監基報 520
監査基準報告書520
分析的手続
2 0 1 1 1 2 2 2
改正 2 0 1 9 1 2
最終改正 2 0 2 2 1 0 1 3
監査・保証基準委員会
22
項番号
本報告書の範囲及び目的
1.本報告書の範囲 ...................................................................1
2.本報告書の目的 ...................................................................2
3.定義 .............................................................................3
要求事項
1.分析的実証手続 ...................................................................4
2.全般的な結論を形成するための分析的手続 ...........................................5
3.分析的手続の結果の調査 ...........................................................6
適用指針
1.分析的手続の定義 ................................................................A1
2.分析的実証手続 ..................................................................A4
(1) アサーションに対する特定の分析的手続の適切性 ..................................A6
(2) データの信頼性 ...............................................................A11
(3) 推定が十分に高い精度であるかどうかについての評価 .............................A14
(4) 計上された金額と推定値との許容可能な差異 .....................................A15
3.全般的な結論を形成するための分析的手続 .........................................A16
4.分析的手続の結果の調査 .........................................................A19
適用
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《Ⅰ 本報告書の範囲及び目的》
《1.本報告書の範囲》
1.本報告書は、査人による実証手続としての分析的手(以下「分析的実証手続」という。
利用に関する実務上の指針を提供するものである。本報告書はまた、監査人が財務諸表に関する
全般的な結論を形成する際に役立つ、監査の最終段階の分析的手続の実施に関する実務上の指針
も提供する。監査基準報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」はリスク評価手続として
の分析的手続の利用に関する実務上の指針を提供する(監基報315第13項(2)参照)監査基準報告
書330「評価したリスクに対応する監査人の手続」は、評価したリスクに対応する監査手続の種類、
時期及び範囲に関する要求事項及び指針を記載している。これらの監査手続は分析的実証手続を
含むことがある(監基報330第5項及び第17項参照)
《2.本報告書の目的》
2.本報告書における監査人の目的は、以下を行うことである。
(1) 分析的実証手続を利用する場合に、適合性と証明力のある監査証拠を入手すること。
(2) 監査の最終段階において、企業に関する監査人の理解と財務諸表が整合しているかどうか
ついて、全般的な結論を形成するために実施する分析的手続を立案し実施すること。
《3.定義》
3.本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。
「分析的手続」-財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定され
る関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいう。分析的手続には、他の
関連情報と矛盾する、又は監査人の推定値と大きく乖離する変動や関係の必要な調査も含まれる
(A1項からA3項参照)
《Ⅱ 要求事項》
《1.分析的実証手続》
4.監査基準報告書330に従った実証手続として、単独で又は詳細テストとの組合せにより、分析的
実証手続を立案し実施する場合に、監査人は以下を行わなければならない(A4項及びA5項参照。
監基報330第17項参照)
(1) 特定のアサーションに関して評価した重要な虚偽表示リスクと対応する詳細テスト(該当
る場合)を考慮に入れ、これらのアサーションに対して特定の分析的実証手続が適切かどうか
を判断すること(A6項からA10項参照)
(2) 利用可能な情報の情報源、比較可能性及び性質と目的適合性並びに作成に係る内部統制を
慮に入れて、計上された金額又は比率に対する監査人の推定に使用するデータの信頼性を評価
すること(A11項からA13項参照)
(3) 計上された金額又は比率に関する推定を行い、当該推定が、個別に又は集計して重要な虚
表示となる可能性のある虚偽表示を識別するために十分な精度であるかどうかを評価すること
(A14項参照)
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(4) 計上された金額と監査人の推定値との差異に対して、第6項により要求されるような追加
な調査を行わなくても監査上許容できる差異の金額を決定すること(A15項参照)
《2.全般的な結論を形成するための分析的手続》
5.監査人は、監査の最終段階において、企業に関する監査人の理解と財務諸表が整合しているこ
とについて全般的な結論を形成するために実施する分析的手続を立案し、実施しなければならな
い(A16項からA18項参照)
《3.分析的手続の結果の調査》
6.本報告書に基づき実施する分析的手続により、他の関連情報と矛盾する、又は推定値と大きく
乖離する変動若しくは関係が識別された場合、監査人は、以下を行うことにより当該矛盾又は乖
離の理由を調査しなければならない。
(1) 経営者への質問及び経営者の回答に関する適切な監査証拠の入手
(2) 状況に応じて必要な他の監査手続の実施(A19項及びA20項参照)
《Ⅲ 適用指針》
《1.分析的手続の定義》(第3項参照)
A1.分析的手続は、企業の財務情報と、例えば、以下の情報との比較についての検討を含む。
比較可能な過年度情
予算や見込みなどの企業の業績予想、又は減価償却の見積りなどの監査人の推定
業界情報(例えば、企業の売掛金回転率についての業界平均、又は同程度の規模の同業他社
との比較)
A2.分析的手続は、例えば、以下の関係についての検討も含む。
企業の実績が示すパターンに基づいて一定の推定が可能な財務情報の構成要素間の関係(例
えば、売上総利益率)
財務情報と関連する非財務情報との間の関係(例えば、給与と従業員数)
A3.多様な手法が分析的手続を実施するために利用される。これらの手法は、単純な比較の実施か
ら高度な統計的手法を用いた複雑な分析の実施まで多岐にわたる。分析的手続は、連結財務諸表、
構成単位及び情報の個々の構成要素に適用される
《2.分析的実証手続》(第4項参照)
A4.アサーション・レベルでの監査人の実証手続は、詳細テスト、分析的実証手続又はその両方の
組合せである。分析的実証手続の利用を含め、実施する監査手続は、アサーション・レベルの監
査リスクを許容可能な低い水準に抑えるために、利用可能な監査手続の有効性及び効率性につい
ての監査人の判断に基づいて決定される。
A5.監査人は、分析的実証手続を実施するために必要な情報の利用可能性及び信頼性並びに企業が
実施した分析的手続の結果に関して、経営者に質問することがある。監査人は、経営者が実施し
た分析的手続の結果及び利用したデータが適切であるという心証を得た場合、当該分析結果及び
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データを利用することが効果的なことがある。
《(1) アサーションに対する特定の分析的手続の適切性》(第4項(1)参照
A6.一般的に、取引量が多く予測可能な取引に対して、分析的実証手続はより適合している。計画
した分析的手続は、反証がない限り、データ間の関係が存在し継続するという推定に基づいて実
施される。しかしながら、特定の分析的手続が適切かどうかは、監査人が実施する評価、すなわ
ち、個別に、又は集計した場合に重要な虚偽表示となる可能性がある虚偽表示を発見するのに有
効かどうかに関する評価に依存する。
A7.ある場合においては、単純な計算手法であっても、分析的手続として有効であることがある。
例えば、年度を通じて、給与月額及び従業員数が明らかである場合、監査人はこのデータを利用
して年度の給与合計を高い精度で見積もることができる。それによって、重要な財務諸表項目に
対して監査証拠を入手し、給与に関して詳細テストを実施する必要性を低くすることがある。ま
た、例えば、監査人が利用できると判断した一般に広く認知されている比率などの指標が存在す
る場合、計上された金額の一定の合理性を裏付ける証拠を入手するために、分析的実証手続にそ
の比率を有効に利用することができる。
A8.分析的手続の種類により入手する保証の水準は様々である。例えば、部屋当たりの平均賃料、
部屋数及び空室率等の要素を考慮し、それらを適切に検討する場合には、建物に関する賃貸収入
を見積もる分析的手続によって、心証を形成するに足る証拠を入手することができ、詳細テスト
による追加的な検討の必要性がなくなることがある。一方、売上高を確かめる手段としての売上
総利益率の計算や比較のみでは、心証を形成するに足る監査証拠を入手できないことがあるが、
その他の監査手続と組み合わせて利用する場合には、その他の手続により入手した監査証拠を補
完することがある。
A9.特定の分析的実証手続が適切かどうかの判断は、アサーションの種類と、監査人の重要な虚偽
表示リスクの評価によって影響を受ける。例えば、販売プロセスの一部の内部統制に不備がある
場合、監査人は、売上に関連するアサーションに対して、分析的実証手続よりも詳細テストに依
拠する程度を高めることがある。
A10.また、詳細テストが同じアサーションに対して実施される場合に、特定の分析的実証手続が適
切であることがある。例えば、売掛金勘定残高の評価に係るアサーションについて監査証拠を入
手する場合、監査人は、売掛金の回収可能性を判断するために、貸借対照表日後の売掛金の回収
に関する詳細テストに組み合わせて、取引先ごとの残高や回転日数の前期比較などの分析的手続
を実施することがある
《(2) データの信頼性》(第4項(2)参照)
A11.データの信頼性は、その情報源及び性質によって影響を受けるとともに、そのデータを入手す
る状況に依存する。したがって、分析的実証手続の立案のために、データが信頼できるかどうか
を判断する場合に検討する事項には以下が含まれる。
(1) 利用可能な情報の情報源(例えば、情報は、企業外部の独立した情報源から入手される場合、
より信頼できることがある(監査基準報告書500「監査証拠」のA31項参照)
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(2) 利用可能な情報の比較可能性(例えば、市場に関する一般的なデータは、特定領域の製品
生産して販売する企業のデータと比較できるようにするため、調整が必要となることがある。
(3) 利用可能な情報の性質及び目的適合性(例えば、予算が達成すべき目標ではなく予想され
結果として策定されているかどうか。
(4) 網羅性、正確性及び正当性を確保するように整備された情報の作成に関する内部統制(例
ば、予算の編成、実績との比較検討及び見直しについての内部統制)
A12.監査人は、評価したリスクに対応する分析的実証手続を実施するに当たって、利用する情報の
作成に関する内部統制があれば、当該内部統制の運用評価手続の実施を検討することがある。当
該内部統制が有効である場合、一般的にその情報の信頼性は高くなり、監査人は、結果として分
析的実証手続においてより強い心証を得ることができる。非財務情報に関する内部統制の運用状
況の有効性の検討は、多くの場合、その他の運用評価手続と一緒に行われる。例えば、企業は請
求書発行に係る内部統制を販売数量の記録に係る内部統制と合わせて構築することがある。この
場合、監査人は請求書発行に係る内部統制と一緒に販売数量の記録に係る内部統制の運用評価手
続を行うことがある。また、監査人はその情報について既に監査手続を実施しているかどうかを
確かめることがある。査基準報告書500は、分析的実証手続のために利用される情報について実
施すべき監査手続の決定に関する要求事項と指針を提供している(監基報500第9項参照)
A13.監査人が分析的実証手続を、企業の期末の財務諸表について実施する場合も、期中に実施し、
さらに残余期間についても実施することを計画している場合も、A11項(1)からA11項(4)に記載さ
れている事項を検討する。監査基準報告書330は期中に実施する実証手続についての要求事項と
指針を提供している(監基報330第21項及び22項参照)
《(3) 推定が十分に高い精度であるかどうかについての評価》(第4項(3)参照)
A14.他の虚偽と集た場に重な虚表示なるとがる虚示を別すため
分に精度推定行うとがきるどうにつての人の価は以下事項含む
分析的実証手続において推定する結果に関する予測の正確性(例えば、監査人は、研究開発
費や広告宣伝費のような裁量により支出できる費用の比較よりも、売上総利益率の期間比較に
おいて、より高い一貫性を期待することがある。
情報を細分化できる程度(例えば、分析的実証手続は、企業の財務諸表全体に適用するより
も、個別の事業部門に関する財務情報や多角的な企業の構成単位の財務諸表に適用する方がよ
り効果的である場合がある。
財務情報と非財務情報の両方の利用可能性(例えば、監査人は、予算や見込みなどの財務情
報と、生産数量や販売数量などの非財務情報が、分析的実証手続を立案するために利用可能で
あるかどうかを考慮することがある。当該情報が利用可能である場合、監査人は、A11項及びA12
項において記載されているような情報の信頼性も検討することがある。
《(4) 計上された金額と推定値との許容可能な差異》(第4項(4)参照
A15.推定値との差異について、追加的な調査をせずに許容可能とするかどうかの監査人の判断は、
個別に、又は他の虚偽表示と集計した場合に重要な虚偽表示となる可能性を考慮に入れて行われ
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るが、重要性と手続から得ようとする保証水準によって影響を受ける(監査基準報告書320「監査
の計画及び実施における重要性のA11項参照)監査基準報告書330は、評価した重要な虚偽表示
リスクの程度が高いほど、より確かな心証が得られる監査証拠を入手するよう監査人に要求して
いる(監基報330第6項(2)参照)したがって、評価したリスクが高くなるのに応じて、確かな心
証が得られる証拠を入手するため、調査をせずに許容可能と考えられる差異は減少する(監基報
330のA18項参照)
《3.全般的な結論を形成するための分析的手続》(第5項参照)
A16.第5項に従って立案され実施された分析的手続の結果から得られた結論は、財務諸表の個別
構成単位又は構成要素について監査中に形成された結論を裏付けることが意図されている。これ
は、監査人が意見表明の基礎となる結論を導くのに役立つ。
A17.第5項に従って実施された分析的手続の結果、これまで認識していなかった重要な虚偽表示
スクを識別することがある。このような状況において、監査基準報告書315は、査人の重要な虚
偽表示リスクの評価を修正し、これに応じて計画したリスク対応手続も修正するように監査人に
要求している(監基報315第36項参照)。
A18.第5項に従って実施される分析的手続は、リスク評価手続として利用される手続と同様であ
場合がある。
《4.分析的手続の結果の調査》(第6項参照)
A19.経営者の回答に関連する監査証拠は、企業及び企業環境に関する監査人の理解を考慮に入れて、
監査の過程で入手した他の監査証拠とともに、当該回答を評価することにより入手されることが
ある。
A20.例えば、経営者が説明できない場合や経営者の回答に関連して入手した監査証拠と照らして
営者の説明が不適切と考えられる場合には、他の監査手続を実施する必要性が生じることがある。
《Ⅳ 適用》
本報告書(2011年12月22日)は、2012年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以
後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。
本報告書(2019年6月12日)は、2020年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日
以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。ただし、2019年4月1日以後開始
る事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から早期適用するこ
とができる。
本報告書(2022 10 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。
監査基準報告書(序「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022 年7
21 日改正)