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引率についても、無リスクの割引率が用いられる場合と無リスクの割引率に信用リスクを調
整したものが用いられる場合が考えられる。当委員会では、割引前将来キャッシュ・フロー
の測定値の属性とそれに見合う割引率の組合せについて検討を行った。
37. 市場の評価を反映した金額という考え方による場合、資産除去債務について、市場価格を
観察することができれば、それに基づく価額を時価として用いることが考えられるが、通常、
その市場価格を観察することはできないため、市場があるものと仮定して、そこで織り込ま
れるであろう要因を割引前将来キャッシュ・フローの見積りに反映するという考え方による
ことになる。この場合には、自己の信用リスクが高いときには市場の評価を反映した将来キ
ャッシュ・フローの見積額が増加することとなるという見方と、将来キャッシュ・フローの
見積額は信用リスクによって増加するものではないという見方がある。
前者の見方は、現時点で処理業者との間で、対象となる有形固定資産の除去の実行時に支
払を行うという契約を締結することを想定すれば、将来の支払額は信用リスクの分だけ高い
金額が要求されることになるとの考え方に基づくものである。しかし、この見方に対しては、
そのような契約形態は、通常、市場がないために現実的な想定とは考えにくく、また、仮に
そのような契約形態を採るとしても、自己の信用リスクについて市場の評価を反映した将来
キャッシュ・フローの見積額は他の条件が一定の場合、除去を実行する時期が近づくにつれ
て、実際の除去に要する支出額に近づくこととなり、その算定を毎期末行うことは極めて煩
雑であるといった意見もある。したがって、市場の評価を反映した金額という考え方をとっ
たとしても、前者の見方のように自己の信用リスクを加味すべきものとは必ずしもいえない
と考えられる。
38. 一方、自己の支出見積りによる場合には、原状回復における過去の実績や、有害物質等に
汚染された有形固定資産の処理作業の標準的な料金の見積りなどを基礎とすることになると
考えられ、前項の後者の見方と同様に、自己の信用リスクは将来キャッシュ・フローの見積
りには影響を与えないものと考えられる。
自己の支出見積りと市場の評価を反映した金額との間に生じ得る相違として、前項のよう
な自己の信用リスクの議論とは別に、市場が想定する支出額(として企業が見積る金額)よ
りも自ら処理する場合の支出見積額の方が低い場合が考えられるが、現実には市場の想定す
る支出額というものが客観的に明らかでないことが多いため、実務的には大きな相違とはな
らないことが多いものと考えられる。また、仮に市場が想定する支出額よりも自ら処理する
場合の支出見積額の方が低い場合、自らの効率性による利益は、履行時に反映されるべきで
あるという考え方もあるが、企業の投資上、資産の除去は、通常、単独ではなく有形固定資
産の投資プロジェクトの一環として行われるため、当該有形固定資産の耐用年数にわたり、
その効率性を反映させていく方が妥当であると考えられる。
以上のことから、本会計基準では、将来における自己の支出見積りが資産除去債務の測定
値の属性の基礎として適当であるものと判断した(第 6 項(1)参照)。
39. 割引前の将来キャッシュ・フローの見積金額には、生起する可能性の最も高い単一の金額