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Q19 個別の財務表又は財務諸表項目等の監査契約の新規締結又は更新に当たっての留意事項 ―
監査の実行可能性の判断
個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査契約の新規締結又は更新に当たって、特にどのよ
うな点に留意すればよいか。
監査人は、個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査のみ行い、対象となる事業体の完全な
一組の財務諸表の監査を行わない場合には、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して個
別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査が実務的な観点から実行可能であるかどうかを判断す
ることが求められる(監基報 805 第6項参照)。監査人は、個別の財務表又は財務諸表項目等の監査
に特有の以下の事項に留意し、各監査基準報告書の関連する要求事項を遵守することが可能か否か
とともに、見積り監査時間に基づく適正な報酬を確保できるか等、実務的な観点から実行可能であ
るかどうか検討する必要がある。
・ 各監査基準報告書の要求事項が個別の財務表又は財務諸表項目等の監査に関連するかどうか
の慎重な検討及び状況に応じて適宜読み替えた上での適用
・ 個別の財務表又は財務諸表項目等の作成プロセス(情報システムや内部統制を含む。)に関す
る検討
・ 直接の監査対象である財務表又は財務諸表項目等が関連する項目の識別
(解説)
監査人は、個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査を実施する場合であっても、監査基準
報告書のうち個別の業務に関連するものは全て遵守することが求められる。この点、どの監査基準
報告書の要求事項が監査対象の財務表又は財務諸表項目等の監査に関連するかについては慎重な判
断が必要となる。例えば、監査の対象が財務諸表項目等のみの場合であっても、監査基準報告書 240
「財務諸表監査における不正」、同 550「関連当事者」、同 570「継続企業」等の監査基準報告書は原
則として関連する。さらに、監査基準報告書は、完全な一組の財務諸表の監査を前提に記載されて
いるため、状況に応じて適宜読み替えて要求事項を適用しなければならない。
また、監査人は、監査対象である個別の財務表又は財務諸表項目等に対する意見の基礎となる十
分かつ適切な監査証拠を入手するための監査の前提条件が整っているかどうかについても検討する
必要がある。例えば、勘定残高を構成する特定の項目に対して監査を行う場合、当該特定の項目の
計上額は、勘定残高(完全な一組の財務諸表の作成において通常想定される、帳簿記録の集計単位)
ではなく、その一部(例えば、特定の事業所、特定の相手先又は特定の期間等に係る金額)を抽出
することにより算定される。当該特定の項目の計上額に対する網羅性についてのアサーションに関
連して重要な虚偽表示リスクが識別された場合、監査人は、リスク対応手続として、当該金額を構
成する取引等の態様に応じて経営者が整備し運用する内部統制の運用状況(例えば、会計単位や情
報システムにおける特定項目の集計機能に係る内部統制の整備及び運用状況)の有効性を評価する
ことが必要となることがある。したがって、監査人は、監査契約の新規の締結又は更新の際、経営
者が、監査対象である特定の項目の作成のための内部統制に対する責任を有することを認識し理解
しているかどうかについて、特別な留意が必要となることがある。
加えて、完全な一組の財務諸表を構成する個別の財務表及び財務諸表項目等の多くは、関連する
注記を含めて、相互に関連しているため、個別の財務表又は財務諸表項目等の監査を行う際に、当
該個別の財務表又は財務諸表項目等のみを対象として検討を行うことができない場合がある。した
がって、個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査のために、どこまで監査手続の対象を拡大