監査基準報告書 540 周知文書第2号
新型コロナウイルス感染症に関連する監査に係る周知文書(その4)
2 0 2 0 年 4 月 2 2 日
改正 2 0 2 2 年 1 0 月 1 3 日
日 本 公 認 会 計 士 協 会
監査・保証基準委員会
(周知文書:第 13 号)
当協会は、新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項を順次公表している。今般、会員か
らの質問の多い政府や地方自治体の要請等により営業を停止した場合の固定費等の会計処理並びに銀行
等金融機関の自己査定及び償却・引当に関する留意事項を「新型コロナウイルス感染症に関連する監査
上の留意事項(その4)」として取りまとめた。
本周知文書は、一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成するものではなく、会員が遵守すべき基
準等にも該当しない。また、2020 年4月 22 日時点の最新情報に基づいている。
1.操業、営業停止中の固定費等の会計処理
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために政府や地方自治体による要請や声明等により、例え
ば、被監査企業が店舗の営業を停止又はイベントの開催を中止したときに、当該営業停止期間中に発
生した固定費や、当該イベントの開催の準備及び中止のために直接要した費用は、臨時性があると判
断される場合が多いと考えられる。したがって、その場合は、監査上、損益計算書の特別損失の要件を
満たし得る1ものとして取り扱うことができると考えられる。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために政府や地方自治体による要請や声明等により、
被監査企業の工場が操業を停止又は縮小したときの異常な操業度の低下による原価への影響について
も、臨時性があると判断される場合が多いと考えられる。したがって、その場合も、監査上、損益計算
書の特別損失の要件を満たし得るものとして取り扱うことができると考えられる。
いずれの場合も、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための政府や地方自治体による要請や声
明等に関連せず、経常的な経営活動に伴う業績不振等による損失が特別損失に計上されることがない
よう、監査上、留意が必要である。
なお、特別損失に計上している場合には、原則として、当該損失を示す適当な名称を付した科目をも
って掲記しなければならない(財務諸表等規則第95条の3)とされている2ため、監査上、留意しなけ
ればならない。
1 企業会計原則注解注 12 において、特別損益の内訳に臨時損益があげられており、「特別損益に属する項目であっても、 金額の僅少なもの又は毎期経常的に発生するものは、経常損益計算に含めることができる」とされている。 2 損益計算書の科目だけでは、その発生原因又は正確を示すことが困難な場合には、注記によって記載されているか確か める(財務諸表等規則ガイドライン 95 の2)。
- 1 -
2.銀行等金融機関の自己査定及び償却・引当について
銀行等金融機関の貸出金の自己査定及び償却・引当については、2019年12月に検査マニュアルが廃
止されたこと等に伴い、2020年3月17日付けで銀行等監査特別委員会報告第4号「銀行等金融機関の
資産の自己査定並びに貸倒償却及び貸倒引当金の監査に関する実務指針」(以下「4号報告」という。)
の改正を公表しており、2020年3月31日以後終了する事業年度から適用されている。4号報告に記載
のとおり、貸倒見積高の算定は、会計上の見積り(財務諸表の作成時に入手可能な情報に基づいて、そ
の合理的な金額を算出すること)の例示に該当し、経営者の判断によって行われるものであり、監査人
は、経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価すること
が求められている(監査基準報告書540「会計上の見積りの監査」第17項及び第18項)。銀行等金融機関
が貸倒引当金の見積りを行うにあたって、新型コロナウイルス感染症の影響について、将来見込み等必
要な修正及び過去の実績率の補正を行う場合も同様である。
新型コロナウイルス感染症の影響については、企業会計基準委員会から2020年4月10日付けで議事
概要が公表されており、今後の広がり方や収束時期等も含め、企業自ら一定の仮定を置くことになり、
企業が置いた一定の仮定が明らかに不合理である場合を除き、最善の見積りを行った結果として見積
もられた金額については、事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらないもの
と考えられるということが示されている。監査人は、銀行等金融機関の貸倒引当金の見積りの監査に
おいて、上記の企業会計基準委員会の議事概要を踏まえた「新型コロナウイルス感染症に関連する監
査上の留意事項(その2)」(2020年4月10日公表)を参考として対応することに留意する。また、監
査人は、金融機関の採用する貸倒引当金の計上に関する会計方針が、財務諸表利用者の理解に資するよ
うに、適正かつ十分に記載されているか検討しなければならない点は4号報告に記載のとおりである。
なお、「新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた事業者の資金繰り支援について」(麻生財
務大臣兼金融担当大臣談話(2020 年3月6日))において、「返済猶予等の条件変更した場合の債権
の区分など、個別の資産査定を含め、民間金融機関の判断を尊重する方針としていることから、この趣
旨も踏まえ、積極的に事業者支援に取り組んで頂くよう要請する」というメッセージが発出されてい
ることや、2020 年4月 20 日に閣議決定された緊急経済対策において、「民間金融機関による迅速かつ
柔軟な既往債務の条件変更や新規融資の実施等を要請し、検査・監督の最重点事項として取組状況を
報告徴求で確認し、更なる取組を促す。また、返済猶予等の条件変更を行った際の債権の区分など、個
別の資産査定における民間金融機関の判断を尊重し、金融検査においてその適切性を否定しないもの
とする。」とされていることにも留意する。
監査人は、銀行等金融機関の資産査定基準及び銀行法施行規則等におけるリスク管理債権(特に、貸
出条件緩和債権)の判定基準について、同大臣談話及び同緊急経済対策を理解した上で、適切に運用さ
れていることを確かめることが必要となることに留意する。
以 上
・ 本周知文書(2022 年 10 月 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。
- 監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022 年7月 21 日
改正)
- 2 -