
- 56 -
当者の処理した売上伝票について、会社に必要な訂正を行うよう求めることができます。
第3の手順は追加サンプルを抽出し、再度判定を実施することです。この手順は特に第
2の手順の後で実施されると有効ですがサンプル数が小さいサンプリング・プランで判定
を行った場合には、先の例でも示したように優良な母集団でもかなり高い確率で不合格と
判定される可能性があるため、直ちにこの手順に入ることも考えられます。
例えば、先の例でサンプル数100、合格判定数1としてサンプル調査を行ったところ、
サンプルの中の誤謬数が2となり母集団は不合格と判定されました。したがって、監査人
は更に60の追加サンプルを抽出し、サンプル数160、合格判定数3として抜取り検査
を続行します。
第4の手順は、取引記録の監査の過程で発見された誤謬の内容に応じて、財務諸表項目
の監査の時期や方法、範囲を変更することです。内部統制の準拠性の調査の目的は、監査
人が会社の内部統制にどの程度依存できるかを判定することにあります。不合格となった
母集団について監査人が上記の手続を行った後も、なお満足する状態に至らないと判断し
た場合には、財務諸表項目の監査において試査の範囲を相当程度拡大する必要があります。
6.採択サンプリングと監査適用上の諸問題(アーキンの批判)
採択サンプリングを監査に適用する場合の問題点について、ハーバート・アーキンの見
解を紹介しておきましょう。アーキンの批判は品質管理用に開発された抜取り検査表を、
そのまま監査に適用することに対する警告であると思われます。したがって、監査のため
に採択サンプリングを適用する場合には、これらの諸点について十分配慮することが必要
でしょう。
(1)品質管理上の抜取り検査は、一定期間の一連のロットに継続して適用されるのに対
して、監査における抜取り検査は各監査のたびに1回適用されるだけです。
(2)品質管理上の抜取り検査は購入部品(原料、素材等)の中の特別に不良なロットを
棄却することであり、通常の不良率を含むロットや、少数の特別に不良なロットを受け入
れることは仕方がないとされています。品質管理上はこのような危険度をあらかじめ経済
計算できますし、また、品質管理の目的は多くのロットについて平均的に一定水準の品質
を保てば良いのです。
(3)合格、不合格を判定するための誤謬率を品質管理上は一定率として物理的(長さ、
重さ、厚み)に明確に決定できますが、監査上の最大許容誤謬率は発見された誤謬の内容
や金額に応じて判断を異にし、一定率として明確に示しがたいのです。
(4)監査の目的は内部統制の有効性の程度を評価することにあり、母集団を一定の基準
に基づき、合格、不合格に判別することではありません。
(5)品質管理上は許容誤謬率の決定に基づくロットの棄却や危険度を、経済計算するこ
とができます。したがって、検査費用とロット棄却のコスト等を勘案して、最も経済的と
判断される誤謬率の選択を行うことができますが、監査ではそのような経済計算を行って、
サンプル数や合格判定数を決定することはできません。
(6)品質管理用の抜取り検査表は、通常αリスクを5%、βリスクを10%として作成
されていますが、この方式は必ずしも監査人の要求と一致するものではありません。ハー
バート・アーキンはこのような理由から、監査における採択サンプリングの適用性に疑問
を示しているのです。
7.採択サンプリングの実用性
品質管理用の採択サンプリングの方法を直ちに監査に適用することは、アーキンの批判