監査基準報告書 705 周知文書第2号
監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する周知文書
2 0 2 2 年 3 月 1 日
改正 2 0 2 2 年 1 0 月 1 3 日
日 本 公 認 会 計 士 協 会
監査・保証基準委員会
(周知文書:第 20 号)
昨今、過年度の会計不正が疑われるような状況の発生に際し、本来であれば当該事実関係の調査
が完了し、訂正すべき内容が確定した時点で過年度の有価証券報告書等の訂正報告書が提出される
べきところ、当該事実関係の調査完了前に、過年度の有価証券報告書等に係る訂正報告書が提出さ
れ、監査意見を不表明とする事例が生じています。そのような状況を踏まえ、監査業務に従事する会
員に、監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関して留意すべき事項
を以下に示します。
本周知文書は、一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成するものではなく、会員が遵守す
べき基準等にも該当しません。また、2022 年3月1日時点の最新情報に基づいています。
1.意見不表明の位置付け
監査人は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関す
る情報の信頼性を確保するため、監査人が自ら入手した監査証拠に基づき、監査意見を表明する
ことで、公共の利益に資することが求められています。
監査人は、入手した監査証拠の範囲では意見の表明ができないとの判断を下すこともあり得ま
すが、平成 14 年監査基準改訂にかかる前文や「「会計監査についての情報提供の充実に関する懇
談会」報告書」(2019 年1月 22 日公表)においては、「意見の表明ができないとの判断…中略…基
本的には、そのような判断は慎重になされるべき」、「意見を表明できないことは、…中略…極めて
例外的な状況」とされていることから、意見不表明は他の意見の種類と異なり、「極めて例外的な
状況」にのみ許容されるものであることに留意が必要です(注1)。
会計不正が疑われるような状況が発生し、事実関係調査のための体制構築等の対応が必要な際
には、有価証券報告書等の提出期限の延長が認められる場合もありますが、無制限に認められる
ものではないため、企業(当該企業の経営者及び監査役等。以下同じ。)と適時にコミュニケーシ
ョンを行い、会計不正是正に向けた企業の対応が迅速に行われるように促すことが、監査人に対
して期待されています(注2)。
2.訂正報告書の提出時期の考え方
金融商品取引法上、訂正報告書は「有価証券報告書の提出者が当該有価証券報告書及びその添
付書類のうち訂正を必要とするものがあると認めたとき」(金融商品取引法第 24 条の2において
- 1 -
準用される第7条第1項参照)に企業が提出することとされています。
事実関係調査のための体制構築等の対応を行った場合における一般的なケースでは、進行年度
の有価証券報告書等の提出期限までに全ての調査が完了し、訂正すべき内容が確定しているため、
当該提出期限までに過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出した上で、進行年度の有価証
券報告書等を提出することとなります(あるべきスケジュール)(注3)。
一方、延長後の有価証券報告書等の提出期限までに事実関係の調査が完了しない場合、当該提
出期限の時点では訂正すべき内容が確定していない状況であると考えられるため、事実関係の調
査が完了し、訂正すべき内容が確定した時点で、企業は、過年度の有価証券報告書等の訂正報告書
を提出することになると考えられます(注4)。
以上の取扱いに関して、監査人は、企業と適時にコミュニケーションを行い、企業が適切な対応
を行うよう促すことが期待されます。
なお、本取扱いにつきましては、関係者と協議済みであることを申し添えます。
最後に、新規の株式公開企業が増加傾向にありますが、監査法人・公認会計士には、資本市場の
ゲートキーパーとして、職業的懐疑心を発揮するとともに、企業の「不正を見抜く力の向上」が強
く期待されていることに改めて留意をお願いいたします(注5)。
(注1)監査基準前文「監査基準の改訂について(平成 14 年)」三9(2)②及び会計監査についての
情報提供の充実に関する懇談会「会計監査に関する情報提供の充実について― 通常とは異なる
監査意見等に係る対応を中心として ―」(平成 31 年 1 月 22 日公表)参照
(注2)金融商品取引法第 193 条の3第1項においては、監査証明を行うにあたって、特定発行者
における法令違反等事実を発見した時は適切な措置をとるべき旨を当該特定発行者に遅滞なく
通知することが求められています。また、同条第2項においては、法令違反等事実に係る法令違
反の是正その他の措置をとるべき期間を経過しても特定発行者が適切な措置を取らず、かつ、
法令違反等事実が特定発行者の財務計算に関する書類の適正性の確保に重大な影響を及ぼすお
それがあり、当該重大な影響を防止するために必要があると認めるときは当局に当該事項に関
する意見を申し出ることが求められています。
(注3)「金融商品取引法においては、過年度の財務諸表に対して重要な事項等を発見した場合、訂
正報告書の提出が求められていることから、一般的には、訂正報告書を提出せずに、過去の虚偽
表示を、当年度の財務諸表における比較情報を修正再表示することにより解消することはでき
ないと考えられている。」(監査基準報告書 300 実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイ
ダンス)」第 70 項及び【新起草方針に基づく改正版】「監査基準委員会報告書第 63 号『過年度
の比較情報-対応数値と比較財務諸表』」の前書参照)
(注4)進行年度の有価証券報告書等については、関係当局に照会を行った上で必要な対応を行う
ことが考えられます。
(注5)「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」論点整理-会計監査の信頼性確保に
向けて-(令和3年 11 月 12 日)
以 上
- 2 -
(参考)今後の取扱いのイメージ図
以 上
・ 本周知文書(2022 年 10 月 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。
- 監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022 年7月
21 日改正)
- 3 -