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さない。
監査においては、適切な財務報告が最終的に行われるように、監査の過程において監査
人が指導・助言機能を発揮することが期待されている。監査済財務諸表に重要な虚偽表示
がない場合として、そもそも発見すべき重要な虚偽表示が財務諸表に存在していない場合
もあるが、監査の指導・助言機能により監査の過程で財務諸表が修正された結果である場
合もある。一方、監査済財務諸表に監査で発見されなかった重要な虚偽表示が事後的に発
覚した場合、当該監査が不適切な監査であった可能性があるが、直ちに職業的専門家として
の正当な注意を払って監査を実施しなかったと断定することはできない。
したがって、監査済財務諸表における未発見の重要な虚偽表示の有無を、監査品質の唯
一の評価尺度とすることは適切ではない。
被監査会社の状況は様々であり、監査意見を裏付ける十分かつ適切な監査証拠を入手し
たかどうかの判断は、監査人に委ねられる。二つの企業が全く同じ状況にあることはない
ため、監査人による監査手続の選択・適用と監査証拠の最終的な判断は、個々の状況によ
り異なる。したがって、監査品質の単純な比較は極めて困難である。
外部者である財務諸表の利用者は、通常、監査品質を直接的に評価する情報(例えば、
監査人が実施したリスク評価やリスク対応手続とその結果、及び監査人の発見事項並びに
指導・助言機能の発揮の状況等)を入手する機会はない。
7. 監査品質に対する見方は、監査の利害関係者の立場によって様々である。これは、それぞれ
の監査への直接の関与度合と、監査に関連する情報の入手可能性が大きく異なることと、監査
に求める価値が立場により異なるためである。例えば、監査済財務諸表の利用者は、監査人が
経営者の主張を批判的に検討するほど、また、監査証拠の入手量が増えるほど、監査品質は高
まると考えることがある。この見方からは、監査に投入される資源(量及び質の両方の観点か
ら)がより多ければ、監査品質は高くなる。一方、経営者は、監査費用を抑制し、監査の早期
完了と、日常業務への影響を最小限に留めることを重視することがある。この見方からは、監
査に投入される資源が最小化されているか否かに重点を置いて監査品質を評価することになる。
8. これら様々な見方を総合すると、高品質の監査は、有効で、かつ、適時に効率的に合理的な
報酬で実施される監査であると考えられる。しかしながら、「有効性」、「適時性」、「効率性」及
び「報酬の合理性」の判断には、主観が存在する。この判断を適切に行うためには情報が必要
であるが、監査人が実施した監査手続及び監査の発見事項について、監査の利害関係者の立場
により、入手し得る情報が異なる。
我が国において、会社法上の規定や監査の基準における監査役等との連携の規定に基づき、
監査人は監査役等に対して、監査計画や監査結果について報告することが求められている。し
たがって、監査役等は上述の監査に関する「有効性」、「適時性」、「効率性」及び「報酬の合理
性」をバランスよく評価する立場にあると考えられる。
9. 監査人が監査役等に対して監査品質に関する情報を提供し、監査品質の向上に向けて有意義
な協議を行う際には、監査業務レベル及び監査事務所レベルで監査品質に影響を及ぼす要因が
中心になると考えられる。
10. 本実務ガイダンスでは、監査の利害関係者間の適切な相互作用及び様々な背景的要因も監査