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監査基準報告書 540 実務ガイダンス第1
金融商品の監査における特別な考慮事項(実務ガイダンス)
2 0 1 3 3 0
改正 2 0 1 5 2 9
改正 2 0 2 2 1 6
最終改正 20 2 2 1 0 13
監査・保証基準委員会
10
項番号
序説 ........................................................................... 1
第Ⅰ部 金融商品についての一般的な情 ............................................ 11
1.金融商品を利用する目的とリスク .............................................. 14
2.金融商品に関する内部統制 .................................................... 20
3.網羅性、正確性及び実在性 .................................................... 24
(1) 約定確認及び清算機関 ...................................................... 25
(2) 銀行及び保護預り機関との照 .............................................. 27
(3) 網羅性、正確性及び実在性に関するその他の内部統制 .......................... 31
4.金融商品の評価
(1) 財務報告の枠組みにおいて要求される事項 .................................... 34
(2) 観察可能な入力数値及び観察不能な入力数 .................................. 38
(3) 活発でない市場が与える影響 ................................................ 40
(4) 経営者の評価プロセス ...................................................... 43
(5) 金融負債に関する留意点 .................................................... 64
5.金融商品の表示と開示 ........................................................ 65
開示の分類 ................................................................ 67
第Ⅱ部 金融商品に関する監査上の考慮事項 .......................................... 70
1.職業的専門家としての懐疑心 .................................................. 71
2.監査計画上の考慮事項 ........................................................ 73
(1) 会計処理及び開示に関連して要求される事項の理解 ............................ 74
(2) 金融商品の理解 ............................................................ 75
(3) 監査における専門的な技能と知識を持った者の利用 ............................ 78
(4) 内部統制の理解 ............................................................ 81
(5) 内部監査機能の役割及び活動に対する理解 .................................... 82
(6) 経営者による金融商品の評価手法の理解 ...................................... 84
3.重要な虚偽表示リスクの評価と評価したリスクへの対
ii
(1) 金融商品に関する全般的な考慮事項 .......................................... 85
(2) 不正リスク要因 ............................................................ 86
(3) 重要な虚偽表示リスクの評価 ................................................ 89
(4) 内部統制の運用評価手続の実施及びその範囲に関する判断要素................... 91
(5) 実証手続 .................................................................. 96
(6) 二重目的テスト ............................................................ 98
(7) 監査手続の実施時 ........................................................ 99
(8) 網羅性、正確性、実在性、発生及び権利と義務に関する手続 ................... 103
4.金融商品の評価
(1) 財務報告の枠組みにおいて要求される事項 ................................... 106
(2) 金融商品の評価に関する重要な虚偽表示リスクの評価 ......................... 109
(3) 監査アプローチの策定 ..................................................... 114
(4) 経営者が外部の価格情報ベンダーを利用する場合における監査上の考慮事項...... 116
(5) 経営者がモデルを使用して公正価値を見積もる場合における監査上の考慮事項.... 121
(6) 経営者が専門家を利用している場合における監査上の考慮事項.................. 133
(7) 見積額又は許容範囲の設定 ................................................. 136
5.金融商品の表示と開示 ....................................................... 138
金融商品の表示と開示に関する手 ......................................... 140
6.その他の関連する監査上の考慮事項
(1) 経営者確認書 ............................................................. 142
(2) 監査役等とのコミュニケーション ........................................... 143
付録 金融商品に関する内部統制の例示
1.企業の統制環境
(1) 金融商品の利用に必要な能力の定義
(2) 取締役会や監査役等の参画
(3) 組織構造
(4) 権限と責任の付与
(5) 人事に関する方針と管理
(6) 受託会社の利用
2.企業のリスク評価プロセス
(1) リスク管理を担う部門
3.企業の統制活動
(1) 承認
(2) 職務の分離
(3) 網羅性、正確性及び実在性
4.監視活動
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《序説
1.金融商品は、企業の規模にかかわらず、た金融機関だけでなく金融機関以外の企業によっ
ても、様々な目的で利用される。
多くの金融商品を保有し大量の取引を行う企業もあればごく少数の金融商品取引を行うだ
けの企業もある。公正価値変動のリスクを負って、便益を享受するために金融商品を保有する
企業もあれば、金利や為替等に関するエクスポージャーのヘッジ又は管理を行うことによりリ
スクを軽減するために、金融商品を利用する企業もある。
本実務ガイダンスは、これら全ての状況を取り扱っている。
また、一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成するものではなく、会員が遵守すべき
基準等にも該当しない。また、2022年6月16日時点の最新情報に基づいている。
2.金融商品の監査において、以下の監査基準報告書が特に関連している。
(1) 監査基準報告書540「会計上の見積りの監査」は、会計上の見積り(公正価値によって測
定される金融商品に関する会計上の見積りを含む。に関する実務上の指針を提供している。
(2) 監査基準報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評
価」及び監査基準報告書330「評価したリスクに対応する監査人の手続」は、重要な虚偽表
示リクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人手続にする実務上の指針
を提供している。
(3) 監査基準報告書500「監査証拠」は、監査証拠の構成内容について説明するとともに、監
査意の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できるよに監査続を立案し実施す
ることに関する実務上の指針を提供している。
3.本実務ガダンスは、金融商品の監査に関する実務上の参考に資することを目的として
り、以下の二つから構成されている。
(1) 金融商品に関する一般的な情報(第Ⅰ部)
(2) 金融商品に関する監査上の考慮事項(第Ⅱ部)
4.金融商品を利用する全ての企業には、要な虚偽表示リスクが存在する可能性があるため、
実務ガイダンスは、全ての規模の企業の監査に関連することになる。
また、本実務ガイダンスにおいて対象としている財務報告の枠組みは我が国で一般に公正
妥当と認めらる企業会計の基準だけでなく、米国基準及び国際財務告基準も含まれてい
る。そのため、財務報告の枠組みにより要求される事項が異なる場合があることを前提として
いる。例えば、財務報告の枠組みによっては公正価値ヒエラルキーを設けていることがあるた
め、本実務ガダンスは公正価値ヒエラルキーに関する記載を含んでるが、この考慮事項
は、財務報告の枠組みが我が国で一般に公正妥当と認められる企業会計の基準である場合には
関連しない。
5.本実務ガイダンスの金融商品の評価のセクションは、主として公正価値によって測定又は開
示される金融商品に関連する考慮事項を記載しているが、それ以外のセクションは公正価値
によて測定される金融商品及び償却原価によって測定され金融商のいずれにも同様に
関連する考慮事項が記載されている。また、本実務ガイダンスは金融資産と金融負債のいず
れも対象としているが、以下の金融商品は扱っていない。
単純な金融商品(例えば、現預金、一般的な貸付金、売上債権及び仕入債務)
非上場の株式への投資
関係会社投資
保険契約
6.本実務ガイダンスは、ヘッジ会計、取引開始時の損益(取引日損益と呼ばれることがある。
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殺、リスク移転又は減損(貸付金に対する貸倒引当金を含む。)等、金融商品に関連する特定
の会計処理に関する監査上の考慮事項については、取り扱っていない。
7.一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠した監査は、経営者が財務諸表の作成責任(重
要な虚偽表示のない財務諸表を作成するために必要と判断した内部統制を整備運用する責任
を含む。)や、監査人に監査に必要な情報を提供する責任を認識しているという前提に基づい
て実施される。また、査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下、監査役
若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会を「監査役等」という。の責任には、財務
報告プロセスを監視する責任が含まれていることを前提としている。
く、また経営者や監査役等の責任を規定する法令等に優先するものではない。
8.本実務ガイダンスは、適用される財務報告の枠組みが、一般目的の適正表示の枠組みである
ことを前提として記載している(監査基準報告書200「財務諸表監査における総括的な目的」
第12項(13)及び監査基準報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」第6項(2)
照)。
9.実務ガイダンスは、評価及び表示と開示に係るアサーションに重点を置いて記載して
る。また、詳細ではないが、網羅性、正確性、実在性及び権利と義務に係るアサーションに関
しても対象としている
10.金融商品は、見積りの不確実性の影響を受ける。見積りの不確実性は、監査基準報告書540
第6項(6)において、「会計上の見積り及び関連する開示が正確に測定することができないと
いう性質に影響される程度」と定義されている。見積りの不確実性は、特に金融商品の複雑性
によて影響を受ける。金融商品の測定の裏付けとして利用能な情の性質及び信頼性は
様々であり、金融商品の測定に伴う見積りの不確実性は、これらの影響を受ける。
本実務ガイダンスでは、公正価値の測定に伴う見積りの不確実性について、測定の不確実
性」という用語を使用する。
《第Ⅰ 金融商品についての一般的な情報》
11.融商品の定義は、財務報告の枠組みによって異なることがある。例えば、企業会計基準第
10号「金融商品に関する会計基準」第52項では、金融商品を、「金融資産、金融負債及びデリ
バティブ取引に係る契約を総称して金融商品という」と定義している。また、国際会計基準(IAS)
第32号「金融商品:表示」第11項では、金融商品を、「一方の企業にとっての金融資産と、他
の企業にとっての金融負債又は資本性金融商品の双方を生じさせる契約」と定義している。
12.金融商品の複雑性は様々であり、その複雑性は、以下のような要因によって生じる。
同質性がない非常に大量の個別のキャッシュフローが存在するため、例えば信用リスク
を評価する際に、多数のキャッシフローを個別に又はグループ分けして分析すること
が必要となる(例えば、債務担保証券(CDO))。
キャッシュ・フローを決定するための算式が複雑である。
リスク、オプション契約又契約期間が長期である融商品等から、将キャッシ
ュ・フローの不確実性又は変動性が生じる。
市況の変化に対するキャッシュフローの変動性が高くなればなるほど金融商品の公正価
値の測定の複雑性と不確実性は高くなる可能性が高い。さらに、通常、比較的評価が容易であ
る金融商品でも、例えば、市場が活発でなくなった場合や、契約期間が長期である場合等の特
定の状況においては、評価が複雑になることがある。個々の金融商品を組み合わせたデリバテ
ィブや仕組商品は、より複雑になる。加えて、定の財務報告の枠組みの下、又は一定の市況
においては、金融商品の会計処理は複雑になることがある
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13.金融商品の保有量又は取引高は、複雑性に影響を与える。「プレーン・バニラ」の金利スワ
ップ取引は、複雑でないかもしれないが、これを大量に保有する場合、企業は、当該金融商
の識別、評価及び取引の実施のために、高度な情報システムを利用することがある
《1.金融商品を利用する目的とリスク》
14.金融商品は、以下のために利用される。
ヘッジ目的(すなわち、企業がさらされている現在のリスプロファイルを変更するた
め)
これには、以下が含まれる。
将来の為替レートを固定するための通貨の先渡取引
スワップ取引の利用による将来金利の固定金利又は変動金利への変換
特定格変動を避けるたのオプシン(組デリバテを付帯た契約を
む。)の購入
トレーディング目的(例えば、市場の短期的な変動から便益を享受するためにリス
ジションをとるため)
投資目的(例えば、長期の投資収益から便益を享受するため、又は業務提携等の目的で保
有する。)
15.金融商品の利用により、例えば、替、利及び商品(コモディティ)価格の変動等から生
じる事業上のリスクを軽減することができる。一方で、金融商品に内在する複雑性により、
スクが増加することもある。
16.以下のような状況の場合には、事業上のリスク及び重要な虚偽表示リスクが増加する。
経営者及び監査役等が金融商品の利用に係るリスクを十分に理解しておらず、当該リスク
を管理するための十分な知識と経験がない。
営者び監査役等が適用され財務報告の枠組みに準拠し適切に金融商を評価す
るための専門知識を有していない
経営者が金融商品に関連する業務に対する内部統制を十分に整備していない。
経営者がリスクを適切にヘッジしていない、又は投機を行っている。
17.経営者が金融商品に内在するリスクを十分に理解していない場合、当該リスクを適切に管理
する経営者の能力に直接影響する可能性があり最終的に、企業の存続能力を脅かすことにつ
ながることもある。
18.以下は、融商品に関連するリスクの主な種類である。これらは、必ずしも網羅的に列挙し
たものではなく、また、これらのリスク(又は個々のリスクの構成要素)は異なる用語で記載
されることもある。
(1) 信用リスク(又はカウンターパーティ・リスク)は、金融商品の一方の当事者が債務を履
い、債務不履行と関連することが多い。信用リスクには、決済リスクが含まれる。決済リス
クとは、取引相手から対価が支払われないリスクをいう。
(2) 市場リスクは、市場価格の変動により金融商品の公正価値又は将来キャッシュフローが
変動するリスクをいう。市場リスクには、例えば、為替リスク、金利リスク並びに商品(コ
モディティ)価格及び株価に関するリスクが含まれる。
(3) 流動性リスクには市場性の欠如により、金融商品を適切な価格で適時に購入又は売却で
きなくなるリスクが含まれる。
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(4) オペレーショナルリスクは金融商品に関連して必要となる業務処理に関係する。オペ
レーショナル・リスクは、金融商品の複雑性が増すにつれて増加し、その管理が不適切な場
合、他のリスクを増加させることがある。オペレーショナルリスクには、以下が含まれる。
約定確認(コンファメーション)と照合に関する内部統制に不備があり、その結果、
融商品が網羅的に記録されない、又は正確に記録されないリスク
取引が適切に文書化されておらず、当該取引が十分に監視されないリスク
取引が誤って記録、処理又はリスク管理され、そのため、引全体の経済的実態が反
されないリスク
従業員が、適切な検証を行わずに評価技法の正確性を過度に信頼した結果、取引が誤っ
て評価される、又はリスクが適切に測定されないリスク
金融の利が企業のスク理の方針び手十分組み込まていいリ
社内ロセ及びシスムが切に整備しく用さていないと又外部
事象を原因として損失が生じるリスク(内部及び外部の要因による不正のリスクを含む
金融商品の測定に利用する評価技法が適切でない、又は適時に見直されないリスク
法務リスクは、オペレーショナル・リスクの一要素であり、令又は規制上の措置に起
因する損失に関連するリスクである。すなわち、契約条項又は関連するネッティング条項
が法令若しくは規制上の措置により無効になったり、契約当事者(エンドユーザー又は
その取引相手)が契約条項に従った行為をとることができない場合に契約当事者のいずれ
かが損失を被ることがある。例えば契約書類が不十分又は不正確だった場合、破産時に
ネッティング契約を実行できない場合、法の変更が不利な状況を引き起こす場合、又は
企業定の類の金融品に資すことを禁る法がある場など法務
クが発生することがある。
19.金融商品の利用によるリスクに関連するその他の考慮事項には、以下が含まれる。
不正が行われるリスク。例えば、内部統制上、一定の立場にある従業員が金融商品及び
その会計処理のプロセスの両方を理解している一方で、経営者及び監査役等のそれらに対
する理解が不足している場合、不正が行われるリスクが増大することがある。
マスターネッティング契約(一つの契約について債務不履行等の一括清算事由が生じた
場合に、契約の対象となる全ての取引について単一通貨の純額で決済することとする契
約)が財務諸表に適切に反映されないリスク
一部の金融商品についてその契約期間中に資産となったり負債となったりすることがあ
り、その変化が急激に生じるリス
《2.金融商品に関する内部統制》
20.企業がどの程度内部統制を高度化するかは金融商品を利用する程度と金融商品の複雑性が
重要な要因となる。例えば、複雑な仕組商品を利用することが少ない小規模企業の場合、簡素
なプロセス及び手続により内部統制の目的が達成されることがある。
21.経営は、金融商品に対する基本姿勢を定め、金融商品の利用範囲を承認することによ
て、企業がさらされているリスクを管理することが多い。監査役等は、金融商品に関わるリス
ク管理の状況を監視する役割を担う。また、経営者は、適用される財務報告の枠組みに準拠し
た財務諸の作成のための内部統制を整備し運用する責任を有する。下が行われている場
合、金融商品に係る内部統制はより有効となる可能性が高い。
(1) 適切な統制環境、権限と責任の付与が明確な組織構造及び適切な人事に関する方針と手
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続が立されており、取締役会及び監査役等が金融商品の利の監視関与している。特
に、金融商品取引に関与する者に許容されている業務の範囲については明確な規定が定め
られている。法令により金融商品の利用に関する制限がある場合にはそのような法令によ
る制限を考慮に入れて、規定を策定することになる。
(2) 企業の規模及び金融商品の複雑性に応じたリスク管理プロセスが定められてい(例えば
一部の企業には、リスク管理を担う部門が存在することがある。)。
(3) 金商品取引の性質及びそれに伴うスクに関する情報取締役会及び監査役等提供
する情報システム(取引の適切な記帳を含む。)が確立されている。
(4) 以下を達成するための内部統制が整備され、文書化されている。
金融商品の利用が企業のリスク管理方針の範囲内にあること。
財務諸表における金融商品の適切な表示
法令遵守
リスクの監視
付録には、金融機関等の大量の金融商品取引を行う企業における内部統制の例が示されてい
る。
(5) 適用される財務報告の枠組みに準拠した適切な会計方(評価に関する方針を含む。
定められている。
22.企業の金融商品に関するリスク管理プロセス及び内部統制の主な要素には、以下が含まれる。
金融商品取引を行う際に許容可能なリスエクスポージャーの「リスク選好」と呼
ぶことがある。を決定するためのアプローチの設定(金融商品に対する投資方針及び金
融商品取引を実施する際の内部統制を含む。)
新しい種類の金融商品取引に付随する会計、規制、法務、財務及び業務上のリスクに関す
る文書化と承認のプロセスの確立
金融商品取引の処理(預金及び所有資産の外部証憑との照合を含む。び支払プロセス
金融商品取引を執行する担当者と、当該金融商品の処理、評価及び確認を行う担当者との
間の職務の分離
例えば、モデルの開発を行う部門が取引価格の設定にも関与している場合当該部門がフ
ロントオフィスから機能的にも組織的にも分離されている場合と比べて、客観性が低く
なる。
金融商品の評価に関するプロセスと内部統制(外部の価格情報ベンダーから入手した価格
に関するデータに対する内部統制を含む。)
監視活動
23.大量の金融商品取引を行う企業と、ごく少数の金融商品取引のみを行う企業では、リスクの
性質が異なることが多い。よって、内部統制に対するアプローチも、例えば以下のように異な
る。
大量の金融商品取引を行う金融機関には、通常、ディーリングルームがあり、専門のト
レーダーを有し、当該トレーダーはバッオフィス(実施された取引に誤りがないこと
を確かめ、必要な受渡処理を行うため、取引のデータチェック業務を行う部門をいう。
と職務の分離がなされている。
このような環境の場合トレーダーは、通常、電話又は電子取引プラットフォームによっ
て取引を実行する。このような環境において、関連する取引を把握し金融商品を正確に記
録することは、扱っている金融商品がごく少量で、その実在性と網羅性を少数の銀行に対
する取引確認書で確認できる企業に比べて非常に難しい。
一方、少量の金融商品しか保有していない企業は多くの場合、職務の分離がなく、市場
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へのアクセスも限定的である。このような場合金融商品取引を識別することは容易かも
しれないが、経営者が、限られた人数の担当者に依存する結果、未承認の取引が行われる
リスクや取引が記録されないリスクが増加することがある
《3.網羅性、正確性及び実在性》
24.第25項から第33項は、トレーディング・ルームを有する企業を含む、大量の金融商品取引を
行う企業で整備されている内部統制やプロセスについて記載している大量の金融商品取引を
行っていない企業の場合、以下のような内部統制やプロセスに代えて、取引相手又は清算機関
に対して取引を確認することがある。企業の取引相手が1社又は2社のみの場合には、取引の
確認を行うことは比較的容易である。
《(1) 定確認及び清算機関》
25.金融機関により実行される取引の場合、通常、取引相手との間で交わされる約定確認書及び
契約書にり、金融商品の諸条件が規定されている。清算機は、取の照合と決済を通じ
て、約定確認(コンファメーション)が相互になされるよう監視する役割を担っている。中央
清算機関は取引所と連携しており清算機関を介して決済を行う企業は通常、清算機関に伝
達する情報を管理するためのプロセスを有している。
26.ての取引がこのような取引所を通じて決済されるわけではない。多くの市場では決済
開始前に取引の諸条件に合意する実務慣行が存在しているこの取引の諸条件に合意する手続
が有効であるためには不正リスクをできるだけ低くするため、金融商品の取引担当者と分離
して運用れる必要がある。決済が開始された後で約定確認(コンフメーション)がなさ
れ、その結果、全ての条件の合意がなされる前に確認未実施分の決済が開始される市場もあ
る。そのような市場において取引を実行する企業は、取引条件の合意を代替的な手段で行う必
要があるため、追加的なリスクがある。この代替的な手段には、以下が含まれることがある。
取引の実在性、網羅性及び正確性を確保するための金融商品の取引担当者に対する強力な
監督と組み合わせて金融商品の取引担当者の記録と決済担当者の記録との厳密な照合を
実施する(両者の間の厳格な職務の分離が重要となる。)
条件の全てが合意されていない場合でも主要な条件を示した取引相手先からの概要資料
を検討する。
トレーダーの損益をバッオフィスが検討し、その損益をバック・オフィスで算出した
額と照合する。
《(2) 銀行及び保護預り機関との照合》
27.債や株式等の金融商品の一部は、保護預り機関で保管されることがある。加えて、多くの
金融商品は、ある時点で支払が生じ、多くの場合、このキャッシュフローは、契約期間の初
期に生じる。この支払と受取は、企業の銀行口座を通じて行われることになる。銀行及び保護
預り機関の記録と企業の記録とを定期的に照合することにより、企業は、取引の適切な記録を
確保することができる
28.契約期間の初期の段階でキャッシュ・フローが発生しない金融商品や、取引所や保護預り機
関で記録れない金融商品があることに留意すべきである。この場合照合プロセスによっ
て、取引記録の漏れや正確に記録されていない取引を識別することはできないため約定確認
(コンファメーション)による内部統制がより重要となる
も、それ自体は、金融商品の特性や条件の全て(例えば、期又は期限前解約オプション)
正確に記録されているとは限らない。
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29.た、資金の動きが、取引の全体的な規模や企業の貸借対照表に照らして極めて少ない
合、その識別が難しいこともある。財務部門又は他のバック・オフィスの担当者が、仕訳の正
当性や裏付けを確認するため、総勘定元帳の全ての勘定科目への仕訳入力の検討を行っている
場合、銀行と保護預り機関との照合の有用性が増す。このプロセスは、金融商品に関する入出
金仕訳の相手勘定の記録が適切でないことを識別するのに役立つ。
仮勘定や決済勘定の検討は、勘定残高にかかわらず重要であるこれは仮勘定や決済勘定
の中で照合項目が相殺される可能性があるためである。
30.量の金融商品取引を行う企業では、照合と約定確認(コンファメーションに関する内部
統制が自動化されていることがある。この場合、自動化された内部統制を支える全般統制が整
備されていることが必要となる。
特に、外部の情報源(例えば、銀行及び保護預り機関)及び企業の記録からデータが網羅的
かつ正確に抽出されており、照合前及び照合中に改竄されないことを確保するための内部統制
が必要となる。また、照合項目の消込みが不正確に行われることを防止するため、仕訳の照合
に関する規準が十分に厳格であることを確保する内部統制も必要となる
《(3) 網羅性、正確性及び実在性に関するその他の内部統制》
31.一部の金融商品はその特有の複雑性により企業のシステムにどのように記録すべきか必
ずしも明確でないことがある。そのような場合、経営者は、特定の種類の取引をどのように測
定、記録及び会計処理するかについて規定した方針を監視する内部統制プロセスを設定するこ
とがある。これらの方針は、通常、記帳すべき金融商品に関する全ての影響を理解できる適格
な者によって、事前に設定及び検討される。
32.取引の一部は、実行後に、取り消される、又は修正されることがある。取引の取消し又は修
正に関する適切な内部統制を適用することにより、不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスク
を軽減できる。また、企業は、取消し又は修正された取引を再確認するためのプロセスを整備
することがある。
33.大量の金融商品取引を行う金融機関では、個々のトレーダーの帳簿上の日次損益が市場動向
に照らして合理的かどうか評価するための上位者による検討が行われることが多いこれによ
り、経営者は、特定の取引が網羅的に若しくは正確に記録されていないと判断でき、又は特定
のトレーーによる不正を識別することがある。上位者による検討が効に機能するために
は、取引の承認手続が存在することが重要である。
《4.金融商品の評価》
《(1) 財務報告の枠組みにおいて要求される事項》
34.財務報告の枠組みにおいて、金融商品(組込デリバティブを含む。は、貸借対照表の表示、
益計算及び開示のために公正価値で測定されることが多い。一般に、公正価値測定の目的は、
在の市況下で、測定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われた場合に成立する価格を
導くことである。すなわち、公正価値とは、強制清算や投売りによる取引価格ではない。この
目的を満たすため、利用可能な全ての関連する市場情報が考慮される。
35.金融資産と金融負債の公正価値の測定は取引を当初に記録する時点と、その後、価値の変
動が生じた時点の両方で行われることがある。財務報告の枠組み(例えば、国際財務報告基準
や米国基準)によっては、時間の経過に応じて発生する公正価値の変動の扱いが異なることが
ある。例えば公正価値の変動は、純損益に計上されることもあれば、その他の包括利益に計上
されることもある。
また、適用される財務報告の枠組みによって公正価値による測定が求められるのは金融商
品全体であることもあれば、その構成要素のみ(例えば組込デリバティブが区分処理される場
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合)であることもある
36.財務報告の枠組みによっては公正価値測定及びそれに関連する開示の首尾一貫性と比較可
能性を向上させるために、公正価値ヒエラルキーを設けている。入力数値は、以下のような異
なるレベルに区分されることがある。
レベル1の入力数値
測定における企業がアセスできる同一の金融資産は金融負債にする活発な市
における相場価格(無調整)
レベル2の入力数値
レベル1に含まれる相場価格以外の入力数値のうち、金融資産又は金融負債について直接
若しは間接に観察可能もの。金融資産又は金融負債に定の(契)期間がある
合、レベル2の入力数値は当該金融資産又は金融負債の期間のほぼ全体にわたって観察可
能でなければならない。レベル2の入力数値には以下のものが含まれる
活発な市場における類似の金融資産又は金融負債に関する相場価格
活発ない市場における一又は類の金融産若しく融負債関する相
価格
金融資産又は金融負債に関する相場価格以外の観察可能な入力数値(例えば、通常公
表される間隔で観察可能な金利及びイールド・カーブ、インプライボラティリテ
ィ、信用スプレッド)
相関他の手段により主観察可能市場デタから算れるかは裏付け
れる入力数値(市場の裏付けのある入力数値)
レベル3の入力数値
金融資産又は金融負債に関する観察不能な入力数値。観察不能な入力数値は、関連性のあ
る観察可能な入力数値が入手できず、測定日において当該金融資産又は金融負債に関する
市場活動がほとんどない状況のみにおいて、公正価値の測定に使用することができる。
一般的に、測定の不確実性は、金融商品が、レベル1からレベル2、又はレベル2からレベ
ル3になるにつれて増加する。また、レベル2における測定の不確実性は、入力数値の観察可
能性、金融商品の複雑性及びその他の要因によって、大きく異なることがある。
37.財務報告の枠組みによっては市場参加者が金融商品の価格設定又はキャッシフローに
付随るリスクに関する不確実性を考慮に入れて価格設定にいて行であろうリスク調整
をするため、測定の不確実性を調整することを企業に要求又は容認していることがある。例え
ば以下が挙げられる。
モデルの調整
一部のモデルには、既知の不備がある、又はモデルに対する補正(カリブレーション)
結果、財務報告の枠組みに準拠した公正価値測定の目的においては不備があることが明ら
かになることがある。
信用リスクの調整
一部のモデルは、信用リスク(カウンターパーテリスク又は企業自身の信用リスクを
含む。)を考慮していない。
流動性の調整
財務報告の枠組みがビッドオファースプレッド等の流動性調整額の使用を要求してい
る場合であっても、一部のモデルは仲値を計算する。また、一部の流動性がない金融商品
に対しては、さらに、より主観的な判断による流動性の調整がなされる場合もある
その他のリスクの調整
市場加者が金融商品の格設定において考慮するであろ全ての他要因を考慮に
れないモデルを使用して測定された価値は、測定日の公正価値を表さないことがあり、
- 9 -
たがって、適用される財務報告の枠組みに準拠するためには、別の調整が必要になること
がある。
例えば過度な保守主義により適用される財務報告の枠組みが規定する公正価値から離れて
金融商品の測定と評価を調整する場合、そのような調整は適切ではない
《(2) 観察可能な入力数値及び観察不能な入力数値
38.記のとおり財務報告の枠組みは観察可能性の程度に従って、入力数値を区分すること
があ。金融商品の市場における取引高が減少し、入力数値観察可性が低下するにつれ
て、測定の不確実性は大きくなる
金融商品の評価の裏付けとして利用可能な情報の性質及び信頼性はその測定に対する入力
数値の観察可能性により様々であり、市場の性(例えば、市場の取引高の水準や取引所取引
なのか店頭取引なのか。によって影響を受ける。市場が活発でなくなり、入力数値の観察可
能性が低下するにつれて、評価の裏付けのための情報を経営者が入手することがより難しくな
る。
39.企業は、観察可能な入力数値が利用可能でない場合、市場参加者が金融資産又は金融負債の
価格設定を行う際に用いるであろう仮定(リスクに関する仮定を含む。)を反映した、観察不
能な入力数値を使用する。
観察不能な入力数値は、その状況において入手可能な最良の情報を用いて設定される。観察
不能な入力数値を設定するに当たり、企業は自己のデータを出発点とすることができるが、
理的に入手可能な情報により、(1) 他の市場参加者が異なるデータを用いること、又は(2) 他
の市場参加者には入手できない企業に固有のも(例えば企業固有のシナジー)が存在するこ
とが示される場合には、自己のデータは調整される。
《(3) 活発でない市場が与える影響
40.融商品(又はその構成要素の一部の取引市場が活発でなくなる場合、測定の不確実性は
増加し、評価はより複雑になる。いつの時点をもって、市場が活発でないとするかは明確では
ないが、財務報告の枠組みが指針を提供していることがある。
活発でない市場の特徴には、取引高及び取引件数が著しく低下していること、利用可能な価
格が時期によって若しくは市場参加者の間で著しく異なっていること又は価格が最新のもの
でないことが含まれるしかしながら、市場が活発でないかどうかの評価には、判断が必要と
なる。
41.市場活発でない場合、相場価格は、最後に取引が成立してから相当期間が経過してい
り、市場参加者が取引するであろう価格を表さなかったり、又は強制された取引(例えば、
手が規制上若しくは法律上の要求を満たすために売却することを要求された場合流動性を創
出するために直ちに資産を処分する必要がある場合、又は法的若しくは時間的な制約により潜
在的買い手が単独である場合)による価格を表していることがある。したがって、金融商品の
評価は、活発な市場における相場価格以外の入力数値に基づいて行われることになる。このよ
うな状況において、企業は、以下を有することがある。
な市場における相場価格にる入力数値が利用可能どうかを判断するめのプロ
セスを含む、評価の方
信頼性を評価する目的で評価技法への入力数値として用いた外部情報源からの特定の価
格又は入力数値がどのように計算されたかに関する理解
例えば、活発な市場において、まだ取引されていない金融商品のブローカー価格は、類似
の金融商品に関する実際の取引を反映している可能性が高い。しかしながら、市場が活発
でなくなるにつれて、ブローカー価格は、独自の評価技法に基づいて算出されることが多
くなる。
産業の状況の悪化が取引相手に与える影響の理解及び取引相手と同種の企業における経
- 10 -
営状況の悪化が、取引相手がその債務を履行しない可能性があること(すなわち、不履行
リスク)を示唆しているかどうかに関する理解
測定の不確実性を調整するための方針
この調整には、モデルの調整、流動性の欠如に関する調整、信用リスクの調整及びその
のリスクの調整が含まれることがある。
関連する不確実性を所与とした場合において、現実的に生じ得る結果の範囲を計算する能
力(例えば感応度分析の実施)
公正価値ヒエラルキーを設けている財務報告の枠組みにおいては公正価値測定の入力数
値を公正価値ヒエラルキーの別のレベルに振り替える状況を識別するための方針
42.特定の金融商品の取引が大幅に減少する又は取引が停止となるような状況においては、特に
金融商品の評価が困難になることがある。このような状況においては、従来は市場価格を用い
て評価していた金融商品について、モデルを使用して評価することが必要になることがある。
《(4) 経営者の評価プロセス》
43.経営者は、観察可能な価格、最近の取引事例及び観察可能な入力数値又は観察不能な入力数
値を用いるモデルによって、金融商品を評価することがある。また、経営者は、以下を利用す
ることもある。
外部の価格情報ベンダー(プライシング・サービス・ベンダー又はブローカー価格等)
評価の専門家
外部の価格情報ベンダー及び評価の専門家は、上記の評価技法の一つ又は複数を用いること
がある。
44.務報告の枠組みは、多くの場合、金融商品の公正価値の最善の証拠は、活発な市場におい
て成立する取引から得られるとしている。このような場合の金融商品の評価は、比較的単純で
ある。取引所に上場されている又は流動性のある店頭市場で取引されている金融商品の相場価
格は、金融関連の情報誌、取引所又は外部の価格情報ベンダー等から入手できることがある。
相場価格を用いる場合、当該価格が測定日の市況を反映していることを確かめるために、
場が成立した前提を経営者が理解していることが重要である。情報誌又は取引所から入手され
た相場価格は、例えば以下を満たす場合には、公正価値に関する十分な証拠を提供することが
ある。
最後に取引が成立してから相当期間が経過した価格ではないこと
ディーラーが十分な頻度と取引高で実際に金融商品を取引するであろう価格であること
45.金融商品に対する観察可能な市場価格が存在しない場合、企業は、金融商品に係る評価技法
において用いる他の価格指標を収集することが必要になる価格指標には、以下が含まれるこ
とがある。
最近の取引(同一の金融商品に関する期末日の翌日以降の取引を含む。)
これらの取引は、期末日に存在した市況を必ずしも示さないため、測定日と取引実施日と
の間の市況の変化に合わせて、調整が必要かどうか検討することになる。加えて、取引が
強制された取引に該当し、秩序ある取引の価格を示さないことがある。
類似の金融商品の現在又は最近の取引
類似の金融商品と、価格設定を行う金融商品との間の相違を反映させるため、調整を行う
ことが必要になる(例えば、それらの二つの金融商品の流動性リスク又は信用リスクの相
違を考慮に入れる。)
類似の金融商品の指標
類似の金融商品における取引と同様に、価格設定を行う金融商品と、利用している指標の
算定基礎となる金融商品との間の相違を反映させるため、調整を行うことが必要になる
- 11 -
46.経営者は、評価の方針及び特定の金融商品に用いるモデルについて、文書化することが期待
されている(モデルを使用する根拠、評価手法における仮定の選択及び測定の不確実性を調整
する必要性に関する企業の検討を含む。
《モデル》
47.市場において価格を直接観察できない場合金融商品の評価にモデルが使用されることがあ
る。モデルは、債券の価格設定に一般に用いられる計算式のように単純なこともある。一方、
デルが複雑であり、観察不能な入力数値を用いて金融商品を評価するために特別に開発された
ソフトウェアを使用することもある。多くのモデルは、割引キャッシュフロー計算に基づい
ている。
48.モデルは、手法、仮定及びデータから構成される。手法は、評価における変数の関係を定め
たルールや原則を説明するものである。仮定には、モデルで用いられる不確実な変数の見積り
が含まれる。データは、金融商品に関する実際の情報若しくは仮説に基づく情報又は金融商品
への他の入力数値から構成されることがある。
49.金融商品のモデルの設定やその妥当性の確認に当たって企業が検討する事項には、状況に応
じて、以下の事項がある。
モデルを使用する前にその妥当性を確認しているかどうか。また、当該モデルがその使用
目的に対して引き続き適切であるかを定期的に検討しているかどうか企業がモデルの妥
当性を確認するプロセスには、以下の評価を含んでいる。
変数と感応度の適切性を含む、手法の理論的な健全性と数学的な完全性
モデルの入力数値と市場慣行との整合性及び網羅性、また、モデルで用いるための適
切な入力数値が入手可能かどうか
モデルの適切な変更管理の方針、手続及びセキュリティ管理が存在するかどうか。
モデルは、市況の変化に応じて適時かつ適切に、変更又は調整されるかどうか。
デル、独立した客観性のあ部門により、妥当性確認のめ定期的に測され、検
討、検証されているかどうか。これは、モデルのアウトプットが、市場参加者が金融商品
に見出す価値を適正に表示することを確かめるために行われる。
モデルは、関連する観察可能な入力数値の使用を最大限とし、観察不能な入力数値の使用
を最小限としているかどうか。
同様の状況において市場参加者が使用する仮定を反映するためモデルの計算結果に対す
る調整が行われているかどうか。
モデルに関して適切に文書化されるかどうか(モデル適用の意図及び限界モデルの主要
な変数、要求されるデータ、モデルに対する妥当性確認の分析の実施結果、並びにモデル
の計算結果に対する調整を含む。)。
《一般的な金融商品の例示》
50.以下は、資産担保証券を例に、一般的な金融商品の評価におけるモデルの適用について説明
している。資産担保証券は、活発な市場における相場価格以外の入力数値に基づき評価される
ことが多い。したがって、モデルを使用して評価されることが多く、評価を行う場合には以下
を理解することが必要となる。
証券の種類
担保となる債権及び証券の契約条項について検討する。担保となる債権は、キャッシュ・
フローの時期と金額を見積もるために利用され(住宅ローン又はクレジットカード債権
の利率及び元本の支払等)。
証券の契約条項
- 12 -
これには、弁済順位等の契約上のキャッシュフローの権利、及び債務不履行となる事象
の評価が含まれる。弁済順位は、特定のクラスの証券(優先証券)保有者が他のクラスの
証券(劣後証券)保有者の前に弁済を受けることを要求する契約条項を参照して決定され
る。
クラス別の証券保有者のキャッシフローに対する権利(キャッシュフローの「ウォ
ーター・フォール(支払順序)と呼ばれることが多いは、キャッシュ・フローの
期及び金額に関する仮定とともに各クラスの証券保有者に対する見積りキャッシ
ローを算定するために用いられる。その後、待キャッシフローは、公正価値の見積
りの算定のために割り引かれる。
51.産担保証券のキャッシュ・フローは担保となる債権の期限前返済潜在的な債務不履行
リスク及びその結果として生じるデフォルト時損失の見積りによって影響を受けることがあ
る。
一般的には、当該証券の担保となっている債権の利率と類似の債権の市場金利を比較した
評価が、担保となる債権の期限前返済率に関する前提に反映される。例えば、類似の債権に係
る市場金利が下落した場合、証券の担保となっている債権の期限前返済率は、当初の想定より
高くなることがある。
債務不履行の可能性及びデフォルト時損失の見積りには担保となる債権の評価とデフォル
ト率を見積もるために債務者の信用度の評価を厳密に実施することが含まれる。例えば、担保
となる債権が住宅ローンの場合、デフォルト時損失は、証券の約定期間にわたる住宅価格の見
積りによって影響を受けることがある。
《外部の価格情報ベンダー》
52.企業は、公正価値に関する情報を入手するために、外部の価格情報ベンダーを利用すること
がある。金融商品の評価及び金融商品に関する開示情報の作成を含めた企業の財務諸表の作成
には、経営者が有していない専門知識が必要となることがある。
企業は、評価において用いるモデルを含めた適切な評価技法を設定することができず、評価
を行うため又は財務諸表における開示情報の作成のために外部の価格情報ベンダーを利用す
ることがある。これは特に、小規模企業や、大量の金融商品取引を行っていない企業において
該当することがある。外部の価格情報ベンダーを利用する場合でも、経営者が評価に対する最
終的な責任を有する。
53.証券の保有量が多いため、短期間での価格設定が困難な場合にも、外部の価格情報ベンダー
が利用されることがある。これは、日々の基準価額を決定しなければならない投資ファンドに
おいて該当することが多い。そのほか、経営者は、独自の価格決定プロセスを有している場合
でも、経営者自身が行う評価の裏付けのために外部の価格情報ベンダーを利用することがあ
る。
54.くの企業が上記の理由により証券の評価に際し、主要な情報源として又は自身の評価
に対する裏付けの情報源として、外部の価格情報ベンダーを利用する。外部の価格情報ベンダ
ーは、一般的に以下に分類される
プライシング・サービベンダー(コンセンサスプライシン・サービスベンダー
を含む。)
ブローカー相場を提供するブローカー
《プライシング・サービス・ベンダー》
55.ライシング・サービスベンダーは、様々な金融商品の価格及び価格に関連するデータを
企業に提供しており、多数の金融商品について日次の評価を実施していることが多い。プライ
シング・ービスベンダーは、マーケットメーカーを含む、々な種類の情報源から市場
- 13 -
データと価格を収集することにより、また、場合によっては、公正価値の見積額を算出する内
部的な評価技法を使用して、評価を行っていることがある
プライシング・サービス・ベンダーは、価格を算出するに当たり複数のアプローチを組み合
わせていることがある相場価格以外の入力数値のうち、金融資産又は金融負債について直接
若しくは間接に観察可能な入力数値に基づく価格の情報源として用いられることが多い。プラ
イシングサービスベンダーは、価格の算定に関する強力な内部統制を有していることがあ
る。プライシンサービスベンダーの顧客は売手及び買手となる投資家、ックオフ
ィス、ミドル・オフィス並びに監査人など様々である。
56.プライシン・サービスベンダーは、顧客がプライシングサービスベンダーから受領
した格の再検討を求める正式なプロセスを有していること多い。のプロセスにおいて
は、通常、顧客は代替的な価格を裏付ける証拠を提供することが求められ顧客が提供した証
拠の質に基づいて、顧客の申立てが分類される。例えば、ライシングサービス・ベンダ
が認識していなかった当該金融商品の直近の販売に基づく申立ては、受け入れられるかもしれ
ないが、顧客による独自の評価技法に基づく申立てに関しては、一般的には、より厳密に調査
される。
このようにして、売手と買手のいずれにも多数の主要参加者を顧客に持つプライシング
ービスベンダーは、市場参加者が利用可能な情報をより多く反映することによって、継続的
に価格を修正することができる。
《コンセンサス・プライシング・サービス・ベンダー》
57.一部の企業は、コンセンサスプライシングサービスベンダーからの価格データを利用
することがある。コンセンサス・プライシング・サービス・ベンダーは、他のプライシング・
サービス・ベンダーとは異なる。コンセンサス・プライシング・サービベンダーは、複数
の参加企業(契約者)から金融商品に関する価格情報を入手する。各契約者は、コンセンサス・
プライシング・サービス・ベンダーに価格を送付する。
コンセンサスプライシングサービスベンダーは、この情報を機密情報として取り扱い、
常、異常値を排除するためデータクレンジングを行った後、データの算術平均であるコンセ
ンサス価格を各契約者に回答するコンセンサス価格は、エキゾチックデリバティブ等の一
部の市場にとって、利用可能な最善のデータとなることがある。
一方、コンセンサス価格の評価においては、例えば以下を含む多くの要因が検討される。
契約者が送付した価格が実際の取引を反映しているものか、又は契約者独自の評価技法に
基づく参考価格を示しているだけかどうか。
価格を入手した情報源の
コンセンサス・プライシング・サービス・ベンダーが利用する情報源の質
参加者に主要な市場参加者が含まれるかどうか。
58.コンセンサス価格は一般的に、身の価格をコンセンサスプライシングサービス
ンダーに送付した契約者のみにより利用されるため、全ての企業がコンセンサス価格を直接入
手できるわけではない契約者は、一般的に、他社が送付した価格の見積方法を知ることがで
きない。したがって、評価を裏付けるため、コンセンサスプライシンサービスベンダ
ーからの情報に加えて他の情報源からの証拠が経営者に必要となることがある。特に、情報源
が独自の評価技法に基づく参考価格を提供しており、当該情報源の価格計算方法に関する情報
を経営者が入手できない場合に該当する。
《ブローカー価格を提供するブローカー》
59.ブローカーは、クライアントに対する付帯サービスとしてブローカー価格を提供している。
たがって、ブローカーが提供する価格は、多くの点で、プライシンサービスンダーか
ら入手される価格とは異なる。ブローカーはその価格の算定に用いるプロセスについての情
- 14 -
報を提供しようとしないことがある。しかしながら、プライシング・サービスベンダーが認
識していない取引に関する情報を入手していることがある
ブローカー価格は、実行可能価格のこともあれば、参考価格のこともある。参考価格は、
ローカーによる公正価値の最善の見積りであり一方、実行可能価格は、ブローカーが当該価
格で取引する意思があることを示している。
実行可能価格は、公正価値を示す強力な証拠となる。参考価格は、ブローカー価格を算定す
る際にブローカーが用いた方法についての透明性が欠如しているため公正価値を示す証拠と
しては相対的に弱い。加えて、ブローカー価格に対してどの程度厳格な内部統制を整備運用
するかは、ブローカーが、自身のポートフォリオに同じ証券を保有しているかどうかによって
異なることも多い。ブローカー価格は、観察不能な入力数値による証券に対して用いられるこ
とが多く、ブローカー価格が、利用可能な唯一の外部情報であることがある。
《外部の価格情報ベンダーに関する追加的な考慮事項》
60.営者は、価格情報ベンダーがどのように価格を算定したかを理解することで、当該情
が、評価技法への入力数値としての妥当性を含めて評価に用いるのに適切かどうかを判断する
ことができ、また、金融商品の開示に関する要求事項について判断することができる。例えば
外部の価格情報ベンダーは、独自に開発したモデルを使用して金融商品を評価していることが
ある。この場合、経営者は、外部の価格情報ベンダーが利用した手法、仮定及びデータを理解
することが重要になる
61.経営者は、外部の価格情報ベンダーから入手した公正価値測定が、活発な市場での現在の価
格に基づくものではない場合、公正価値測定が適用される財務報告の枠組みに準拠した方法
で算されているかどうか評価することが必要になる。経営による正価値測定の理解に
は、以下が含まれる。
公正価値測定がどのように行われたか。例えば、公正価値測定の目的と整合するかどうか
を評価するため、公正価値測定が評価技法によって行われたかどうかを理解する。
外部の価格情報ベンダーから入手した価格は、参考価格、気配スプレッド又は拘束力のあ
るオファー価格のいずれか。
外部の価格情報ベンダーが、公正価値の見積りを行う頻度はどの程度か。これは、測定日
における市況を反映しているかどうかを評価するためである。
外部の価格情報ベンダーがその価格を決定する根拠について、企業が保有する特定の金融商
品と関連付けて理解することは、経営者が、その金融商品の評価を裏付ける情報としての適合
性と信頼性を評価する際に役立つ
62.異なる価格情報ベンダーが提供する価格指標の間に、差異が存在する可能性がある。価格指
標がどのように算出されたのかを理解し当該差異について調査することは、経営者が、金融商
品を評価する際に利用する情報を裏付けて、評価の合理性を検討するのに役立つ。提供された
価格指標の範囲内の一つの価格が公正価値の最善の代表値であり、平均値が最善の代表値では
ないこともある。したがって、詳細な検討を行わずに単純に提供された相場の平均を用いるこ
とが適切でないことがある。経営者は、金融商品の評価の合理性を検討するために以下を行
うことがある。
実際の取引が、自発的な買手と自発的な売手の間の取引でなく強制的な取引を表していな
いかどうかを検討する強制的な取引を表している場合には、その価格を比較対象に含め
ることは適切ではない
当該金融商品の予想将来キャッシュ・フローを分析する。この分析は、目的に最も適合す
る価格に関するデータを示すことがある。
観察不能であるものの性質に応じて、観察可能な価格から観察不能な価格を推定する(例
えば、10年以内の満期に関する観察可能な価格が存在するが、それより長期のものについ
- 15 -
ては存在しない場合、10年の価格カーブを指標として、10年を超えた価格を推定すること
が可能なことがある。観察可能な価格との関係が非常に希薄になり、信頼できない場
合には、推定を行わないように留意することが必要である
類似の金融商品間で整合していることを確かめるため、金融商品のポートフォリオ内の価
格を相互に比較する。
複数のモデルを使用し、それぞれで用いるデータと仮定を考慮した上で、それぞれの結果
を補強する。
関連するヘッジ手段及び担保に対する価格の変動を評価する。
企業は、金融商品の評価に関する判断に際し、企業の状況に特有なその他の要因を考慮する
こともある。
《評価の専門家の利用》
63.経営者は、証券の一部又は全ての評価のために、投資銀行、ブローカー又はその他の評価会
社における評価の専門家を利用することがある一般的に、経営者が専門家に依頼して評価に
従事させる場合、経営者は、プライシング・サービスベンダーやブローカー価格の場合と異
なり、評価手法やデータをより容易に入手することができる。
経営者は、専門家を利用する場合であっても金融商品の評価に対する最終的な責任を有す
る。
《(5) 金融負債に関する留意点》
64.信用リスクの影響を理解することは、金融資産と金融負債のいずれの評価においても重要で
ある。この評価には、発行体及び信用補完を行う者の信用度と財務力が反映される。財務報告
の枠組みによっては、金融負債の測定は、当該金融負債が測定日に市場参加者に移転されるこ
とを仮定している。
金融負債に対する観察可能な市場価格が存在しない場合一般的には、当該負債に特有の要
(第三者による信用補完など)が存在しない限り、金融負債の価値は、取引相手が資産とし
て価値の測定において用いるのと同じ方法を用いて測定される。特に、自己の信用リスクは、
況の変動に起因しない公正価値の変動の金額であり、多くの場合、測定が困難になる可能性が
ある。
《5.金融商品の表示と開示》
65.財務報告の枠組みの多くは、財務諸表利用者が、金融商品に付随するリスクと不確実性を含
む企業の金融商品取引による影響を適切に理解できるように、財務諸表での開示を要求してい
る。
66.財務報告の枠組みの多くが、金融商品に関する定量的な情報及び会計方針を含む定性的な情
報の開示を要求している。財務報告の枠組みの多くにおいて、公正価値測定に関する財務諸表
の表示と開示に関して要求される事項は広範囲に及んでおり、また、金融商品の評価以外の事
項を含んでいる。例えば金融商品に関する定性的な開示は金融商品の特性やそれらの将来キ
ャッシュフローに関する重要な情報を説明しており、これは、企業がさらされているリスク
に関する情報を投資家に提供するのに役立つことがある。
《開示の分類
67.財務報告の枠組みによっては、以下の事項を開示することが要求されていることがある。
(1) 財務諸表の金額に関連する定量的な開示(例えば金融資産と金融負債の分類)
(2) 重要な判断を必要とする定量的な開示(例えば、企業がさらされている各種の市場リスク
に関する感応度分析)
- 16 -
(3) 定性的な開示(例えば、金融商品に対するガバナンス、金融商品のリスク管理に関する目
的、内部統制、方針及び手続並びにリスクの測定に使用した方法に関する開示)
68.特定の変数の変化に対する評価の感応度が高いほど、評価に関する不確実性を示すために開
示が必要になる可能性はより高くなる。また、一部の財務報告の枠組みは企業が評価技法に
用い仮定の変更による影響を含めた、感応度分析の開示を求してることもある。例え
ば、観察不能な入力数値に分類される公正価値測定を伴う金融商品に関して要求される追加的
な開示は、最も主観的な入力数値を用いた公正価値測定の影響について財務諸表の利用者に
情報を提供することを目的としている。
69.一部の財務報告の枠組みは、企業が報告日時点でさらされている金融商品から生じるリスク
の性質と程度について財務諸表の利用者が評価できるようにするための情報を開示すること
を要求している。開示の程度は、金融商品から生じる企業のリスクに対するエクスポージャー
の程度によって決まる。これには、以下に関する定性的な開示が含まれる。
企業の将来の流動性及び担保要件に関して見込まれる影響を含むリスクに対するエクス
ポージャー及び当該リスクがどのように生じたか。
リスク管理に関する企業の目的、方針及び手続並びにリスクの測定に使用した方法
リスクに対するエクスポージャー又はリスク管理の目的、方針及び手続に関する前年度か
らの変更
《第Ⅱ 金融商品に関する監査上の考慮事項》
70.金融商品の監査は、例えば以下に記載したような特定の要因によって困難になることがある。
経営者と監査人のいずれにとっても、金融商品の性質、利用目的及び企業がさらされてい
るリスクを理解することが難しいことがある。
市場心理と流動性は急激に変化することがあり、経営者がエクスポージャーを効果的に管
理できないことがある
金融商品の評価を裏付ける証拠を入手するのが困難なことがある
特定の金融商品に伴う支払が多額となりこのことによって資産流用のリスクが増加する
ことがある。
金融商品に関して財務諸表に記録された金額は重要でないが、これらの金融商品に関して
重要なリスク及びエクスポージャーが存在することがある
少数の従業員が企業の金融商品取引に重要な影響を与えていることがある特にその従業
員の報酬制度が金融商品から生じる収益に連動していたり企業内部の他の者がそれらの
特定の者に過度に依存していることがある。
これらの要因によって、リスク及び関連する事実が不明瞭になることがあり、そのことが、
査人による重要な虚偽表示リスクの評価に影響を与える可能性がある。また、特に市況が悪化
している状況においては、潜在していたリスクが急に顕在化することがある。
《1.職業的専門家としての懐疑心》
71.監査証拠の評価に当たっては職業的専門家としての懐疑心を保持し批判的に評価すること
が必要であり、これによって監査人は、経営者の偏向を示す兆候に常に注意を払うことができ
る。これは、相反する監査証拠並びに経営者から入手した文書、質問に対する回答及びその他
の情報に係る信頼性を批判的に評価することを含んでいるそれはまた、誤謬又は不正による
虚偽表示の可能性を示す状況に注意し、入手した監査証拠が状況に応じて十分かつ適切かどう
か考慮することを含んでいる。
- 17 -
72.職業的専門家としての懐疑心の保持は、全ての状況で監査人に要求される。金融商品が複雑
な場合には、例えば以下の事項について、職業的専門家としての懐疑心がより必要となる。
十分かつ適切な監査証拠を入手したかどうかの評
特に金融商品の評価にモデルが使用されている場合、又は市場が活発でないかどうかを判
断する場合には難しくなることがある。
される財務報告の枠組みにする経営者の判断及び営者の偏向が存在る可能性
の評価
特に、経営者による評価技法の選択や評価技法における仮定を検討する場合、及び監査人
の判断と経営者の判断が異なる場
入手した監査証拠に基づいて導いた結論
例えば、経営者の利用する専門家が実施した評価の合理性の検討、及び財務諸表上の開示
が適正表示を達成しているかどうかの評価など
《2.監査計画上の考慮事項》
73.監査人は、監査計画において、特に、以下の事項に焦点を当てる。
会計処理と開示に関連して要求される事項の理解
企業が保有している金融商品、その保有目的及びリスクの理解
専門的な技能と知識が監査に必要とされるかどうかの判断
企業の金融商品取引に関する内部統制及び監査の対象となる情報システムの理解と評価
内部監査機能の役割及び活動の理解
経営者が専門家又は受託会社を利用したかどうかを含む、金融商品を評価する経営者のプ
ロセスの理解
重要な虚偽表示リスクの評価と評価したリスクへの対応
《(1) 会計処理及び開示に関連して要求される事項の理解》
74.監査基準報告書540第7項(1)は、会計上の見積りに関連して適用される財務報告の枠組み
おいて要求される事項を理解することを監査人に要求している。
り、広範囲の開示を要求することがある。本実務ガイダンスを通読しただけでは、適用される
財務報告の枠組みにおいて要求される事項の全てを十分に理解したことにならない
いくつかの財務報告の枠組みは、例えば以下の領域に関する検討を要求している
ヘッジ会計
「取引日」損益の会計処
金融資産及び負債の発生並びに消滅の認
自己の信用リスク
リスクの移転と認識の中止、特に、企業が複雑な金融商品の組成に関与していた場合
《(2) 金融商品の理解》
75.金融商品の特徴によっては、リスクとエクスポージャーの特定の要素が不明瞭になることが
ある。金融商品の特徴を含め、企業が投資した金融商品及びそのエクスポージャーを理解する
ことは、監査人が、以下を識別するのに役立つ
取引の重要な側面が見落とされている、又は不正確に記録されているかどうか。
評価が適切であるかどうか。
企業が、その金融商品に内在するリスクを十分に理解し、管理しているかどうか。
- 18 -
金融商品が流動区分と固定区分に適切に分類されているかどうか
76.企業が保有する金融商品を理解する際に、監査人が考慮する項目には例えば以下が含まれ
る。
企業がリスクにさらされている金融商品の種類
金融商品の利用状況
商品及びそれらの利用並び適用される財務報告の組みにおいて要求れる事項
に関する経営者の理解
影響を十分に理解するために必要な金融商品の契約条項及び特徴特に複数の取引が相互
に関連している場合には金融商品取引全体としての影響
保有している金融商品と企業の全般的なリスク管理戦略との適合
は、金融商品を理解するための情報を得ることがある。
77.契約(非金融商品に関する契約を含む。)にデリバティブが含まれていることがある。いく
つかの財務報告の枠組みは、特定の状況においては、そのような組込デリバティブを主契約か
ら分離することを容認又は要求している。組込デリバティブの識別と会計処理に関する経営者
のプロセスを理解することは、監査人が企業がさらされているリスクを理解するのに役立つ。
《(3) 監査における専門的な技能と知識を持った者の利用》
78.査人の能力は金融商品の監査特に複雑な金融商品の監査において、重要な考慮事項で
ある。監査基準報告書220「監査業務における品質管理」第26項は、監査責任者に、監査チー
ムメンバーと監査人が業務を依頼する外部の専門家が、全体として十分な時間を含む、適性及
び適切な能力を有していることを確かめることを要求している。さらに、倫理規則は、監査人
に、新規の契約を締結する際、職業的専門家としての能力及び正当な注意を含む、基本原則の
遵守を阻害する要因が生じているかどうかを判断することを要求している。
79.下は、金融商品に関して、監査人が考慮する項目の例示を提供している。金融商品の監査
には、例えば以下の領域において、一人又は複数の専門家の関与を必要とすることがある。
企業が利用する金融商品及び複雑性の程度を含む金融商品の特徴の理解
金融商品の全ての側面が把握され、財務諸表に反映されているかどうかを検討する際、
た、リスクの開示が求められる場合において、適用される財務報告の枠組みに準拠する十
分な開示が行われているかどうかを評価する際に、専門的な技能と知識の利用が必要とな
ることがある。
適用される財務報告の枠組みの理解
特に、異なる解釈の存在が知られている領域がある場合や実務慣行が一律でない、又は確
立する途上である場合
金融商品がもたらす法令等及び税務上の影響の理
例えば、原契約の検討において、企業がその契約を執行できるかどうかの判断に、専門的
な技能と知識が必要となることがある。
金融商品に内在するリスクの評価
経営者による金融商品の評価や、見積額又は見積りの許容範囲の設定に関する監査証拠の
収集
特に、公正価値が複雑なモデルによって算出される場合、市場が活発でなく、データと仮
定の入手が困難である場合、観察不能な入力数値が利用される場合、又は経営者が専門家
を利用した場合
ITによる内部統制の評
- 19 -
特に、大量の金融商品取引を行う企業では、例えば、金融商品の重要な情報が、電子的に
送信、処理、保存又はアクセスされる場合などに、ITが非常に複雑になることがある。
らに、受託会社の提供する関連業務が含まれることがある
80.監査基準報告書220第35項は、監査チーム内及び監査チームと監査事務所内外の適切な者と
の間で、監査チームのメンバーが監査の期間中に専門的な見解の問合せを適切に実施したこと
を確かめることを要求している。
特定の種類の金融商品の性質とその利用、適用される財務報告の枠組みにおいて要求される
事項の複雑性及び市況によって、監査チームが関連する専門知識と経験を有する監査事務所
内外の会計又は監査の職業的専門家に、専門的な見解の問合せをする必要性が生じることがあ
る。その際、以下の要因を考慮に入れる。
監査チームの経験、適性及び能力
企業が利用する金融商品の属性
監査業務における通例でない状況又はリスクの識別など、特に重要性及び特別な検討を必
要とするリスクに関する職業的専門家としての判断の必要
市況
《(4) 内部統制の理解》
81.監査基準報告書315は、監査人が内部統制を含む企業及び企業環境を理解することを要求し
ている。内部統制を含む、企業及び企業環境の理解は、監査の過程を通じた継続的かつ累積的
な情報の収集、更新及び分析のプロセスである。その理解を通じて、監査人は、財務諸表全体
レベルの重要な虚偽表示リスクとアサーションレベルの重要な虚偽表示リスクを識別して
評価することができ、これにより、リスク対応手続の立案と実施に関する基礎が提供される。
企業は、取り扱う金融商品の取引高と種類に応じて、通常、内部統制の種類と範囲を決定す
る。金融商品に対する統制及び監視状況の理解に基づき、監査人は、監査手続の種類、時期及
び範囲を決定する。金融機関等の大量の金融商品取引を行う企業には、付録に記載されている
内部統制が存在することがある。
《(5) 内部監査機能の役割及び活動に対する理解》
82.大規模な企業においては、上級経営者が金融商品の利用に関する内部統制を検討及び評価す
るために、内部監査が実施されることがある。内部監査機能は、不正又は誤謬による重要な虚
偽表示リスクを識別するのに役立つことがあるしかしながら、企業の金融商品の利用に関し
て内部監査人に必要とされる知識及び技能は、一般に、他の業務に必要とされるものとは大き
く異なっている。
監査人は、内部監査機能が監査の基本的な方針と詳細な監査計画に関連する可能性があるか
どうかを判断する際に内部監査人の専門的能力及び内部監査機能の客観性と同様に、内部監
査人が有する金融商品に関連する業務に係る知識及び技能の程度を検討する。
83.下の領域は内部監査機能に特に関連することがある。なお、ここでは内部監査機能だけ
でなく、リスク管理を担う部門、モデルの検討を行う部門、又は金融商品の保有状況と収益の
管理を行う部門などが関連することもある。
金融商品の利用範囲に関する総括的な理
方針と手続の適切性及び経営者によるそれらへの遵守状況についての評価
金融商品に関する統制活動の運用状況の有効性に対する評価
金融商品取引に関連するシステムの評価
金融商品に関して、新たなリスクが識別、評価及び管理されているかどうかの評価
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《(6) 経営者による金融商品の評価手法の理解》
84.財務諸表の作成に対する経営者の責任は、適用される財務報告の枠組みで要求される事項を
金融商品の評価に適用することを含んでいる。監査基準報告書540第7項(3)は、監査人に
る。経営者が金融商品の評価を行う際の適切な評価手法の選択や、利用可能な証憑についても
考慮に入れる。
公正価値測定の目的を満たすために、企業は、利用できる全ての関連する市場情報を考慮に
入れた金融商品の公正価値の測定手法を設定している。評価対象の金融商品を十分に理解する
ことによって、企業は、評価手法に組み入れるべき同一又は類似の金融商品に関連する利用可
能な市場情報を識別して評価することができる
《3.重要な虚偽表示リスクの評価と評価したリスクへの対応》
《(1) 金融商品に関する全般的な考慮事項》
85.監査基準報告書540第2項は、見積りの不確実性の程度が会計上の見積りに関する重要な虚
偽表示リスクに影響を与えると説明している。将来キャッシュフローの不確実性と変動性が
高い金融商品のようなより複雑な金融商品を利用することによって、特に評価に関して、
要な虚偽表示リスクが高くなることがある。重要な虚偽表示リスクに影響を与えるその他の事
項は、以下を含んでいる。
リスクにさらされている金融商品の保有
金融商品の契約条項(例えば、金融商品自体が他の金融商品を含んでいるかどうか。)
金融商品の性質
《(2) 不正リスク要因》
86.報酬が金融商品の利用から生じる収益に左右される場合、従業員による不正な財務報告に対
する動機が存在することがある企業の報酬制度がリスク選好とどのように関連するかについ
て、また経営者とトレーダーにどのような動機を与えるかについて理解することは不正リス
クの評価に重要となることがある
87.金融市場の状況が悪化している場合、以下を行うため、経営者又は従業員が不正な財務報告
に関与する動機が高まることがある。
個人の賞与を確保する。
従業員又は経営者の不正又は誤謬を隠蔽する。
規制、流動性に関する制限又は借入限度の抵触を回避する。
損失を隠蔽する。
例えば、市場が不安定な時期において取引に関する不適切な判断などを行い、市場価格の極
端な変動や資産価格の予期しない下落によって想定外の損失が生じることがある。さらに、
金調達上の困難は、企業の支払能力について懸念を抱く経営者へのプレッシャーとなる。
88.資産の流用及び不正な財務報告は、有効に運用されているように見える内部統制が無効化さ
れることによって発生することが多い。データ及び仮定に関する内部統制やプロセスレベルの
内部統制を無効化することによって、損失や流用の隠蔽が可能となることがある。例えば、
況が悪化している場合損失を回復しようとして、取引を隠蔽するプレッシャーが増加するこ
とがある。
《(3) 重要な虚偽表示リスクの評価
89.監査基準報告書315に従い、アサーション・レベルで識別したリスクに関する監査人の評価
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は、内部統制のデザインと業務への適用の評価を含んでいる。
アサーション・レベルで識別したリスクの評価は、監査基準報告書330に従ったリスク対
手続(実証手続と運用評価手続の両方を含む)の立案と実施に関する適切な監査アプローチ
を考慮するための基礎を提供している。採用されるアプローチは、統制環境やリスク管理機能
の状況を含めた監査に関連する内部統制の理解企業の事業運営の規模と複雑性及び監査人が
重要な虚偽表示リスクを評価する際に、内部統制が有効に運用されていると想定しているかど
うかによって影響を受ける。
90.監査人によるアサーションレベルでの重要な虚偽表示リスクの評価は、追加的な情報が入
手されるにしたがい、監査の過程で変更されることがある。例えば、記録又は文書の閲覧の際
など、監査の過程で注意を払い続けることによって、監査人は、経営者が以前に識別していな
い、又は監査人に開示しなかった金融商品の存在を示唆するような取決めやその他の情報を識
別することがある。そのような記録と文書には、例えば以下が含まれる
取締役会、監査役会等の議事録
企業の専門的アドバイザーからの請求書や当該アドバイザーとのやりとり
《(4) 内部統制の運用評価手続の実施及びその範囲に関する判断要素
91.十分に確立された内部統制を有する金融機関を対象とする場合、内部統制が有効に運用され
ていると想定できることが多く、したがって、内部統制の運用評価手続は、監査証拠を入手す
る有効な手段となることがある。トレーディングを行っている企業の場合、金融商品の契約量
や、使用するシステムが多岐にわたるため、監査人は、実証手続だけでは十分かつ適切な監査
証拠を入手できないことがある。
ただし、監査基準報告書330第17項は、重要な取引種類、勘定残高、開示等の各々に対して、
用評価手続だけでは十分でなく、実証手続を立案し実施することを監査人に要求している。
92.大量の金融商品取引を行う企業は、より高度な内部統制と、効果的なリスク管理を担う部門
を有していることがある。したがって、監査人は、以下に係る監査証拠を入手する際、内部統
制の運用評価手続を実施する可能性が高い。
取引の発生、網羅性、正確性及び期間帰
勘定残高の実在性、権利と義務及び網羅
93.比較的少量の金融商品取引を行う企業においては、以下の状況に該当する場合がある。
経営者と監査役等は、金融商品及びそれが事業に与える影響に関して、限られた理解しか
有していない。
企業は、相互に関連の少ない、又は全く関連のない数種類の金融商品を保有しているだけ
である。
統制環境が複雑である可能性が低い(例えば、付録に記載された内部統制が整備されてい
ない。)。
経営者は、金融商品を評価するために、外部の価格情報ベンダーが提供する価格情報を利
用している。
外部の価格情報ベンダーの提供する価格情報の利用に関する内部統制が高度でない。
94.企業が比較的少量の金融商品取引を行っている場合、監査人が、企業による金融商品の利用
目的とその金融商品の特徴を理解することは、比較的容易である。そのような状況において、
くの監査証拠は、実証手続により入手することができ、監査人は監査作業の大部分を期末時点
で実施し、第三者に対する約定確認(コンファメーション)が、取引の網羅性、正確性及び実
在性に関する証拠を提供する可能性が高い。
95.監査人は、内部統制の運用評価手続の種類、時期及び範囲について決定する際に、以下のよ
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うな要素を考慮することがある。
金融商品取引の種類、頻度及び取引高
内部統制の強さ
内部統制が、企業の金融商品の取引高に関連するリスクに対応するよう適切にデザインさ
れているかどうか、及び企業の金融商品に対するガバナンスの仕組みが存在するかどうか
を含む。
全般的な統制目的とプロセスに対する特定の内部統制の重要度(金融商品取引をサポート
する高度な情報システムを含む。
内部統制の監視活動及び統制手続において識別された内部統制の不備
内部統制の対象
例えば、判断の行使に関する内部統制か基礎データに対する内部統制か。判断の行使に
関する内部統制の場合には、内部統制に依拠するよりも実証手続が効果的である可能性が
高い。
統制活動に関与する者の能力
例えば、負荷がかかる時期を含め、適切な人員を擁し、企業が有する金融商品の評価を実
施し、検証する能力を持っているかどうか。
金融商品取引に関連する統制活動の実施頻度
内部統制が達成しようとする精度
統制活動の実施に係る証
主な金融商品取引の実施時期
例えば、取引日が期末近くかどうか。
《(5) 実証手続》
96.実証手続の立案は、以下を考慮して行われる。
分析的手続の利用
監査人が行う分析的手続は、企業が行う事業に関する情報を入手するリスク評価手続とし
て有効であるが、単独で実施された場合、実証手続としては余り有効でないことがある。
れは、評価に影響を与える要因が複雑に相互作用し、生じているかもしれない異常な傾向
を覆い隠してしまうことがあるためである。
非定型取引
多くの金融取引は、企業とその取引相手との相対での交渉を通じて、契約が締結される(店
頭取引として知られることが多い。金融商品取引が定型的でなく、企業の通常の活動
から外れている場合には、実証手続を中心とした監査アプローチが、計画した監査目的を
達成するために最も有効な手段となることがある。金融商品取引が定型的に行われていな
い場合、監査人は、企業がこの領域において経験が不足している可能性を考慮に入れて、
査手続の立案と実施を含め、評価したリスクに対応する。
証拠の入手可能性
例えば、企業が外部の価格情報ベンダーを利用する場合、関連する財務諸表のアサーショ
ンに関する証拠は、その企業から入手できないことがある
その他の領域で実施された手続
財務諸表のその他の領域で実施された手続が金融商品取引の網羅性に関する証拠を提供
することがある。例えば、事後的な入出金に関するテストや簿外負債の調査が含まれる。
テスト項目の選定
金融商品ポートフォリオは、様々な複雑性とリスクを伴った金融商品から構成されている
ことがある。そのような場合には、特定項目の抽出によることが適切なことがある
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97.例えば資産担保証券の場合、当該証券に係る重要な虚偽表示リスクへの対応において監査
人は、以下の監査手続のいくつかを実施することを考慮することがある
証券の契約条項、担保となる債権及び証券のクラスごとの証券保有者の権利を理解するた
めの契約文書の検討
経営者のキャッシュ・フロー見積りプロセスに関する質問
期限前返済率、デフォルト率及びデフォルト時損失などの仮定の合理性の評価
ウォーター・フォール(支払順序)の決定手法の理解
公正価値測定の結果と、同様の担保となる債権や契約条項を持つ他の証券の評価額との比
計算の再実施
《(6) 二重目的テスト》
98.内部統制の運用評価手続の目的は、詳細テストの目的と異なるが例えば以下のように、
時に両者を実施することが効率的になることがある。
同じ取引に対する運用評価手続と詳細テストの実(例えば、署名済みの契約書が保管さ
れているかどうかや金融商品の内容が要約表に適切に記載されているかどうかのテスト)
価にする見積りを行う経営のプロセスをテストする場における内部制のテス
《(7) 監査手続の実施時期》
99.監査チームは、金融商品に関連するリスク評価を実施した後に、計画した運用評価手続と実
証手続の実施時期を決定する。計画した監査手続の実施時期は、多くの要因に応じて変わる。
の要因には、内部統制の実施頻度統制の対象となる活動の重要度、及び関連する重要な虚偽
表示リスクが含まれる
100.評価と表示に関する監査手続の大部分は期末に実施する必要があるが、網羅性や実在性など
の他のアサーションに関する監査手続は、期中において実施することができる。例えばIT
統制や新商品に対する承認などの定型的な内部統制に対する運用評価手続は、期中に実施され
ることがある。また、期中において新たな金融商品に対する適切な階層の経営者による承認に
関する証拠を収集して新商品の承認に対する内部統制の運用状況の有効性をテストすること
が効果的なことがある
101.監査人は、例えばモデルによる評価結果を市場取引と比較するなど期中時点においてモデ
ルに対するテストを実施することがある。その他、観察可能な入力数値を使用して評価する金
融商品について、期中に外部の価格情報ベンダーが提供する価格情報の合理性をテストするこ
とがある。
102.重要な判断を必要とする領域については、多くの場合、以下の理由により、期末日近く又は
期末日にテストされる
短期間に評価が著しく変動することがあるため、期中における残高を貸借対照表日の情報
と比較し照合することが困難となる。
企業は、期中と期末の間で金融商品の取引高を増加させることがある。
手入力による仕訳は、期末日後にだけ行われることがある。
非定型的又は重要な取引は、期末日の直前に行われることがある
《(8) 網羅性、正確性、実在性、発生及び権利と義務に関する手続》
103.監査人による手続の多くは、同時に複数のアサーションに対応することができる。例えば、
末の勘定残高の実在性に対応する手続は、取引種類の発生についても対応し、適切な期間帰属
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を確かめるのにも役立つことがある。これは、金融商品が法的な契約から生じるためであり、
査人は、取引記録の正確性を確かめることによって、その実在性についても確かめることがで
きる。さらに、発生及び権利と義務のアサーションに対し裏付けとなる証拠を入手し、取引が
正しい会計期間に記録されていることを確かめることができる。
104.網羅性、正確性及び実在性のアサーションを裏付ける監査証拠を提供する手続には、以下が
含まれる。
銀行口座、売買取引及び保管有価証券明細書の確
監査人に回答が直接送られる取引相手への直接確認(銀行確認状の利用を含む。によっ
て実施することができる。その代替として、取引相手のシステムから情報を入手すること
がある。この場合には、監査人は、確認によって得られる証拠の証明力を評価するに当た
り、情報を送信するコンピュータシステムの改竄を防ぐための内部統制を検討すること
がある。
確認状が受領されなかった場合、監査人は、契約書の検討及び関連する内部統制のテスト
によって、証拠を入手できることがある。しかしながら確認は、多くの場合、たとえ何
らかの付帯契約の識別に役立つことがあったとしても、評価のアサーションに関して十分
な監査証拠を提供するわけではない。
預り機関が提供する明細書は当該機関のシステムら入手した情報と業自身の
記録との照合の検討
これは、自動化された照合プロセスに関連するIT統制の評価と、照合項目が適切に理解
され調整されているかどうかの評価を必要とすることがある。
仕訳入力及び当該仕訳入力の記録を対象とする内部統制の検討
これは、例えば以下に役立つことがある。
仕訳入力権限者以外の従業員が仕訳入力を行ったかどうかの判断
不正クに関連することある通例ないかは不切な末時の訳入力の
個々の契約書の通読と、会計記録を含む、企業の金融商品取引の証憑書類の検討、それに
よる実在性及び権利と義務の検証
例えば、監査人は金融商品に関連する個別の契約を通読するとともに、契約の当初記録時
に行われた会計仕訳を含む証憑書類を検討することがあり、さらに、金融商品の評価に関
する会計仕訳を事後的に検討することもある。このような手続により、取引に固有の複雑
性が十分に識別され、財務諸表に反映されているかどうかについて、監査人が評価できる
ようになる。契約条項及びそれに関連するリスクは、当該権利の存在を確かめるため、
切な専門家によって検討されることが必要である。
内部統制のテスト
例えば内部統制の再実施などによる。
企業の苦情管理システムの検討
取引記録されいなかたために取引相手に支がなされかったとから苦情を
け、その苦情を検討することによって、未記帳の取引が発見されることがある。
記録されていない金融商品を識別するためのマスター・ネッティング契約の検討
105.前の手続は、デリティブ又は保証契約どの一部の金融商品にとって、特に重要であ
る。そのような金融商品は多額の当初投資を必要としないため、実在性の識別が難しくなるこ
とがあるためである。例えば組込デリバティブは、確認手続の対象とされない非金融商品の契
約に含まれていることが多い。
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《4.金融商品の評価》
《(1) 財務報告の枠組みにおいて要求される事項》
106.適正表示の財務報告の枠組みにおいて、公正価値ヒエラルキーが用いられていることがある
(例えば、国際財務報告基準や米国基準)公正価値ヒエラルキーは、通常、測定の不確実性
が増すにつれて、要求される開示の量と詳細さが増加することとなる。公正価値ヒエラルキー
におけるレベル区分は、判断を要することがある。
107.監査人、金融商品関する入力数値が観可能かどうか理解すことは有益である。通
常、測定の不確実性が増すにつれて、重要な虚偽表示リスクは増加し、評価したリスクに対応
した監査手続を実施する。
活発な市場における相場価格以外の入力数値を利用しているかどうかは、測定の不確実性を
は、容易に観察可能なものもあれば、観察不能なものもある。監査人は、入手可能な証拠を評
価し、入力数値が観察可能かどうかを理解するとともに、経営者の偏向に関するリスクを理解
する。
108.監査基準報告書540第7項(3)に従って、監査人は、企業の評価方針と評価手法で利用され
データと仮定に関する手続を検討する。多くの場合、適用される財務報告の枠組みは、評価手
法を規定していない。この場合、監査人は、経営者による金融商品の評価方法に関連して、
えば以下の事項を理解することが有用である。
経営者が正式な評価方針を有しているかどうか、及び有している場合には金融商品に対
して利用される評価技法が、当該方針に従って適切に文書化されているかどうか。
複数のモデルが適用可能な場合、経営者の採用している評価モデルは重要な虚偽表示リス
クを生じさせる可能性が高いか否か。
経営者が、特定の評価技法を選択した際に、金融商品の評価の複雑性をどのような方法で
検討しているか。
経営者が、金融商品の評価に内部開発モデルを使用しているため又は特定の金融商品の
評価に一般的に用いられる評価技法から逸脱した評価技法を使用しているため、より高い
重要な虚偽表示リスクが存在するかどうか。
経営者が外部の価格情報ベンダーを利用しているかどうか。
が、適切な技能と専門知識を有しているかどうか。
利用する評価技法の選択において、経営者の偏向の兆候が存在するかどうか。
《(2) 金融商品の評価に関する重要な虚偽表示リスクの評価》
109.企業が利用する評価技法が個々の状況において適切かどうか、及び評価技法に係る内部統制
が整備されているかどうかを評価するに当たって、監査人は、以下の要因を考慮することがあ
る。
使
て、信頼性の高い見積りを提示することが既に知られているか。
特に極端な状況において評価技法が意図したとおりに機能しており、モデルの設計にお
いて欠陥が存在しないかどうか、及び評価技法が客観的に検証されているかどうか
欠陥の兆候には、関連するベンチマークと不整合な動きをすることが含まれる。
評価技法が、評価される金融商品に内在するリスクを考慮に入れているかどうか。
考慮するリスクには、取引相手の信用度及び金融負債の測定を行う場合には、自己の信用
- 26 -
リスクが含まれる。
評価技法を市場と比較して修正する方法
これには、モデルに使用されている変数の変化に対する評価技法の感応度が含まれる。
市場変数と仮定が継続して使用されているかどうか、また、使用している評価技法市場
変数又は仮定が変更される場合は、それが状況の変化によって説明できるかどうか
仮定が僅かに変化しただけで評価が大きく変動することが、感応度分析によって示されて
いるかどうか。
特定の金融商品の評価モデルの開発を行う部門など、組織構成の検討
特に観察不能な入力数値が関連する場合には、留意が必要である
例えば、モデルの開発を行う部門が取引価格の設定に関与している場合には、モデルの開
発を行う部門がフロンオフィスから機能的にも組織的にも分離されている場合と比べ
て客観性が低くなる。
評価技法の開発と適用に対する責任者の能力と客観性。新規開発モデルへの対応に関する
経営者の経験を含む。
監査人(又は監査人の利用する専門家)は、一つ又は複数の評価技法を独自に設定し、監査
人による評価と経営者が利用した評価技法による評価を比較することもある。
《特別な検討を必要とするリスク》
110.以下のいずれかの状況が存在する場合、リスク評価プロセスにおいて、監査人は金融商品の
評価に関して、特別な検討を必要とするリスクを識別することがある。
金融商品の評価における見積りの不確実性が高い状況(例えば、観察不能な入力数値を伴
うものなど)(監基報 540 10 項、第 14 項及び第 19 項参照)
経営者による金融商品の評価を裏付ける十分な証拠の欠如
経営者の金融商品に関する理解の欠如、又は評価調整の要否を判断する能力を含む、当該
金融商品を適切に評価するために必要な専門知識の欠如
される財務報告の枠組みにける金融商品の測定と示に係る複雑な要事項に関
する経営者の理解の欠如、及び当該要求事項を適切に適用するために必要な経営者の判断
力の欠如
適用される財務報告の枠組みにおいて評価調整が要求又は容認される場合評価技法から
算出された結果に対する評価調整の重要性
111.特な検討を必要とるリスクを生じさせ会計上の見積りに対しては、監査基準報告書
330の要求事項を満たすために実施されるその他の実証手続に加えて、監査基準報告書540第14
項(1)及び(2)では、以下を評価することを監査人に要求している。
(1) 経営者が代替的な仮定若しくは結果を検討した方法及びそれらを採用しなかった理由、
は経者が代替的な仮定若しくは結果を検討しなかった場合おける積りの不確実性の
検討過程
(2) 経営者が使用した重要な仮定の合理性
(3) 経営者が使用した重要な仮定の合理性に関連する場合又は適用される財務報告の枠組み
の適切な適用に関連する場合には、特定の行動方針を実行する経営者の意思とその能力
112.市場が活発でなくなるにつれて、状況の変化によっては、市場価格による評価からモデルに
よる評価へ変更する、又はある特定のモデルから他のモデルへ変更することがある市況が変
化する前に経営者が対応方針を設けていなかった場合、変化への対応が困難になることがある。
モデルを緊急に開発する、又は状況に応じて適切な評価技法を選定するのに必要な専門知識
を経営者が有していないこともある。評価技法が継続して使用されている場合であっても、
- 27 -
融商品の評価に当たって考慮される評価技法及び仮定の適切性は、経営者によって継続的に検
証される必要がある。さらに、合理的な市場情報が入手可能な時期に選択された評価技法は、
定外のストレスがかかった状況では合理的な評価を提示しないことがある。
113.意図的か意図的でないかを問わず、経営者の偏向により影響を受ける可能性は評価の主観
の程度及び測定の不確実性が高いほど増加する例えば、独自の内部開発モデルの方が経営者
にとってより好ましい結果となる場合、経営者は、観察可能な市場の仮定又はデータを無視し
て、当該モデルを使用しようとすることがある不正の意図がない場合でも、適用される財務
報告の枠組みと最も整合すると考えられる範囲内における単一の金額ではなく、より広い範囲
での最も都合のよい単一の金額に判断を偏らせる自然な誘因が存在することがある明確かつ
適切な理由なく評価技法を事業年度毎に変更している場合経営者の偏向の兆候を示している
こともある。
金融商品の評価に関する主観的な判断には何らかの経営者の偏向が含まれるものではある
が、財務諸表利用者に意図的に誤解を与えることを目的としているのであれば、そのような経
営者の偏向は、不正に該当する。
《(3) 監査アプローチの策定》
114.経営者が金融商品を評価する方法のテスト、及び監査基準報告書540第11項から第13項に従
って評価した重要な虚偽表示リスクへの対応に当たって、監査人は、会計上の見積りの性質を
考慮に入れ、以下の手続の一つ又は複数を実施する。
(1) 経者が会計上の見積りを行った方とその基礎データ企業が利用した評価技を含
む。)を検討する。
(2) 適切な実証手続とともに、経営者が会計上の見積りを行った方法に関連する内部統制の運
用評価手続を実施する
(3) 経営者の見積額を評価するため、監査人の見積額又は許容範囲を設定する。
(4) 監査報告書日までに発生した事象が、会計上の見積りに関する監査証拠を提供するかどう
かを判断する。
監査人の多くは、経営者が金融商品を評価した方法及びその基礎データの検討と、内部統制
の運用評価手続の組み合わせが効果的かつ効率的な監査アプローチであると考えている。後発
事象が金融商品の評価に何らかの証拠を提供することがあるが、貸借対照表日後の市況の変化
に対応するために、監査基準報告書540のA62項からA65項において例示されている関連性のあ
るいくつかの要因を勘案することが必要になることがある監査人が経営者が見積りを行う方
法を検討できなかった場合、見積額又は見積りの許容範囲の設定を行うことがある
115.第Ⅰ部に記載のとおり、金融商品の公正価値を見積もるために、経営者は、以下を行うこと
がある。
外部の価格情報ベンダーが提供する情報を利用する。
モデルを含む様々な評価技法を使用して独自の見積りを行うためにデータを収集する。
見積りを行う専門家を業務に従事させる
多くの場合、経営者はこれらのアプローチを組み合わせることがある。例えば、経営者は独
自の価格設定プロセスを有する一方で、独自に算出した価格を検証するために外部の価格情報
ベンダーを利用することがある。
《(4) 経営者が外部の価格情報ベンダーを利用する場合における監査上の考慮事項》
116.経営者は、保有する金融商品の評価において、プライシング・サービベンダー又はブロ
法、及びプライシングサービス・ベンダーの利用方法を理解することは監査人が必要な監
査手続の種類と範囲を決定する際に役立つ。
- 28 -
117.経営者が外部の価格情報ベンダーを利用する場合、以下の事項が関連することがある。
外部の価格情報ベンダーの種類
いくつかの外部の価格情報ベンダーは、価格算定プロセスに関して多くの情報を提供して
いる。例えば、プライシングサービスンダーは、資産の分類別に当該金融商品の評
価に用いた手法、仮定及びデータに関して情報を提供することが多い。
反対に、ブローカーは相場価格の設定に利用される入力数値と仮定に関して、情報を提供
しない、又は限られた情報のみを提供することが多い。
利用される入力数値の種類及び評価技法の複雑性
外部の価格情報ベンダーが提供する価格の信頼性は、入力数値の観察可能性及び特定の証
券又はその他の資産の評価における手法の複雑性に応じて様々である。例えば、流動性が
高い市場で活発に取引される株式の価格の信頼性は、流動性が高い市場で取引されている
が、測定日に取引がなかった社債の価格の信頼性より高いまた、そのような社債の価格
の信頼性は、割引キャッシュフローモデルを使用して評価される資産担保証券の価格の
信頼性より高い。
外部の価格情報ベンダーの評判と経験
例えば、外部の価格情報ベンダーは特定の金融商品について経験を有しており、その金融
商品においては経験があると認められていることがあるが他の金融商品においては同様
の経験がないことがある。また、外部の価格情報ベンダーに関する監査人の過去の経験が
役立つことがある。
外部の価格情報ベンダーの客観性
例えば、企業が金融商品を購入した取引相手や被監査企業と緊密な関係にある企業から
経営者が価格を入手した場合、その価格は信頼性が低いことがある。
外部の価格情報ベンダーの利用に関する内部統制
外部価格情報ベンダー提供する情報の信頼性を評価すための内統制の整備状
によって、公正価値測定の信頼性は影響を受ける例えば、経営者は以下の内部統制を整
備することがある。
外部の価格情報ベンダーの利用について、当該ベンダーの評判、経験及び客観性を
めて検討し承認する。
価格と価格関連データの網羅性、目的適合性及び正確性を判断する。
外部の価格情報ベンダーの内部統制
監査対象とする金融商品の評価に関する内部統制とプロセス。例えば、外部の価格情報ベ
ンダーは価格設定方法に対して強力な内部統制を有することがあり、これには、買手と売
手の両方の顧客がプライシングサービスベンダーから受領した価格の再検討を求める
ための正式なプロセスの利用が含まれる。顧客から適切な証拠による裏付けが提示された
場合、この内部統制によって、外部の価格情報ベンダーが、市場参加者が利用可能な情報
を十分に反映して、絶えず価格を見直すことができるようになる。
118.外部の価格情報ベンダーが提供する情報に関して、監査人が証拠を収集する手法には、以下
が含まれることがある
活発な市場における相場価格による入力数値に関して、外部の価格情報ベンダーの提供す
る情報を観察可能な市場価格と比較すること。
内部統制とプロセス、評価技法、入力数値及び仮定に関して、外部の価格情報ベンダーか
ら開示された情報を検討すること
の価格情報ベンダーが提供る情報の信頼性を評価るために経営者が備した内
部統制をテストすること。
関係する特定の金融商品に使用されている内部統制とプロセス、評価技法入力数値及び
仮定を理解しテストするために、外部の価格情報ベンダーで手続を実施すること。
- 29 -
外部の価格情報ベンダーから入手した価格が、他の価格情報ベンダーが提供する価格、
業の積り又は監査人にる独自の見積りと比較するとにより合理であるかどう
を評価すること。
評価技法、仮定及び入力数値の合理性を評価すること。
外部の価格情報ベンダーによって価格設定された金融商品に関して、見積額又は許容範囲
を設定し、その結果が合理的な範囲内にあるかどうかを評価すること。
価格評価に関する受託業務に係る内部統制の保証報告書を入手すること。
プライシング・サービスベンダーは、価格設定に使用するデータに係る内部統制を説明
するために、監査・保証実務委員会実務指針第 86 号「受託業務に係る内部統制の保証報
告書」等に準拠して作成された報告書を、データの利用者に提供することがある。価格設
定に使用したデータの作成方法を理解し、プライシングービス・ベンダーの内部統制
に依拠できるかどうかを評価するため、経営者が報告書を要求したり、監査人が報告書の
入手を検討したりすることがある
119.監査人は、複数の外部の価格情報ベンダーから価格を入手することにより、測定の不確実性
に関して有益な情報を得ることもある。価格の幅が広い場合は、測定の不確実性が高いことを
示していることがあるまた、金融商品が、データ及び仮定の僅かな変化に対して感応度が高
いことを示していることがある。価格の幅が狭い場合は、測定の不確実性が低いことを示すこ
とがある。また、データと仮定の変化に対する感応度が低いことを示していることがある。
複数の情報源から価格を入手するのが有益なこともあるが、特に、活発な市場における相場
価格以外の入力数値を使用する金融商品を検討する場合には、複数の情報源から価格を入手し
ても、それだけでは十分かつ適切な監査証拠にはならないことがある。これは、以下の理由に
よる。
(1) 価格設定の情報源が複数存在すると思われる場合であっても、同一の情報源を利用してい
ることがある。
(2) 公正価値ヒエラルキーに金融商品を分類するため、外部の価格情報ベンダーが価格を決定
する際に使用した入力数値を理解することが必要になることがある。
120.状況によっては、監査人が、価格の算出に使用されたプロセスを理解することができない場
合がある。これには、価格の信頼性を判断するプロセスに関する内部統制を理解できない場合
が含まれる。また、使用された仮定及びその他の入力数値を含め監査人がモデルに関する情
報を入手できないことがある。このような場合、監査人は、評価したリスクへの対応として、
営者の見積額を評価するために、見積額又は許容範囲を設定することがある。
《(5) 経営者がモデルを使用して公正価値を見積もる場合における監査上の考慮事項
121.54012(2)
合、使用された測定方法は状況に応じて適切であり、経営者が使用した仮定は適用される財務
報告の枠みにおける測定目的に照らして合理的であるかどうかを評することを監査人に
要求している。
122.経営者が、外部の価格情報ベンダーを利用している場合、または独自に評価を行う場合のい
ずれにおいても、金融商品の評価にモデルが使用されることが多い。特に活発な市場における
相場価格以外の入力数値を使用する場合に多いモデルに関する監査手続の種類、時期及び範
囲の決定に当たって、監査人は、モデルで使用される手法、仮定及びデータを検討することが
ある。
観察不能な入力数値を使用するような、より複雑な金融商品を検討する場合、手法、仮定及
びデータの全てをテストすることにより、有用な監査証拠が提供されることがある。一方、
債価格の計算のようにモデルが単純で一般に広く知られている場合、モデルで使用された仮
定とデータに焦点を当てることにより、有用な監査証拠が提供されることがある。
- 30 -
123.監査人がモデルをテストするための手法には、主に以下の2つがある。
(1) 経営者が使用したモデルの適切性、使用した仮定及びデータの合理性、並びに計算の正確
性を検討することによって、経営者のモデルをテストする
(2) 監査人による独自の見積りによる評価と企業の評価を比較する。
124.金融商品の評価が観察不能な入力数値に基づいている場合、監査人の検討事項には、例えば
経営者が以下の事項をどのように裏付けているかを含む。
評価対象となる金融商品に関連する市場参加者の識別と特徴
当初認識における観察不能な入力数値の決定方法
市場参加者が使用する仮定を反映させるため、経営者が設定した仮定に対して修正が行わ
れたか。
状況において利用可能な最善の情報を組み込んだかどうか。
該当する場合には、仮定の設定の際に類似した取引を考慮したか
観察不能な入力数値を使用する場合のモデルの感応度分析、及び測定の不確実性に対応す
るために調整が行われているかどうか。
125.さらに、監査人の業種に関する知識、市況に関する知識、(守秘義務に留意した上で)他社
における金融商品の評価に関する理解、及びその他の関連する価格指標は、監査人が金融商品
の評価をテストし、経営者の評価が全体として合理的かどうかを検討する際に役立つ。経営者
による金融商品の評価が一貫して過度に積極的又は保守的であると見受けられる場合、経営者
の偏向の可能性を示していることがある。
126.観察可能な外部証拠がない場合、企業内部の全ての適切な経営管理者層が、文書化を含め、
融商品の評価に関して検討を行っているかどうかについて監査人が評価する必要があること
がある。
127.市場が活発な状態ではなくなった場合、市場が混乱した状態になった場合、又は入力数値が
観察不能である場合には、経営者による金融商品の評価は経営者の判断により影響を受けや
すくなり、客観的な裏付けを入手することが難しくなる。その結果、信頼性が相対的に低くな
ることがある。そのような状況では、監査人は、以下を組み合わせてモデルをテストすること
がある。
企業の内部統制の運用評価手続の実施
モデルの設計と運用の評
モデルで使用された仮定及びデータのテスト
経営者の評価結果と監査人の見積額又は許容範囲若しくは監査人が利用する第三者が開
発した評価技法による算出結果との比較
128.企業の評価手法に使用された入力数値をテストする際例えば、財務報告の枠組みにより公
正価値ヒエラルキーに関する開示が求められる場合には、監査人は、適用される財務報告の枠
組みで要求される開示を裏付けるための証拠も入手することがある。例えば、企業の評価技法
で使用された入力数値が適切であるかどうかを評価するための監査人の実証手続と企業の感
応度分析に対するテストは、開示の妥当性に関する監査人の評価に役立つことがある。
《経営者が使用した仮定の合理性の評価
129.モデルに使用する仮定に関する変数が合理的な範囲で変化することによって、金融商品の測
定に重要な影響を与える場合、当該仮定は重要とみなされることがある(監基報540のA106項
参照)
経営者は感応度分析実施することにより代替的な仮定又は結を検討することが
- 31 -
る。仮定の主観性の程度は、測定の不確実性に影響を与える。例えば観察不能な入力数値の場
合など、仮定の主観性が高いことにより、監査人は特別な検討を必要とするリスクがあると判
断することがある。
130.モデルへの入力数値として使用される仮定を含め、経営者が使用した仮定をテストする監査
手続には、以下の検討が含まれることがある。
経営者が、市場の入力数値を仮定の設定に組み入れたかどうか。組み入れた場合にはその
組入方法はどうか。関連する観察可能な入力数値を最大限利用し、観察不能な入力数値の
利用を最小限にしようとすることが一般的には望ましい。
仮定が、観察可能な市況及び金融資産又は金融負債の特徴と整合しているかどうか。
市場参加者が使用する仮定を提供している情報源が適切で信頼できるかどうか、及び市場
参加者が使用する仮定が複数存在する場合に経営者が使用する仮定をどのように選択し
たか。
感応度分析において、仮定が僅かにしか変化していないにもかかわらず、金融商品の評価
が大きく変化しているかどうか。
経営者が使用する仮定の評価に関する詳細な検討事項については、監査基準報告書540のA76
項からA82項に記載されている。
131.将来についての判断に関する監査人の検討は、判断を行う時点において入手可能な情報に基
づいている。その後発生した事象によって、当初合理的であった判断とは整合しない結果とな
る場合がある。
132.割引現在価値の計算において評価の不確実性を考慮するために、将来キャッシュフロー
に関する仮定を修正するのではなく、割引率を修正することがある。そのような場合、監査人
は、類似の証券に関する観察可能な取引を調査して経営者が使用する割引率と比較したり、
自のモデルにより割引率を計算して経営者が使用した割引率と比較したりすることにより、
引率に焦点を当てた手続を実施することがある
《(6) 経営者が専門家を利用している場合における監査上の考慮事項
133.第Ⅰ部に記載のとおり、経営者は、保有する証券の一部又は全てを評価するために、評価の
専門家を利用することがある。そのような専門家には、ブローカー、投資銀行、プライシング・
サービス・ベンダー又は評価を専門とするその他の企業が含まれる。
134.監査基準報告書500第7項は、経営者の利用する専門家の業務により作成された情報を監査
人が評価する場合における要求事項を含んでいる。経営者の利用する専門家と当該専門家の業
務に関する監査人の手続の範囲は専門家の業務が監査人の目的にとってどの程度重要かによ
って決まる。
経営者の利用する専門家の業務の適切性を評価することにより、監査人は、当該専門家の算
出し価格又は評価が十分かつ適切な監査証拠を提供していかどうを判断できることが
ある。監査人が実施する手続には、例えば以下が含まれる
経営者の利用する専門家の適性、能力及び客観性の評価
例えば、企業と専門家の関係、市場における専門家の評判と地位、特定の種類の金融商品
に関する専門家の経験、及び適用される財務報告の枠組みにおける評価に関する専門家の
理解など
経営者の利用する専門家の業務の理解
例えば、利用した評価技法の適切性、及び評価技法に使用された主な市場変数と仮定の評
経営者の利用する専門家の業務の適切性に関する監査証拠としての評価
- 32 -
ここでは、個々の金融商品に関する専門家の業務の適切性に焦点を当てる関連する金融
商品ついてサプルを出し、そのサンプルにして、異るデーと仮定を使用
て、独自の見積りを設定(見積額又は許容範囲の設定に関する第 136 項及び第 137 項を参
照)し、当該見積りを経営者の利用する専門家による見積りと比較することが適切な場合
がある。
その他の手続として、以下の事項が含まれることがある。
経営者の見積額と監査人の見積額を比較し、経営者が一貫して高めの見積りを行っ
いる、又は低めの見積りを行っているかを判断すること。
135.経営者による金融商品の評価を支援するために、経営者の利用する専門家が仮定を設定又は
識別することがある。そのような仮定は、経営者が使用することにより経営者自らの仮定とな
り、他の経営者の仮定と同じ方法で監査人が検討することになる。
《(7) 見積額又は許容範囲の設定》
136.監査人は、経営者の評価の合理性を評価する際に利用する見積りの許容範囲を設定するため
に、評価技法を使用し当該技法で利用される入力数値と仮定を調整することがある。監査人
が見積額又は許容範囲を設定する際に、本実務ガイダンスの第106項から第135項が役立つこと
がある。
監査基準報告書540第12項(4)に従い、監査人が経営者と異なる仮定又は方法を利用する場
合には、監査人の見積額又は許容範囲の設定において関連する変数を考慮に入れていることを
確かめ、経営者の評価との重要な差異を評価するのに十分な程度に、経営者が使用する仮定又
は方法を理解する。監査人は、経営者の評価の合理性を評価するために監査人の利用する専
門家の業務を利用することが有用であると判断することがある。
137.例えば、外部の価格情報ベンダーが内部で開発したモデルとソフトウェアを使用し、関連す
る情報へのアクセスを許容していない場合など監査人は、経営者の仮定又は方法を理解して
十分な証拠を入手しようとしても入手できないと判断することがある。
そのような場合、監査人は、経営者の見積額を評価するための見積額又は許容範囲の設(監
基報540第12項(4)参照など、重要な虚偽表示リスクに対応するためのその他の手続を実施で
きず、金融商品の評価について十分かつ適切な監査証拠を入手できないことがある監査基準
報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」には、監査人が十分かつ適切
な監査証拠を入手できない場合の監査人の対応が記述されている。
《5.金融商品の表示と開示》
138.監査基準報告書200第4項及びA2項に記載のとおり、経営者の責任には、適用される財務報
告の枠組みに準拠する財務諸表の作成が含まれている。
財務報告の枠組みは金融商品に関連するリスクと不確実性を含む、企業の金融商品取引の
影響に関して、財務諸表の利用者が有意義な評価を実施できるようにするため、財務諸表上の
開示を要求することが多い。測定の基礎に関する開示の重要性は、金融商品の不確実性が増加
するにつれて高まり、入力数値の観察可能性によっても影響を受ける。
139.適用される財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を提示することにより、経営者は、明示的
か否かにかかわらず関連する開示を含めた財務諸表の各構成要素の表示及び開示について表
明を行っている。表示及び開示に関するアサーションには、以下が含まれる。
(1) 発生及び権利と義
開示されている取引、会計事象及びその他の事項が発生し企業に関係していること
(2) 網羅性
財務諸表に開示すべき事項が全て開示されていること。
- 33 -
(3) 分類と明瞭性
財務情報が適切に表示され開示が明瞭であること。
(4) 正確性と評価
財務情報及びその他の情報が適正かつ適切な額で開示されていること。
開示の監査に関する監査人の監査手続は、これらのアサーションを考慮して立案される。
《金融商品の表示と開示に関する手続》
140.金融商品の表示と開示に関する特に重要な領域には、以下が含まれる。
財務報告の枠組みは、一般的に、産、負債、益及び費用を補足的に説明するため、
積り及び関連するリスクと不確実性に関して、追加の開示を要求している監査人は、
スクと感応度分析に関する開示に焦点を当てることが必要になることがある。監査人がリ
スク評価手続と統制活動のテストの実施中に入手した情報は、例えば以下に関して財務
諸表の開示が適用される財務報告の枠組みに準拠しているかどうかについて、監査人が結
論を出すための証拠となることがある。
企業の定めた会計方針を含む、金融商品の利用に関する企業の目的と戦
金融商品に関連するリスク管理に関する企業の内部統制
金融商品に関連するリスクと不確実性
リスク管理システムなど伝統的な財務報告システム以外のシステムから情報が得られ
ることがある。監査人が、開示に関連して評価したリスクへの対応において、以下の項目
をテストすることがある。
開示する情報を作成するために利用されるプロセス
開示の作成に利用されるデータを対象とする内部統制の運用状況の有効
監査基準報告書 540 19 項は、監査人に、適用される財務報告の枠組みに照らして、財
務諸表における見積りの不確実性に関する開示の妥当性を評価するため特別な検討を必
要とするスクを生じさる会計上の見積りに関する示についての続を実施する
とを要求している。特別な検討を必要とするリスクとなる金融商品に関して、監査人は、
用される財務報告の枠組みに準拠した開示がなされている場合であっても、その状況及び
関連する事実を考慮すると、見積りの不確実性の開示が妥当ではなく、財務諸表が適正表
示を達成しない可能性があると判断することがある。
監査基準報告書 705 は、経営者が行った開示が妥当でない又は利用者の誤解を招くと監査
人が判断する場合における監査意見への影響に関する指針を提供している。
監査人はまた、例えば、全ての関連する情報が財務諸表(又は添付の報告書)に含まれて
いるが、財務諸表の利用者が金融商品のポジションを理解するには不十分である、又は財
務諸表の金額の背景に関連する定性的な開示が十分にされていないことがあるなど開示
が網羅的かつ理解可能かどうかを検討することもある。例えば、たとえ企業が感応度分析
を開示している場合であっても、評価の変化、財務制限条項、担保要求及び企業の財務流
動性によて企業に生じ可能性のあるリスクと不確性を十分に記して開示して
ないことがある。
監査基準報告書 260「監査役等とのコミュニケーション」は、会計方針、会計上の見積り
及び財務諸表の開示を含む、企業の会計実務の重要な質的側面に関する監査人の見解を含
めた、監査役等とのコミュニケーションについて、要求事項と適用指針を規定している。
141.例えば期と長期の類など、金融商品の証手続において表示適切性を検討すること
は、監査人による表示及び開示の評価に有用である。
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《6.その他の関連する監査上の考慮事項
《(1) 経営者確認書》
142.監査基準報告書540第21項は、監査人に、経営者が会計上の見積りを行う際に使用した重要
な仮定が合理的であると判断しているかどうかについて経営者確認書を入手することを要求
している。なお、監査基準報告書580「経営者確認書」第4項は、経営者確認書自体は、記載
されている事項に関する十分かつ適切な監査証拠とはならないとしている。
監査が経営者確認書入手以外の監査手続よって十分かつ適切な監査証拠を入手で
なかった場合、監査基準報告書705に従って、監査範囲の制約となり、監査報告書に対して影
響を与えることがある。監査基準報告書580第12項は、監査人に、監査基準報告書で要求され
ている確認事項に加えて、財務諸表又は財務諸表における特定のアサーションに関連する他の
監査証拠を裏付けるため、その他の事項について経営者確認書を入手する必要があると判断し
た場合、該確認事項についての経営者確認書を提出するように要請ることを要求してい
る。金融商品の取引高と複雑性に応じて、金融商品に関して入手した他の証拠を裏付けるため
に、経営者確認書に以下を含めることがある。
金融商品に関する経営者の保有目的
例えば、それらがヘッジ、資産と負債の総合管理(ALM)又は投資目的で利用されている
かどうか。
財務諸表の表示の適切性に関する事項
例えば、金融商品取引を売買取引又は金融取引として計上することの適切性
以下のような金融商品の財務諸表における開示に関する事項
開示の基礎となる記録は、全ての金融商品取引を反映している。
全ての組込デリバティブが識別されている。
全ての取引が独立第三者間の条件で行われていること。
取引の契約条項
金融商品の評価の適切性
金融商品に関する付帯契約の有無
売建てオプションの契約の有無
一定の方針を実行する経営者の意思と能
なお、監査基準報告書 540 A79 項は、経営者の意思と能力に関する証拠を入手するため
の手続を例示している
後発事象が、財務諸表に含まれる金融商品の評価及び開示に与える影響
《(2) 監査役等とのコミュニケーション》
143.金融商の評価に伴不確実性に関連して別された特別な検討必要とするリスクが財
務諸表に与える影響は監査役等の関心事となることが多い。監査人は、公正価値測定に利用
された重要な仮定の性質と結果、仮定の設定における主観の程度、及び公正価値で測定されて
いる項目の財務諸表全体に対する相対的な重要性についてコミュニケーションを行うことが
ある。さらに、金融商品契約の締結及び事後測定のプロセスを対象とする適切な内部統制の必
要性について、監査役等とのコミュニケーションを要することがある。
144.監査基準報告書260は、財務諸表監査において、監査役等とのコミュニケーションに関する
実務上の指針を提供している。金融商品に関して監査役等とコミュニケーションを行うべき事
項には、以下が含まれる。
融商取引の性質若しくは範又は当該取引に関連するリクに関する経者の理解
の欠如
- 35 -
監査人が監査の過程で識別した、企業の金融商品取引に関連するリスク管理や内部統制に
係る整備状況又は運用状況における重要な不備
監査基準報告書 265「内部統制の不備に関するコミュニケーション」は、経営者への内部
統制の不備に関するコミュニケーション、及び監査役等への内部統制の重要な不備に関す
るコミュニケーションについて、要求事項及び適用指針を提供している
監査基準報告書 265 は、内部統制の不備は、監査基準報告書 315 に従って監査人がリスク
評価手続を実施する過程で、又は監査の他の段階で識別されることがあると説明している。
者又は経営者の利用する専家が実施する評価に関る十分かつ適切な査証拠を
入手しようとした際に直面した困難な状況
例えば、経営者の利用する専門家が使用する評価手法、仮定及びデータを経営者を通じて
も入手できず、経営者の利用する専門家からも監査人に開示されない場
監査人と経営者又は経営者の利用する専門家との間での評価に関する判断の重要な相違
金融商品に関連する測定の不確実性を含む、財務諸表で開示が要求される重要なリスクと
エクスポージャーが、企業の財務諸表に与える影響
諸表における金融商品取引係る会計方針の選択と示の適切性に関す監査人の
見解
金融商品に対する企業の会計実務と財務報告の質的側面についての監査人の見解
金融商品の取得、売却及び保有に対する包括的かつ明瞭に文書化された方針の欠如
方針には、運用管理、金融商品をヘッジとして指定する手続、及びエクスポージャーの監
視が含まれる。
コミュニケーションの適切な時期は、業務の状況によって様々であるが監査期間中に直面
した困難な状況に対処するために監査役等が監査人を支援できる場合又は除外事項付意見に
つながる可能性が高い場合には速やかにコミュニケーションを行うことが適切なことがある。
《規制当局等とのコミュニケーション》
145.場合によっては監査人は、金融商品に関係する事項に関して、監査役等に加えて、規制当
局と直接的にコミュニケーションを行うように要求される又はそれが適切であると考えるこ
とがある。例えば、監査基準報告書250「財務諸表監査における法令の検討」は、監査人に、
法行為を識別した、又はその疑いがある場合、規制当局等に報告する責任があるかどうかを判
断することを要求している。そのようなコミュニケーションは、監査全体を通じて有益なこと
がある。
本実務ガイダンス(2022 10 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映してい
る。
監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022 年7
21 日改正)
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《付録 融商品に関する内部統制の例示》
1.本付録は、トレーディング目的か投資目的かを問わず、金融機関等の大量の金融商品取引を
行う企業における内部統制に関する一般的な留意点と内部統制の例を記載している内部統制
をどのように整備し、運用するかは、個々の企業等が置かれた環境や事業の特性、規模等によ
って異なるものであり、また、企業の経営者の判断によって決定されるべきものであるため、
付録で例示されている内部統制は、必ずしも整備しなければならないものではない
企業は、その規模、産業及び金融商品取引の範囲に応じて、様々な統制環境とプロセスを構
築すことがある。約定確認(コンファメーション)と清算関の利に関する詳細な情報
は、本実務ガイダンス第25項及び第26項に記載されている
2.重要な虚偽表示が生じないようにするために、様々なレベルの内部統制を組み合わせること
(例えば、防止的統制、発見的統制、及び監視活動を組み合わせる。)が必要なことがある。
《1.企業の統制環境》
《(1) 金融商品の利用に必要な能力の定義》
3.一部の金融商品はその複雑性により、企業内の少数の個人しか当該金融商品を十分に理解
していない、又は当該金融商品の評価について必要な専門知識を継続的に有していないこと
がある。金融商品に関連する専門知識が不十分なまま金融商品を利用する場合、重要な虚偽表
示リスクが増加する。
《(2) 取締役会や監査役等の参画》
4.取締役会や監査役等は、経営者による企業の全般的なリスク選好を監督又は監査し、企業の
金融品に関連する業務の監視を行う。金融商品の取得、売及び保に関する企業の方針
は、金融商品に関連する業務に関与する者のリスクに対する姿勢及び専門知識に応じて決定さ
れる。さらに、企業は、以下を目的とする企業統治の構造や内部統制のプロセスを構築するこ
とがある。
(1) 投資の意思決定及び全ての重要な測定の不確実性の評価について取締役会及び監査役等
とコミュニケーションを行うこと
(2) 金融商品取引を実行する際、企業の全般的なリスク選好を評価すること。
《(3) 組織構造》
5.企業における金融商品に関連する業務は、集中的に行われることもあれば、分散して行われ
ることもある。金融商品に関する活動及び意思決定は、経営管理情報を正確かつ信頼性を持っ
て、適時に入手できるかどうかに大きく依存するこれらの情報を収集及び集約することは、
業の拠点又は事業の数が増加するにしたがって困難となる。統制活が分散することに伴
い、金融商品に関連する重要な虚偽表示リスクが増加することがある。特に、企業が複数の拠
点を有し、その一部が海外に存在する場合に該当することがある。
《(4) 権限と責任の付与
《投資及び評価に関する方針
6.金融商品の取得、売却及び保有について明記された方針が取締役会の承認を受けており
れに基づいて金融商品取引に対する指示を与えることにより、経営者は、事業上のリスクを受
け入れ、管理するための効果的なアプローチを確立することができる。また、リスク管理活動
に関連する企業の目的その目的に合致して利用可能な投資及びヘッジの選択肢に加え、以下
の事項が記載されている場合、当該方針は更に明確となる
(1) 経営者の専門知識の程度
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(2) 企業の内部統制及び監視システムに必要とされる高度化の水準
(3) 企業の資産及び負債の構成
(4) 流動性を維持し資本の毀損に耐える企業の能力
(5) 経営者が企業の目的に合致すると判断している金融商品の種類
(6) 経営者が企業の目的に合致すると判断している金融商品の利用方法(例えば、デリバティ
ブを投機目的で利用するかどうか、又はヘッジ目的のみに利用するかどうか。)
7.経営者は、金融商品の評価に係る能力に応じた方針を策定し金融商品の評価に関する責任
者に当該方針を遵守させるための内部統制を構築することがある。これには、以下が含まれる
ことがある。
(1) 金融商品の評価手法の設計及び検証のためのプロセス(測定の不確実性に対応する方法を
含む。)
(2) 観察可能な入力数値を最大限に利用する方針、及び金融商品の評価を裏付けるために入手
すべき情報の種類に関する方針
8.小規模企業では、金融商品の取引が頻繁でなく、経営者の知識と経験が少ないことがある
のような場合においても、金融商品に関する方針を設定することは、企業が、そのリスク選好
について判断し、特定の金融商品に対する投資が定められた目的に適合しているかどうかを検
討するのに役立つ。
《(5) 人事に関する方針と管理》
9.企業は、フロントオフィスとバックオフィスの主要な従業員に対して、強制的に休暇を
取得させる方針を設定することがある。このような内部統制は、不正の防止と発見の手段とし
て利用され、特に金融商品取引に関与する者が架空の取引を行っている場合や、取引を正確に
記録していない場合には有効である。
《(6) 受託会社の利用》
10.業は、金融商品の取得若しくは売却の実行取引の記録又は金融商品の評価のために、
託会社(例えばアセット・マネジャー)を利用することがある。一部の企業は、保有する金融
商品に関する報告の基礎とするために、受託会社を利用することがある。しかしながら、経営
者が、受託会社において整備されている内部統制を理解していない場合には、監査人は、受託
会社の内部統制に依拠するための十分かつ適切な監査証拠を入手できないことがある。
監査基準報告書402「業務を委託している企業の監査上の考慮事項」では、企業が受託会
の提供する業務を利用する場合の監査人による十分かつ適切な監査証拠の入手に関する実務
上の指針を提供している。
11.受託会社を利用することにより、金融商品に対する統制環境が強化されることもあれば、
められることもある。例えば受託会社は、金融商品に関する経験が企業の経営者よりも豊富な
ことがある。また、財務報告に対するより強力な内部統制を整備していることがある。また、
託会社を利用することにより、職務の分離をより徹底できることがある。一方、受託会社の統
制環境が脆弱な場合もある。
《2.企業のリスク評価プロセス》
12.企業のリスク評価プロセスは金融商品の利用から生じる事業上のリスクを経営者が識別す
る方法を確立するものであり、これには、経営者によるリスクの重要性の見積り、リスクの発
生可能性の評価、及びリスク管理の方法の決定が含まれる
13.企業のリスク評価プロセスに基づいて、経営者は管理すべきリスクを決定する。リスク評価
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プロセスの目的は、経営者が確実に以下を行うことにある
(1) 金融商品取引を行う目的及びその仕組み(例えば、企業が金融商品取引を行う経済性及び
事業上の目的)を含め、金融商品に内在するリスクについて金融商品取引の実行前に理解す
ること。
(2) 特定の金融商品に関連するリスクに相応した適切なデューデリジェンスを実施すること。
(3) 市況が金融商品のエクスポージャーに及ぼす影響を理解するためにポジションを監視す
ること。
(4) 必要に応じてリスエクスポージャーを減少又は変化させ風評リスクを管理するため
の手続を整備すること
(5) これらのプロセスを厳格に監督及び検討すること。
14.リスク・エクスポージャーを監視及び管理する体制は、以下のような特徴を有する。
(1) 取締役会が決定したリスクに対する企業の姿勢と整合し、適切である。
(2) 金融商品や取引の種類及びその目的に応じて承認権限のレベルが明確化されている。職務
遂行に必要な能力に関する経営者の方針に基づき、取引を行うことが認められている金融
品と承認権限のレベルは、金融商品に関連する業務に関与する者の専門知識を反映して決
されている。
(3) 各種のリスクに対する許容可能なエクスポージャーの限度が適切に設定されている。許容
可能なエクスポージャーの水準は、リスクの種類又は取引相手に応じて異なることがある。
(4) 財務上のリスクと統制活動に対して、客観的かつ適時に監視が行われている。
(5) 金商品のエクスポージャー及びリク並びに金融商品引に関するリスク管理結果
が、客観的かつ適時に報告されている。
(6) 経営者による特定の金融商品に関するリスク評価の実施状況が評価されている
15.企業がさらされているリスクの種類と程度は、取り扱う金融商品の種(金融商品の複雑性
や取引高を含む。)に直接的な影響を受ける。
《(1) リスク管理を担う部門》
16.大量の金融商品取引を行う大規模な金融機関などの一部の企業ではリスク管理を担う部門
を設置することが法令で求められている、又は任意でそれを設置していることがある。リスク
管理を担う部門は、金融商品取引の執行部門及び管理部門から分離される当該部門は金融
商品に関連する業務の報告と監視に関する責任を有しており、取締役会により設置されたリス
ク管理委員会が含まれることがある。この領域における主な責任には、例えば以下が含まれる。
(1) 取締役会が設定したリスク管理方針の実施(企業がさらされる可能性のあるリスクの分析
を含む。)
(2) リスク・リミットの設定及び当該リスク・リミットが実際に運用されることの確保
(3) ストレスシナリオを作成し、保有するポジションのポートフォリオに対する感応度分析
を行うこと(ポジションの異常な変動の検討を含む。)。
(4) 新しい金融商品の検討と分析
17.金融商品に関して、貸借対照表上で認識されている金額以上の損失が発生するリスクが存在
することがある。例えば、企業は商品(コモディティ)の市場価格が急落した場合、担保や委
託証拠金に関する取決めに基づき当該商品(コモディティ)の先物ポジションを手仕舞いし
て損失を確定させることを余儀なくされることがある。場合によっては、潜在的な損失が、
業の継続企業の前提に重要な疑義を生じさせることもある
企業は、市場リスクの影響を受ける金融商品について、一定の仮定に基づく影響を評価する
ため、感応度分析やバリューアットリスクによる分析を実施することがある。ただし、
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リューアットリスクによる分析は、企業に影響を及ぼす可能性のあるリスクを完全に反映
するものではない。また、感応度分析やシナリオ分析にも、一定の限界がある。
18.リスク管理を担う部門を設置するかどうかまた設置する場合にはどのように構築するかの
検討は、金融商品の取引高と高度化のレベル及び関連する法令により要求される事項によって
影響を受ける。
リスク管理を担う部門を分離して設置しない企業(例えば、金融商品の取扱いが比較的少量
である、又は余り複雑でない金融商品を取り扱う企業)の場合金融商品に関連する業務の報
告と監視は、会計若しくは財務部門の責任若しくは経営者の全体的な責任の一環として実施さ
れている、又は取締役会が設置したリスク管理委員会により実施されていることがある。
《企業の情報システム》
19.企業の情報システムの主な目的は、全ての取引を正確に把握及び記録すること、取引を決済
すること並びに取引を評価することである。また、金融商品のリスク管理を行い、内部統制に
より監視するための情報を作成することも企業の情報システムの主な目的に含まれる。
大量の金融商品取引を行う企業の場合には、情報システムに問題が生じることがある。例え
ば、複数のシステムが存在しているが統合が不十分で、十分な内部統制を伴わない手作業によ
る転記が行われている場合には問題となる。
20.一部の金融商品は大量の会計仕訳が必要となることがある金融商品に関連する業務の複
雑化に伴い、情報システムの高度化の必要性が高まる。金融商品に関して生じる特有の問題に
は、以下が含まれる。
(1) 小規模企業などにおいて、情報システムに金融商品取引を処理する能力がない又は金融
商品取引を処理するための適切な設定がされていないことがある(特に、企業が以前に金融
商品を扱ったことがない場合)。この場合、手作業による処理が増加し、その結果、誤謬の
リスクが更に増加することがある
(2) より複雑な取引の処理に複数のシステムが必要となり特にシステム間の連携がない、
は手作業が介在する場合には、システム間の照合を常に実施する必要がある。
(3) 少数の特定の者のみが取引をしている場合複雑な取引が、メインの処理システムではな
くスプレッドシートにおいて評価又は管理されることがあり、当該スプレッドシートに対
る物理的及び論理的なパスワードによるアクセス・セキュリティが脆弱なことがある。
(4) システムが生成した仕訳の妥当性を確認するためのシステム例外記録、確認及びブローカ
ー価格の検討が行われない。
(5) 金融商を評価する目的でシステム入力した主要な入力数を管理し評価するとが
困難なことがある。特に、当該システムが、トレーダーが所属しているフロント・オフィス
や受託会社で管理されている場合や、対象となっている取引が非定型的な場合、又は取引高
が少ない場合には、入力数値の管理及び評価が困難になる
(6) 金融商取引を初めて処理する又は期的に処理する際に使するモデルが複雑ある
ため、当該モデルの設計や当該モデルに対する補(カリブレーション)の必要性を評価で
きない。
(7) 承認されたモデルのバージョンについて証跡を明確に残し、当該モデルに対する承認され
ていないアクセスや修正を防止するための内部統制を経営者が設定していないことがある。
(8) 限られた件数の金融商品取引しか実施していないためリスク管理及び内部統制システム
に不釣合いな投資しかしていないまた、経営者が金融商品取引に慣れていない場合は
ステムから出力される報告書を誤解することがある。
(9) 金融商品取引について、適切に記録、処理、計上又はリスクを管理するため、例えば、
託会社などの第三者のシステムを利用することが必要となる可能性がある。また、第三者か
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ら提供された情報との適切な照合を行い、説明を求めることが必要となる。
(10) 企業が金融商品取引に関して電子商取引を利用する場合、電子ネットワークの利用に関
連したセキュリティと内部統制について追加的な検討をする必要がある
21.財務諸表の定量的な開示に関する重要な情報は、財務報告に関連する情報システムから提供
される。方で、企業は、内部報告目的で利用するためや定性的な開示(例えば、リスク及び
不確実性又は感応度分析)に含まれる情報を作成するために、非財務システムを開発し運用し
ていることもある。
《3.企業の統制活動》
22.金融商品取引に関する統制活動は、事業経営の有効性と効率性、財務報告の信頼性、又は法
令の遵守のいずれかの目的の達成を妨げる問題を防止又は発見するためにデザインされる。
融商品に関する統制活動は、金融商品取引の複雑性と取引高に対応してデザインされ、一般的
には、適切な承認プロセス及び職務の分離並びに企業の統制目的の達成を確保するようにデザ
インされたその他の方針と手続が含まれる。プロセスのフローチャートは、企業の内部統制の
有無を識別するのに役立つことがある。本実務ガイダンスは、網羅性、正確性及び実在性、
価、並びに表示と開示に関する統制活動に焦点を当てている。
《(1) 承認》
23.承認は、務諸表のアサーションに直接的又は間接的に影響を与える例えば、取引が企業
の方針か外れて実行されている場合であっても、正確に記録され会処理されることもあ
る。しかしながら、未承認の取引は、企業の内部統制の枠外で行われるため、企業に対するリ
スクを著しく増加させる可能性があり、結果として、重要な虚偽表示リスクも著しく増加する
可能性がある。
企業は、このようなリスクを低減するため、取引担当者ごとに実行できる取引の範囲につい
て明確な方針を確立し企業のバックオフィスが当該方針の遵守について監視することが多
い。例えば、通例でない大量の取引又は重要な損益の発生について検討するなど、担当者ごと
の取引活動を監視することにより経営者は、新しい種類の取引の承認も含め、企業の方針の
遵守状況を確認し、不正が発生しているかどうかを評価することができる。
24.取引開始時の記録によって、個々の取引の性質と目的及び契約の法的強制力を含む、各金融
商品契約の下で生じる権利と義務が明確に識別される。網羅的かつ正確な記録には想定元本
等の基本的な財務情報に加えて、通常、少なくとも以下の事項が含まれる。
(1) ディーラーに関する情報
(2) (ディーラーではない場合)取引の記録担当者に関する情報取引の開始日時及びどのよ
うに企業の情報システムに記録されたか。
(3) 取引の性質と目的(ヘッジ目的かどうかを含む。)
《(2) 職務の分離》
25.金融商品に関する統制活動のうち、職務の分離及び担当者の選任が重要である。金融商品に
関連する業務は、例えば以下の機能に分類される。
(1) 取引の実行(ディーリング)
大量の金融商品取引を行う企業の場合、フロント・オフィスで行われることがある
(2) 支払及び受取(決済)
(3) 約定確認書の送付及び企業の記録と取引相手からの回答との間に差異がある場合の照合
(4) 全ての取引の会計記録への正確な記録
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(5) リスク・リミットの監視
大量の金融商品取引を行う企業では、リスク管理を担う部門が実施していることがある
(6) ポジションの監視及び金融商品の評価
26.多くの組織では、金融商品への投資、評価、決済及び会計処理記録について、職務の分離
を行っている。
27.規模が小さいために職務の分離を適切に行うことができない場合、経営者、取締役会又は監
査役等による金融商品に関連する業務の監視が特に重要である。
28.部の企業は、内部統制としてフロントから独立した部門が価格検証をしていることが
る。当該部門は、一部の金融商品の価格を独立して検証する責任を有し、代替的なデータ、
法及び仮定を利用することがある当該部門は、企業の他の部門が設定した価格を客観的に検
討する。
29.通常、ミドルオフィス又はバックオフィスが、評価に関する方針の策定及び方針の遵守
に関する責任を有する大量の金融商品取引を行う企業は、評価の合理性を検討するため、
融商品のポートフォリオに関する評価を日々行い、個々の金融商品の評価による損益への影響
について検討することがある。
《(3) 網羅性、正確性及び実在性》
30.銀行及び保護預り機関の記録と企業の記録とを定期的に照合することにより、企業は、取引
の適切な記録を確保することができる。照合に関するプロセスを構築するに当たって、取引の
実施担当者と照合の担当者の間において適切に職務の分離を行うことが重要である
31.複雑な金融商品について、例えば、組込デリバティブのような特有の性質を有するかどうか
識別することを取引担当者に求める内部統制が構築されることもあるこのような状況におい
ては、取引が正確に記録されることを確保するため、経理部門と連携して複雑な金融商品取
引を取引開始時に評価する別の部(例えば商品管理部門が存在することがある小規模企
業はそのような部門を有さないこともあるが、適用される財務報告の枠組みに準拠して、複雑
な金融商品契約が適切に会計処理されることを確保するために、契約開始時点で当該金融商品
を検討するプロセスを整備することがある。
《4.監視活動》
32.企業の日常的監視活動は、金融商品の取引及びその評価に関する内部統制の不備を発見し、
正するためにデザインされている金融商品に関連する業務に関して十分な監督を行うことが
重要である。これには、以下が含まれる。
(1) 全ての内部統制に対する監視例えば、内部統制の運用に係る統計数値の監視(照合項目
の数や企業内部での価格と外部の価格情報ベンダーからの価格の相違等
(2) ITを利用した内部統制及びそれらの適用状況の監視の必要性
(3) 様々なロセス及びシステムから提される情報が十分に照されることを確保る必
要性。例えば、評価プロセスから提供される情報が総勘定元帳と適切に照合されない場合、
の評価プロセスは有益ではない。
33.大規模な企業においては、高度なITを利用した情報システムが金融商品取引を記録し、
限到来時決済を行うようにデザインされていることが多い。より複な情報システムの場
合、資金の動きを監視するために決済勘定に自動転記することがあり、金融商品取引を企業の
記録に適切に反映させるために、当該処理に対する内部統制が整備されることがある。
金融商品承認された度を超えて利用され場合や選定した取引手に対して設定さ
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た限を超えて取引された場合には、経営者の注意を促すたの例外告書を作成するよう
に、情報システムがデザインされていることもある。しかしながら、高度な情報システムであ
っても、金融商品取引に関する記録の網羅性を確保できないこともある。したがって、経営者
は、全ての取引が記録されるように、追加手続を設定することが多い。