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実務対応報告第 41 号 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関 する取扱い

2021 年 1 月 28 日 企業会計基準委員会

目 的

1. 2019 年 12 月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第 70 号。以

下「改正法」という。)により、「会社法」(平成 17 年法律第 86 号)第 202 条の 2 にお

いて、金融商品取引法第 2 条第 16 項に規定する金融商品取引所に上場されている株式

を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金

銭の払込み等を要しないことが新たに定められた。

2. 本実務対応報告は、前項に記載した取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要し

ないで株式の発行等をする場合における会計処理及び開示を明らかにすることを目的

としている。

範 囲

3. 本実務対応報告は、第 1 項に記載した取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要

しないで株式の発行等をする取引に適用される。

用語の定義

4. 本実務対応報告における用語の定義は、次のとおりとする。

(1) 「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引」とは、会社法第 202 条の 2 に

基づいて、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等を

する取引をいう。

(2) 「取締役等」とは、会社法第 326 条に規定される取締役及び第 402 条に規定され

る執行役をいう。

(3) 「報酬等」とは、会社法第 361 条に規定される報酬、賞与その他の職務執行の対

価として株式会社から受ける財産上の利益をいう。

(4) 「金銭の払込み等」とは、会社法第 199 条に規定される募集株式と引換えにする

- 1 -

金銭の払込み又は財産の給付をいう。

(5) 「株式の発行等」とは、自社の新株の発行又は自己株式の処分をいう。

(6) 「割当日」とは、会社法第 202 条の 2 第 1 項第 2 号に基づいて定められる株式の

発行等が行われる日(会社法第 209 条第 4 項)をいう。

(7) 「事前交付型」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、対

象勤務期間の開始後速やかに、契約上の譲渡制限が付された株式の発行等が行わ

れ、権利確定条件が達成された場合には譲渡制限が解除されるが、権利確定条件が

達成されない場合には企業が無償で株式を取得する取引をいう。

(8) 「事後交付型」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、契

約上、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成さ

れた場合に株式の発行等が行われる取引をいう。

(9) 「付与日」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する契約が

企業と取締役等との間で締結された日をいう。

(10) 「権利確定日」とは、権利確定条件を達成するか否かが確定した日をいい、事前

交付型においては、譲渡制限が解除されるか否かが確定した日がこれにあたり、事

後交付型においては、株式の発行等が行われるか否かが確定した日がこれにあた

る。

(11) 「対象勤務期間」とは、株式と引換えに提供されるサービスの提供期間をいい、

通常は、契約において定められた期間となる。契約において対象勤務期間が定めら

れていない場合は、付与日から権利確定日までの期間を対象勤務期間とみなす。

(12) 「権利確定条件」とは、事前交付型においては譲渡制限が解除されるための条件

を、事後交付型においては株式の発行等が行われるための条件をいう。権利確定条

件には、勤務条件(本項(13))や業績条件(本項(14))がある。

(13) 「勤務条件」とは、取締役等の一定期間の勤務や職務執行に基づく条件をいう。

(14) 「業績条件」とは、一定の業績(株価を含む。)の達成又は不達成に基づく条件を

いう。

(15) 「公正な評価額」とは、市場価格(市場において形成されている取引価格、気配

値又は指標その他の相場)に基づいて、契約条件等を反映するように必要に応じて

調整を加えた合理的に算定された価額をいう。また、単位当たりの公正な評価額を

「公正な評価単価」という。

(16) 「没収」とは、事前交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによ

って、企業が無償で株式を取得することが確定することをいう。また、「失効」と

は、事後交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによって、取締役

等に株式が交付されないことが確定することをいい、「失効」と「没収」を合わせ

て「失効等」という。

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会計処理

事前交付型の会計処理 取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合の会計処理

5. 取締役等に対して新株を発行し、これに応じて企業が取締役等から取得するサービ

スは、その取得に応じて費用として計上する。

6. 各会計期間における費用計上額は、株式の公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎

とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額である。株

式の公正な評価額は、公正な評価単価に株式数を乗じて算定する。

7. 前項に定める株式の公正な評価単価は、付与日において算定し、原則として、その後

は見直さない。

また、失効等の見込みについては株式数に反映させるため、公正な評価単価の算定上

は考慮しない。

8. 第 6 項の株式数の算定及びその見直しによる会計処理は、次のように行う。

(1) 株式数は、付与された株式数(失効等を見込まない場合の株式数。以下同じ。)

から、権利確定条件(勤務条件や業績条件)の不達成による失効等の見積数を控除

して算定する。

(2) 付与日から権利確定日の直前までの間に、権利確定条件(勤務条件や業績条件)

の不達成による失効等の見積数に重要な変動が生じた場合には、原則として、これ

に応じて株式数を見直す。

株式数を見直した場合には、見直し後の株式数に基づく株式の公正な評価額に

基づき、その期までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額

を見直した期の損益として計上する。

(3) 権利確定日には、株式数を権利の確定した株式数(以下「権利確定数」という。)

と一致させる。

これにより株式数を修正した場合には、修正後の株式数に基づく株式の公正な

評価額に基づき、権利確定日までに費用として計上すべき額と、これまでに計上し

た額との差額を権利確定日の属する期の損益として計上する。

9. 第 5 項から第 8 項までの会計処理により年度通算で費用が計上される場合は対応す

る金額を資本金又は資本準備金に計上し、年度通算で過年度に計上した費用を戻し入

れる場合は対応する金額をその他資本剰余金から減額する。

当該会計処理の結果、会計期間末においてその他資本剰余金の残高が負の値となっ

た場合には、企業会計基準第 1 号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計

準」(以下「自己株式等会計基準」という。)第 12 項により会計処理を行う。

10. なお、四半期会計期間においては、第 5 項から第 8 項までの会計処理により計上さ

れる損益に対応する金額はその他資本剰余金の計上又は減額として処理する。当該会

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計処理の結果、四半期会計期間末においてその他資本剰余金の残高が負の値となった

場合、前項後段と同様に処理し、翌四半期会計期間の期首に戻入れを行う。

また、年度の財務諸表においては、前項の処理に置き換える。

11. 没収によって無償で株式を取得した場合は、企業会計基準適用指針第 2 号「自己株式

及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(以下「自己株式等会計適用指

針」という。)第 14 項により処理を行う。

取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合の会計処理

12. 割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資

本剰余金を減額する。なお、当該会計処理の結果、会計期間末においてその他資本剰余

金の残高が負の値となった場合には、自己株式等会計基準第 12 項により会計処理を行

う。

13. 取締役等に対して自己株式を処分し、これに応じて企業が取締役等から取得するサ

ービスは、第 6 項から第 8 項と同様にサービスの取得に応じて費用を計上し、対応す

る金額をその他資本剰余金として計上する。

14. 没収によって無償で株式を取得した場合は、自己株式等会計適用指針第 14 項の定め

によらず、本実務対応報告第 12 項により減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取

得した部分に相当する額の自己株式を増額し、同額のその他資本剰余金を増額する。

事後交付型の会計処理 取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合の会計処理

15. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する契約を締結し、これに応じ

て企業が取締役等から取得するサービスは、第 6 項から第 8 項と同様にサービスの取

得に応じて費用を計上し、対応する金額は、株式の発行等が行われるまでの間、貸借対

照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上する。

16. 割当日において、新株を発行した場合には、株式引受権として計上した額(前項参照)

を資本金又は資本準備金に振り替える。

取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合の会計処理

17. 第 15 項と同様に処理する。

18. 割当日において、自己株式を処分した場合には、自己株式の取得原価と、株式引受権

の帳簿価額との差額を、自己株式処分差額として、自己株式等会計基準第 9 項、第 10

項及び第 12 項により会計処理を行う。

その他の会計処理

19. 本実務対応報告に定めのないその他の会計処理については、類似する取引又は事象に

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関する会計処理が、企業会計基準第 8 号「ストック・オプション等に関する会計基準」

(以下「ストック・オプション会計基準」という。)又は企業会計基準適用指針第 11 号

「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「ストック・オプション

適用指針」という。)に定められている場合には、これに準じて会計処理を行う。

開 示

20. 年度の財務諸表において、次の事項を注記する。

(1) 事前交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において

権利未確定株式数が存在したものに限る。)

① 付与対象者の区分(取締役、執行役の別)及び人数

② 当該会計期間において計上した費用の額とその科目名称

③ 付与された株式数(当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株

式の種類別に記載を行う。④において同じ。)

④ 当該会計期間中に没収した株式数、当該会計期間中に権利確定した株式数並び

に期首及び期末における権利未確定残株式数

⑤ 付与日

⑥ 権利確定条件

⑦ 対象勤務期間

⑧ 付与日における公正な評価単価

(2) 事後交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において

権利未確定株式数が存在したものに限る。ただし、⑤を除く。)

① 付与対象者の区分(取締役、執行役の別)及び人数

② 当該会計期間において計上した費用の額とその科目名称

③ 付与された株式数(当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株

式の種類別に記載を行う。④、⑤において同じ。)

④ 当該会計期間中に失効した株式数、当該会計期間中に権利確定した株式数並び

に期首及び期末における権利未確定残株式数

⑤ 権利確定後の未発行株式数

⑥ 付与日

⑦ 権利確定条件

⑧ 対象勤務期間

⑨ 付与日における公正な評価単価

(3) 付与日における公正な評価単価の見積方法

(4) 権利確定数の見積方法

(5) 条件変更の状況

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21. 前項の注記事項に関する具体的な内容や記載方法の他、本実務対応報告に会計処理

の定めのない事項に係る注記については、ストック・オプション適用指針第 27 項、第

28 項(2)、第 29 項、第 30 項、第 33 項及び第 35 項の定めに準じて注記を行う。

22. 1 株当たり情報に関する注記において、事後交付型におけるすべての権利確定条件を

達成した場合に株式が交付されることとなる契約は、企業会計基準第 2 号「1 株当たり

当期純利益に関する会計基準」(以下「1 株当たり当期純利益会計基準」という。)第 9

項の「潜在株式」として取り扱い、潜在株式調整後 1 株当たり当期純利益の算定におい

て、ストック・オプションと同様に取り扱う。

また、株式引受権の金額は 1 株当たり純資産の算定上、企業会計基準適用指針第 4 号

「1 株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(以下「1 株当たり当期純利益適

用指針」という。)第 35 項の期末の純資産額の算定にあたっては、貸借対照表の純資産

の部の合計額から控除する。

適用時期等

23. 本実務対応報告は、改正法の施行日である 2021 年 3 月 1 日以後に生じた取引から適

用する。なお、その適用については、会計方針の変更には該当しない。

議 決

24. 本実務対応報告は、第 450 回企業会計基準委員会に出席した委員 14 名全員の賛成に

より承認された。

- 6 -

結論の背景

経 緯

25. 改正法の施行前においては、会社法第 199 条第 1 項の募集に係る新株の発行又は自

己株式の処分をしようとするときは、その都度、募集株式の払込金額又はその算定方法

を定めなければならないこととされている。そのため、取締役等の報酬等として株式を

交付しようとする株式会社においては、実務上、いわゆる現物出資構成により、金銭を

取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出

資財産として給付させることによって株式を交付することがされているが、このよう

な方法は技巧的であり、かつ、このように株式を交付した場合の資本金等の取扱いが明

確でないと指摘されていた。

そこで、改正法においては、より円滑に株式を報酬等として取締役等に交付すること

ができるように、上場会社は、取締役等の報酬等として新株の発行又は自己株式の処分

をするときは、金銭の払込み等を要しないこととされた(会社法第 202 条の 2 第 1 項

等)。

新株の発行により計上すべき資本金又は資本準備金の額は、原則として、新株の発行

に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額を基礎

として計算される(会社法第 445 条第 1 項から第 3 項まで)が、取締役等の報酬等とし

て金銭の払込み等を要しないで株式を発行する場合には、この規律を適用するのでは

なく、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行も踏まえた規律とすべきであると

されたことから、2019 年 12 月に公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基

準諮問会議に対して、新規テーマの提案がなされた。

これを受けて、2020 年 1 月に開催された第 424 回企業会計基準委員会において、基

準諮問会議より、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等

をする場合の会計上の取扱いの検討を求める提言がなされ、当委員会は、同年 2 月に開

催された第 425 回企業会計基準委員会において、新規テーマとすることを決定した。

本実務対応報告は、2020 年 9 月に公表した実務対応報告公開草案第 60 号「取締役の

報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」に対して寄せられた意見

を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったもので

ある。

26. なお、いわゆる現物出資構成による取引については、会計処理に関する定めはなく、

様々な実務が行われているものと考えられるが、本実務対応報告は基準諮問会議から

提言を受けた取引を対象としており、いわゆる現物出資構成による取引については適

用されない。ここで、本実務対応報告が対象とする取引は、会社法上、株式の無償発行

であるのに対して、いわゆる現物出資構成による取引は株式の有償発行であるなど、法

- 7 -

的な性質が異なる点がある。したがって、いわゆる現物出資構成による取引の会計処理

のうち払込資本の認識時点など、法的な性質に起因する会計処理については異なる会

計処理になるものと考えられる。

用語の定義

27. 本実務対応報告は、会社法第 202 条の 2 に基づく、取締役の報酬等として株式を無

償交付する取引に適用されることとしており(第 3 項参照)、会社法で規定されている

用語のうち、必要と考えられるものについて、本実務対応報告の用語の定義に含めてい

る。

28. また、費用の認識や測定については、ストック・オプション会計基準の定めに準じる

こととしており(本実務対応報告第 38 項参照)、ストック・オプション会計基準の用語

の定義のうち、必要と考えられるものについて、必要な修正を加えた上で、本実務対応

報告の用語の定義に含めている。

付与日

29. ストック・オプション会計基準第 2 項(6)では、「付与日」を「ストック・オプション

が付与された日をいう。会社法(平成 17 年法律第 86 号)にいう、募集新株予約権の割

当日(会社法第 238 条第 1 項第 4 号)がこれにあたる。」と定義し、付与日(会社法上

の割当日)を公正な評価単価の算定の基準日としている。

これは、付与したストック・オプションと企業が期待するサービスが契約成立の時点

において等価で交換されていると考え(ストック・オプション会計基準第 49 項)、また

付与日以後のストック・オプションの公正な評価単価の変動はサービスの価値とは直

接的な関係を有しないとの考えに基づくものである(ストック・オプション会計基準第

50 項)。

30. この点、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においても、ストック・オプ

ション会計基準における考え方と同様に、交付する株式とその対価である取締役等が

提供するサービスが等価で交換されているとみなすことが適切であると考えられ、そ

の等価であることを表す時点は企業と取締役等が合理的な意思をもって条件付の契約

を締結した時点であると考えられる。ここで、契約を締結した時点については、書面、

口頭を問わず、条件に実質的に合意した日になると考えられる。

31. なお、ストック・オプションでは企業と対象者との間で書面による契約が締結される

とは限らないことを踏まえ、ストック・オプション会計基準においては、付与日の時点

を会社法上の割当日としている。一方、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引

においては、通常は、企業と取締役等との間で書面による契約が締結されることが想定

されること、また、事後交付型においては、当初の時点においてストック・オプション

- 8 -

のような法令に基づいて設定する日がないことから、前項の考え方に従って、契約が締

結された時点を付与日とし、株式の公正な評価単価の算定の基準日とした(本実務対応

報告第 4 項(9)及び第 7 項参照)。

対象勤務期間

32. ストック・オプション会計基準第 2 項(9)では、「対象勤務期間」を「ストック・オプ

ションと報酬関係にあるサービスの提供期間であり、付与日から権利確定日までの期

間をいう。」と定義し、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき、

費用配分を行うこととしている。このように対象勤務期間を付与日から権利確定日ま

での期間としているのは、ストック・オプション会計基準公表当時の調査において、契

約上、権利確定日や対象勤務期間が示されていない事例が多く見られたことから、会計

基準において対象勤務期間を明示的に定めたものと考えられる。

33. この点、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、通常は、企業と

取締役等との間で書面による契約が締結されることが想定され(本実務対応報告第 31

項参照)、契約において「対象勤務期間」が定められていれば、当該期間において費用

配分を行うことが適切と考えられる。そこで、本実務対応報告においては、「対象勤務

期間」を、通常は契約において定められた期間となるとした。また、契約において対象

勤務期間が定められていない場合には、ストック・オプション会計基準と同様に、付与

日から権利確定日までの期間を対象勤務期間とみなすこととした(本実務対応報告第 4

項(11)参照)。

なお、対象勤務期間は、株式と引換えに提供されるサービスの提供期間であることか

ら、勤務条件や業績条件を考慮して条件を達成するために実質的に取締役等の勤務が

求められる期間と、契約において定められた期間や付与日から権利確定日までの期間

が異なる場合は、条件を達成するために実質的に取締役等の勤務が求められる期間が

対象勤務期間となると考えられる。

失効等

34. ストック・オプション会計基準第 2 項(13)では、「失効」を「ストック・オプション

が付与されたものの、権利行使されないことが確定することをいう。」と定義している。

ここで、事前交付型においては、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株

式を取得することから、失効という用語をそのまま用いることは適切ではないと考え

られる。よって、事前交付型については、権利確定条件が達成されなかったことによっ

て、企業が無償で株式を取得することが確定することを「没収」と定義した上で、事後

交付型における「失効」と合わせて「失効等」ということとした(本実務対応報告第 4

項(16)参照)。

- 9 -

会計処理

基本的な考え方

35. 我が国では、自社の株式オプションを報酬として用いる取引について、ストック・オ

プション会計基準があるが、自社の株式を報酬として用いる取引に関する包括的な会

計基準はない。

本実務対応報告の適用対象としている取締役の報酬等として株式を無償交付する取

引については、いわゆる事前交付型と事後交付型が想定されるが、自社の株式を報酬と

して用いる点で、自社の株式オプションを報酬として用いるストック・オプションと類

似性があると考えられることから、検討にあたっては、取締役の報酬等として株式を無

償交付する取引とストック・オプションとの比較を行っている。

36. まず、自社の株式オプションを報酬として用いるストック・オプションには次のよう

な特徴があると考えられる。

(1) 企業から取締役等や従業員に報酬として付与するものである。

(2) 企業は、取締役等や従業員に付与したストック・オプションのインセンティブ効

果により、取締役等や従業員から追加的なサービスの提供を期待する。

(3) 権利行使価格が時価未満の価格である場合の差額は、取締役等や従業員にとっ

てのストック・オプションの経済的価値となり、企業の株価に応じて取締役等や従

業員にとっての価値が変動する。

(4) 権利確定条件が達成されない場合、オプションを行使する権利を喪失し、また、

権利確定条件が達成された場合も権利が行使されるまでは自社の株式は交付され

ず、取締役等や従業員は株主としての権利を得ない。

37. 前項のような特徴に対して、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引との異

同は次のとおり整理される。

(1) 会社法における特則(第 202 条の 2)は、上場会社が自社の株式を取締役等に報

酬等として交付することを想定したものであり、報酬として付与するものである

点で、ストック・オプションと同様であると考えられる。

(2) 改正法において、取締役等への適切なインセンティブの付与のための規律の整

備の一環として、取締役等の報酬等に関する規律の見直しが行われており、インセ

ンティブ効果による追加的なサービスの提供を期待する点で、ストック・オプショ

ンと同様であると考えられる。

(3) 事前交付型、事後交付型いずれも、企業の株価に応じて取締役等にとっての経済

的価値が変動する点で、ストック・オプションと同様であると考えられる。

(4) 事後交付型では、権利確定条件が達成されない場合、取締役等は株式の交付を受

けることができず、株主としての権利を得ない点はストック・オプションと同様で

ある。

- 10 -

一方、事前交付型については、株式の譲渡が制限され、権利確定条件が達成され

るまでの間は、譲渡による経済的利益を享受することができない。ただし、株式の

割当日に株主となることから(会社法第 209 条第 4 項)、割当日から権利確定まで

の間も配当請求権や議決権等の株主としての権利を有することになり、その点で

はストック・オプションと異なる。

38. 前項のとおり、ストック・オプション及び事後交付型と、事前交付型では株主となる

タイミングが異なり、その差は提供されるサービスに対する対価の会計処理(純資産の

部の株主資本以外の項目となるか株主資本となるか。)に現れるものの、インセンティ

ブ効果を期待して自社の株式又は株式オプションが付与される点では同様であるため、

費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準の定めに準じることとし

た。

事前交付型の会計処理

取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合の会計処理

(報酬費用の認識及び測定)

39. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、株式を交付することに

よるインセンティブ効果によって、取締役等からサービスの提供を受けていると考え

られることから、ストック・オプション会計基準に準じて、サービスの取得に応じて費

用として計上することとし(本実務対応報告第 5 項参照)、費用の測定についても、株

式の公正な評価額に基づき行うこととした(本実務対応報告第 6 項から第 8 項参照)。

(払込資本の認識時点)

40. 事前交付型においては、割当日(第 4 項(6)参照)に取締役等は株主となり、譲渡が

制限されているものの、配当請求権や議決権等の株主としての権利を有することにな

る。ただし、割当日においては、資本を増加させる財産等の増加は生じていないため、

割当日においては払込資本を増加させず、取締役等からサービスの提供を受けること

をもって、分割での払込みがなされていると考え、サービスの提供の都度、払込資本を

認識することとした。

(払込資本の内訳項目)

41. 2020 年 11 月 27 日に公布された会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和 2 年

法務省令第 52 号)による改正後の会社計算規則(平成 18 年法務省令第 13 号)におい

ては、会社法第 202 条の 2 第 1 項の規定により募集株式を引き受ける者の募集を行う

場合において、当該募集株式を引き受ける取締役等が株式会社に対し当該募集株式に

係る割当日後にその職務の執行として当該募集株式を対価とする役務を提供するとき

は、各事業年度の末日(臨時決算日を含む。以下同じ。)において、取締役等が当該募

- 11 -

集において発行される新株を対価として当該株式会社に提供した役務の公正な評価額

のうち、直前の事業年度の末日から当事業年度の末日までの増加額に相当する資本金

又は資本準備金の額が増加することとされている(会社計算規則第 42 条の 2 第 1 項か

ら第 3 項)。

42. この点、会計上の資本金の額は、法律における資本金の額と合わせることとされてお

り、前項の会社計算規則における取扱いを踏まえ、年度の財務諸表においては、年度通

算で費用が計上される場合には、対応する金額を資本金又は資本準備金に計上するこ

ととした。一方、ストック・オプション会計基準の定めに準じて、権利確定条件(勤務

条件や業績条件)の不達成による失効等の見積数に重要な変動が生じた場合には、見積

数の変動に伴う差額を費用計上する(又は費用を戻し入れる)ことになり、年度通算で

過年度に計上した費用を戻し入れる場合もあると考えられ、その場合には、対応する金

額をその他資本剰余金から減額することとした(本実務対応報告第 9 項参照)。また、

四半期会計期間においては、その他資本剰余金の計上又は減額として処理することと

した(本実務対応報告第 10 項参照)。

(没収の会計処理)

43. ストック・オプションにおいては、権利確定条件の不達成により、失効した場合には

新株予約権の効力が無くなるが、事前交付型においては、権利確定条件が達成されない

場合には、企業が無償で株式を取得することになる(本実務対応報告第 4 項(7)及び(16)

参照)。自己株式の無償取得の会計処理は自己株式等会計適用指針第 14 項に定められ

ており、同項に従い会計処理は行わず自己株式の数のみの増加として処理することと

した(本実務対応報告第 11 項参照)。

取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合の会計処理

44. 自己株式等会計基準では、自己株式の処分については新株の発行と同様の経済的実

態を有すると整理している(自己株式等会計基準第 37 項)。よって、事前交付型で自己

株式の処分を行った場合の基本的な会計処理である報酬費用の認識及び測定や払込資

本の認識時点については、事前交付型で新株を発行した場合と同様とすることが考え

られる。

なお、報酬費用と自己株式の帳簿価額との差額は、自己株式処分差額として、その他

資本剰余金とすることが適切と考えられるため、自己株式の消滅の認識時点及び報酬

費用の認識時点においては、その他資本剰余金を増額又は減額することとしている。

45. ここで、割当日に自己株式の処分を行う場合、自己株式の帳簿価額の会計処理をどの

ように行うか、具体的には自己株式の消滅をいつ認識するかが論点となる。この点につ

いては、次の 2 つの方法が考えられる。

(1) 割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法

- 12 -

(2) 勤務が終了し権利が確定した時に自己株式の帳簿価額を減額する方法

46. 前項の(1)の方法は、株式が企業から取締役等に移転する事実に応じて自己株式の帳

簿価額を減額するものである。また、(2)の方法は、最終的に没収によって自己株式を

改めて取得する可能性があることから、没収となるか否かが確定するまでは、自己株式

を計上し、没収とならないことが確定した段階で、確定したもののみを減額するもので

ある。

前項の(1)と(2)のいずれの方法も採り得るが、本実務対応報告では、次の理由から

(1)の割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用し、割当日において、処分し

た自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額し、その後

の報酬費用の計上に応じてその他資本剰余金を計上することとした(本実務対応報告

第 12 項及び第 13 項参照)。

(1) 通常、自己株式の処分は対価の払込期日に認識することとしているが、これは会

社法上、自己株式の処分の効力が生じるのは払込期日とされているためである(自

己株式等会計適用指針第 34 項)。取締役の報酬等として株式を無償交付する場合

は、その効力が生じるのが「割当日」であることから、割当日に自己株式の帳簿価

額を減額する方法は、自己株式等会計適用指針の考え方と整合する。

(2) 勤務が終了し権利が確定した時に、自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用

した場合、自己株式を企業がもはや保有しておらず、譲渡制限付の株式の保有者と

して取締役等が株主になっているにもかかわらず、自己株式として計上され続け

ることになる。

(3) 自己株式は処分によって、処分の対価に相当する額の分配可能額が増加する効

果があると捉えられているが、勤務が終了し権利が確定した時に、自己株式の帳簿

価額を減額する方法を採用した場合、このような効果のない自己株式が計上され

続けることになるため、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがある。

なお、割当日にその他資本剰余金を減額することによって、その他資本剰余金の残高

が負の値になった場合、自己株式等会計基準第 12 項により、会計期間末において、そ

の他資本剰余金の残高を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)か

ら減額することになる(本実務対応報告第 12 項参照)が、自己株式等会計基準では、

このように払込資本に生じた毀損を留保利益で埋め合わせるのは、その期に完結する

処理としている(自己株式等会計基準第 43 項)。したがって、過年度にその他利益剰余

金で補てんを行った後、当年度に報酬費用の計上を行った場合(本実務対応報告第 14

項の没収による自己株式の無償取得により自己株式を増額した場合も含む。)でも、過

年度に充当した留保利益を元に戻すことはせず、その他資本剰余金を増額することと

した。

(没収の会計処理)

- 13 -

47. 前項のように、割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法によれば、割当日に自己

株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額することになる

が、権利確定条件が達成されずいったん取締役等に交付した株式を没収する場合、報酬

費用は計上されず、その他資本剰余金が増額されないこととなる。そのため、没収によ

る自己株式の無償取得を、自己株式等会計適用指針第 14 項に従って、自己株式の数の

みの増加として処理することとした場合、割当日に減額したその他資本剰余金が減額

されたままとなる。

この点、没収による自己株式の無償取得が生じたのは、取締役等から条件を満たすサ

ービスの提供が受けられず、当初意図した交換取引が成立しなかったことによるもの

と考えられることから、通常の自己株式の無償取得と同様に処理するのは適切ではな

いと考えられる。

よって、没収による自己株式の無償取得が生じた場合、割当日に減額したその他資本

剰余金を戻し入れる処理、すなわち、割当日に減額した自己株式の帳簿価額のうち、無

償取得した部分に相当する金額の自己株式を増額し、同額のその他資本剰余金を増額

することとした(本実務対応報告第 14 項参照)。

事後交付型の会計処理

48. 事後交付型については、対象勤務期間後に株式を交付するため、対象勤務期間中に計

上された費用に対応する金額は、将来的に株式を交付する性質のものとして累積させ、

権利確定日以後の割当日において払込資本に振り替えることになると考えられる。

49. 前項に記載した対象勤務期間中に費用計上し、対象勤務期間後に株式の発行等を行

う特徴は、ストック・オプションと同様であるため、報酬費用の相手勘定についても、

ストック・オプションにおける新株予約権と同様に、貸借対照表の純資産の部の株主資

本以外の項目に株式引受権として計上することとした(第 15 項及び第 17 項参照)。

50. 審議の過程で、現在行われているいわゆる現物出資構成による取引における実務で

は、負債として計上されている事例があることが指摘された。この点、取締役の報酬等

として株式を無償交付する取引では、取締役等が提供するサービスの対価として、自社

の株式を直接交付する点で支払義務がないなど、必ずしも負債としての性質を満たす

かどうかが明らかではないため、本実務対応報告の対象とする取引においては、前項の

とおりストック・オプションとの類似性を重視して純資産の部の株主資本以外の項目

として計上することとした。

その他の会計処理

51. 本実務対応報告では、費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準の

定めに準じることとしているが(本実務対応報告第 38 項参照)、本実務対応報告の適用

対象としている取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、本実務対応報告の

- 14 -

開発段階においては改正法の施行前であり、当該取引の詳細は定かではないことから、

基本となる会計処理のみを定めている。

そのため、本実務対応報告に定めのないその他の会計処理については、類似する取引

又は事象に関する会計処理が、ストック・オプション会計基準又はストック・オプショ

ン適用指針に定められている場合には、これに準じて会計処理を行うこととした(本実

務対応報告第 19 項参照)。

開示

注記

52. 本実務対応報告では、費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準の

定めに準じることとしており(本実務対応報告第 38 項参照)、注記の検討を行うにあた

ってもストック・オプション会計基準及びストック・オプション適用指針における注記

事項を基礎として、個々の注記事項を定めるとともに、本実務対応報告に定めのない事

項については、ストック・オプション適用指針の定めに準じて注記を行うこととした

(本実務対応報告第 21 項参照)。

また、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、権利行使が行われ

た場合にのみ株式が交付されるストック・オプションと異なり、権利行使のプロセスが

存在しない点や、事前交付型と事後交付型とでプロセスが異なる点を考慮して、ストッ

ク・オプション会計基準及びストック・オプション適用指針における注記事項のうち必

要と考えられる項目を定めている(本実務対応報告第 20 項参照)。

1 株当たり情報

53. 1 株当たり情報の算定にあたり、事前交付型においては、払込資本を増加させる前の

割当日において発行済株式総数又は自己株式数が変動するため、当該株式数の変動を

反映させるか否かが論点となる。この点については、取締役等は割当日に株主となり配

当請求権等の権利を得ることから、割当日における株式数の変動を 1 株当たり情報の

算定に反映することが適切と考えられる。

一方、事後交付型においては、株式が交付されるのは権利確定日以後になるが、株式

が交付されることとなる契約は、当初の契約時点において「その保有者が普通株式を取

得することができる権利若しくは普通株式への転換請求権又はこれらに準じる権利が

付された証券又は契約」としている「潜在株式」(1 株当たり当期純利益会計基準第 9

項)の定義を満たし、潜在株式調整後 1 株当たり当期純利益の算定において考慮するこ

とになると考えられる。

ここで、事後交付型において潜在株式調整後 1 株当たり当期純利益の算定上どのよ

うに考慮するかについては、事後交付型の対象勤務期間中に費用計上し、対象勤務期間

- 15 -

後に株式の発行等を行う特徴は、ストック・オプションと同様である(本実務対応報告

第 49 項参照)ため、潜在株式調整後 1 株当たり当期純利益の算定においてもストック・

オプションと同様に取り扱うこととした(本実務対応報告第 22 項参照)。よって、業績

条件が付されている場合は、条件付発行可能潜在株式と同様に取り扱い、勤務条件のみ

が付されている場合は、ワラントと同様に取り扱う(1 株当たり当期純利益適用指針第

53 項)ことになると考えられる。

54. また、1 株当たり純資産額の算定において、株式引受権は新株予約権や非支配株主持

分と同様に普通株主に関連しない項目であり、「期末の純資産額」の算定にあたっては、

貸借対照表の純資産の部の合計額から控除することになると考えられる(第 22 項参照)。

関連当事者との取引

55. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、取締役等との取引であり、企業会

計基準第 11 号「関連当事者の開示に関する会計基準」(以下「関連当事者会計基準」と

いう。)における関連当事者との取引に該当すると考えられる。一方で、関連当事者会

計基準第 9 項(2)において、「役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い」は開示

対象外としている。

ここで、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、取締役等への報

酬等としての性質に加え、株式が交付されることから資本取引の性質も有する。当該取

引を関連当事者会計基準第 9 項(2)の取引に該当する報酬等と捉えた場合、開示対象外

となると考えられるが、一方で、資本取引として捉えた場合、取引条件が一般の取引と

同様であることが明白である場合を除き、開示対象になると考えられる。この点、次の

理由から、関連当事者との取引に関する開示を行う必要性は必ずしも高くなく、報酬等

としての側面を重視して、関連当事者との取引に関する開示は要しないと考えられる。

(1) 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、権利行使時に権利

行使価格の払込みを受けて株式が交付されるストック・オプションとは異なり、交

付する株式についての払込みがサービスの提供のみによってなされ、報酬費用の

計上と株式の発行等(資本取引)が同額で行われるため、報酬費用とは別に株式の

発行等に関する関連当事者との取引に関する注記を行う必要性が乏しいと考えら

れること。

(2) 関連当事者との取引として開示が求められる項目のうち、取引の内容や取引金

額、取引条件に関する情報は、概ね、本実務対応報告における注記事項(本実務対

応報告第 20 項参照)として開示されることとなり、利用者が取引内容や条件を判

断するための一定の情報は提供されるものと考えられること。

適用時期等

- 16 -

56. 本実務対応報告は、改正法における会社法の規定に基づいて行われる取引を対象と

しており、改正法の施行前は取引が行われていないと考えられることから、改正法の施

行日である 2021 年 3 月 1 日以後に生じた取引から適用することとした。また、新たな

取引に対して適用するものであり、従来採用していた会計方針は存在しないことから、

会計方針の変更には該当しないことを明記した(第 23 項参照)。

- 17 -

設 例

次の設例は、本実務対応報告で示された内容についての理解を深めるために参考として

示されたものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情

等に応じて異なることに留意する必要がある。

[設例 1] 事前交付型

[設例 1-1]取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

A 社は、X1 年 6 月の株主総会において、会社法第 361 条に基づく報酬等としての募集株

式の数の上限等を決議し、同日の取締役会において、取締役 10 名に対して報酬等として会

社法第 202 条の 2 に基づく新株の発行を行うことを決議した。また、同年 7 月 1 日に取締

役との間で契約を締結し、同日に株式を割り当てるとともに、割り当てた株式に対して X4

年 7 月 1 日に解除される譲渡制限を付し、前日までに取締役が自己都合で退任した場合、

当該取締役に割り当てた株式はすべて会社が無償取得することとした。

前提は、次のとおりである。

① 株式の数:取締役 1 名当たり 1,000 株

② 取締役と契約を締結した X1 年 7 月 1 日を付与日とした。また、同日における株式

の契約条件等に基づく調整を行った公正な評価単価は、6,000 円/株であった。

③ X1 年 7 月の付与日において、X4 年 6 月末までに 1 名の自己都合による退任に伴う

株式の無償取得を見込んでいる。

④ X4 年 3 月期中に 1 名の自己都合による退任が発生した。X4 年 3 月末に将来の退任

見込みを修正し、X4 年 6 月末までに自己都合による退任が追加で 1 名発生するこ

とを見込んだ。

⑤ X4 年 4 月から X4 年 6 月末までに 2 名の自己都合による退任が発生した。

⑥ 割り当てた株式数及び年度ごとの無償取得した株式数の実績は次のとおりである。

割り当てた株式数 無償取得した株式数

摘 要

割当日

X2/3 期

X3/3 期

X4/3 期

X5/3 期

10,000

1,000 自己都合による退任 1 名

2,000 X4 年 6 月末までに自己都合

による退任 2 名

⑦ 報酬費用に対応して計上する払込資本は、全額資本金とする。

(1)

X2 年 3 月期

- 18 -

<新株の発行>

仕訳なし

・ 発行済株式総数が増加するが、資本を増加させる財産等の増加は生じていない

ため、払込資本は増加しない。

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

13,500,000

資本金

13,500,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-1 名) × 9 月/36 月 = 13,500,000 円

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。

・ 年度通算で費用が計上されるため、対応する金額を資本金として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X2 年 3 月末までの期間:9 月(X1 年 7 月-X2 年 3 月)

(2)

X3 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

18,000,000

資本金

18,000,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-1 名) × 21 月/36 月 - 13,500,000

円 = 18,000,000 円

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。

・ 年度通算で費用が計上されるため、対応する金額を資本金として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X3 年 3 月末までの期間:21 月(X1 年 7 月-X3 年 3 月)

(3)

X4 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

12,500,000

資本金

12,500,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-2 名) × 33 月/36 月 - 31,500,000

円(13,500,000 円 + 18,000,000 円) = 12,500,000 円

・ 期中において取締役 1 名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得

- 19 -

を行った。

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正し、X4 年 6 月末までに自己都合に

よる退任が追加で 1 名発生することを見込んだ。

・ 年度通算で費用が計上されるため、対応する金額を資本金として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X4 年 3 月末までの期間:33 月(X1 年 7 月-X4 年 3 月)

<没収による自己株式の無償取得>

仕訳なし

・ 取締役 1 名の退任に伴い、没収により自己株式 1,000 株を取得しているが、無

償であるため、自己株式の数のみの増加として処理する。

(4)

X5 年 3 月期

<報酬費用の戻入れ>

(仕訳)

その他資本剰余金

2,000,000

報酬費用

2,000,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-3 名) × 36 月/36 月 - 44,000,000

円(13,500,000 円 + 18,000,000 円 + 12,500,000 円) = △ 2,000,000 円

・ 期中において取締役 2 名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得

を行った。

・ 権利確定日において退任数を実績に修正した。

・ 年度通算で過年度に計上した費用を戻し入れるため、対応する金額をその他資

本剰余金から減額する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X4 年 6 月末までの期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

<没収による自己株式の無償取得>

仕訳なし

・ 取締役 2 名の退任に伴い、没収により自己株式 2,000 株を取得しているが、無

償であるため、自己株式の数のみの増加として処理する。

[設例 1-2]取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合

B 社は、X1 年 6 月の株主総会において、会社法第 361 条に基づく報酬等としての募集株

式の数の上限等を決議し、同日の取締役会において、取締役 10 名に対して報酬等として会

- 20 -

社法第 202 条の 2 に基づく自己株式の処分を行うことを決議した。また、同年 7 月 1 日に

取締役との間で契約を締結し、同日に株式を割り当てるとともに、割り当てた株式に対して

X4 年 7 月 1 日に解除される譲渡制限を付し、前日までに取締役が自己都合で退任した場合、

当該取締役に割り当てた株式はすべて会社が無償取得することとした。

前提は、次のとおりである。

① 株式の数:取締役 1 名当たり 1,000 株

② 取締役と契約を締結した X1 年 7 月 1 日を付与日とした。また、同日における株式

の契約条件等に基づく調整を行った公正な評価単価は、6,000 円/株であった。

③ 交付した自己株式(10,000 株)の帳簿価額の総額は 50,000,000 円である(単価

5,000 円/株)。

④ X1 年 7 月の付与日において、X4 年 6 月末までに 1 名の自己都合による退任に伴う

株式の無償取得を見込んでいる。

⑤ X4 年 3 月期中に 1 名の自己都合による退任が発生した。X4 年 3 月末に将来の退任

見込みを修正し、X4 年 6 月末までに自己都合による退任が追加で 1 名発生するこ

とを見込んだ。

⑥ X4 年 4 月から X4 年 6 月末までに 2 名の自己都合による退任が発生した。

⑦ 割り当てた株式数及び年度ごとの無償取得した株式数の実績は次のとおりである。

割り当てた株式数 無償取得した株式数

摘 要

割当日

X2/3 期

X3/3 期

X4/3 期

X5/3 期

10,000

1,000 自己都合による退任 1 名

2,000 X4 年 6 月末までに自己都合

による退任 2 名

(1)

X2 年 3 月期

<自己株式の処分>

(仕訳)

その他資本剰余金

50,000,000

自己株式

50,000,000

・ 割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のそ

の他資本剰余金を減額する。

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

13,500,000

その他資本剰余金

13,500,000

- 21 -

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-1 名) × 9 月/36 月 = 13,500,000 円

・ 期末時点において、将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。

・ 報酬費用に対応する金額をその他資本剰余金として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X2 年 3 月末までの期間:9 月(X1 年 7 月-X2 年 3 月)

(2)

X3 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

18,000,000

その他資本剰余金

18,000,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-1 名) × 21 月/36 月 - 13,500,000

円 = 18,000,000 円

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。

・ 報酬費用に対応する金額をその他資本剰余金として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X3 年 3 月末までの期間:21 月(X1 年 7 月-X3 年 3 月)

(3)

X4 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

12,500,000

その他資本剰余金

12,500,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-2 名) × 33 月/36 月 - 31,500,000

円(13,500,000 円 + 18,000,000 円) = 12,500,000 円

・ 期中において取締役 1 名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得

を行った。

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正し、X4 年 6 月末までに自己都合に

よる退任が追加で 1 名発生することを見込んだ。

・ 報酬費用に対応する金額をその他資本剰余金として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X4 年 3 月末までの期間:33 月(X1 年 7 月-X4 年 3 月)

<没収による自己株式の無償取得>

- 22 -

(仕訳)

自己株式

5,000,000

その他資本剰余金

5,000,000

・ 取締役 1 名の退任に伴い、没収による自己株式 1,000 株の無償取得が生じたた

め、割当日に減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取得した部分に相当す

る金額の自己株式(5,000 円/株 × 1,000 株 = 5,000,000 円)を増額し、同

額のその他資本剰余金を増額する。

(4)

X5 年 3 月期

<報酬費用の戻入れ>

(仕訳)

その他資本剰余金

2,000,000

報酬費用

2,000,000

(注)6,000 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-3 名) × 36 月/36 月 - 44,000,000

円(13,500,000 円 + 18,000,000 円 + 12,500,000 円) = △ 2,000,000 円

・ 期中において取締役 2 名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得

を行った。

・ 権利確定日において退任数を実績に修正した。

・ 費用の戻入れが生じており、対応する金額をその他資本剰余金から減額する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X4 年 6 月末までの期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

<没収による自己株式の無償取得>

(仕訳)

自己株式

10,000,000

その他資本剰余金

10,000,000

・ 取締役 2 名の退任に伴い、没収による自己株式 2,000 株の無償取得が生じたた

め、割当日に減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取得した部分に相当す

る金額の自己株式(5,000 円/株 × 2,000 株 = 10,000,000 円)を増額し、同

額のその他資本剰余金を増額する。

[設例 2] 事後交付型-取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合

C 社は、X1 年 6 月の株主総会において、会社法第 361 条に基づく報酬等としての募集株

式の数の上限等を決議し、同日の取締役会において、取締役 10 名に対して報酬等として、

一定の条件を達成した場合に、会社法第 202 条の 2 に基づく新株の発行を行うこととする

契約を取締役と締結することを決議し、同年 7 月 1 日に取締役との間で条件について合意

した契約を締結した。

- 23 -

前提は、次のとおりである。

① 割り当てる株式の数:取締役 1 名当たり 1,000 株

② 割当ての条件:X1 年 7 月 1 日から X4 年 6 月 30 日の間、取締役として業務を行う

こと

③ 割当ての条件を達成できなかった場合、契約は失効する。

④ 取締役と契約を締結した X1 年 7 月 1 日を付与日とした。また、同日における株式

の契約条件等に基づく調整を行った公正な評価単価は、4,500 円/株であった。

⑤ X1 年 7 月の付与日において、X4 年 6 月末までに 1 名の自己都合による退任に伴う

失効を見込んでいる。

⑥ X4 年 3 月期中に 1 名の自己都合による退任が発生した。X4 年 3 月末に将来の退任

見込みを修正し、X4 年 6 月末までに自己都合による退任が追加で 1 名発生するこ

とを見込んだ。

⑦ X4 年 4 月から X4 年 6 月末までに 2 名の自己都合による退任が発生した。

⑧ 権利確定した株式について、X4 年 7 月に取締役会決議により新株を発行している。

⑨ 割当予定の株式数及び年度ごとの失効した株式数の実績は次のとおりである。

割当予定の株式数

失効した株式数

摘 要

契約時

X2/3 期

X3/3 期

X4/3 期

X5/3 期

10,000

10,000

10,000

9,000

7,000

1,000 自己都合による退任 1 名

2,000 X4 年 6 月末までに自己都合

による退任 2 名

⑩ 新株の発行に伴って増加する払込資本は、全額資本金に計上する。

(1)

X2 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

10,125,000

株式引受権

10,125,000

(注)4,500 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-1 名) × 9 月/36 月 = 10,125,000 円

・ 期末時点において、将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。

・ 報酬費用に対応する金額を純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権と

して計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X2 年 3 月末までの期間:9 月(X1 年 7 月-X2 年 3 月)

- 24 -

(2)

X3 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

13,500,000

株式引受権

13,500,000

(注)4,500 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-1 名) × 21 月/36 月 - 10,125,000

円 = 13,500,000 円

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。

・ 報酬費用に対応する金額を株式引受権として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X3 年 3 月末までの期間:21 月(X1 年 7 月-X3 年 3 月)

(3)

X4 年 3 月期

<報酬費用の計上>

(仕訳)

報酬費用

9,375,000

株式引受権

9,375,000

(注)4,500 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-2 名) × 33 月/36 月 - 23,625,000

円(10,125,000 円 + 13,500,000 円) = 9,375,000 円

・ 期末時点において将来の退任見込みを修正し、X4 年 6 月末までに自己都合に

よる退任が追加で 1 名発生することを見込んだ。

・ 報酬費用に対応する金額を株式引受権として計上する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

・ 対象勤務期間のうち X4 年 3 月末までの期間:33 月(X1 年 7 月-X4 年 3 月)

(4)

X5 年 3 月期

<報酬費用の戻入れ>

(仕訳)

株式引受権

1,500,000

報酬費用

1,500,000

(注)4,500 円/株 × 1,000 株/名 × (10 名-3 名) × 36 月/36 月 - 33,000,000

円(10,125,000 円 + 13,500,000 円 + 9,375,000 円) = △ 1,500,000 円

・ 期中において取締役 2 名が自己都合により退任したため、権利確定日において

退任数を実績に修正した。

・ 費用の戻入れが生じており、対応する金額を株式引受権から減額する。

・ 対象勤務期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

- 25 -

・ 対象勤務期間のうち X4 年 6 月末までの期間:36 月(X1 年 7 月-X4 年 6 月)

<新株の発行>

(仕訳)

株式引受権

31,500,000

資本金

31,500,000

・ 権利確定条件の達成に伴い新株を発行した時点で、対応する株式引受権の残高

を資本金に振り替える。

以 上

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