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実務対応報告第 34 号 債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務 等の計算における割引率に関する当面の取扱い

平成 29 年 3 月 29 日

企業会計基準委員会

実務対応報告第 37 号「実務対応報告第 34 号の適用時期に関する当面の取扱い」(2018 年

(平成 30 年)3 月 13 日に公表)により本実務対応報告の適用時期が変更されている。変更

後の適用時期については、実務対応報告第 37 号の定めが適用される。

また、本実務対応報告は、2019年7月4日までに公表された次の会計基準等による修正が反

映されている。

 企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」(2019 年 7 月 4 日改正)

目 的

1. 本実務対応報告は、退職給付債務、勤務費用及び利息費用(以下合わせて「退職給

付債務等」という。)の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見

込期間における利回りがマイナスとなる場合の割引率に関する当面の取扱いを示すこ

とを目的とする。

会計処理

2. 退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込

期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを

利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法による。

適用時期

3. 本実務対応報告は、平成 29 年 3 月 31 日に終了する事業年度から平成 30 年 3 月 30

日に終了する事業年度まで適用する。

議 決

4. 本実務対応報告は、第 357 回企業会計基準委員会に出席した委員 13 名全員の賛成に

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より承認された。

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結論の背景

経 緯

5. 平成 28 年 1 月 29 日に、日本銀行は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導

入することを決定した。これを受けて、同年 2 月 16 日から、金融機関が保有する日本

銀行当座預金のうち一定の部分に 0.1%のマイナス金利が適用されており、残存期間が

短期の国公債(以下「国債等」という。)のみならず、長期の国債等についてもマイナ

スの利回りが見受けられる。

6. これに関連して、当委員会は、平成 28 年 3 月に開催された第 331 回企業会計基準委

員会において、退職給付債務の計算における割引率に関して議論を行い、当該議論の

内容を周知するため、同月に議事概要を公表した。

7. また、平成 28 年 7 月に開催された第 340 回企業会計基準委員会において、公益財団

法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、マイナス金利に係る

種々の会計上の論点への対応について、必要に応じて適時に対応を図ることの依頼を

受けた。

これらを踏まえ、当委員会では、本実務対応報告において、必要と考えられる当面

の取扱いを示すこととし、平成 29 年 1 月に実務対応報告公開草案第 51 号「債券の利

回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取

扱い(案)」を公表して広く意見を求めた。本実務対応報告は、公開草案に対して寄せ

られた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至

ったものである。

会計処理

8. 企業会計基準第 26 号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」と

いう。)では、退職給付債務等の計算において割引率を用いることとされている(退職

給付会計基準第 16 項、第 17 項及び第 21 項)。この割引率に関して、退職給付会計基

準第 20 項では、「退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回り

を基礎として決定する。」とした上で、「割引率の基礎とする安全性の高い債券の利回

りとは、期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。」(退職給付会

計基準(注 6))とされている。

9. また、企業会計基準適用指針第 25 号「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以

下「退職給付適用指針」という。)第 24 項では、「退職給付債務等の計算(第 14 項か

ら第 16 項参照)における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定する

(会計基準第 20 項)が、この安全性の高い債券の利回りには、期末における国債、政

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府機関債及び優良社債の利回りが含まれる(会計基準(注 6))。優良社債には、例えば、

複数の格付機関による直近の格付けがダブル A 格相当以上を得ている社債等が含まれ

る。」とされている。

10. ここで、平成 20 年公表の企業会計基準第 19 号「『退職給付に係る会計基準』の一部

改正(その 3)」1において、一定期間の債券の利回りの変動を考慮して割引率を決定す

ることができるとする取扱いを削除して、期末における市場利回りを基礎として決定

される割引率を用いることとしている。この定めを退職給付会計基準(注 6)における

「期末における国債、政府機関債及び優良社債の利回り」に形式的に当てはめると、

プラスの利回りもマイナスの利回りもそのまま利用することになると考えられる。

しかしながら、現行の退職給付会計基準の基準開発において、債券の利回りがマイ

ナスとなることは想定していなかったと考えられるため、退職給付債務等の計算にお

いて、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末に

おいてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用するか、マイナスの利回

りをそのまま利用するかについては一義的には決まらず、いずれの方法を用いること

が適切かが論点となる。

11. この論点を検討するにあたって、退職給付適用指針第 95 項では「退職給付債務(及

び退職給付費用)の計算に用いる割引率は、貸借対照表日現在の退職給付債務を求め

るために用いるものであるから、金銭的時間価値のみを反映させるべきであり、した

がって、信用リスクフリーレートに近い「期末における安全性の高い債券の利回り」

を用いる」とされており、また、金銭的時間価値のみが反映された信用リスクフリー

レートとは、一般的に、信用リスクが存在しない状態で時の経過に応じて価値が増え

るレートを反映するものであると考えられる。この信用リスクフリーレートについて、

マイナス金利の状況下においてどのように考えるべきかについて整理が必要となる。

この点、信用リスクが存在しない状態においても、将来の価値が現在の価値よりも

低くなると市場が評価していることに鑑み、金銭的時間価値は時の経過に応じて減少

するものとして、信用リスクフリーレートはマイナスになり得るとの意見が聞かれる

一方で、現金を保有することによって現在の価値を維持することができることから、

金銭的時間価値は時の経過に応じて減少することはないものとして、信用リスクフリ

ーレートの下限はゼロになるとの意見が聞かれる。

12. また、退職給付会計基準第 22 項では「年金資産の額は、期末における時価(公正な

評価額をいう。ただし、金融商品については、算定日において市場参加者間で秩序あ

る取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る

価格(企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」第 6 項)とする。)により

1 当該会計基準は、その内容を退職給付会計基準に引き継いだ上で平成 24 年に廃止されている (退職給付会計基準第 40 項及び第 65 項)。

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計算する。」とされており、時価は市場の評価を反映することから、将来の価値が現在

の価値よりも低くなると市場が評価し、年金資産の評価にマイナス金利の影響が反映

されるときは、退職給付債務の評価にもマイナス金利の影響を反映させて、年金資産

の評価と退職給付債務の評価を整合させるべきであるとの意見が聞かれる。

一方、退職給付に係る負債は、退職給付債務から年金資産の額を控除した額(退職

給付会計基準第 13 項)とするが、これは表示上、相殺しているに過ぎないため、年金

資産の評価と退職給付債務の評価を整合させる必要はないとの意見が聞かれる。

13. さらに、現行の退職給付会計基準における退職給付債務の計算は、合理的に見込ま

れる退職給付の変動要因(予想される昇給等)を考慮して退職給付見込額を見積った

上で(退職給付会計基準第 18 項)、信用リスクフリーレートに近いと考えられる、期

末における安全性の高い債券の利回りで割り引く(退職給付会計基準第 16 項及び第 20

項)ことから、時価を求めるものではないと考えられるが、退職給付債務の算定にお

いて、企業固有の見積りをどのように反映すべきか、すなわち、現時点における負債

の金額は将来の見積り支払総額を超えることはないとの意見をどのように考えるかが

論点となる。

14. マイナス金利の経済的な性質が必ずしも明確ではない中、第 11 項から第 13 項に記

載したとおり、マイナス金利の状況下において様々な論点があり、これらをどのよう

に考えるかにより、割引率の基礎とする債券の利回りについて、下限としてゼロを利

用するか、マイナスの利回りをそのまま利用するかの結論が変わり得るものと考えら

れる。

本実務対応報告における取扱い

15. 割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りがマイナスと

なる場合の割引率に関する取扱いの検討にあたって、第 11 項から第 13 項に記載した

ような論点について解決を図るには、国際的な動向を踏まえることも有用と考えられ

るが、主に金融商品を中心とした欧州における議論では、現時点において統一的な見

解は定まっていない。

一方で、退職給付債務等の計算は、一般的に財務諸表に与える影響が大きく、本論

点については早急に取扱いを示すべきであるとの実務上の要請が聞かれる。

16. これらの状況及び現時点の国債等の各残存期間におけるマイナスの利回りの幅が大

きくはないことを踏まえ、本実務対応報告では、第 2 項に定める当面の取扱いを明ら

かにすることとした。

適用時期

17. 本実務対応報告は、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りを

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そのまま利用する方法のいずれも認めることを当面の取扱いとして定めたものであり、

平成 29 年 3 月 31 日に終了する事業年度から平成 30 年 3 月 30 日に終了する事業年度

までに限って適用することとした(第 3 項参照)。なお、平成 30 年 3 月 31 日以後に終

了する事業年度の取扱いに関しては、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイ

ナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法によることを定めたガイダン

スの公表に向けて、引き続き検討を行う。当該検討の進捗状況によっては、本実務対

応報告における取扱いを平成 30 年 3 月 31 日以後に終了する事業年度も継続すること

を検討する。

以 上

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