
監基報 501 実1
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《Ⅱ 訴訟事件等のリスクの識別と評価》
《1.重要な虚偽表示リスクの識別と評価》
11.監査基準報告書 540 第 15 項により、監査人は監査基準報告書 315 で要求される重要な虚偽表
示リスクの識別と評価において(監基報 315 第 30 項及び第 33 項参照)、会計上の見積りの不確
実性の程度の評価が求められている。また、評価された重要な虚偽表示リスクに応じて、実施す
るリスク対応手続の種類、時期及び範囲を立案し実施することが求められている(監基報 330 第
5項参照)。
12.訴訟事件等は、損失の発生可能性や企業が被ることとなる損失の程度・範囲、訴訟事件等に関
連する会計上の見積りに関して、高度に法律上の専門的な判断が求められる場合があることや、
一般的に案件ごとの個別性が強いため画一的な尺度で判断することが困難なケースがある。その
ため、訴訟事件等に関しては、一般的に会計上の見積りの不確実性の程度が大きく、会計上の見
積りに関する重要な虚偽表示リスクが高くなることが多い。
13.上記のような訴訟事件等の性質に鑑み、訴訟事件等に関連する重要な虚偽表示リスクの識別と
評価に当たっての留意事項として以下が考えられる。
(1) 訴訟事件等を起因とする損害賠償等の損失が未確定である状況が存在するか。
訴訟事件等については、判決の確定、和解又はその他当事者間での合意・契約等による解決
が未だなされておらず、訴訟事件等を起因とする損失負担の発生がいまだ確定していないとい
う状況が存在するため、監査人は、企業にどのような訴訟事件等が存在し、それが現在どのよ
うな状況にあるのかを具体的に把握し確認することが重要である。
なお、損害賠償等による損失が確定している場合には、必要な会計上の手当てが行われるた
め、ここでの対象とはならない。
(2) 訴訟事件等が提起される原因となる事象がいつ発生したのか。
訴訟事件等の原因となった事象の発生時期はいつか(過去のどの事業年度に発生したのか、
当事業年度中に発生したのか、当事業年度の終了後なのか)を明確にすることが重要である。
長期にわたって継続している訴訟事件等についてはその推移に留意する。また、当該訴訟事件
等の発生が当事業年度終了後であるならば、その事象を後発事象として取り扱うこととするか
否か、又は財務諸表の修正を必要とするか注記等による開示事項とするか等に留意する。
(3) 企業にとって不利な結果となる可能性はどの程度か。
訴訟事件等が決着を見て、その結果、企業が損害賠償等や一定の行為の差止め等の履行を余
儀なくされることとなる可能性を監査人は検討することが重要である。
例えば、現在、企業の収益獲得の中心となっている主力製品の製造方法に関して、特許権の
侵害に当たるとして製造の差止め請求訴訟を提起され、係争中であるとした場合、裁判の審理
が進み結審が近くなってきたときに、その結果(勝訴すると見込むか否か、その根拠など)を
どのように想定するか、また、万一敗訴した場合には、どのような方策(控訴・上告するか、
判決を受け入れるか)を採る方針なのかといった点等についての企業の予測や見込みに関する
検討をいう。
(4) 企業が被ることとなる損失の程度・範囲又はその金額の見積りは合理的か。
企業の訴訟事件等について何らかの決着がつき、損害賠償等や一定の行為の差止め等の履行