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企業がどのように事業上のリスクを識別し、評価し、対処しているかについての監査人による評
価は、監査人が財務諸表全体レベル及びアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを識別し
評価するのに役立つことがある(監基報 315 第 10 項(4)、第 15 項ほか)。
(2) 政府の措置が産業や経済事象に及ぼす間接的な影響
日本政府を含め、各国政府は、諸般の措置を実施している。監査人は、これらの措置により被
監査企業に関連する産業や経済事象に影響が及ぶ可能性を考慮し、当初のリスク評価について
修正が必要となるかどうか検討することを要する。日本政府による措置については、各省庁にお
いて公表がなされている
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(監基報 315 第 10 項(1)ほか)。
なお、リスク評価への影響が生じる状況として、例えば以下が想定される。
① 関連する地域に所在する主要な事業拠点、子会社、関連会社において、以下の事項又は事象
に対応する必要がある場合
ア.固定資産の減損(連結上ののれんも含む。)、税効果会計、棚卸資産の評価、債権の回収
可能性、事業撤退の影響の反映等といった会計上の見積り
イ.現地の事業拠点、子会社、関連会社におけるグループ財務諸表作成に必要な財務情報の作
成に関する遅延の発生
② 関連する地域に重要な取引先(原材料の調達先、得意先等)又は投資先がある場合の債権の
回収可能性、税効果会計、投融資・保証の評価等の会計上の見積り
3.会計上の見積りの監査
今般のウクライナをめぐる国際情勢による被監査企業の営む事業への上記2.に記載したよう
な影響によって、経営者による会計上の見積りの前提となる様々な仮定に影響が生じることが想
定される。また、現状においては、事象は帰結しておらず、見積りの不確実性が高まっていると考
えられる。監査人は、状況の変化が会計上の見積りのリスク評価に与える影響を考慮し、リスク評
価及び立案したリスク対応手続の修正が必要となるかどうか検討することを要する(監基報315第
30項及びA38項)。
監査人は、リスク評価手続において内部統制を含む企業及び企業環境を理解する際、会計上の
見積りに関連する重要な虚偽表示リスクを識別し評価する基礎を得るための事項として、(1)会計
上の見積りに関連して適用される財務報告の枠組みにおいて要求される事項、(2)経営者が、財務
諸表において認識又は開示するために、会計上の見積りが必要となる取引、事象及び状況を把握
する方法、(3)経営者が会計上の見積りを行う方法及びその基礎データについても理解することが
要求されている(監基報540第7項)。これら(1)から(3)に関しても改めて理解し、リスク評価の
更新を行うことが適切である。なお、基礎データとして用いられることが想定される各種経済指
1
「ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた対応について」(2022 年(令和4年)3月 14 日 金融庁)
2
「ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について」(2022 年(令和4年)3月 15 日
外務省 財務省 経済産業省)