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(会計方針の変更等を行った場合の過去の累積的影響額に関する当期の会計処理)
33. 会計方針の変更等に関する当期の会計処理としては、その累積的影響額を期首の利益剰余
金に含めて処理を行うのか、それとも従来どおり当期の損益に計上するのかという論点があ
る。この点に関しては、当該影響額の算出に関する財務諸表作成者の負担も勘案する必要があ
るが、そのような計算自体はこれまでも、注記による開示などとの関係で、企業の規模や開示
制度等にかかわらず、すべての企業で行っているものと考えられる。このため、その金額を当
期の損益に計上する方法から、期首の利益剰余金に含めて計上する方法に変更した場合でも、
企業の規模にかかわらず、新たな実務負担はそれほど大きくないのではないかとの見方があ
る。会計方針の変更等による過去の累積的影響額を当期の損益に計上すると、当期の業績に関
連のない損益が計上されることになり、望ましくないという考え方もある。
また、金融商品取引法による財務諸表の開示が行われていない企業については、遡及処理を
求める必要はないのではないかとの指摘があるが、これらの企業にも財務諸表の利用者は存
在しており、それを考慮すると、特段の取扱いを設ける必要はないという考え方もある。
さらに、遡及処理のニーズが主に連結財務諸表にあると考えることができたとしても、連結
決算手続上利用するために内部的に作成された子会社及び関連会社の財務諸表上で遡及処理
を行うことにより連結財務諸表への遡及処理が可能であるなら、実務負担を考慮し、個別財務
諸表においては遡及処理を必ずしも強制する必要はないのではないかという指摘がある。た
だし、これに対しても、個別財務諸表準拠性の観点などから子会社及び関連会社の個別財務諸
表の期首の利益剰余金に、過去の累積的影響額を含めて処理すべきという考え方がある。
検討の結果、本会計基準では、会計方針の変更等を行った場合の過去の累積的影響額に関す
る当期の会計処理について、個別財務諸表上の適用に関する特段の取扱いを設けないことと
し、遡及処理後の期首の利益剰余金に含めて会計処理することを求めることとした。
(遡及処理を行った過去の個別財務諸表の表示の要否)
34. 国際的な会計基準を適用している国々では、連結財務諸表を開示している場合、個別財務諸
表の開示が求められていないこともあるため、我が国においても、とりわけ財務諸表作成者の
負担が大きい遡及処理後の過去の期間における財務諸表の表示を、連結財務諸表のみならず、
個別財務諸表にまで一律に求めようとするのは適切ではないという意見がある。その一方、連
結財務諸表と併せて公表される個別財務諸表についても、過去の期間への遡及処理によって
期間比較可能性及び企業間の比較可能性が向上し、財務諸表の意思決定有用性を高めること
が期待されるのであれば、特段の取扱いを認めるべきではないという意見もある。
検討の結果、個別財務諸表について比較情報としての有用性を期待するという観点からは、
個別財務諸表についても連結財務諸表と同様に、過去の財務諸表を表示する場合には、これを
遡及処理して表示することが考えられることや、比較財務諸表の表示の要否は各開示制度の
中で規定がなされていることを踏まえ、本会計基準では個別財務諸表上の適用に関する特段
の取扱いは設けないこととした。