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Ⅰ 本実務ガイダンスの目的
2009年1月から株式会社証券保管振替機構(以下「機構」という。)による上場会社の株券等の電子化
(株式等振替制度)が開始された。これに伴い、機構加入者(機構から保振株式等の振替を行うための
口座の開設を受けた証券会社等)が行う電子証明書の申請及び取得方法並びに残高証明書等
(注)
の請求及
び交付方法についても、原則として電子化されることとなった。
また、同時に機構加入者の財務諸表監査における監査人による残高証明書の請求・取得についても、
原則として電子化が適用されることとなった。
すなわち、機構加入者の財務諸表監査に当たり、監査人が実施する監査手続の一環として機構から機
構加入者の残高証明書を入手する場合に、従来の書面による残高証明書の回収に代えて、監査人は電子
的情報を機構に提示して残高証明書の請求を行い、その後機構からの残高証明書を電子的情報として回
収するというものである。今回の制度により、監査人による実質的な直接確認が実現されることになる。
この場合、取得された残高証明書は電子的監査証拠として位置付けられる。なお、残高証明書の請求・
取得の電子化については機構加入者の監査人に関係するものであり、一般事業会社の監査人が証券会社
等に対して送付する残高確認状については、従前のとおりであることに留意されたい。
当委員会は、数年来の監査証拠の電子化環境の拡大に鑑み、従来から電子的監査証拠の研究を実施し
ており、2007年には、カナダ勅許会計士協会による報告書「ELECTRONIC AUDIT EVIDENCE」を「電子的監
査証拠」として翻訳出版している。同書は電子的監査証拠に関する研究の理論編と位置付けられる。
今般機構の残高証明書等の電子化に伴い、監査人は、電子化された残高証明書の請求・発行手続等の
妥当性と電子的監査証拠としての適切性に留意する必要がある。このため、当委員会はこれらについて
検討し、本実務ガイダンスを提示することとなった。したがって、従来の理論編に対して、今般の本実
務ガイダンスは、電子的監査証拠の研究において初の実践編ということができる。
本実務ガイダンスは、次章「Ⅱ 監査人による残高証明書取得の概要」において、監査人が残高証明
書を得るまでの手続を概観し、「Ⅲ 残高証明書取得までの監査人の手続」において、監査人が実際に
「Target保振サイト」から残高証明書を取得する際の具体的な手続方法について解説している。「Ⅳ 残
高証明書の電子的監査証拠としての信頼性」において、従来の電子的監査証拠に関する理論編に照らし
て、今般の電子的監査証拠である残高証明書の財務諸表監査の証拠としての能力について検討している。
「Ⅴ 監査人の留意点」において、残高証明書の電子化に対応して監査人が実施すべき必須の手続・取
扱いについて記述している。そして、最終章「Ⅵ 今後の課題」において、将来に向けた検討課題につ
いても言及した。
監査人が機構加入者の財務諸表監査を実施するに当たっては、本実務ガイダンスを参考として機構の
残高証明書等の電子化制度について十分把握するとともに、被監査会社である機構加入者と協議し、制
度の円滑な利用と監査手続の適切な実施に留意されたい。
本実務ガイダンスは、機構から公表された資料等に基づき記述しており、機構の制度・システムの検
証を実施した結果によるものではない。したがって、機構における株券等の電子化又は残高証明書等の
電子化システムについての整備状況、運用状況の適切性等に言及したものではなく、またそれらを保証
(注)
本実務ガイダンスにおける「残高証明書等」とは、以下の6書類を指す。
「振替口座簿記録事項証明書」、「参加者口座簿写し」、「担保指定証券預託残高証明書」、
「振決国債預託残高証明書」、「参加者基金預託残高証明書」、「外国株のみの残高表」