(2)に従って、指揮、監督及び査閲の方法が監査業務の内容及び状況に

対応しているか判断することが要求される。例えば、より経験のある監査チームのメンバーが、監

査チームの監督と査閲に関与できなくなった場合、監査責任者は、経験の浅い監査チームのメン

バーへの監督と査閲の範囲を増やさなければならない場合がある。

《⑦ 経営者、監査役等又は規制当局へのコミュニケーションの内容の査閲》(第 34 項参照)

A98.監査責任者は、監査業務の内容及び状況を考慮して、書面又は電磁的記録によるコミュニケー

ションの内容のうち、査閲の対象とするものを決定する際に、職業的専門家としての判断を行使

する。例えば、監査の通常の実施過程において行われる監査チームと経営者とのコミュニケーシ

ョンの内容を監査責任者が査閲する必要はないと判断することがある。

《(3) 専門的な見解の問合せ》(第 35 項参照)

A99.品質管理基準報告書第1号は、専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない

事項に関する専門的な見解の問合せと、合意した結論に従って業務を実施しているかに関する品

質目標の設定を監査事務所に要求している。専門的な見解の問合せは、例えば、以下の場合に適切

である、又は要求されることがある。

・ 複雑な、又は知識や経験が不足している論点(例えば、見積りの不確実性の程度が高い会計

の見積りに関する論点)

- 31 -

監基報 220

・ 特別な検討を必要とするリスク

・ 企業の通常の取引過程から外れた、又は通例でないと判断される重要な取引

・ 経営者により課された制限

・ 違法行為

A100.専門的な事項、職業倫理に関する事項などについて、監査事務所内外の者に専門的な見解の問

合せを実施する場合、適切な知識や経験を有している助言者に関連する事実を十分に提供するこ

とによって、専門的な見解の問合せを効果的に行うことができる。

A101.監査事務所内に適切な人材を有しておらず、監査チームが監査事務所外に見解の問合せを行

うことが必要な場合には、監査事務所の方針又は手続に基づき、他の監査事務所等に専門的な見

解の問合せを行うことができる。

A102.専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項に関する監査チーム外へ

の専門的な見解の問合せが必要な場合には、その事項が監査上の主要な検討事項であることを示

している可能性がある(監基報 701 第8項及び A14 項参照)。

《(4) 審査》(第 36 項参照)

A103.品質管理基準報告書第1号第 34 項(6)には、監査事務所が品質管理基準報告書第2号に従っ

て審査に対処し、監査業務について審査を要求する方針又は手続を定めることに関する要求事項

が含まれている。

品質管理基準報告書第2号は、審査担当者の選任及び適格性、並びに審査の実施及び文書化に

ついての審査担当者の責任に関する実務上の指針を提供するものである。

《① 監査報告書日以前の審査の完了》(第 36 項(4)参照)

A104.監査基準報告書 700 第 49 項では、監査報告書には、監査人が、財務諸表に対する意見表明の

基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手した日よりも前の日付を付さないことが求められてい

る。また、品質管理基準報告書第2号及び本報告書が適用される監査業務では、監 査責任者に対

し、監査報告書の日付を審査担当者から審査の完了の通知を受けた日以降とすることが求められ

ている。例えば、審査担当者が、監査チームが行った重要な判断又は到達した結論が適切ではない

との懸念を監査責任者に伝達した場合、審査は完了していない(品基報第2号第 26 項参照)。

A105.監査の適切な段階で適時に審査を実施することは、監査チームが審査における論点を監査報

告書日以前に審査担当者が納得できるように迅速に解決することに役立つ場合がある。

A106.監査チームと審査担当者とが監査業務の全過程を通じて頻繁にコミュニケーションを取るこ

とは、効果的かつ適時な審査の実施に役立つことがある。監査責任者は、審査担当者と重要な事項

について討議することに加えて、審査担当者からの要請への対応を取りまとめる責任を監査チー

ムのメンバーに割り当てる場合がある。

《② 審査を実施しない監査業務》(第 36-3JP 項参照)

A106-2JP.審査を実施しない監査業務に関して、監査意見が適切に形成されていることを確認でき

る方法には、監査責任者が意見表明前に実施し、文書化した自己点検が含まれる。

- 32 -

監基報 220

《(5) 監査上の判断の相違》(第 37 項及び第 38 項参照)

A107.品質管理基準報告書第1号は、監査チーム内の監査上の判断の相違又は監査チームと審査担

当者若しくは監査事務所の品質管理システムにおいて活動を実施する者との間で生じた監査上の

判断の相違に対処する品質目標を設定することを監査事務所に求めている。また、品質管理基準

報告書第1号は、監査上の判断の相違が監査事務所に報告され、解消されることを求めている。

A108.状況によっては、監査責任者が監査上の判断の相違の解決に納得しない場合がある。そのよう

な場合、監査責任者の行う適切な措置には、例えば、以下が含まれる。

・法律専門家に助言を求める。

・適用される法令等において可能な場合には、監査契約を解除する。

《9.モニタリング及び改善》(第 39 項参照)

A109.品質管理基準報告書第1号は、監査事務所のモニタリング及び改善プロセスに関する要求事

項を定めている。品質管理基準報告書第1号は、監査事務所がモニタリング及び改善プロセスに

関する情報を監査チームに伝達し、監査チームがその責任に応じて迅速かつ適切な措置を講じる

ことができるようにすることを求めている(品基報第1号第 46 項及び第 47 項参照)。

さらに、監査チームのメンバーが提供した情報は、監査事務所のモニタリング及び改善プロセ

スにおいて利用される場合がある。監査チームのメンバーは、監査を実施する際に職業的専門家

としての判断を行使し、職業的専門家としての懐疑心を保持及び発揮することにより、当該プロ

セスに関連する可能性のある情報に注意を払うことができる。

A110.監査事務所から伝達された情報、例えば、監査責任者や監査チームの他のメンバーが実施した

別の業務に関する発見事項、現地の監査事務所における発見事項又は企業の過年度の監査の検証

結果に関する情報は、監査業務に関連することがある。

A111.監査責任者は、監査事務所から伝達された、監査事務所のモニタリング及び改善プロセスから

の情報とその情報が監査業務にどのように影響を与えているかを検討し、識別された不備に対処

するために監査事務所によってデザイン及び適用された是正措置を考慮の上で、当該監査業務の

内容及び状況に関連する場合には、監査チームに伝達することがある。また、監査責任者は、個々

の監査業務において、例えば、以下の追加の是正措置が必要かどうかを判断することがある。

・ 監査人の利用する専門家の関与

・ 不備が識別された領域における指揮、監督及び査閲の強化とその内容、時期及び範囲の改善

識別された不備が監査業務の品質に影響を与えない場合(例えば、監査チームが利用しなかっ

たテクノロジー資源に関連する場合)、追加の措置が必要ではないことがある。

A112.監査事務所が定めた品質管理システムに不備が識別された場合であっても、個々の監査業務

が職業的専門家としての基準及び適用される法令等を遵守して実施されなかったこと、又は監査

意見の形成が当該状況において適切ではなかったことを必ずしも示すものではない。

《10.品質の管理と達成に対する全体的な責任》(第 40 項参照)

A113.品質管理基準報告書第1号は、監査事務所に対し、監査業務について監査チームが責任を理解

し果たすことに関する品質目標を設定することを求めている。さらに、品質管理基準報告書第1

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監基報 220

号は、監査業務の品質の管理と達成及び監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与するとい

う監査責任者の全体的な責任を、品質目標に含めることを求めている。

A114.第 40 項に対処する際に考慮する事項には、監査業務の内容及び状況を踏まえて監査責任者が

どのように本報告書の要求事項を遵守したか、及び A118 項に記載されているように、監査責任者

の監査業務の全過程を通じた関与が監査調書によりどのように裏付けられているかについての判

断が含まれる。

A115.監査責任者が十分かつ適切に関与していない可能性を示す兆候には、例えば、以下が含まれ

る。

・ 監査責任者が監査計画を適時に査閲していないこと(重要な虚偽表示リスクの評価及び当該

リスク対応手続の立案の査閲を含む。)。

・ 業務又は手続を割り当てられた者が、その責任及び権限の内容、自らに割り当てられた業務等

の範囲並びにその目的について適切に知らされておらず、また他の必要な指示及び関連する情

報が提供されていないことを示す証拠

・ 監査責任者が監査チームの他のメンバーを指揮及び監督し、またその作業を査閲したことを

示す証拠の欠如

A116.監査責任者は、自らの関与によって重要な判断及び到達した結論が適切であるかどうかを判

断する根拠が得られていない場合、第 40 項の要求事項を満たすことができない。このような状況

において必要な措置を規定する監査事務所の方針又は手続を考慮することに加え、監査責任者が

講じることがある適切な措置には、例えば、以下の事項が含まれる。

・ 監査計画の更新及び変更

・ 査閲の内容と範囲に関する計画を再評価し、また監査責任者の関与を増やすため、当該計画を

修正すること。

・ 監査事務所の品質管理システムの関連する側面について運用上の責任を割り当てられた専門

要員に対し、専門的な見解の問合せを行うこと。

《11.監査調書》(第 41 項参照)

A117.監査基準報告書 230 の A7 項に規定されているとおり、監査調書は、監査が一般に公正妥当と

認められる監査の基準に準拠して実施されたという証拠を提供するものである。しかしながら、

監査人が監査において検討した事項又は職業的専門家としての判断の全てを文書化することが必

要であるわけではなく、実務的でもない。さらに、監査人は、監査ファイルに含まれる文書によ

り、個々の監査基準報告書における要求事項に従っていることが示されているのであれば、別途、

チェックリストなどにより要求事項に従っていることを文書化する必要はない。

A118.監査責任者の関与及び第 40 項に基づく監査責任者の判断を裏付けることを含む本報告書の要

求事項の実施は、監査業務の内容及び状況に応じ、様々な方法で文書化される。例えば、以下の方

法がある。

・ 監査チームに対する指揮は、監査計画及びプロジェクト管理活動に関する監査調書へのサイ

ンを通じて文書化することができる。

・ 監査チームの正式な会議の議事録は、監査事務所の品質へのコミットメントを示す組織風土

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監基報 220

及び期待される行動に関し、監査責任者の明確で一貫した効果的なコミュニケーションと行動

の裏付けとなることがある。

・ 監査責任者と監査チームの他のメンバー、審査担当者との間の討議の議題、関連するサインの

記入及び業務に費やされた監査責任者の時間に関する記録は、監査業務の全過程を通じた監査

責任者の関与及び監査チームの他のメンバーへの監督の裏付けとなることがある。

・ 監査責任者及び監査チームの他のメンバーによるサインは、監査調書が査閲されたことを示

す裏付けとなる。

A119.監査業務の品質の達成にリスクをもたらす可能性のある状況に対処する場合、職業的専門家

としての懐疑心の保持及び発揮並びに監査人の検討の文書化が重要となることがある。例えば、

契約の新規の締結又は更新の前に監査事務所が認識していれば契約の締結を辞退する原因となる

ような情報を監査責任者が入手した場合(第 24 項参照)、監査調書には、監査チームがその状況

にどのように対処したかに関する説明を含めることがある。

A120.専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項に関する専門的な見解の

問合せを十分に網羅的かつ詳細に監査調書に記載することによって、以下の事項を理解すること

ができる。

・ 専門的な見解の問合せを行った事項の内容と範囲

・ 専門的な見解の問合せの結果、当該事項に関して行った判断とその根拠、得られた結論及びそ

の結論に従ってどのように業務を実施したか。

《12JP.監査事務所間の引継》(第 42JP 項及び第 42-2JP 項参照)

A121JP.監査人の交代は、監査基準報告書 900 に従うことになる。監査責任者は、監査人の交代に関

する監査業務の引継において専門職員を使用する場合には、監査チームが必要な適性、能力及び

独立性を保持するとともに、十分な時間を確保できることを確かめることに留意する。

《13JP.共同監査》(第 43JP 項参照)

A122JP.監査責任者は、他の監査事務所が共同監査に関する品質管理の方針又は手続を実施してい

るかどうかについて、監査契約の新規の締結及び更新の際並びに必要に応じて監査業務の実施の

過程において他の監査事務所の監査責任者に確かめることに留意する。

以 上

・ 本報告書(2022 年 10 月 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。

- 監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022 年7月

21 日改正)

・ 本報告書(2023 年1月 12 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。

- 監査基準報告書 600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023 年1月 12 日改正)

・ 本報告書(2024 年9月 26 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。

- 監査基準報告書 700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」(2024 年9月 26 日改正)

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監基報 220

【付録】監査チームの範囲に係るイメージ図(A17 項から A21 項参照)

サービス・プロバイダー(A17項)

① 監査事務所 (注1,2,3 )

監査事務所の社員 等及び専門職員

② 所属するネッ ト ワ ー ク 及 び ネットワーク・ ファーム (注1,2,3 )

③ 所属するネッ トワーク外の監 査事務所

(注3)

④ 所属するネッ トワーク外の専 門家(A21項)

⑤ ③、④以外の サービス・プロ バイダー (注3)

監査手続を 実施しない

新たに監査チーム に含まれることと なった。

新たに監査チーム に含まれることと なった。

監査手続を 実施する

専門要員

監査チームの範囲

(注1)①又は②においてサービス・デリバリー・センターが設立される場合、

そこに所属する者を含む(A18項)。

(注2)監査人の利用する内部の専門家(会計又は監査以外の領域)を含む。 (注3)会計又は監査の特殊な領域で専門知識を有する者を含む(A19項)。

監査チームではない ④の者、監査手続を実施しない者のほか、以下の者も 監査チームの範囲に含まれない。

専門的な見解の問合せにおける専門知識を有する者 (A19項)

審査担当者及び審査を実施する他の者 (A20項)

以 上

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