監査・保証実務委員会実務指針第 84 号
中間財務諸表と年度財務諸表との会計処理の首尾一貫性
平成 23 年5月 17 日
日本公認会計士協会
Ⅰ はじめに
1.「半期報告書で開示すべき中間財務諸表に関する意見書」(昭和52年3月29日
企業会計審議会)により、中間財務諸表作成基準及び中間財務諸表監査基準が定
められ、公認会計士又は監査法人による監査制度が発足して以降もなお、中間財
務諸表と年度財務諸表との会計処理の首尾一貫性(以下「中間・年度の首尾一貫
性」という。)については、それが保持されない事例が見受けられた。中間・年
度の首尾一貫性が保持されない場合には中間財務諸表の有用性が阻害されること
ともなるので、会計及び監査実務における適切な取扱いを定める必要性が認めら
れたことから、監査第一委員会報告第36号「中間財務諸表と年度財務諸表との会
計処理の首尾一貫性」(以下「36号」という。)を昭和55年8月に公表した。そ
の後、財務諸表等規則等の改正や、中間財務諸表作成基準の予測主義から実績主
義への改正等を受け、36号を幾度か改正している。
2.今般、企業会計基準委員会から平成21年12月に企業会計基準第24号「会計上の
変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過年度遡及会計基準」という。)
及び企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基
準の適用指針」(以下「過年度遡及適用指針」という。)が公表され、これらを
受けて平成22年6月の企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」
(以下「四半期会計基準」という。)や、財務諸表等規則等が改正されたことを
踏まえ、所要の見直しを行うとともに体系の整理を行い、36号を廃止した上で新
たに本指針を公表することとした。
Ⅱ 中間・年度の首尾一貫性の意義
3.中間財務諸表作成基準は「中間財務諸表は、原則として年度決算に適用される
会計処理の原則及び手続に準拠して作成しなければならない。」と述べ、中間財
務諸表と年度財務諸表とにおいて、会計処理の原則及び手続(以下「会計方針」
という。)は、原則として、首尾一貫していなければならないものとしている。
4.しかし、下期において発生した特殊な事情、例えば上期においては考慮する必
要がなかったが下期に至って考慮せざるをえない状況が発生した場合等により、
自発的な会計方針の変更を下期に行う場合もある。このような事例を、その形態
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によって、分類すると次の二つに類別することができる。
(1) 前事業年度と当中間期において採用する会計方針は同一であるが、当事業年
度で採用する会計方針を変更する事例
(2) 前事業年度において採用した会計方針を当中間期で変更し、さらに、当事業
年度で前事業年度において採用した会計方針に戻す事例
5.会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合を除き、
自発的に会計方針の変更を行う場合は、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用
指針に基づき、過去の期間に新たな会計方針を遡及適用することとなる。自発的
な会計方針の変更を下期に行う場合も新たな会計方針を遡及適用することによ
り、中間・年度の首尾一貫性は保持される。しかしながら、下期に会計方針を変
更することにより中間財務諸表の有用性が損なわれるおそれが強い。したがって、
中間財務諸表制度をより一層意義あるものとするために、中間決算時点において、
事業年度の会計方針を考慮して中間財務諸表の作成に関する会計方針を明確に定
めることが必要となる。
なお、中間・年度の首尾一貫性の観点から、下期で変更した会計方針を上期に
も適用することが実務上不可能なときには、翌年度の期首時点で会計方針の変更
を行い、当該期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針
を適用することになると考えられる(四半期会計基準第 47-3項参照)。
6.中間財務諸表の監査に当たって、監査人は中間財務諸表制度の意義を踏まえ、
上述した観点から、企業の中間財務諸表の作成に関する会計方針について、十分
検討しなければならない。さらに、期末の監査においても、下期において会計方
針が変更されているか、また変更されている場合には、その理由及び変更が中間
財務諸表に与えている影響の内容を吟味しなければならない。
7.第4項(1)の場合には、事業年度間の会計方針の変更に該当することとなるが、
その変更の正当性の判断において、年度において会計方針を変更したことの正当
な理由とともに、中間決算時点において、変更後の方法によらなかったことにつ
いての正当な理由が存在しなければならない。
8.第4項(2)の場合には、中間期において会計方針を変更することの正当な理由と、
更に年度においてこれをもとの会計方針に戻すことの正当な理由が存在しなけれ
ばならない。なお当該ケースは、極めて特殊な合理的な事情が存在する場合に限
られるものと思われる。
Ⅲ 自発的な会計方針の変更を下期に行う場合の注記
9.諸般の事情により、下期において自発的に会計方針を変更した場合には、中間
財務諸表の有用性を確保するためにも、当年度財務諸表及び翌中間財務諸表にお
いて、第10項及び第11項の開示がなされなければならない。ただし、当該変更を
会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合については、過去の期間に新
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たな会計方針を遡及適用することが求められないことから、第10項の内容のうち、
中間財務諸表の主な科目に対する影響額及び当中間会計期間に係る一株当たり情
報に対する影響額の注記は要さないものとする。
10.当年度財務諸表における注記の内容は次のとおりである。
① 第4項(1)の場合
当年度財務諸表において、財務諸表等規則第8条の3の2により会計方針
の変更に係る記載がなされることとなるが、これに併せて、当中間期におい
て当事業年度に採用した会計方針を採用しなかった旨、その正当な理由及び
当中間期で当事業年度と同一の会計方針を採用した場合の当中間財務諸表の
主な科目に対する影響額、当中間会計期間に係る一株当たり情報に対する影
響額を注記する(ただし、比較情報に係る影響額を除く。)。
② 第4項(2)の場合
当中間期において前事業年度に採用した会計方針を変更し、当事業年度に
当該変更を取りやめた旨、その正当な理由及び当中間期で当該変更がなかっ
た場合の当中間財務諸表の主な科目に対する影響額、当中間会計期間に係る
一株当たり情報に対する影響額を注記する(ただし、比較情報に係る影響額
を除く。)。
11.翌中間財務諸表における注記の内容は次のとおりである。
① 第4項(1)の場合
中間財務諸表等規則第5条の2第3項の規定により、その旨を注記しなけ
ればならない。
② 第4項(2)の場合
本項①と同様な内容の注記を行うこととなる。
12.監査人としては、第6項から第8項に示した事項とともに、下期に会計方針が
変更された場合の注記による開示内容の妥当性についても吟味すべきである。
Ⅳ 中間連結財務諸表と年度連結財務諸表における首尾一貫性
13.中間連結財務諸表と年度連結財務諸表との作成に関しては、個別の中間財務諸
表と年度財務諸表との間における首尾一貫性と同様の関係が存在していることは
言うまでもない。
したがって、前項までに記載した事項は、中間連結財務諸表と年度連結財務諸
表との首尾一貫性について準用するものとする。この場合、前項までに記載して
いる「中間財務諸表」を「中間連結財務諸表」に、「年度財務諸表」を「年度連結財務諸
表」に各々読み替えるものとする。
Ⅴ 適用等
14.本指針は、平成23年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度に係る監
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査並びに中間連結財務諸表及び中間財務諸表に係る中間監査から適用する。
15.本指針の適用をもって、36号は廃止する。ただし、本指針の適用初年度の中間連
結財務諸表及び中間財務諸表においては、第11項の注記事項に代えて36号で求められ
ていた注記事項を記載する。
以 上
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