監査・保証実務委員会実務指針第 78 号

正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い

平成 15 年3月 25 日

改正 平成 23 年3月 29 日

日本公認会計士協会

Ⅰ はじめに

1.従来の監査委員会報告第 65 号「正当な理由に基づく会計方針の変更」(平成 11

年9月7日、以下「報告第 65 号」という。)では、会計基準及び法令の改正等(以

下「会計基準等の改正」という。)に伴って会計処理の原則又は手続を変更する場

合において、特定の会計処理の原則又は手続の採用が強制され、他の原則又は手続

を任意に選択する余地がないときは、会計処理の原則又は手続の変更が行われるも

のの、正当な理由による会計方針の変更には該当せず、追加情報として取り扱われ

てきた。

平成 14 年1月の監査基準の改訂において、それまで正当な理由による会計方針

の変更として取り扱われていなかった会計基準等の改正による会計処理の原則又

は手続の変更が、正当な理由による会計方針の変更に該当するとされたことを受け

て、当協会は正当な理由による会計方針の変更についての考え方の見直しを行い、

報告第 65 号を廃止し、これに代わる新たな実務指針として平成 15 年3月に本指針

を公表した。

2.企業会計基準委員会から、平成 21 年 12 月に企業会計基準第 24 号「会計上の変

更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過年度遡及会計基準」という。)及び

企業会計基準適用指針第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の

適用指針」(以下「過年度遡及適用指針」という。)が公表された。過年度遡及会計

基準及び過年度遡及適用指針は、企業会計基準委員会における会計基準の国際的な

コンバージェンスの取組みの中で、国際的な会計基準で見られるような、会計方針

の変更、表示方法の変更及び誤謬の訂正が行われた場合の過去の財務諸表の遡及処

理に関する取扱いを定めている。このため、当協会は、過年度遡及会計基準及び過

年度遡及適用指針との整合性を図るため、本指針の見直しを行った。

また、従来からの中間財務諸表と年度財務諸表との会計処理の首尾一貫性につい

ての考え方を踏まえて、正当な理由による会計方針の変更にあたり留意すべき事項

の検討を行った。

これらの見直しの結果、当協会は、本指針を過年度遡及会計基準及び過年度遡及

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適用指針の取扱いを前提とした監査人の判断の指針を示すものと位置付け、「正当

な理由による会計方針等に関する監査上の取扱い」として公表することとした。

Ⅱ 会計方針の変更

3.「会計方針」とは、財務諸表の作成に当たって採用した会計処理の原則及び手続

をいう(過年度遡及会計基準第4項(1))。「会計方針の変更」とは、従来採用して

いた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた

会計方針に変更することをいう(過年度遡及会計基準第4項(5))。

4.以下、会計方針の変更の分類ごとに取扱いを示す。

(1) 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更

会計基準等の改正によって特定の会計処理の原則又は手続の採用が強制さ

れ、他の原則又は手続を任意に選択する余地がない場合、これに伴って会計方

針を変更する場合も、当該変更の事実を明確にするために、正当な理由による

会計方針の変更として取り扱う。

この会計基準等の改正には、既存の会計基準の変更のほか、新たな基準の設

定、実務指針等の公表・改廃及び法令の改正等が含まれる。

(2) (1)以外の正当な理由による会計方針の変更

企業会計上、一つの会計事象や取引(以下「会計事象等」という。)につい

て一般に公正妥当と認められる複数の会計処理の原則又は手続が認められて

おり、その中から一つの原則又は手続を選択適用する場合において、従来から

採用している認められた会計処理の原則又は手続から他の認められた原則又

は手続への変更は、正当な理由により変更するものである限り、会計方針の変

更となる。

5.下記事項は、会計処理の対象となっていた事実に係る会計上の見積りの変更、あ

るいは新たな会計処理の原則又は手続の採用等であり、会計方針の変更には該当し

ない。

① 会計上の見積りの変更

② 重要性が増したことに伴う本来の会計処理の原則又は手続への変更

③ 新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原則又は手続の採用

これらの取扱いについては、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針並びに

監査・保証実務委員会実務指針第 77 号「追加情報の注記について」を参照された

い。

Ⅲ 会計方針の変更における正当な理由

6.会計方針は、継続して適用することを原則とするが、正当な理由がある場合には

これを変更することが認められる。

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7.過年度遡及適用指針では、企業が会計方針の変更を行う際の判断の指針として、

会計基準等の改正に伴う会計方針の変更以外の会計方針の変更を行うための正当

な理由がある場合とは、下記の2つの要件が満たされているときをいうとされてい

る(過年度遡及適用指針第6項)。

① 会計方針の変更が企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応し

て行われるものであること

② 会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行わ

れるものであること

8.監査人は、経営者による会計方針の選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に

反映するものであるかどうかを評価しなければならない。会計方針の変更のための

正当な理由があるかどうかの判断に当たっては、監査人は、以下の事項を総合的に

勘案する必要がある。

(1) 会計方針の変更が企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応して

行われるものであること

経営環境とは、会計事象等について会計方針を選択する場合の判断に影響を及

ぼす社会的経済的要因(物価水準、為替相場、金利水準の動向等)又は企業内部

の要因(管理システムの整備、諸制度の改定、事業目的の変更等)をいう。

(2) 会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われ

るものであること

会計方針の変更により、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの

状況がより適切に示され、財務諸表等の利用者の意思決定又は企業の業績などの

予測に、より有用かつ適切な情報が生み出されるものであることが必要である。

(3) 変更後の会計方針が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に照らして

妥当であること

会計方針の変更は、一つの会計事象等について複数の会計処理の原則又は手続

が認められている場合に、その範囲内で行われるものであることは当然であるが、

それに加えて、変更後の原則又は手続が類似の会計事象等に対して適用されてい

る原則又は手続と首尾一貫したものであることにも留意しなければならない。

なお、その会計事象等について適用すべき会計基準等が明確でない場合や会計

基準等において詳細な定めのない場合の会計方針については、経営者が採用した

会計方針が会計事象等を適切に反映するものであるかどうか監査人が自己の判

断で評価し、あるいは会計基準等の趣旨を踏まえ評価することが必要である。

(4) 会計方針の変更が利益操作等を目的としていないこと

財務諸表等の利用者は、当期純利益の金額だけでなく、企業の成長性、財務の

安定性、事業区分ごとの収益性、所有資産の評価額等多くの事項に関心を持って

いる。それらは財務諸表の勘定科目の金額だけでなく、注記事項としても表示さ

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れている。会計方針の変更によって、これらに関する情報を不当に操作する意図

がないことにも留意することが必要である。

また、個別的には正当な理由による会計方針の変更と認められる場合であって

も、当該事業年度において採用されている他の会計方針と総合してみるとき、財

務諸表に著しい影響を与えることを目的としていることが明らかであると認め

られる場合には、正当な理由による変更とは認められないことに留意する。

(5) 会計方針を当該事業年度に変更することが妥当であること

会計方針の変更のための正当な理由があるかどうかを判断するに当たっては、

なぜ当該事業年度において会計方針を変更しなければならないのか(変更の適時

性)についても、留意することが必要である。

Ⅳ 四半期・中間・年度の首尾一貫性

9.会計方針は、原則として、事業年度を通じて首尾一貫していなければならない(以

下「首尾一貫性」という。)。四半期決算を行う企業の第2四半期以降における自発

的な会計方針の変更は、当該四半期会計期間(第4四半期会計期間を含む。)にお

いて発生した特殊の事情、例えば直前の四半期会計期間の末日までには考慮する必

要がなかったが、当該四半期会計期間に至って考慮せざるを得ない状況が発生した

場合等に限って認められる。中間決算を行う企業の下期における自発的な会計方針

の変更も同様である。

10.監査人は、首尾一貫性を重視する観点から、四半期決算を行う企業の第1四半期

における会計方針について十分検討しなければならない。第2四半期以降の四半期

レビューにおいても、第2四半期以降に会計方針が変更されているか、また変更さ

れている場合には、第2四半期以降に会計方針の変更を行った理由を吟味するとと

もに、直前の四半期会計期間において会計方針の変更を行わなかったことについて

の合理的な事情が存在するかどうかを十分検討しなければならない。中間決算を行

う企業の中間期やその後における検討においても同様である。

Ⅴ 表示方法の変更

11.「表示方法」とは、財務諸表の作成に当たって採用した表示の方法(注記による

開示を含む。)をいい、財務諸表項目の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれ

る(過年度遡及会計基準第4項(2))。「表示方法の変更」とは、従来採用していた

一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示

方法に変更することをいう(過年度遡及会計基準第4項(6))。

表示方法の変更には、貸借対照表の流動資産あるいは固定資産の区分や損益計算

書の営業損益等の同一区分内での勘定科目の区分掲記、統合あるいは勘定科目名の

変更等を行うものと、当該区分を超えて表示方法を変更するものがある。企業会計

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基準適用指針第 24 号では、表示方法の変更には、財務諸表の表示区分を超えた表

示方法の変更も含まれるとされている(過年度遡及適用指針第4項)。

12.表示方法は、下記のいずれかの場合を除き、毎期継続して適用する(過年度遡及

会計基準第 13 項)。

① 表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う

場合

② 会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う

場合

13.表示方法の変更が、第 12 項②の会計事象等を財務諸表により適切に反映するた

めに行う変更であるかどうかを判断するに当たっても、監査人は第8項の判断の指

針に留意することが必要である。

Ⅵ 適 用

14.本指針は、平成 15 年3月1日以降終了する連結会計年度及び事業年度に係る監

査並びに平成 15 年9月1日以後終了する中間会計期間に係る中間監査から適用す

る。

15.「監査委員会報告第 78 号「正当な理由による会計方針の変更」の改正について」

(平成 23 年3月 29 日)は、平成 23 年4月1日以後開始する連結会計年度及び事

業年度に係る監査から適用する。

以 上

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