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(2) 勤務が終了し権利が確定した時に自己株式の帳簿価額を減額する方法
46. 前項の(1)の方法は、株式が企業から取締役等に移転する事実に応じて自己株式の帳
簿価額を減額するものである。また、(2)の方法は、最終的に没収によって自己株式を
改めて取得する可能性があることから、没収となるか否かが確定するまでは、自己株式
を計上し、没収とならないことが確定した段階で、確定したもののみを減額するもので
ある。
前項の(1)と(2)のいずれの方法も採り得るが、本実務対応報告では、次の理由から
(1)の割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用し、割当日において、処分し
た自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額し、その後
の報酬費用の計上に応じてその他資本剰余金を計上することとした(本実務対応報告
第 12 項及び第 13 項参照)。
(1) 通常、自己株式の処分は対価の払込期日に認識することとしているが、これは会
社法上、自己株式の処分の効力が生じるのは払込期日とされているためである(自
己株式等会計適用指針第 34 項)。取締役の報酬等として株式を無償交付する場合
は、その効力が生じるのが「割当日」であることから、割当日に自己株式の帳簿価
額を減額する方法は、自己株式等会計適用指針の考え方と整合する。
(2) 勤務が終了し権利が確定した時に、自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用
した場合、自己株式を企業がもはや保有しておらず、譲渡制限付の株式の保有者と
して取締役等が株主になっているにもかかわらず、自己株式として計上され続け
ることになる。
(3) 自己株式は処分によって、処分の対価に相当する額の分配可能額が増加する効
果があると捉えられているが、勤務が終了し権利が確定した時に、自己株式の帳簿
価額を減額する方法を採用した場合、このような効果のない自己株式が計上され
続けることになるため、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがある。
なお、割当日にその他資本剰余金を減額することによって、その他資本剰余金の残高
が負の値になった場合、自己株式等会計基準第 12 項により、会計期間末において、そ
の他資本剰余金の残高を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)か
ら減額することになる(本実務対応報告第 12 項参照)が、自己株式等会計基準では、
このように払込資本に生じた毀損を留保利益で埋め合わせるのは、その期に完結する
処理としている(自己株式等会計基準第 43 項)。したがって、過年度にその他利益剰余
金で補てんを行った後、当年度に報酬費用の計上を行った場合(本実務対応報告第 14
項の没収による自己株式の無償取得により自己株式を増額した場合も含む。)でも、過
年度に充当した留保利益を元に戻すことはせず、その他資本剰余金を増額することと
した。
(没収の会計処理)