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監査基準報告書 900 実務ガイダンス第1号
前任監査人の監査調書の閲覧に係る実務ガイダンス
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改正 2 0 2 2 1 0 1 3
監査・保証実務委員会
(実務ガイダンス:第 16号)
はじめに
2019 10 月に金融庁から公表された「監査法人のローテーション制度に関する調
査報告(第二次報告)において、監査人交代に際して監査調書の閲覧が行われるが
監査調書の複写の範囲に制限があるため、監査調書を書き写すこととなり、引継ぎが
効率的ではないのではないかとの課題が提示された。これに関して当協会では、前任
監査人の監査調書の閲覧に関する留意事項を次のとおりまとめた。
本実務ガイダンスは、一般に公正妥当と認められる監査の基準を構成するものでは
なく、会員が遵守すべき基準等にも該当しない。また、2020 年2月 20 時点の最新
情報に基づいている。
関連する監査基準委員会報告書
監査人の交代に際して、監査基準報告書 900「監査人の交代」は、適切に監査事務
所間の引継ぎを行うことにより、監査契約の締結の可否の判断及び監査を実施する上
で後任監査人が有用な情報を入手することを目的としている(監基報 900 第4項参
照)。監査基準報告書 900 第8項で監査業務の引継ぎは、主に、後任監査人による質
問及び監査調書の閲覧によって実施されるとし、監査基準報告書 900 第9項で、後任
監査人が前任監査人に対して質問することにより理解すべき重要事項を規定してい
る。また、監査基準報告書 900 15 項で、前任監査人は、同第 14 項で規定した重要
事項及び期首残高に関連する監査調書について、後任監査人からの閲覧の求めに応じ
る必要があり、その場合に複写の範囲を含む監査調書の閲覧方法を協議すべきことを
規定している。
また、監査人は監査基準報告書 510「初年度監査の期首残高」及びその他の関連す
る監査基準報告書に従い、期首残高に関する監査手続を実施する。監査基準報告書 510
は、監査人の目的は、期首残高に当年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす虚偽表示が
含まれているかどうか、期首残高に適用した適切な会計方針が当年度の財務諸表に継
続して適用されているかどうかに関する十分かつ適切な監査証拠を入手することと
している(同第2項)。期首残高に関する監査手続として、監査人は直近の財務諸表
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及び前任監査人の監査報告書が存在する場合は監査報告書の通読(監基報 510 第4項
参照)、前年度の期末残高が当年度に正しく繰り越されていること及び期首残高に適
切な会計方針が適用されていることを確かめること(監基報 510 第5項(1)及び(2)参
照)が求められている。これらに加え、前任監査人の監査調書の閲覧(同第5項(3)
①)、当年度に実施した監査手続によって期首残高に関する監査証拠を入手できるか
どうかの評価(監基報 510 第5項(3)②参照)又は期首残高に関する監査証拠を入手
するための特定の監査手続の実施(監基報 510 5項(3)③参照)が求められており
前任監査人の監査調書の閲覧は、複数ある期首残高に関する監査証拠を入手する手続
の一つとして規定されている。
留意事項
以上の諸規定を勘案すれば、監査調書の閲覧に際しては、首残高に当年度の財務
諸表に重要な影響を及ぼす虚偽表示が含まれているかどうかについて監査証拠を入
手できるかという観点から、重要な勘定科目につき、前期末残高に対する前任監査人
のリスク評価とリスク対応手続を理解することに努め、その内容について要約した監
査調書を作成することが肝要であり、期首残高に関する監査証拠を入手する目的で前
期末の前任監査人の監査調書を複写することは必須事項としては求められていない
ことを改めて認識することが重要である。
こうした監査調書の閲覧の目的を十分理解した上で、少なくとも、大量の監査調書
を書き写すといった引継ぎとならないよう、引継ぎの方法(引継ぎ期間や監査調書の
閲覧機会の十分な確保を含む。について、前任監査人と後任監査人が十分に協議し
協力することが重要であることに改めて留意されたい。
おわりに
日本公認会計士協会においては、今後も、監査人の引継ぎの実務の状況や諸外国に
おける実務を踏まえ、監査人の引継ぎの効率化に向けた検討を行っていく予定である。
本実務ガイダンス(2022 10 13 日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正
を反映している。
監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」
(2022 年7月 21 日改正)