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監査・保証実務委員会実務指針第 42 号
租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金
並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い
昭和 57 年9月 21 日
改正 平成 19 年4月 13 日
最終改正 平成 23 年3月 29 日
日本公認会計士協会
1.租税特別措置法上の準備金
昭和56年6月9日法律第74号により旧商法第287条ノ2が改正され、同条による引
当金(以下「引当金」という。から利益留保性の引当金が排除され、それまで実務
「引当金」に該当するとして取り扱われてきた租税特別措置法上の準備金(以下「準
備金」という。のうち利益留保性のもの引当金」して取り扱うことは認めら
れなくなった。会社法施行規則(平成18年2月7日法務省令第12号)及び会社計算規
則(平成18年2月7日法務省令第13号)でもこの考え方が踏襲されている。しかし、
「準備金」のうちに下記(1)の要件を満たすものがあり、かつ、下記(2)の留意事項に
従った会計処理を採用しているときには、その実質的内容は「引当金」に該当するの
で、監査上、これを「引当金」として取り扱う。
なお、これまで利益処分案の株主総会決議によって積立て及び取崩しがなされてい
「準備金」は、会社法の下では、原則として法人税等の税額計算を含む決算手続と
して会計処理することになる。具体的には、当期末の個別貸借対照表に税法上の準備
金の積立て及び取崩しを反映させるとともに、個別株主資本等変動計算書に税法上の
準備金の積立てと取崩額を記載(注記により開示する場合を含む。)し、株主総会又
は取締役会で当該財務諸表を承認することにな(企業会計基準適用指針第9号「株
主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」第25項)。
(1)「準備金」のうち企業会計原則注解【注 18】(以下「注解 18」という。)の「引
当金」に該当するものの要件
① 将来における特定の費用又は損失に対する引当であって、その起因となる事象
が当期以前に既に存していること
② 将来における費用又は損失の発生の可能性が高いと見込まれるものであるこ
と
③ 当該費用又は損失の金額を合理的に見積もることができること
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これらの要件を満たす場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失
として引当金に繰り入れ該引当金の残高を貸借対照表の負債又は資産の部に記
載する。
(2)「準備金」を「引当金」に該当するものとして取り扱う場合の留意事項
① 当該引当額は、租税特別措置法の規定にかかわらず、当該会社の状況に応じた
必要額が計上されなければならない。
② 租税特別措置法の規定にかかわらず、その設定目的である特定の費用又は損失
が発生するまでに取り崩すことは妥当でない。
③ 「準備金」「引当金」として計上する場合は、引当金の名称をもって掲記さ
れるべきである。
④当該「引当金」の繰入額及び取崩し時の過不足額は、損益計算書において適
に表示することが必要である。
したがって、特定の「準備金」が必ず「引当金」に該当するというものではなく
会社の状況によって当然に計上すべき「引当金」が、特定の「準備金」の内容に該
当する場合に、監査上、これを「引当金」に該当するものとして取り扱うという趣
旨である(注)。
(注)例えば、績の悪化している在外子会社があり、該子会社に対する投資や
債権について引当金を計上すべき場合に、租税特別措置法第55条による海外投
資等損失準備金を設定しその引当額が妥当と認められるときは、監査上
の引当額を「引当金」に該当するものとして取り扱う。なお、「引当金」に該
当するかどうかを判断するに際しては、当該引当に係る企業の状況を十分考慮
すべきであり、ここに例示した海外投資等損失準備金の場合も、そのときにお
ける当該投資先の財務内容のほか、予測し得る近い将来の状況の変化の可能性
を併せ考慮する必要もあると考えられる。
2.特別法上の引当金又は準備金
昭和56年6月9日法律第74号により旧商法第287条ノ2が改正され、原則として利
益留保性の引当金が排除される一方で、利益留保の性格を有するものであっても、
定の業種について特別の法令(税法を除く。)によって計上することが強制されてい
る引当金又は準備金(以下「特別法上の引当金又は準備金」という。)については、
負債の部の次に別の区分を設けて記載することによって「引当金」として取り扱うこ
とが認められていた。当該取扱いは平成18年5月1日に施行された会社法においても
同様に認められている(会社計算規則第119条)。
特別法上の引当金又は準備金は、その計上が会社の任意ではなく、法令で定められ
た繰入及び取崩方法に従わなければならないこと、また、特別法上の引当金又は準備
金の計上が強制されている会社の業種には公益性が強く、特定の政策目的のもと特別
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の引当金又は準備金の計上を義務付けているという国策的事情がある。また、これら
特別の法令は、一般法たる会社法に対し、特別法の関係に立つものである。
このような特殊性から、財務諸表等規則第54条の3及び会社計算規則第119条では
負債と認められない特別法上の引当金又は準備金は、負債の部の次に別の区分を設け
て表示する方法を規定している。
特別の法令により特に規定される引当金又は準備金であっても、注解18の要件を満
たすものについては、いわゆる負債性引当金として負債の部に計上することが必要で
あることは、これらの規定においても明確なものである。一方で、注解18の要件を満
たさない、いわゆる利益留保性の引当金については、負債の部に計上することは望ま
しくないと考えられる。
また、財務諸表等規則第67条及び会社計算規則第53条においては、純資産の部の項
目として計上することが適当であると認められるものは、純資産として計上すること
ができると規定されており、本来負債ではなく、利益留保の性格を有する特別法上の
引当金又は準備金については、純資産の部に計上することを容認する旨の規定である
と解釈されている。したがって、特別法上の引当金又は準備金は、純資産の部に計上
することも含めて検討する必要がある。
このような観点から、特別な法令によって計上することが強制されている引当金又
は準備金については、監査上以下のように取り扱う。
(1)注解 18 の引当金の要件を満たす引当金又は準備金
特別の法令によって計上することが強制されている引当金又は準備金のうち
解18の引当金の要件を満たすものについては、負債の部に計上する。
(2)注解 18 の引当金の要件を満たさない、いわゆる利益留保性引当金
注解18の引当金の要件を満たさないが、特別法によって計上することが強制され
ている引当金又は準備金(利益留保性引当金)については、特別法で規定する表
箇所に計上することになるが、特別法に表示箇所に係る規定がない場合は、純資産
の部に計上することが望ましい。
負債の部に計上する特別法上の引当金又は準備金は、注解18の要件を満たすもので
あるため、その繰入れ及び取崩しを損益計算書において計上するが、利益留保性引当
金は上記に説明したように本来は会計上の損益としては認められず特殊な状況下で
止むを得ないものとしてその計上が容認されているものである。特別法上の引当金又
は準備金の計上に際しては、適切な開示が行われているかどうかについて慎重に判断
する必要がある。
3.引当金に関する事項
引当金については、1(1)に記載したとおり、注解18に示されている。現在の日
本における会計慣行は、注解18をよりどころとして運用されており、本指針において
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も注解18を基礎とした現在の会計慣行を前提としている。注解18の引当金の計上につ
いては、過度に保守的なものとなっていないことにも監査上十分留意する必要がある。
以下に例示する事項については、上記前提で監査上の取扱いを整理したものである
ことに留意が必要である。
(1)役員退職慰労引当金
① 役員退職慰労引当金の定義と性質
役員退職慰労引当金は、会社の役員(取締役・監査役・執行役等)の将来にお
ける退職慰労金の支払に備えて設定され、当該支給見積額のうち各事業年度の負
担相当額は原則として、営業費用に計上される。
役員退職慰労金の経済的性質に関しては様々な見解があるが、いずれも退職す
る役員の在任期間中の役務の提供に関わる性質を持つ点では共通している。また、
その支給は株主総会による承認決議を前提とするため、株主総会の承認決議前の
段階では、法律上は債務ではないが、会計上は注解18に示されるいわゆる負債性
引当金の性格を有するものである。
② 役員退職慰労引当金の計上
役員退職慰労金については、注解18の要件を踏まえ、以下の留意事項を満たす
場合には、各事業年度の負担相当額を役員退職慰労引当金に繰り入れなければな
らないことに監査上留意する。
(ア)役員退職慰労金の支給に関する内規に基づき(在任期間担当職務等を勘案
して)支給見込額が合理的に算出されること
(イ)当該内規に基づく支給実績があり、このような状況が将来にわたって存続す
ること(設立間もない会社等のように支給実績がない場合においては、内規に
基づいた支給額を支払うことが合理的に予測される場合を含む。)
③ 役員退職慰労金制度廃止の場合の会計処理
既存の役員退職慰労引当金設定会社が役員退職慰労金制度の廃止をする場合、
任期中又は重任予定の役員に対する廃止時点までの内規に基づく支給額につき、
(ア)制度の廃止に伴い、株主総会において承認決議を行う場合と、(イ)制度は廃止
するものの、当該廃止時点においては株主総会での承認決議を行わず、当該役員
の退任時に承認決議を行う場合とが考えられる。
(ア)の場合で、当該役員の退任時まで承認済の慰労金の支給を留保するケース
においては、当該支払留保金額は、退任時点に支払うという条件付き(金額確
定)債務であると考えられるため、株主総会での承認決議後、実際に支払われる
までの間は、原則として長期未払金として表示されるものと考えられる。ただし、
1年以内に支給されることが確実である場合には、未払金として表示される。
(イ)においては、株主総会決議を得ていないことから法律上は債務となってい
ないため、引き続き役員退職慰労引当金として表示される。
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④ 執行役員に対する退職慰労引当金
近時、執行役員制度を採用している会社が増加している。行役員は会社法上
の機関には当たらないため、退職慰労金の支払に関する株主総会の承認決議は必
要ではない。
執行役員に対する退職慰労金制度には様々な形態がみられるが、制度設計上執
行役員が、(ア)従業員としての地位を失っておらず、通常の従業員の退職給付金
制度に含めて取り扱われる場合と、(イ)従業員に対するものとは別の内規を定め
て運用している場合とがある。
執行役員に対する退職慰労引当金について、(ア)の場合は、従業員に対する退
職給付引当金として会計処理されるものと考えられる。(イ)の場合は、退職給付
引当金若しくは役員退職慰労引当金に含めて開示する方法、又は、執行役員退職
慰労引当金として区分表示する方法が考えられる。他の科目に含めて開示した場
合で金額に重要性がある場合は、執行役員に対するものを含めている旨注記する
ことが望ましい。
(2)利息返還損失引当金
当協会は、平成18年10月13日業種別委員会報告第37号「消費者金融会社等の利
息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い」を公表したが、
これも注解18の引当金として取り扱われているものである。
内容については、業種別委員会報告第37号に委ねるが、同様な状況にある取引あ
るいは会計事象が発生した場合、同報告に準じて引当金を計上することになるので
留意が必要である。
(3)負債計上を中止した項目に係る引当金
法律上の債務性が残っている可能性があるものでも、債務履行の可能性を考慮し
て一定の要件を満たす場合に負債計上を中止(利益計上)る会計処理を行う場合
がある。この場合、法律上の債務性の争点があるものの、債権者から返還(支払)
請求を受けた場合は、それに応じて返還(支払)している実務がある。これについ
ては負債計上の中止処理自体容認できるかどうかの問題はあるものの、実務慣行と
して定着している場合は最終的に債権者から返還(支払)請求されず、債務を履
行する可能性が低い場合も想定されるため、負債計上の中止自体を否定する必要は
ないと考えられる。しかし、負債計上の中止処理後、将来返還(支払)請求に応じ
た場合費用が発生することになるため、引当金の要件を満たしている可能性がある。
このような会計事象については、来の返還支払)リスクに対する備えとして注
解18の引当金計上の要否を検討する必要がある。なお、当該金額に重要性がない場
合はこの限りではない。
また、過去の返還(支払実績が把握されていないなど、金額が合理的に算定で
きない場合は、返還(支払)請求時に費用計上することもやむを得ないと判断され
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るが、その場合でも、合理的な算定が可能となるよう、期に対応することが必
である。
4.適用等
(1)本指針は、平成 19 年4月1日以後開始する事業年度から適用する。なお、同日
前に開始する事業年度についても適用することができる。
(2)削除(平成 23 年3月 29 日)
(3)削除(平成 23 年3月 29 日)
(4)
「監査・保証実務委員会報告第 42 「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引
当金又は準備金並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い」の改正につい
て」(平成 23 年3月 29 日)は、公表日から適用する。ただし、改正前の4(2)の規
定の削除については、平成 23 年4月1日以後開始する事業年度から適用する。なお、
適用初年度より前の事業年度に行われている会計上の変更及び過去の誤謬の訂正につ
いては遡及処理しない。
上