2024 年 9 ⽉
企業会計基準適⽤指針第 33 号
リースに関する会計基準の適⽤指針
企業会計基準委員会
企業会計基準適用指針第 33 号
リースに関する会計基準の適用指針
2024年9月13日
企業会計基準委員会
目 次
目 的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 適用指針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅰ.範 囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅱ.用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅲ.会計処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.リースの識別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)リースの識別の判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分・・・・・・・・ 2.リース期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.借手のリース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額・・・・・・・・・・
(2)利息相当額の各期への配分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)使用権資産の償却・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4)リースの契約条件の変更・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(5)リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し・・・・・・・・
(6)短期リースに係る借手のリース期間の変更・・・・・・・・・・・・・・
(7)リース負債に含めなかった借手の変動リース料・・・・・・・・・・・・
(8)借手のリース期間に含まれない再リース・・・・・・・・・・・・・・・
(9)セール・アンド・リースバック取引・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.貸手のリース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)リースの分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)ファイナンス・リースの分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)ファイナンス・リース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4)オペレーティング・リース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(5)建設協力金等の預り預託保証金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(6)セール・アンド・リースバック取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・
項
1
2
2
3
5
5
5
9
17
18
18
38
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52
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59
59
70
71
82
83
87
- 1 -
5.サブリース取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)基本となる会計処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合・・・・・・
(3)転リース取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅳ.開 示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.注記事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)開示目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)借手及び貸手の注記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び
注記事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅴ.適用時期等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.適用時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.経過措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)企業会計基準第 13 号を適用した際の経過措置・・・・・・・・・・・・
(2)会計基準を適用する際の経過措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅵ.議 決・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 結論の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 経 緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1994 年リース取引実務指針の公表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 企業会計基準適用指針第 16 号の公表・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 本適用指針の公表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 開発にあたっての基本的な方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 主要な定め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 目 的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅰ.範 囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅱ.用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅲ.会計処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.リースの識別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)リースの識別の判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
89
89
92
93
94
94
94
97
110
112
112
113
113
118
138
BC1
BC1
BC1
BC2
BC3
BC4
BC4
BC6
BC7
BC8
BC9
BC9
BC9
(2)リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分・・・・・・・・
BC14
2.リース期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.借手のリース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
BC28
BC35
(1)借手における費用配分の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・ ・・
BC35
(2)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額・・・・・・・ ・・
BC36
(3)利息相当額の各期への配分・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・
BC67
- 2 -
(4)使用権資産の償却・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・
BC71
(5)リースの契約条件の変更・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
BC72
(6)リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し・・・・・・・・
BC77
(7)短期リースに係る借手のリース期間の変更・・・・・・・・・・・・・・
BC80
(8)借手のリース期間に含まれない再リース・・・・・・・・・・・・・・・
BC81
(9)セール・アンド・リースバック取引・・・・・・・・・・・・・・・・・
BC82
4.貸手のリース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
BC98
(1)リースの分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・
BC99
(2)ファイナンス・リースの分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC110
(3)ファイナンス・リース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC111
(4)オペレーティング・リース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC120
(5)建設協力金等の預り預託保証金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC122
5.サブリース取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC123
(1)基本となる会計処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC123
(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合・・・・・・ BC128
(3)転リース取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC132
(4)サブリースしている場合のヘッドリースに関する簡便的な取扱い・・・・ BC136 Ⅳ.開 示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC137 1.注記事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC137
(1)開示目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC137
(2)借手及び貸手の注記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC138
2.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び
注記事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC160 Ⅴ.適用時期等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC163 1.経過措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC163
(1)企業会計基準第 13 号を適用する際の経過措置・・・・・・・・・・・・ BC163
(2)会計基準を適用する際の経過措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・ BC164
設 例 参 考
- 3 -
目 的
1. 本適用指針は、企業会計基準第 34 号「リースに関する会計基準」(以下「会計基準」
という。)を適用する際の指針を定めるものである。なお、地上権(本適用指針第 4 項
(3)参照)の開示については「企業会計原則」に定めがあるが、当該地上権を含む借地権
の設定に係る権利金等(本適用指針第 4 項(9)参照)に関する開示については、本適用
指針を優先して適用する。
適用指針
Ⅰ.範 囲 2. 本適用指針を適用する範囲は、会計基準における範囲と同様とする。
Ⅱ.用語の定義 3. 本適用指針における用語の定義は、会計基準における用語の定義と同様とする。
4. 前項のほか、本適用指針では、次のとおり用語を定義する。
(1) 「使用期間」とは、資産が顧客との契約を履行するために使用される期間(非連
続の期間を含む。)をいう。
(2) 「短期リース」とは、リース開始日において、借手のリース期間が 12 か月以内で
あり、購入オプションを含まないリースをいう。
(3) 「借地権」とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう(借地
借家法(平成 3 年法律第 90 号)附則第 2 条の規定による廃止前の借地法(以下「借
地法」という。)第 1 条及び借地借家法第 2 条第 1 号)。
(4) 「借地権者」とは、借地権を有する者をいう。
(5) 「借地権設定者」とは、借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
(6) 「旧借地権」とは、借地法の規定により設定された借地権をいう。
(7) 「普通借地権」とは、定期借地権以外の借地権(旧借地権を除く。)をいう。
(8) 「定期借地権」とは、借地借家法第 22 条第 1 項、第 23 条第 1 項及び第 2 項又は
第 24 条第 1 項の規定による定めのある借地権をいう。
(9) 「借地権の設定に係る権利金等」とは、借地権の設定において借地権者である借
手が借地権設定者である貸手に支払った権利金、及び借手と貸手との間で借地契約
を締結するにあたり当該貸手が第三者と借地契約を締結していた場合に、当該借手
が当該第三者に対して支払う借地権の譲渡対価をいう。
(10) 「リースの契約条件の変更の発効日」とは、契約の両方の当事者がリースの契約
条件の変更に合意した日をいう。
(11) 「セール・アンド・リースバック取引」とは、売手である借手が資産を買手であ
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る貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリース(以下「リ
ースバック」という。)する取引をいう。
(12) 「サブリース取引」とは、原資産が借手から第三者にさらにリース(以下「サブ
リース」という。)され、当初の貸手と借手との間のリースが依然として有効であ
る取引をいう。以下、当初の貸手と借手との間のリースを「ヘッドリース」、ヘッ
ドリースにおける借手を「中間的な貸手」という。
Ⅲ.会計処理 1.リースの識別
(1)リースの識別の判断
5. 契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する(会計
基準第 25 項)。当該判断にあたり、当該契約が特定された資産の使用を支配する権利
を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む(会計基準第
26 項)。
特定された資産の使用期間(本適用指針第 4 項(1)参照)全体を通じて、次の(1)及び
(2)のいずれも満たす場合、当該契約の一方の当事者(サプライヤー)から当該契約の他
方の当事者(顧客)に、当該資産の使用を支配する権利が移転している([設例 1]、[設
例 2-2]、[設例 3-2]、[設例 4-2]、[設例 5]及び[設例 6])。
(1) 顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受す
る権利を有している。
(2) 顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。
(特定された資産)
6. 資産は、通常は契約に明記されることにより特定される。ただし、資産が契約に明記
されている場合であっても、次の(1)及び(2)のいずれも満たすときには、サプライヤー
が当該資産を代替する実質的な権利を有しており、当該資産は特定された資産に該当し
ない([設例 1]から[設例 3])。
(1) サプライヤーが使用期間全体を通じて当該資産を他の資産に代替する実質上の
能力を有している。
(2) サプライヤーにおいて、当該資産を他の資産に代替することからもたらされる経
済的利益が、代替することから生じるコストを上回ると見込まれるため、当該資産
を代替する権利の行使によりサプライヤーが経済的利益を享受する。
7. 顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではなく、資産の稼働能力の
一部分である場合には、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当しない。ただ
し、顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではないものの、顧客が使
用することができる資産の稼働能力が、当該資産の稼働能力のほとんどすべてであるこ
- 5 -
とにより、顧客が当該資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権
利を有している場合は、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当する([設例
1]及び[設例 4])。
(使用を指図する権利)
8. 顧客は、次の(1)又は(2)のいずれかの場合にのみ、使用期間全体を通じて特定された
資産の使用を指図する権利を有している([設例 1]、[設例 5]及び[設例 6])。
(1) 顧客が使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産
の使用方法を指図する権利を有している場合
(2) 使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前
になされており、かつ、次の①又は②のいずれかである場合
① 使用期間全体を通じて顧客のみが、資産を稼働する権利を有している又は第
三者に指図することにより資産を稼働させる権利を有している。
② 顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように、資産
を設計している。
(2)リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分
9. 借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分と
リースを構成しない部分とに分けて会計処理を行う(会計基準第 28 項)。
(借 手)
10. 借手は、契約におけるリースを構成する部分について、会計基準及び本適用指針に定
める方法により会計処理を行い、契約におけるリースを構成しない部分について、該当
する他の会計基準等に従って会計処理を行う。
11. 借手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成し
ない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立価格の比率に基づいて配分す
る。また、借手は、契約における対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動
及びコストについて借手が支払う金額が含まれる場合、当該金額を契約における対価の
一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する([設例 7])。
(貸 手)
12. 貸手は、契約におけるリースを構成する部分について、会計基準及び本適用指針に定
める方法によりファイナンス・リース又はオペレーティング・リースの会計処理を行い、
契約におけるリースを構成しない部分について、該当する他の会計基準等に従って会計
処理を行う。
13. 貸手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成し
- 6 -
ない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立販売価格の比率に基づいて配
分する。貸手は、契約における対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動及
びコストについて借手が支払う金額、あるいは、原資産の維持管理に伴う固定資産税、
保険料等の諸費用(以下「維持管理費用相当額」という。)が含まれる場合、当該配分
にあたって、次の(1)又は(2)のいずれかの方法により会計処理を行う([設例 7])。
(1) 契約における対価の中に借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストに
ついて借手が支払う金額が含まれる場合に、当該金額を契約における対価の一部と
してリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する方法
(2) 契約における対価の中に維持管理費用相当額が含まれる場合に、当該維持管理費
用相当額を契約における対価から控除し収益に計上する、又は貸手の固定資産税、
保険料等の費用の控除額として処理する方法
ただし、(2)の方法を選択する場合で、維持管理費用相当額がリースを構成する部分
の金額に対する割合に重要性が乏しいときは、当該維持管理費用相当額についてリース
を構成する部分の金額に含めることができる。
14. 本適用指針第 12 項及び前項にかかわらず、リースを含む契約についてリースを構成
しない部分が企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計
基準」という。)の適用対象であって、かつ、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合に
は、貸手は、契約ごとにリースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを
合わせて取り扱うことができる。
(1) リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分の収益の計上の時期
及びパターンが同じである。
(2) リースを構成する部分がオペレーティング・リースに分類される。
15. 貸手が前項の取扱いを適用する場合、リースを構成する部分がリースを含む契約の主
たる部分であるかどうかに応じて次の(1)又は(2)により会計処理を行う。
(1) リースを構成する部分がリースを含む契約の主たる部分であるときは、リースを
構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを分けずに合わせてリースを
構成する部分としてオペレーティング・リースに係る会計処理を行う(本適用指針
第 82 項参照)。
(2) (1)に該当しないときは、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない
部分とを分けずに合わせて収益認識会計基準に従って単一の履行義務として会計
処理を行う。
(独立したリースの構成部分)
16. 原資産を使用する権利は、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合、独立したリ
ースを構成する部分である。
(1) 当該原資産の使用から単独で借手が経済的利益を享受することができること、又
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は、当該原資産と借手が容易に利用できる他の資源を組み合わせて借手が経済的利
益を享受することができること
(2) 当該原資産の契約の中の他の原資産への依存性又は相互関連性が高くないこと
2.リース期間
17. 借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能
期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間
の両方の期間を加えて決定する(会計基準第 31 項)。
借手は、借手が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないこと
が合理的に確実であるかどうかを判定するにあたって、経済的インセンティブを生じさ
せる要因を考慮する([設例 8-2]から[設例 8-5])。これには、例えば、次の要因が含ま
れる。
(1) 延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約
金、残価保証、購入オプションなど)
(2) 大幅な賃借設備の改良の有無
(3) リースの解約に関連して生じるコスト
(4) 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
(5) 延長オプション又は解約オプションの行使条件
3.借手のリース
(1)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額
18. 借手は、リース開始日に会計基準第 34 項に従い算定された額によりリース負債を計
上する。また、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費
用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブ
を控除した額により使用権資産を計上する(会計基準第 33 項)。
19. 借手は、リース負債の計上額を算定するにあたって、原則として、リース開始日にお
いて未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額
を控除し、現在価値により算定する方法による(会計基準第 34 項)。
(短期リースに関する簡便的な取扱い)
20. 借手は、短期リース(本適用指針第 4 項(2)参照)について、会計基準第 33 項の定め
にかかわらず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料
を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することがで
きる。借手は、この取扱いについて、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場
合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における
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用途が類似する原資産のグループごとに適用するか否かを選択することができる。
21. 連結財務諸表においては、個別財務諸表において個別貸借対照表に表示するであろう
科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに行
った前項の選択を見直さないことができる。
(少額リースに関する簡便的な取扱い)
22. 次の(1)と(2)のいずれかを満たす場合、借手は、会計基準第 33 項の定めにかかわら
ず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリ
ース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができる。なお、
(2)については、①又は②のいずれかを選択できるものとし、選択した方法を首尾一貫
して適用する。
(1) 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されて
いる場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース
ただし、その基準額は当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準
額より利息相当額だけ高めに設定することができる。また、この基準額は、通常取
引される単位ごとに適用し、リース契約に複数の単位の原資産が含まれる場合、当
該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができる。
(2) 次の①又は②を満たすリース
① 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約 1 件
当たりの金額に重要性が乏しいリース
この場合、1 つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産
が含まれているときは、異なる科目ごとに、その合計金額により判定すること
ができる。
② 新品時の原資産の価値が少額であるリース
この場合、リース 1 件ごとにこの方法を適用するか否かを選択できる。
23. 前項(2)①に該当するリースに前項で定める会計処理を適用するにあたり、リース契
約 1 件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として、借手のリース期間と
する。ただし、当該借手のリース期間に代えて、契約上、契約に定められた期間(以下
「契約期間」という。)とすることができる。また、リース契約 1 件当たりの金額の算
定にあたり維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができる。
(指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料)
24. 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料(会計基準第 35 項(2))には、市
場における賃料の変動を反映するように当事者間の協議をもって見直されることが契
約条件で定められているリース料が含まれる。
25. 借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、リース開始日
- 9 -
には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数又はレートに基づきリース料
を算定する([設例 13])。
26. 前項の定めにかかわらず、借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース
料について、合理的な根拠をもって当該指数又はレートの将来の変動を見積ることがで
きる場合、リース料が参照する当該指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積ら
れた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を算定することを、リースごとに
リース開始日に選択することができる。
(借地権の設定に係る権利金等)
27. 借地権の設定に係る権利金等(第 4 項(9)参照)は、使用権資産の取得価額に含め、原
則として、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行う。
ただし、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等のうち、
次の(1)又は(2)の権利金等については、減価償却を行わないものとして取り扱うことが
できる。
(1) 本適用指針の適用前に旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に
係る権利金等を償却していなかった場合、本適用指針の適用初年度の期首に計上さ
れている当該権利金等及び本適用指針の適用後に新たに計上される権利金等の双
方
(2) 本適用指針の適用初年度の期首に旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地
権の設定に係る権利金等が計上されていない場合、本適用指針の適用後に新たに計
上される権利金等
(資産除去債務)
28. 借手は、資産除去債務を負債として計上する場合の関連する有形固定資産が使用権資
産であるとき、企業会計基準第 18 号「資産除去債務に関する会計基準」(以下「資産除
去債務会計基準」という。)第 7 項に従って当該負債の計上額と同額を当該使用権資産
の帳簿価額に加える。
(建設協力金等の差入預託保証金)
建設協力金等
29. 預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建設協力金等の差入
預託保証金(敷金を除く。)に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・
フローを割り引いた現在価値である。差入企業である借手は、当該差入預託保証金の支
払額と当該時価との差額を使用権資産の取得価額に含める。また、当初時価と返済額と
の差額は、弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で受取利息として計上する([設
例 14])。
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30. 建設協力金に関して、差入企業である借手が対象となった土地建物に抵当権を設定し
ている場合、現在価値に割り引くための利子率は、原則としてリスク・フリーの利子率
を使用する。
31. 差入企業である借手は、本適用指針第 29 項の定めにかかわらず、返済期日までの期
間が短いもの等、その影響額に重要性がない将来返還される差入預託保証金(敷金を除
く。)について、本適用指針第 29 項の会計処理を行わないことができる。本適用指針第
29 項の会計処理を行わない差入預託保証金(敷金を除く。)については、債権に準じて
会計処理を行う(企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品
会計基準」という。)第 14 項)。
32. 差入企業である借手は、差入預託保証金(敷金を除く。)のうち、差入預託保証金の
預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定めら
れている金額について、使用権資産の取得価額に含める。
敷 金
33. 差入企業である借手は、差入敷金のうち、差入敷金の預り企業である貸手から差入企
業である借手に将来返還される差入敷金について、取得原価で計上する。ただし、第 29
項及び第 30 項に準じて会計処理を行うことができる。
34. 差入企業である借手は、差入敷金のうち、差入敷金の預り企業である貸手から差入企
業である借手に返還されないことが契約上定められている金額を使用権資産の取得価
額に含める。
35. 企業会計基準適用指針第 21 号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第 9 項
に従い、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのう
ち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法を選択する場合、同項に従って差入敷
金の会計処理を行う。
貸倒引当金
36. 建設協力金等の差入預託保証金について差入預託保証金の預り企業である貸手の支
払能力から回収不能と見込まれる金額がある場合、金融商品会計基準に従って貸倒引当
金を設定する。
(現在価値の算定に用いる割引率)
37. 借手がリース負債の現在価値の算定のために用いる割引率は、次のとおりとする([設
例 9-1]、[設例 11]及び[設例 18-1])。
(1) 貸手の計算利子率(第 66 項参照)を知り得る場合、当該利率による。
(2) 貸手の計算利子率を知り得ない場合、借手の追加借入に適用されると合理的に見
積られる利率による。
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(2)利息相当額の各期への配分
38. 借手のリース料は、原則として、利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに
区分計算し、前者は支払利息として会計処理を行い、後者はリース負債の元本返済とし
て会計処理を行う。借手のリース期間にわたる利息相当額の総額は、リース開始日にお
ける借手のリース料とリース負債の計上額との差額になる。
39. 前項において、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に配分する方法は、原
則として、利息法による(会計基準第 36 項)。利息法においては、各期の利息相当額を
リース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する([設例 9-1])。
(使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)
40. 使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法を適用す
ることができる([設例 9-1])。
(1) 第 38 項の定めによらず、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控
除しない方法。この場合、使用権資産及びリース負債は、借手のリース料をもって
計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみ計上する。
(2) 第 39 項の定めによらず、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額
法により配分する方法
41. 使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の
期末残高が当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める
割合が 10 パーセント未満である場合をいう。
42. 連結財務諸表においては、前項の判定を、連結財務諸表の数値を基礎として見直すこ
とができる。見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合、連結修正仕訳で修
正を行う。
(3)使用権資産の償却
43. 会計基準第 37 項における契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転す
ると認められるリースとは、次の(1)から(3)のいずれかに該当するものをいう。
(1) 契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することと
されているリース
(2) 契約期間終了後又は契約期間の中途で、借手による購入オプションの行使が合理
的に確実であるリース
(3) 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもので
あって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難
であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らか
なリース
- 12 -
(4)リースの契約条件の変更
44. 借手は、リースの契約条件の変更が生じた場合、変更前のリースとは独立したリース
として会計処理を行うか、又は、リース負債の計上額の見直しを行う(会計基準第 39
項)。
リースの契約条件の変更が次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、借手は、当該リー
スの契約条件の変更を独立したリースとして取り扱い、当該独立したリースのリース開
始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債
にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権
資産を計上する([設例 15-1])。
(1) 1 つ以上の原資産を追加することにより、原資産を使用する権利が追加され、リ
ースの範囲が拡大されること
(2) 借手のリース料が、範囲が拡大した部分に対する独立価格に特定の契約の状況に
基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること
45. 借手は、リースの契約条件の変更のうち、前項に従い独立したリースとしての会計処
理が行われないリースの契約条件の変更について、リースの契約条件の変更の発効日に、
次の会計処理を行う([設例 15-2]から[設例 15-5])。
(1) リース負債について、変更後の条件を反映した借手のリース期間を決定し、変更
後の条件を反映した借手のリース料の現在価値まで修正する。
(2) 使用権資産について、次のことを行うことによって、(1)のリース負債の見直し
に対応する会計処理を行う。
① リースの契約条件の変更のうちリースの範囲が縮小されるものについては、
リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額
する。このとき、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた
場合は、当該差額を損益に計上する。
② 他のすべてのリースの契約条件の変更については、リース負債の修正額に相
当する金額を使用権資産に加減する。
(5)リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し
46. 借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、次のいずれかに該当すると
きには、該当する事象が生じた日にリース負債について当該事象の内容を反映した借手
のリース料の現在価値まで修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資
産に加減する([設例 16])。
(1) 借手のリース期間に変更がある場合(会計基準第 41 項及び第 42 項)
(2) 借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合(本適用指針第
47 項から第 49 項参照)
- 13 -
ただし、使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなお、リース負債の測定の減額
がある場合には、残額を損益に計上する。
(借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合)
47. リースの契約条件や借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある状
況として、例えば、次のようなものが挙げられる。
(1) 原資産を購入するオプションの行使についての判定に変更がある場合
(2) 残価保証に基づく支払見込額に変動がある場合
(3) 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に変動がある場合(第 48 項
及び第 49 項参照)
指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料
48. 借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、当該指数又は
レートが変動し、そのことにより、今後支払うリース料に変動が生じたときにのみ、残
りの借手のリース期間にわたり、変動後の指数又はレートに基づきリース料及びリース
負債を修正し、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する([設例 13])。
49. 借手は、第 26 項によりリース料が参照する指数又はレートの将来の変動を見積り、
当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を算定している場合、
前項の定めにかかわらず、決算日ごとに参照する指数又はレートの将来の変動を見積り、
当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を修正し、リース負債
の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する。
(6)短期リースに係る借手のリース期間の変更
50. 借手は、第 44 項から第 46 項の定めにかかわらず、短期リースに関する簡便的な取扱
いを適用していたリース(第 20 項参照)について、借手のリース期間に変更がある場
合で、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点
までが 12 か月以内であるときは、次のいずれかの方法を選択することができる。
(1) 変更後のリースについて短期リースとして取り扱う方法
(2) 変更後のリースのうち、借手のリース期間の変更時点から変更後の借手のリース
期間の終了時点までが 12 か月以内である場合のみ、短期リースとして取り扱う方
法
この取扱いについては、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対
照表において表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似
する原資産のグループごとに適用することができる。
(7)リース負債に含めなかった借手の変動リース料
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51. 借手は、リース負債の計上額に含めなかった借手の変動リース料について、当該変動
リース料の発生時に損益に計上する([設例 13])。
(8)借手のリース期間に含まれない再リース
52. 借手は、会計基準第 31 項に基づきリース開始日に再リース期間を借手のリース期間
に含めていない場合又は本適用指針第 44 項若しくは第 45 項の適用において会計基準第
31 項に基づき直近のリースの契約条件の変更の発効日に再リース期間を借手のリース
期間に含めていない場合、会計基準第 41 項及び第 42 項にかかわらず、再リースを当初
のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができる。
(9)セール・アンド・リースバック取引
(セール・アンド・リースバック取引に該当するかどうかの判断)
53. セール・アンド・リースバック取引とは、売手である借手が資産を買手である貸手に
譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリースする取引をいう(本適
用指針第 4 項(11)参照)。
リースバックが行われる場合であっても、売手である借手による資産の譲渡が次のい
ずれかであるときはセール・アンド・リースバック取引に該当しない。
(1) 収益認識会計基準に従い、一定の期間にわたり充足される履行義務(収益認識会
計基準第 36 項)の充足によって行われるとき
(2) 企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下
「収益認識適用指針」という。)第 95 項を適用し、工事契約における収益を完全
に履行義務を充足した時点で認識することを選択するとき
54. 売手である借手が原資産を移転する前に原資産に対する支配を獲得しない場合、当該
資産の移転と関連するリースバックについては、セール・アンド・リースバック取引に
該当せず、リースとして会計処理を行う。
(セール・アンド・リースバック取引に該当する場合の会計処理)
55. セール・アンド・リースバック取引に該当する場合に次の(1)又は(2)のいずれかを満
たすときは、売手である借手は、当該セール・アンド・リースバック取引について資産
の譲渡とリースバックを一体の取引とみて、金融取引として会計処理を行う。
(1) 収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の
譲渡が損益を認識する売却に該当しない。
(2) 収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の
譲渡が損益を認識する売却に該当するが、リースバックにより、売手である借手が
資産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受することができ、かつ、
資産の使用に伴って生じるコストのほとんどすべてを負担することとなる。
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56. セール・アンド・リースバック取引に該当する場合に前項(1)及び(2)を満たさないと
きは、売手である借手は、資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等
に従い損益を認識し、リースバックについて会計基準及び本適用指針に従い借手の会計
処理を行う。
(資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレー
トではない場合)
57. 前項において資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明
らかに市場のレートでのリース料ではない場合、売手である借手は、当該資産の譲渡対
価と借手のリース料について次のとおり取り扱う。
(1) 資産の譲渡対価が明らかに時価を下回る場合、時価を用いて譲渡について損益を
認識し、譲渡対価と時価との差額について使用権資産の取得価額に含める。
(2) 借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を下回る場合、借手のリー
ス料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を増額した上で譲渡
について損益を認識し、当該差額について使用権資産の取得価額に含める。
(3) 資産の譲渡対価が明らかに時価を上回る場合、時価を用いて譲渡について損益を
認識し、譲渡対価と時価との差額について金融取引として会計処理を行う。
(4) 借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を上回る場合、借手のリー
ス料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を減額した上で譲渡
について損益を認識し、当該差額について金融取引として会計処理を行う。
資産の譲渡対価が明らかに時価ではないかどうか又は借手のリース料が明らかに市
場のレートでのリース料ではないかどうかは、資産の時価と市場のレートでのリース料
のいずれか容易に算定できる方を基礎として判定する。(1)又は(2)は、譲渡対価を増額
する場合に適用し、(3)又は(4)は、譲渡対価を減額する場合に適用する。
58. 前項の取扱いは、セール・アンド・リースバック取引に該当しない第 53 項(1)及び(2)
の取引にも適用する。
4.貸手のリース
(1)リースの分類
(ファイナンス・リースに該当するリース)
59. ファイナンス・リースとは、次の(1)及び(2)のいずれも満たすリースをいう(会計基
準第 11 項)。
(1) 契約期間の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに
準ずるリース(以下合わせて「解約不能のリース」という。)
(2) 借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、か
つ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース
- 16 -
(以下「フルペイアウトのリース」という。)
60. 解約不能のリースに関して、法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し、相
当の違約金(以下「規定損害金」という。)を支払わなければならない等の理由から、
事実上解約不能と認められるリースを解約不能のリースに準ずるリースとして取り扱
う(会計基準 BC26 項)。リースの条件により、このような取引に該当するものとして
は、次のようなものが考えられる。
(1) 解約時に、未経過の契約期間に係るリース料の概ね全額を、規定損害金として支
払うこととされているリース
(2) 解約時に、未経過の契約期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経
過の契約期間に係る利息等として、一定の算式により算出した額を差し引いたもの
の概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース
61. 本適用指針第 59 項(2)の「原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」
場合とは、当該原資産を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべ
ての経済的利益を享受する場合をいい、また、「当該原資産の使用に伴って生じるコス
トを実質的に負担する」場合とは、当該原資産の取得価額相当額、維持管理等の費用、
陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担する場合をいう(会計基準 BC26
項)。
(具体的な判定基準)
62. リースがファイナンス・リースに該当するかどうかについては、本適用指針第 59 項
の要件をその経済的実質に基づいて判断すべきものであるが、次の(1)又は(2)のいずれ
かに該当する場合には、ファイナンス・リースと判定される([設例 9]から[設例 12])。
(1) 現在価値基準
貸手のリース料(会計基準第 23 項)の現在価値が、原資産の現金購入価額の概
ね 90 パーセント以上であること(以下「現在価値基準」という。)
(2) 経済的耐用年数基準
貸手のリース期間(会計基準第 16 項)が、原資産の経済的耐用年数の概ね 75 パ
ーセント以上であること(ただし、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産
の中古市場の存在等を勘案すると、上記(1)の判定結果が 90 パーセントを大きく下
回ることが明らかな場合を除く。)(以下「経済的耐用年数基準」という。)
63. 前項(2)に関して、貸手のリース期間が経済的耐用年数の概ね 75 パーセント以上であ
っても借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合、
現在価値基準のみにより判定を行う。
(現在価値基準の判定における取扱い)
残価保証の取扱い
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64. リースに残価保証が含まれる場合、貸手は、残価保証額を貸手のリース料に含める
([設例 11])。
なお、貸手においては、借手以外の第三者による残価保証額も貸手のリース料に含め
る。
製造又は販売を事業とする貸手等の取扱い
65. 製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース又は貸手が事業の一
環以外で行うリースにおいては、第 62 項(1)における現金購入価額は貸手の製作価額や
現金購入価額によらず、当該原資産の借手に対する現金販売価額を用いる。
現在価値の算定に用いる割引率
66. 現在価値の算定を行うにあたっては、貸手のリース料の現在価値と貸手のリース期間
終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額(以下「見積残存価額」という。)
の現在価値の合計額が、当該原資産の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額と等
しくなるような利率(以下「貸手の計算利子率」という。)を用いる([設例 9-1])。
連結財務諸表における判定
67. 連結財務諸表において現在価値基準の判定を行う場合、必要に応じて、親会社におけ
る貸手のリース料及び連結子会社における貸手のリース料を合算した金額に基づき判
定を行う。ただし、重要性が乏しい場合には、親会社及び連結子会社の個別財務諸表に
おける結果の修正を要しない。
(不動産に係るリースの取扱い)
68. 土地、建物等の不動産のリースについても、第 59 項から前項に従い、ファイナンス・
リースに該当するか、オペレーティング・リースに該当するかを判定する。ただし、土
地については、第 70 項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除き、オペレーティ
ング・リースに該当するものと推定する。
69. 土地と建物等を一括したリース(契約上、建物賃貸借契約とされているものも含む。
以下同じ。)は、原則として、貸手のリース料を合理的な方法で土地に係る部分と建物
等に係る部分に分割した上で、建物等について、第 62 項(1)に定める現在価値基準の判
定を行う。
(2)ファイナンス・リースの分類
70. 貸手は、ファイナンス・リースについて、所有権移転ファイナンス・リースと所有権
移転外ファイナンス・リースとに分類する(会計基準第 44 項)。本適用指針第 62 項で
ファイナンス・リースと判定されたもののうち、次の(1)から(3)のいずれかに該当する
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場合、所有権移転ファイナンス・リースに分類し、いずれにも該当しない場合、所有権
移転外ファイナンス・リースに分類する([設例 9]から[設例 12])。
(1) 契約上、契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転す
ることとされているリース
(2) 契約上、借手に対して、契約期間終了後又は契約期間の中途で、名目的価額又は
その行使時点の原資産の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利(以下合わ
せて「割安購入選択権」という。)が与えられており、その行使が確実に予想され
るリース
(3) 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもので
あって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難
であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らか
なリース
(3)ファイナンス・リース
(所有権移転外ファイナンス・リース)
基本となる会計処理
71. 貸手は、ファイナンス・リースについて、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処
理を行う(会計基準第 45 項)。貸手として行ったリースが所有権移転外ファイナンス・
リースと判定される場合、貸手は、事業の一環で行うリースについて取引実態に応じ、
次の(1)又は(2)のいずれかにより会計処理を行う。
(1) 製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース([設例 12])
① リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除
した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上する。また、原資産
の帳簿価額により売上原価を計上する。原資産を借手の使用に供するために支
払う付随費用がある場合、当該付随費用を売上原価に含める。
ただし、売上高と売上原価の差額(以下「販売益相当額」という。)が貸手
のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、原資産の帳簿価額(付随費
用がある場合はこれを含める。)をもって売上高及び売上原価とし、販売益相
当額を利息相当額に含めて処理することができる。
② 各期に受け取る貸手のリース料(以下「受取リース料」という。)を利息相
当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、
後者をリース投資資産の元本回収額として会計処理を行う。
(2) 製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース([設例 9-1])
① リース開始日に、原資産の現金購入価額(原資産を借手の使用に供するため
に支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を
計上する。
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② 受取リース料の会計処理は、(1)②と同様とする。
72. 貸手が事業の一環以外で行うリースについて、当該リースが所有権移転外ファイナン
ス・リースと判定される場合、貸手は、次の会計処理を行う。
(1) リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した
金額と原資産の帳簿価額との差額を売却損益として計上し、貸手のリース料からこ
れに含まれている利息相当額を控除した金額でリース投資資産を計上する。原資産
を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を含めて売
却損益に計上する。
ただし、当該売却損益が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、
当該売却損益を利息相当額に含めて処理することができる。
(2) 受取リース料の会計処理は、前項(1)②と同様とする。
利息相当額の各期への配分
73. 利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息
法による(会計基準第 47 項)。この場合に用いる利率は、本適用指針第 66 項の貸手の
計算利子率とする([設例 9-1])。
74. 貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合、前項の定めによらず、利息
相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができる。ただし、リ
ースを主たる事業としている企業は、当該取扱いを適用することはできない([設例 9-
1])。
75. 前項の「貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合」とは、未経過の貸
手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が当該期末残高及び営業債権の期
末残高の合計額に占める割合が 10 パーセント未満である場合をいう。
なお、連結財務諸表においては、上記の判定を、連結財務諸表の数値を基礎として見
直すことができる。見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合、連結修正仕
訳で修正を行う。
リース期間終了時及び再リースの処理
76. 貸手のリース期間の終了により、借手から原資産の返却を受けた場合、貸手は当該原
資産を見積残存価額でリース投資資産からその後の保有目的に応じ貯蔵品又は固定資
産等に振り替える([設例 9-3])。当該原資産を処分した場合、処分価額と帳簿価額と
の差額を処分損益に計上する。
貸手が再リース期間を貸手のリース期間に含めない場合の再リース料は、その発生時
に収益に計上する。この場合、リース投資資産は、貸手のリース期間の終了により固定
資産に振り替え、当該固定資産について、再リース開始時点の見積再リース期間にわた
り減価償却を行う。この場合の固定資産の取得価額は、リース投資資産から振り替えた
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金額とする。
中途解約の処理
77. リースが中途解約された場合に受け取る規定損害金については、損益計算書上、当該
規定損害金と中途解約時のリース投資資産残高(中途解約時点での見積残存価額控除後)
との差額を損益として計上する([設例 9-1])。
(所有権移転ファイナンス・リース)
基本となる会計処理
78. 貸手の行ったリースが所有権移転ファイナンス・リースと判定される場合の基本とな
る会計処理は、第 71 項及び第 72 項と同様とする。この場合、第 71 項及び第 72 項にあ
る「リース投資資産」は「リース債権」と読み替える。また、割安購入選択権がある場
合、当該割安購入選択権の行使価額を貸手のリース料及び受取リース料に含める([設
例 10])。
利息相当額の各期への配分
79. 利息相当額の各期への配分は、第 73 項と同様とする。
再リースの処理
80. 貸手が再リース期間を貸手のリース期間に含めない場合の再リース料は、その発生時
に収益に計上する。
中途解約の処理
81. リースが中途解約された場合に受け取る規定損害金については、損益計算書上、当該
規定損害金と中途解約時のリース債権残高との差額を損益として計上する。
(4)オペレーティング・リース
82. 貸手のオペレーティング・リースについては、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた
会計処理を行う(会計基準第 48 項)。貸手は、オペレーティング・リースによる貸手の
リース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上する。
ただし、貸手が貸手のリース期間について会計基準第 32 項(2)の方法を選択して決定
する場合に当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間
における使用料の総額(ただし、将来の業績等により変動する使用料を除く。)につい
て契約期間にわたり計上する。
(5)建設協力金等の預り預託保証金
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(建設協力金等)
83. 預り預託保証金の預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建
設協力金等の預り預託保証金(敷金を除く。)に係る当初認識時の時価は、返済期日ま
でのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値である。預り企業である貸手は、当該預
り預託保証金の受取額と当該時価との差額を長期前受家賃として計上し、契約期間にわ
たって各期の損益に合理的に配分する。また、当初時価と返済額との差額を契約期間に
わたって配分し支払利息として計上する。
84. 預り企業である貸手は、返済期日までの期間が短いもの等、その影響額に重要性がな
い預り預託保証金(敷金を除く。)について、前項の会計処理を行わないことができる。
前項の会計処理を行わない預り預託保証金は、債務に準じて会計処理を行う。
85. 預り企業である貸手は、預り預託保証金(敷金を除く。)のうち、預り企業である貸
手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額につ
いて、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上する。
(敷 金)
86. 預り企業である貸手は、将来返還する預り敷金について、債務額をもって貸借対照表
価額とする。預り敷金のうち、預り敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手
に返還されないことが契約上定められている金額について、賃貸予定期間にわたり定額
法により収益に計上する。
(6)セール・アンド・リースバック取引
87. セール・アンド・リースバック取引におけるリースバックが、ファイナンス・リース
に該当するかどうかの貸手による判定は、第 59 項から第 69 項に示したところによる。
ただし、この判定において、経済的耐用年数については、リースバック時における原資
産の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積った経済的使用可能予測期間を用いる
とともに、当該原資産の借手の現金購入価額については、借手の実際売却価額を用いる
ものとする。
88. 当該リースバックがファイナンス・リースに該当する場合の会計処理は、第 70 項か
ら第 81 項までと同様とし、当該リースバックがオペレーティング・リースに該当する
場合の会計処理は、第 82 項と同様とする。
5.サブリース取引
(1)基本となる会計処理
89. サブリース取引(本適用指針第 4 項(12)参照)では、中間的な貸手は、ヘッドリース
について、借手のリースの会計処理(会計基準第 33 項から第 42 項)を行い、サブリー
スについて、サブリースがファイナンス・リースとオペレーティング・リースのいずれ
- 22 -
に該当するか(本適用指針第 91 項参照)により、次の会計処理を行う([設例 18])。
(1) サブリースがファイナンス・リースに該当する場合([設例 18-1])
サブリースのリース開始日に、次の会計処理を行う。
① サブリースした使用権資産の消滅を認識する。
② サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価
額の現在価値の合計額でリース投資資産又はリース債権を計上する。
③ リース投資資産又はリース債権の計上及び使用権資産の取崩しに伴う損益
は、原則として純額で計上する。
(2) サブリースがオペレーティング・リースに該当する場合([設例 18-2])
サブリースにおける貸手のリース期間中に、サブリースから受け取る貸手のリー
ス料について、オペレーティング・リースの会計処理を行う(会計基準第 48 項)。
90. 前項(1)②に係る現在価値の算定を行うにあたっては、次の(1)の金額が(2)の金額と
等しくなるような利率を用いる。
(1) サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の
現在価値の合計額
(2) 当該使用権資産に係るサブリースのリース開始日に現金で全額が支払われるも
のと仮定した場合のリース料。このとき、当該リース料は、サブリースを実行する
ために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が行うと想定した場合のリ
ース料とする。また、当該リース料の算定にあたっては、サブリースがヘッドリー
スのリース期間の残存期間にわたって行われるものと仮定する。当該リース料は、
以下において「独立第三者間取引における使用権資産のリース料」という。
ただし、当該利率の算出が容易でない場合、ヘッドリースに用いた割引率を用いるこ
とができる。
91. 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合、中間的な貸手のサブリースは、ファイナ
ンス・リースと判定される(第 59 項(2)参照)([設例 18])。
(1) 現在価値基準
サブリースにおける貸手のリース料の現在価値が、独立第三者間取引における使
用権資産のリース料(前項(2)参照)の概ね 90 パーセント以上であること
(2) 経済的耐用年数基準
サブリースにおける貸手のリース期間が、ヘッドリースにおける残りの借手のリ
ース期間の概ね 75 パーセント以上であること(ただし、上記(1)の判定結果が 90
パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く。)
なお、ヘッドリースについて短期リース又は少額リースに関する簡便的な取扱いを適
用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合(第 20 項及び第 22 項参照)、
サブリースはオペレーティング・リースに分類する。
- 23 -
(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合
92. サブリース取引のうち、次の要件をいずれも満たす取引について、中間的な貸手は、
第 89 項にかかわらず、貸借対照表においてヘッドリースにおける使用権資産及びリー
ス負債を計上せず、かつ、損益計算書においてサブリースにおいて受け取るリース料の
発生時又は当該リース料の受領時のいずれか遅い時点で貸手として受け取るリース料
と借手として支払うリース料の差額を損益に計上することができる。
(1) 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッド
リースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない。
(2) 中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金
額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である。
(3) 中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない。
① サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む。)
② サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法
(3)転リース取引
93. サブリース取引のうち、ヘッドリースの原資産の所有者から当該原資産のリースを受
け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引を転リース取引という。
中間的な貸手は、第 89 項にかかわらず、転リース取引のうち、貸手としてのリースが
ヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当すると
き、次のとおり会計処理を行うことができる([設例 19])。
(1) 貸借対照表上、リース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上する。
(2) 損益計算書上、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取
るリース料と借手として支払うリース料との差額を手数料収入として各期に配分
し、転リース差益等の名称で計上する。
なお、リース債権又はリース投資資産とリース負債は利息相当額控除後の金額で計上
することを原則とするが、利息相当額控除前の金額で計上することができる。リース債
権又はリース投資資産から利息を控除するにあたって使用する割引率は、リース負債か
ら利息相当額を控除する際の割引率を使用する。
Ⅳ.開 示 1.注記事項
(1)開示目的
94. 会計基準第 54 項の開示目的を達成するために必要な情報は、リースの類型等により
異なるものであるため、注記する情報は、会計基準第 55 項に掲げる注記事項に限定す
ることを意図しておらず、会計基準第 55 項に掲げる注記事項以外であっても、会計基
準第 54 項の開示目的を達成するために必要な情報は、リース特有の取引に関する情報
- 24 -
として注記する。
95. 前項に照らして借手が注記する情報には、例えば、次のようなものがある。
(1) 借手のリース活動の性質
(2) 借手が潜在的に晒されている将来キャッシュ・アウトフローのうちリース負債の
測定に反映されていないもの(例えば、借手の変動リース料、延長オプション及び
解約オプション、残価保証、契約しているがまだ開始していないリース)
(3) 借手がリースにより課されている制限又は特約
(4) 借手がセール・アンド・リースバック取引を行う理由及び取引の一般性
96. 第 94 項に照らして貸手が注記する情報には、例えば、次のようなものがある。
(1) 貸手のリース活動の性質
(2) 貸手による原資産に関連したリスクの管理戦略や当該リスクを低減している手
段(例えば、買戻契約、残価保証、所定の限度を超える使用に対して変動するリー
ス料)
(2)借手及び貸手の注記
(借手の注記)
会計方針に関する情報
97. 「会計方針に関する情報」(会計基準第 55 項(1)①)については、リースに関して企
業が行った会計処理について理解することができるよう、次の会計処理を選択した場合、
その旨及びその内容を注記する。
(1) リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成す
る部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分と
して会計処理を行う選択(会計基準第 29 項)
(2) 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの
選択(本適用指針第 26 項参照)
(3) 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択(本適用指針第 27 項及び
第 127 項から第 129 項参照)
上記の会計方針を重要な会計方針として注記している場合、リースに関する注記とし
て繰り返す必要はなく、重要な会計方針の注記を参照することができる。
リース特有の取引に関する情報
98. 「リース特有の取引に関する情報」(会計基準第 55 項(1)②)については、リースが
企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、本適用指針第 99 項から
第 101 項の内容を注記する。
99. 貸借対照表において次の(1)から(3)に定める事項を区分して表示していない場合、そ
れぞれについて、次の事項を注記する。
- 25 -
(1) 使用権資産の帳簿価額について、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した
場合の表示科目ごとの金額。当該注記を行うにあたって、表示科目との関係が明ら
かである限りにおいて、より詳細な区分により使用権資産の帳簿価額の金額を注記
することを妨げない。
(2) 第 26 項の定めを適用し指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関
する例外的な取扱いにより会計処理を行ったリースに係るリース負債が含まれる
科目及び金額
(3) 借地権について、第 27 項ただし書き又は第 127 項の定めを適用する場合、償却
していない旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等
が含まれる科目及び金額
100. 損益計算書において次の(1)及び(2)に定める事項を区分して表示していない場合、そ
れぞれについて、次の事項を注記する。
(1) 第 20 項を適用して会計処理を行った短期リースに係る費用の発生額が含まれる
科目及び当該発生額。この費用には借手のリース期間が 1 か月以下のリースに係る
費用及び少額リース(第 22 項参照)に係る費用を含めることを要しない。
(2) リース負債に含めていない借手の変動リース料(第 51 項参照)に係る費用の発
生額が含まれる科目及び当該発生額
101. セール・アンド・リースバック取引及びサブリース取引について、次の事項を注記す
る。
(1) セール・アンド・リースバック取引
① セール・アンド・リースバック取引から生じた売却損益を損益計算書におい
て区分して表示していない場合、当該売却損益が含まれる科目及び金額
② 第 55 項を適用して会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引に
ついて、当該会計処理を行った資産がある旨並びに当該資産の科目及び金額
③ 第 56 項を適用して会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引に
ついて、当該セール・アンド・リースバック取引の主要な条件
(2) サブリース取引
① 使用権資産のサブリースによる収益(第 89 項参照)を損益計算書において
区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び金額
② 第 92 項の定めを適用し中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わ
ない場合のサブリース取引について計上した損益を損益計算書において区分
して表示していない場合、当該損益が含まれる科目及び金額
③ 第 93 項なお書きの定めを適用し転リース取引に係るリース債権又はリース
投資資産とリース負債を利息相当額控除前の金額で計上する場合に、当該リー
ス債権又はリース投資資産及びリース負債を貸借対照表において区分して表
示していないとき、当該リース債権又はリース投資資産及びリース負債が含ま
- 26 -
れる科目並びに金額
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
102. 「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」(会計基準第 55 項(1)③)
については、当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する。
(1) リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額(少額リースに係るキャッシュ・
アウトフローを除く。)
(2) 使用権資産の増加額
(3) 対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示
するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額(当該事項を注記するに
あたって、貸借対照表において表示するであろう科目との関係が明らかである限り
において、より詳細な区分により使用権資産に係る減価償却の金額の注記を行うこ
とを妨げない。)
(貸手の注記)
ファイナンス・リースの貸手の注記
リース特有の取引に関する情報
103. 「リース特有の取引に関する情報」(会計基準第 55 項(2)①)については、リースが
企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、本適用指針第 104 項及び
第 105 項の内容を注記する。
104. リース債権及びリース投資資産に関して、貸借対照表において次の(1)及び(2)に定め
る事項を区分して表示していない場合、当該(1)及び(2)に定める事項を注記する。
(1) リース投資資産について、将来のリース料を収受する権利(以下「リース料債権」
という。)部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額。なお、リース
料債権部分及び見積残存価額部分の金額は、利息相当額控除前の金額とする([設
例 9-3])。
(2) リース債権について、リース料債権部分の金額及び受取利息相当額。なお、リー
ス料債権部分の金額は、利息相当額控除前の金額とする。
ただし、リース債権の期末残高が、当該期末残高及びリース投資資産の期末残高の合
計額に占める割合に重要性が乏しい場合、(1)と(2)を合算して注記することができる。
105. リース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に
係る収益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目
及び金額を注記する。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
106. 「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」(会計基準第 55 項(2)②)
- 27 -
については、当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する。
(1) リース債権の残高に重要な変動がある場合のその内容
(2) リース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容
(3) リース債権に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後 5 年以内における
1 年ごとの回収予定額及び 5 年超の回収予定額。なお、リース料債権部分の金額は、
利息相当額控除前の金額とする。
(4) リース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後 5 年以内にお
ける 1 年ごとの回収予定額及び 5 年超の回収予定額。なお、リース料債権部分の金
額は、利息相当額控除前の金額とする。
ただし、リース債権の期末残高が、当該期末残高及びリース投資資産の期末残高の合
計額に占める割合に重要性が乏しい場合、(1)及び(2)並びに(3)及び(4)のそれぞれを合
算して注記することができる。
107. 前項におけるリース債権及びリース投資資産の残高の変動の例として、次のものが挙
げられる。
(1) 企業結合による変動
(2) リース投資資産における見積残存価額の変動
(3) リース投資資産における貸手のリース期間の終了による見積残存価額の減少(見
積残存価額の貯蔵品又は固定資産等への振替)(第 76 項参照)
(4) 残価保証額の変動
(5) 中途解約による減少
(6) 新規契約による増加
なお、当期中のリース債権及びリース投資資産の残高の重要な変動を注記するにあた
り、必ずしも定量的情報を含める必要はない。
オペレーティング・リースの貸手の注記
リース特有の取引に関する情報
108. 「リース特有の取引に関する情報」(会計基準第 55 項(2)①)については、リースが
企業の経営成績に与える影響を理解できるよう、オペレーティング・リースに係る貸手
のリース料に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を損益計算書
において区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び金額を注記する。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
109. 「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」(会計基準第 55 項(2)②)
については、当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、オペレーティング・
リースに係る貸手のリース料について、貸借対照表日後 5 年以内における 1 年ごとの受
取予定額及び 5 年超の受取予定額を注記する。
- 28 -
2.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項
110. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、会計基準第 55 項及び
本適用指針第 94 項から第 109 項の定めにかかわらず、会計基準第 55 項に掲げる事項の
うち、(1)②及び(2)①の「リース特有の取引に関する情報」並びに(1)③及び(2)②の「当
期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」について注記しないことができ
る。
111. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、会計基準第 55 項(1)①
の「会計方針に関する情報」を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照す
ることができる。
Ⅴ.適用時期等 1.適用時期
112. 本適用指針の適用時期は、会計基準と同様とする。
2.経過措置
(1)企業会計基準第 13 号を適用した際の経過措置
(リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用初年度開始前である所有権移転外ファイ
ナンス・リース取引の取扱い(借手))
113. リース取引開始日が企業会計基準第 13 号「リース取引に関する会計基準」(以下「企
業会計基準第 13 号」という。)の適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リー
ス取引について、企業会計基準適用指針第 16 号「リース取引に関する会計基準の適用
指針」(以下「企業会計基準適用指針第 16 号」という。)の定めにより、企業会計基準
第 13 号の適用初年度の前年度末における未経過リース料残高又は未経過リース料期末
残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とし、企業会計基準第 13 号の適用初年度
の期首に取得したものとしてリース資産に計上する会計処理を行っている場合、会計基
準適用後も、当該会計処理を継続することができる。この場合、企業会計基準第 13 号
適用後の残存期間における利息相当額については、本適用指針第 39 項の定めによらず、
利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。
114. さらに、リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用初年度開始前のリース取引
で、企業会計基準第 13 号に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定され
たものについて、企業会計基準適用指針第 16 号の定めにより、引き続き通常の賃貸借
取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理
を継続することができる。この場合、リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用
初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会
計処理を適用している旨及び「リース取引に係る会計基準」(1993 年 6 月 企業会計審
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議会第一部会)(以下「1993 年リース取引会計基準」という。)で必要とされていた事
項(本適用指針参考参照)を注記する。
(リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用初年度開始前である所有権移転外ファイ
ナンス・リース取引の取扱い(貸手))
115. リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用初年度開始前の所有権移転外ファイ
ナンス・リース取引について、企業会計基準適用指針第 16 号の定めにより、企業会計
基準第 13 号の適用初年度の前年度末における固定資産の適正な帳簿価額(減価償却累
計額控除後)をリース投資資産の企業会計基準第 13 号の適用初年度の期首の価額とし
て計上する会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理を継続するこ
とができる。この場合、当該リース投資資産に関して、企業会計基準第 13 号適用後の
残存期間においては、本適用指針第 73 項の定めによらず、利息相当額の総額をリース
期間中の各期に定額で配分することができる。
116. さらに、リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用初年度開始前のリース取引
で、企業会計基準第 13 号に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定され
たものについて、企業会計基準適用指針第 16 号の定めにより、引き続き通常の賃貸借
取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理
を継続することができる。この場合、リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用
初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会
計処理を適用している旨及び 1993 年リース取引会計基準で必要とされていた事項(本
適用指針参考参照)を注記する。
117. リース取引を主たる事業としている企業は、前項の定めを適用することができない。
また、リース取引を主たる事業としている企業においては、本適用指針第 115 項を適用
した場合に重要性が乏しいときを除き、企業会計基準第 13 号の適用初年度の企業会計
基準第 13 号適用後の残存期間の各期において、リース取引開始日が企業会計基準第 13
号適用初年度開始前のリース取引についても、企業会計基準第 13 号及び企業会計基準
適用指針第 16 号に定める方法により会計処理した場合の税引前当期純損益と本適用指
針第 115 項を適用した場合の税引前当期純損益との差額を注記する。
(2)会計基準を適用する際の経過措置
118. 会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取
り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度
の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会
計方針を適用することができる。
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(リースの識別)
119. 前項ただし書きの方法を選択する場合、次の(1)及び(2)の方法のいずれか又は両方を
適用することができる。
(1) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第
13 号を適用しているリース取引に、会計基準第 25 項及び第 26 項並びに本適用指
針第 5 項から第 8 項を適用して契約にリースが含まれているか否かを判断すること
を行わずに会計基準を適用すること
(2) 適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第 13 号を適用していない契約に
ついて、当該時点で存在する事実及び状況に基づいて会計基準第 25 項及び第 26 項
並びに本適用指針第 5 項から第 8 項を適用して契約にリースが含まれているか否か
を判断すること
(借 手)
ファイナンス・リース取引に分類していたリース
120. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第 13 号にお
いてファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、適用初年度の前連結会
計年度及び前事業年度の期末日におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額のそれ
ぞれを適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債の帳簿価額とすることが
できる。このとき、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日におけるリー
ス資産及びリース債務の帳簿価額に残価保証額が含まれる場合、当該金額は、適用初年
度の期首時点における残価保証に係る借手による支払見込額に修正する。これらのリー
スについては、適用初年度の期首から会計基準を適用して使用権資産及びリース負債に
ついて会計処理を行う。この方法はリース 1 件ごとに適用することができる。
121. 前項の定めを適用する借手は、適用初年度の期首以後に第 41 項における使用権資産
総額に重要性が乏しいと認められる場合の判断基準である 10 パーセントを超える場合
であっても、適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債については、第 40 項
において認められる方法のうち企業会計基準適用指針第 16 号において選択していた方
法を継続して適用することができる。
122. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準適用指針第 16
号において、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合に通常の賃貸借取引
に係る方法に準じた会計処理を行っていたリースについては、本適用指針第 20 項又は
第 22 項にかかわらず、当該会計処理を継続することができる。
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
123. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第 13 号にお
いてオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び会計基準の適用により新
- 31 -
たに識別されたリースについて、次のとおり会計処理を行うことができる([設例 20])。
(1) 適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を適用初年度の期首時点
の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値によりリース負債を計上す
る。
(2) リース 1 件ごとに、次のいずれかで算定するかを選択して使用権資産を計上する。
① 会計基準がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額。ただし、
適用初年度の期首時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引く。
② (1)で算定されたリース負債と同額。ただし、適用初年度の前連結会計年度
及び前事業年度の期末日に貸借対照表に計上された前払又は未払リース料の
金額の分だけ修正する。
(3) 適用初年度の期首時点の使用権資産に「固定資産の減損に係る会計基準」(1998
年(平成 14 年 8 月) 企業会計審議会)を適用する。
(4) 本適用指針第 22 項を適用して使用権資産及びリース負債を計上しないリースに
ついては修正しない。
なお、本項の会計処理は、企業会計基準適用指針第 16 号に従ってファイナンス・リ
ース取引に分類していた建物に係るリースについて、土地と建物がそれぞれ独立したリ
ースを構成する部分(本適用指針第 16 項参照)に該当しない場合にも適用することが
できる。
124. 前項の方法を選択する借手は、前項を適用するにあたって次の(1)から(4)の方法の 1
つ又は複数を適用することができる。これらの方法はリース 1 件ごとに適用することが
できる。
(1) 特性が合理的に類似した複数のリースに単一の割引率を適用すること
(2) 適用初年度の期首から 12 か月以内に借手のリース期間が終了するリースについ
て、前項(1)及び(2)を適用せずに、第 20 項の方法で会計処理を行うこと
(3) 付随費用を適用初年度の期首における使用権資産の計上額から除外すること
(4) 契約にリースを延長又は解約するオプションが含まれている場合に、借手のリー
ス期間や借手のリース料を決定するにあたってリース開始日より後に入手した情
報を使用すること
125. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第 24 号「会
計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準
第 24 号」という。)第 10 項(5)の注記に代えて、次の事項を注記する。
(1) 適用初年度の期首の貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借
手の追加借入利子率の加重平均
(2) 次の①と②との差額の説明
① 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基
準第 13 号を適用して開示したオペレーティング・リースの未経過リース料((1)
- 32 -
の追加借入利子率で割引後)
② 適用初年度の期首の貸借対照表に計上したリース負債
セール・アンド・リースバック取引
126. 売手である借手は、適用初年度の期首より前に締結されたセール・アンド・リースバ
ック取引を次のとおり取り扱う。
(1) 売手である借手による資産の譲渡について、収益認識会計基準などの他の会計基
準等に基づき売却に該当するかどうかの判断を見直すことは行わない。
(2) 資産の譲渡価額が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市
場のレートではない場合の取扱い(本適用指針第 57 項参照)を適用しない。
(3) リースバックを適用初年度の期首時点に存在する他のリースと同様に会計処理
を行う。
(4) 企業会計基準第 13 号におけるセール・アンド・リースバック取引の定めにより、
リースの対象となる資産の売却に伴う損益を長期前払費用又は長期前受収益等と
して繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損益
に計上する取扱いを適用している場合、会計基準の適用後も当該取扱いを継続し、
使用権資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損益に計上する。
借地権の設定に係る権利金等
127. 本適用指針第 27 項第 1 段落に定める原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適
用初年度の期首に計上されている旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設
定に係る権利金等を償却していなかった場合、当該権利金等を使用権資産の取得価額
(本適用指針第 18 項参照)に含めた上で、当該権利金等のみ償却しないことができる。
128. 借手が次の(1)又は(2)のいずれかの場合に本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選
択するとき、会計基準の適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日における
借地権の設定に係る権利金等の帳簿価額を適用初年度の期首における使用権資産の帳
簿価額とすることができる。
(1) 会計基準の適用前に定期借地権の設定に係る権利金等を償却していた場合
(2) 旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について
本適用指針第 27 項第 1 段落の原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適用前
に当該権利金等を償却していた場合
これらの場合、借手は当該帳簿価額を会計基準の適用初年度の期首から残りの借手の
リース期間で償却する。このとき、借手のリース期間の決定にあたりリース開始日より
後に入手した情報を使用することができる。
129. 本適用指針第 27 項第 1 段落の原則的な取扱いを適用する借手が、会計基準の適用前
に旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について償却
- 33 -
していなかった場合に本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択するときには、会計
基準の適用初年度における使用権資産の期首残高に含まれる当該権利金等については、
当該権利金等を計上した日から借手のリース期間の終了までの期間で償却するものと
して、当該権利金等を計上した日から償却した帳簿価額で計上することができる。この
とき、借手のリース期間の決定にあたりリース開始日より後に入手した情報を使用する
ことができる。
ただし、当該償却した後の帳簿価額が前連結会計年度及び前事業年度の期末日におけ
る当該権利金等の帳簿価額を上回る場合には、当該適用初年度の前連結会計年度及び前
事業年度の期末日における当該権利金等の帳簿価額をもって、当該適用初年度の期首に
おける当該権利金等の帳簿価額とする。
建設協力金等の差入預託保証金
130. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手は、本適用指針第 29 項、第 32
項及び第 34 項の定めにかかわらず、次の(1)及び(2)について、会計基準の適用前に採
用していた会計処理を継続することができる。
(1) 将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)
(2) 差入預託保証金(建設協力金等及び敷金)のうち、将来返還されない額
また、(1)に係る長期前払家賃及び(2)について、適用初年度の前連結会計年度及び前
事業年度の期末日の帳簿価額を適用初年度の期首における使用権資産に含めて会計処
理を行うこともできる。
(貸 手)
ファイナンス・リース取引に分類していたリース
131. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する貸手は、企業会計基準第 13 号にお
いてファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、適用初年度の前連結会
計年度及び前事業年度の期末日におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額の
それぞれを適用初年度の期首におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額とす
ることができる。これらのリースについては、適用初年度の期首から会計基準を適用し
てリース債権及びリース投資資産について会計処理を行う。
ただし、企業会計基準第 13 号において、貸手における製作価額又は現金購入価額と
借手に対する現金販売価額の差額である販売益を割賦基準により処理している場合、適
用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日の繰延販売利益の帳簿価額は適用
初年度の期首の利益剰余金に加算する。
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
132. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する貸手は、企業会計基準第 13 号にお
- 34 -
いてオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び会計基準の適用により新
たに識別されたリースについて、適用初年度の期首に締結された新たなリースとして、
会計基準を適用することができる。
サブリース取引
133. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択するサブリースの貸手は、サブリース取
引(サブリース取引における例外的な取扱い(本適用指針第 92 項及び第 93 項参照)を
適用する場合を除く。)におけるサブリースについて、次の修正を行う。
(1) 企業会計基準第 13 号においてオペレーティング・リース取引として会計処理し
ていた会計基準におけるサブリース及び会計基準の適用により新たに識別された
サブリースについて、適用初年度の期首時点におけるヘッドリース及びサブリース
の残りの契約条件に基づいて、サブリースがファイナンス・リースとオペレーティ
ング・リースのいずれに該当するかを決定する。
(2) (1)においてファイナンス・リースに分類されたサブリースについて、当該サブ
リースを適用初年度の期首に締結された新たなファイナンス・リースとして会計処
理を行う。
(国際財務報告基準を適用している企業)
134. 本適用指針第 118 項から第 125 項及び第 127 項から第 133 項の定めにかかわらず、国
際財務報告基準(IFRS)を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が
当該企業の個別財務諸表に会計基準を適用する場合、会計基準の適用初年度において、
次のいずれかの定めを適用することができる。
(1) IFRS 第 16 号「リース」(以下「IFRS 第 16 号」という。)の経過措置の定めを適
用していたときには、IFRS 第 16 号の経過措置の定め
(2) IFRS 第 16 号を最初に適用するにあたって IFRS 第 1 号「国際財務報告基準の初
度適用」(以下「IFRS 第 1 号」という。)の免除規定の定めを適用していたときに
は、IFRS 第 1 号の免除規定の定め
(1)又は(2)のいずれかの定めを適用する場合、連結財務諸表において当該定めを適用
した時から会計基準の適用初年度まで IFRS を適用していたかのように算定した使用権
資産及びリース負債並びに正味リース投資未回収額の適用初年度の期首の帳簿価額を
会計基準の適用初年度の期首の使用権資産及びリース負債並びにリース債権及びリー
ス投資資産の帳簿価額とし、適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余
金に加減する。ただし、この場合であっても本適用指針第 126 項に定めるセール・アン
ド・リースバック取引に関する取扱いを適用する。
135. 前項(1)又は(2)のいずれの定めを適用する場合でも、連結会社相互間におけるリース
として、相殺消去されたリースに第 118 項から第 133 項の定めを適用することができ
- 35 -
る。
(開 示)
136. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手は、会計基準の適用初年度にお
いては、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わない。
137. 本適用指針第 118 項ただし書きの方法を選択する借手及び貸手は、会計基準の適用初
年度においては、会計基準第 55 項に記載した内容を適用初年度の比較情報に記載せず、
企業会計基準第 13 号及び企業会計基準適用指針第 16 号に定める事項を注記する。
Ⅵ.議 決 138. 本適用指針は、第 532 回企業会計基準委員会に出席した委員 13 名全員の賛成により
承認された。
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結論の背景
経 緯 1994 年リース取引実務指針の公表
BC1. 1993 年リース取引会計基準の実務上の指針として、日本公認会計士協会から「リース
取引の会計処理及び開示に関する実務指針」(日本公認会計士協会 会計制度委員会
1994 年 1 月 18 日、以下「1994 年リース取引実務指針」という。)が公表された。
企業会計基準適用指針第 16 号の公表
BC2. 企業会計基準適用指針第 16 号は、1994 年リース取引実務指針を改正するものとして、
主として、1994 年リース取引実務指針における所有権移転外ファイナンス・リース取引
の通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に関する見直しを行った。
本適用指針の公表
BC3. 当委員会は 2024 年 9 月に会計基準を公表し、合わせて本適用指針を公表した。
開発にあたっての基本的な方針 主要な定め
BC4. 本適用指針においては、借手の会計処理に関して IFRS 第 16 号のすべての定めを取り
入れるのではなく、主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が高
く、かつ、IFRS を任意適用して連結財務諸表を作成している企業(以下「IFRS 任意適用
企業」という。)が IFRS 第 16 号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不
要となることを想定して会計基準の開発を行った(会計基準 BC13 項)。
主要な定めの内容のみを取り入れる場合であっても、企業は、当該内容に基づいて判
断を行い、企業の経済実態を表す会計処理を行うことができると考えられる。また、我
が国の会計基準を適用するにあたって、取り入れた主要な定めの内容のみに基づいて判
断を行うことで足りるため、IFRS 第 16 号におけるガイダンスや解釈等を参照する実務
上の負担が生じないと考えられる。一方、各企業における判断が必要となることにより、
財務諸表作成コスト及び監査コストは、相対的に大きくなる可能性がある。
このようなコストの増加への対応として、主要な定めの内容として取り入れない項目
について、会計基準の本文は主要な定めのみとするものの、結論の背景や設例において
詳細なガイダンスを定めることにより、IFRS 第 16 号と同じ適用結果となることを求め
るべきであるとする意見が聞かれた。
しかしながら、IFRS 第 16 号の主要な定めの内容のみを取り入れる開発方針は、取り
入れなかった項目についても IFRS 第 16 号と同じ適用結果となることを意図するもので
はなく、取り入れた主要な定めの内容に基づき判断が行われることを意図するものであ
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る。したがって、適切な会計処理は、IFRS 第 16 号における詳細な定めに基づき会計処
理を行った結果に限定されないこととなる。
BC5. 前項の方針により、会計基準の本文において主要な定めの内容として取り入れない項
目については、設例についても IFRS 第 16 号の設例の内容を本適用指針に取り入れない
こととした。
また、本適用指針では、実務に配慮した方策として国際的な比較可能性を大きく損な
わせない範囲で代替的な取扱いを定め、また、経過的な措置を定めることとした。
目 的 BC6. 企業会計原則 第三 貸借対照表原則 四 (一) B においては、地上権は無形固定資産
に属するものとされている。本適用指針では、地上権を含む借地権について、その設定
に係る権利金等は、使用権資産の取得価額に含めることとした(第 27 項参照)。そのた
め、本適用指針では、借地権の設定に係る権利金等に関する開示について、本適用指針
を優先して適用することとしている(第 1 項参照)。
I.範 囲 BC7. 本適用指針においては、借地権は有形固定資産である土地に関する使用権資産として
取り扱っている(本適用指針第 27 項参照)。このため、借手において、借地権は、無形
固定資産のリース(会計基準第 4 項)には該当せず、本適用指針の範囲に含まれる。
Ⅱ.用語の定義 BC8. 本適用指針では、会計基準における用語の定義(会計基準第 5 項から第 24 項)に含
まれるもの以外の IFRS 第 16 号における用語の定義のうち、本適用指針に関連のあるも
のを用語の定義に含めている。また、本適用指針では、借地権の設定に係る権利金等の
会計処理を定めており(本適用指針第 27 項参照)、借地権に係る用語の定義を定めて
いる。
Ⅲ.会計処理 1.リースの識別
(1)リースの識別の判断
BC9. 本適用指針では、リースの識別の判断について、次の定めを置いている(第 5 項参照)。
(1) 契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する。
(2) 当該判断にあたり、当該契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間
にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む。
(3) 特定された資産の使用期間全体を通じて、①顧客が、当該資産の使用から生じる
経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、②顧客が、当該資産の
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使用を指図する権利を有する場合、サプライヤーから当該資産の使用を支配する権
利が顧客に移転する。
当該判断における「顧客」及び「サプライヤー」は、リースを含む場合にそれぞれ「借
手」及び「貸手」に該当することになる。リースの識別において、「借手」及び「貸手」
の用語を使用せずに「顧客」及び「サプライヤー」という用語を使用しているのは、リ
ースの識別の判断の段階は契約がリースを含むか否かを判断する段階であり、契約がリ
ースを含まない場合があるためである。
(特定された資産)
BC10. 契約がリースを含むか否かの判断(第 5 項参照)に関して、IFRS 第 16 号では、資産
が契約に明記されない場合でも黙示的に定められることによって特定され得るとの定
めがあるが、本適用指針では当該定め及びこれに関する IFRS 第 16 号の設例を取り入れ
ないこととした。これは、当該定めを置かなくとも、顧客が資産の使用から生じる経済
的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、顧客が当該資産の使用を指図す
る権利を有している場合には、資産が契約に明記されていなくとも事実と状況によりリ
ースが含まれることが明らかであるときがあり、このときにはリースの識別に関する適
切な判断がなされると考えられるためである。反対に、リースが含まれていないことが
明らかな場合にまでリースの識別の判断を行う必要はないと考えられる。
BC11. また、資産が契約に明記されている場合であっても、サプライヤーが資産を代替する
実質的な権利を有しているときには、当該資産は特定された資産に該当しない(第 6 項
参照)。第 6 項の判断における、「サプライヤーが使用期間全体を通じて当該資産を他
の資産に代替する実質上の能力を有している」(第 6 項(1)参照)場合としては、例え
ば、顧客はサプライヤーが資産を入れ替えることを妨げることができず、かつ、サプラ
イヤーが代替資産を容易に利用可能であるか又は合理的な期間内に調達できる場合等
がある。
サプライヤーが資産を代替する実質的な権利に関して、IFRS 第 16 号では詳細な定め
があるが、「開発にあたっての基本的な方針」(BC4 項参照)に記載のとおり、当該定
めを本適用指針に取り入れなくとも、各企業が判断に基づいて経済実態を表す会計処理
を行うことができると考えられるため、本適用指針に当該定めを取り入れないこととし
た。
(使用を指図する権利)
BC12. 顧客が使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使
用方法を指図する権利を有している場合、顧客は使用期間全体を通じて当該資産の使用
を指図する権利を有している(第 8 項(1)参照)。この場合、顧客が当該資産の使用から
生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有しているときには、顧客が当該
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資産の使用を支配する権利を有するため、契約はリースを含むこととなる。これに対し、
サプライヤーが資産の使用を指図する権利を有している場合、契約はリースを含まない。
BC13. 顧客が使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有しているか
否かの判断を行うにあたっては、使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に
影響を与える資産の使用方法に係る意思決定を考慮する。当該意思決定は、資産の性質
及び契約の条件に応じて、契約によって異なると考えられる。
当該意思決定に関して、IFRS 第 16 号では具体的な例示があるが、本適用指針に当該
例示を取り入れないこととした。これは、IFRS 第 16 号の基準の本文では、資産の使用
方法及び使用目的に係る意思決定は資産の性質及び契約の条件に応じて、契約によって
異なる可能性が高いと定められているのに対し、これらの例示を示すことで資産の使用
方法及び使用目的が限定的に解釈される可能性があるためである。
(2)リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分
BC14. 本適用指針では、借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リース
を構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行うこととしている
(第 9 項参照)。また、契約における対価の金額のリースを構成する部分とリースを構
成しない部分への配分は、それぞれの部分の独立価格(BC17 項参照)又は独立販売価格
(BC22 項参照)の比率に基づいて行うこととしている(第 11 項及び第 13 項参照)。
BC15. 企業会計基準適用指針第 16 号では、借手が負担するリース料の中に含まれる固定資
産税、保険料等の諸費用を「維持管理費用相当額」として定め、これを原則としてリー
ス料総額から控除する定めとしていた。一方、IFRS 第 16 号では、「維持管理費用相当
額」に類似するものとして「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」がリ
ースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分に関する定めにおいて言及され
ている。当該コストには、固定資産税及び保険料のほか、例えば、契約締結のために貸
手に生じる事務コストの借手への請求等、借手に財又はサービスを移転しない活動に係
る借手への請求が含まれる。
「維持管理費用相当額」と「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」の
範囲は一致することが多いと考えられるが、「借手に財又はサービスを移転しない活動
及びコスト」は、借手に財又はサービスを移転するかどうかを評価する定めである一方、
「維持管理費用相当額」は借手に財又はサービスを移転するかどうかの評価を求めない
点で、「維持管理費用相当額」と「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」
の範囲は異なる可能性がある。
本適用指針では、両者に関する借手及び貸手における取扱いについて、それぞれ検討
を行った(本適用指針 BC18 項から BC21 項及び BC23 項参照)。
BC16. 企業会計基準適用指針第 16 号は、典型的なリース、すなわち役務提供相当額のリー
ス料に占める割合が低いものを対象としており、役務提供相当額は重要性が乏しいこと
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を想定し、維持管理費用相当額に準じて会計処理を行うこととしていた。この点、本適
用指針においては、これまで役務提供相当額として取り扱ってきた金額は、リースを構
成しない部分に含まれることになると考えられる。
(借 手)
BC17. 本適用指針では、借手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分
とリースを構成しない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立価格の比率
に基づいて配分することとしている(第 11 項参照)。
このとき、借手は、リースを構成する部分とリースを構成しない部分の独立価格の比
率について、貸手又は類似のサプライヤーが当該構成部分又は類似の構成部分について
企業に個々に請求するであろう価格に基づいて算定する。借手においてリースを構成す
る部分とリースを構成しない部分の独立価格が明らかでない場合、借手は、観察可能な
情報を最大限に利用して、独立価格を合理的な方法で見積る。
BC18. また、本適用指針では、借手は、契約における対価の金額の配分にあたり、契約にお
ける対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支
払う金額が含まれる場合、当該金額を契約における対価から控除せず、リースを構成す
る部分とリースを構成しない部分とに配分することとしている(第 11 項また書き参照)。
BC19. 審議の過程では、借手が負担するリース料の中に含まれる固定資産税、保険料等の配
分について、企業会計基準適用指針第 16 号における「維持管理費用相当額」の定めの
維持を求める意見や当該「維持管理費用相当額」の範囲及び合理的見積額に関する追加
的なガイダンスの定めを求める意見等が聞かれた。
この点、企業会計基準適用指針第 16 号において、維持管理費用相当額をリース料総
額から控除することとした理由の 1 つに、当該金額をリース料総額に含めることにより、
リースの分類(ファイナンス・リース取引又はオペレーティング・リース取引のいずれ
になるのか)に影響を及ぼす可能性があったことが挙げられる。
しかしながら、本適用指針においては、借手については、ファイナンス・リースとオ
ペレーティング・リースの区分を廃止したため、リースを分類する観点から維持管理費
用相当額の取扱いを定める必要はないものと考えられる。また、貸手が支払う固定資産
税や保険料等はリース料に含めて回収されることになると考えられるが、リース料に含
まれるこれらの金額が借手に示されることは通常は想定されないため、借手がこれらの
金額を算定することは困難であると考えられる。
BC20. 公開草案に寄せられたコメントの中には、借手においても維持管理費用相当額に関す
る企業会計基準適用指針第 16 号の定めを適用することを認めてはどうかとの意見があ
った。この点、維持管理費用相当額の金額を借手が貸手から入手することの困難さは国
際的にも指摘されていること、使用権資産の計上の対象となるリースはオペレーティン
グ・リース等も含まれていることから、企業がすべてのリースについて一貫して維持管
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理費用相当額を算定し控除することは困難であると考えられる。
BC21. BC19 項及び前項を総合的に勘案し、借手においては維持管理費用相当額に関する企業
会計基準適用指針第 16 号の定めは引き継がず、IFRS 第 16 号と同様に、借手に財又はサ
ービスを移転しない活動及びコストを独立価格の比率に基づきリースを構成する部分
とリースを構成しない部分とに配分する方法のみ定めることとした。
(貸 手)
BC22. 企業会計基準適用指針第 16 号は、典型的なリース、すなわち役務提供相当額のリー
ス料に占める割合が低いものを対象としていたが(本適用指針 BC16 項参照)、本適用
指針は、役務提供相当額のリース料に占める割合にかかわらず、リースを含む契約にお
けるリースを適用範囲とするため、企業会計基準適用指針第 16 号の適用時よりも、会
計基準の適用対象となる契約に役務提供等が含まれるケースが増加する可能性がある
と考えられる。そのため、IFRS 第 16 号と整合的に、貸手についてもリースを構成する
部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行うこととした(本適用指針第 12
項参照)。
また、本適用指針では、貸手は、契約における対価の金額について、リースを構成す
る部分とリースを構成しない部分とに配分する際に、それぞれの部分の独立販売価格の
比率に基づいて配分することとしている(本適用指針第 13 項参照)。貸手における対
価の配分は、収益認識会計基準との整合性を図るものであり、「独立販売価格」は、収
益認識会計基準第 9 項における定義(「財又はサービスを独立して企業が顧客に販売す
る場合の価格をいう。」)を参照する。
BC23. 契約における対価の中に借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについ
て借手が支払う金額が含まれる場合には、当該金額を契約における対価の一部としてリ
ースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分することとした(本適用指針第
13 項(1)参照)。
また、貸手の会計処理については基本的に企業会計基準適用指針第 16 号の定めを踏
襲する方針(会計基準 BC13 項)との関係から、企業会計基準適用指針第 16 号における
「維持管理費用相当額」に関する定めを維持すべきであるとの意見が聞かれた。この点、
貸手は、借手と異なり本適用指針においても、リースの分類(ファイナンス・リース又
はオペレーティング・リースのいずれになるのか)を行っており、また、固定資産税や
保険料等の金額を把握している。これらを踏まえ、本適用指針においては、貸手は、企
業会計基準適用指針第 16 号における「維持管理費用相当額」に関する定めも選択でき
ることとした(本適用指針第 13 項(2)参照)。
BC24. 公開草案に寄せられたコメントの中には、契約に含まれるリースがオペレーティン
グ・リースに分類される場合、貸手も、借手と同様にリースを構成する部分とリースを
構成しない部分とを分けずにリースを構成する部分として会計処理を行うことを認め
- 42 -
るべきとの意見があった。しかしながら、リースを構成する部分と関連するリースを構
成しない部分の収益の計上の時期及びパターンが同じではない場合、貸手がリースを構
成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに会計処理を行うことはリース及び
サービスのいずれの経済実態も適切に表さないことになると考えられる。
BC25. これに対し、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分の収益の計上
の時期及びパターンが同じである場合には、双方を分けて会計処理を行ったときの収益
の計上額と双方を分けずに会計処理を行ったときの収益の計上額は変わらないと考え
られる。この点を踏まえると、貸手においてリースを構成する部分とリースを構成しな
い部分とを合わせて取り扱い会計処理を行うこととしても情報の有用性が大きく損な
われないと考えられる。したがって、適用上のコストと複雑性の低減を図る観点から、
米国会計基準を参考として貸手のオペレーティング・リースについてリースを構成する
部分とリースを構成しない部分の区分に係る代替的な取扱いを定めることとした(第 15
項参照)。
また、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを区分して会計処理が行わ
れる場合、より詳細な情報が開示されることを踏まえ、契約ごとに当該代替的な取扱い
を選択することができることとした(第 14 項参照)。
(独立したリースの構成部分)
BC26. 契約には、複数のリースを構成する部分が含まれる場合がある。この点、IFRS 第 16
号では、リースを含む契約が単一のリースを構成する部分を含むのか又は複数のリース
を構成する部分を含むのかの判定に関する定めが置かれている。企業会計基準適用指針
第 16 号においては、リースの会計単位に関する定めがない中で実務上の判断が行われ
ていたと考えられるものの、審議の過程で次のような意見が聞かれ、独立したリースの
構成部分の判定に関する定めを IFRS 第 16 号の主要な定めとして本適用指針に取り入れ
ることとした(本適用指針第 16 項参照)。
(1) 貸手が機器とソフトウェアのリースを同時に行う場合、すなわち、機器のリース
と知的財産のライセンスの供与を同時に行う場合の会計単位の判断が困難である。
(2) 少額リースに関する簡便的な取扱いにおいて、「新品時の原資産の価値が少額で
あるリース」の簡便的な取扱いを選択するときの「リース 1 件ごと」の判断(本適
用指針第 22 項(2)②参照)が不明瞭である。
なお、IFRS 第 16 号では、当該独立したリースの構成部分の定めは、履行義務の識別
に関する IFRS 第 15 号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS 第 15 号」という。)
の要求事項と同様の要求事項を IFRS 第 16 号に含めたものであるとされている。本適用
指針における独立したリースの構成部分の定めは、収益認識会計基準第 34 項における
定めと整合的なものである。
- 43 -
BC27. 貸手による知的財産のライセンスの供与が機器のリースとは別個の財又はサービス
(収益認識会計基準第 32 項及び第 34 項)に該当する場合、当該知的財産のライセンス
の供与については、会計基準第 3 項(2)ただし書きを適用する場合を除き、収益認識会
計基準を適用し会計処理を行うことになると考えられる。これに対し、貸手による知的
財産のライセンスの供与が機器のリースとは別個の財又はサービスに該当しない場合、
会計基準の範囲に含まれると考えられる。この場合、独立したリースの構成部分(本適
用指針第 16 項参照)の要件を満たさないときは、当該知的財産のライセンスの供与に
ついて機器のリースに含めて会計処理を行うことになると考えられる。
2.リース期間
BC28. 本適用指針では、借手は、借手のリース期間について、IFRS 第 16 号との整合性を図
り、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理
的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理
的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を加えて決定することとした(第 17
項参照)。この点、審議の過程では、次のような懸念が聞かれた。
(1) 「合理的に確実」の判断にばらつきが生じる懸念及び過去実績に偏る懸念
① 「合理的に確実」の解釈のばらつきにより、企業間及び国際間の比較可能性
が損なわれる可能性がある。
② 「合理的に確実」は、高い閾値にもかかわらず、実務的に閾値が低くなる可
能性がある。
③ IFRS 第 16 号には「過去の実務慣行等を考慮してリース期間を検討する」と
の定めがあり、1 つの有用な方法と思われるが、過度に考慮すべきではなく、
将来の見積りに焦点を当てるべきである。
④ 解約不能期間が比較的短期である場合の延長オプションの行使について蓋
然性を考慮して借手のリース期間を決定することに困難を伴う可能性がある。
(2) 不動産リースに関する具体的な懸念
① 普通借地契約及び普通借家契約について、借手のリース期間を判断すること
に困難が伴う。
② リース物件における附属設備の耐用年数や資産計上された資産除去債務に
対応する除去費用の償却期間と借手のリース期間との整合性を考慮する場合、
実務上の負荷が生じる可能性がある。
BC29. 前項(1)の「合理的に確実」の判断にばらつきが生じる懸念及び過去実績に偏る懸念
への対応として、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使し
ない可能性が「合理的に確実」であるかどうかの判断は、借手が行使する経済的インセ
ンティブを有しているオプション期間を借手のリース期間に含めるものであることを
踏まえ、当該判断の際に考慮する経済的インセンティブの例を本適用指針に示すことと
- 44 -
した(本適用指針第 17 項参照)。
なお、会計基準第 15 項及び第 31 項に記載している「合理的に確実」は、蓋然性が相
当程度高いことを示している。この点、IFRS 第 16 号には「合理的に確実」に関する具
体的な閾値の記載はないが、米国会計基準会計基準更新書第 2016-02 号「リース(Topic
842)」の結論の根拠では、「合理的に確実」が高い閾値であることを記載した上で、米
国会計基準の文脈として、発生する可能性の方が発生しない可能性より高いこと(more
likely than not)よりは高いが、ほぼ確実(virtually certain)よりは低いであろう
ことが記載されている。
BC30. 延長オプション又は解約オプションの対象期間に関しては、リース開始日において、
借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性につ
いて第 17 項に例示したような経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮した上で、
借手のリース期間を決定することになる。したがって、借手のリース期間は、経営者の
意図や見込みのみに基づく年数ではなく、借手が行使する経済的インセンティブを生じ
させる要因に焦点を当てて決定される。例えば、借手が原資産を使用する期間が超長期
となる可能性があると見込まれる場合であっても、借手のリース期間は必ずしもその超
長期の期間となるわけではない。借手のリース期間は、借手が延長オプションを行使す
る経済的インセンティブを有し、当該延長オプションを行使することが合理的に確実で
あるかどうかの判断の結果によることになる。
BC31. 借手のリース期間終了後の代替資産の調達に要するコストを考慮すると、リースの解
約不能期間が短いほど、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを
行使しない可能性が高くなる場合があると考えられる。他方で、リースの解約不能期間
が十分に長い場合には、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを
行使しない可能性が低くなる場合があると考えられる。
BC32. 第 17 項では借手が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しない
ことが合理的に確実であるかどうかを判定するにあたって考慮する経済的インセンテ
ィブを生じさせる要因を次のとおり例示している。
(1) 延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約
金、残価保証、購入オプションなど)
(2) 大幅な賃借設備の改良の有無
(3) リースの解約に関連して生じるコスト
(4) 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
(5) 延長オプション又は解約オプションの行使条件
ここで、(5)の「延長オプション又は解約オプションの行使条件」について、例えば、
オプションの行使条件が借手にとって有利である場合には、経済的インセンティブが生
じ得ると考えられる。
BC33. 借手が特定の種類の資産を通常使用してきた過去の慣行及び経済的理由が、借手のオ
- 45 -
プションの行使可能性を評価する上で有用な情報を提供する可能性がある。ただし、一
概に過去の慣行に重きを置いてオプションの行使可能性を判断することを要求するも
のではなく、将来の見積りに焦点を当てる必要がある。合理的に確実であるかどうかの
判断は、諸要因を総合的に勘案して行うことに留意する必要がある。
BC34. BC28 項(2)の不動産リースに関する具体的な懸念については、次のとおり対応するこ
ととした。
(1) 普通借地契約及び普通借家契約に係る借手のリース期間を判断することの困難
さについては、実務上の判断に資するため、設例を示すこととした([設例 8-1]か
ら[設例 8-5])。なお、設例は、具体的な会計処理を行うための手掛かりを与える
ための例示であり、各企業の実情に応じて、例示されていない会計処理も適当と判
断される場合があるものである。そのため、借手のリース期間を判断する際の思考
プロセスを示すことに重点を置き、事実及び状況によって判断が異なり得ることを
示す設例とした。
(2) リース物件における附属設備の耐用年数と借手のリース期間との関係について
は、次のような関係になると考えられる。
① 借手のリース期間の判断について、借手が延長オプションを行使する可能性
又は解約オプションを行使しない可能性が、合理的に確実であるかどうかを判
定する際の考慮要因の 1 つとして、大幅な賃借設備の改良の有無を例示に含め
ている(第 17 項(2)参照)。賃借設備の改良が借手のリース期間の判断に影響
を与える「大幅な賃借設備の改良」に該当するか否かは、例えば、賃借設備の
改良の金額、移設の可否、資産を除去するための金額等の事実及び状況に基づ
く総合的な判断が必要になると考えられる。
② 借手のリース期間とリース物件における附属設備の耐用年数は、相互に影響
を及ぼす可能性があるが、それぞれの決定における判断及びその閾値は異なる
ため、借手のリース期間とリース物件における附属設備の耐用年数は、必ずし
も整合しない場合があると考えられる。一方、リース物件における附属設備に
ついて、借手のリース期間中の除去及び借手のリース期間後の使用を見込んで
いない場合、当該附属設備の耐用年数が借手のリース期間と整合する場合もあ
ると考えられる。
3.借手のリース
(1)借手における費用配分の基本的な考え方
BC35. 会計基準及び本適用指針は、借手におけるリースの費用配分の方法については、リー
スがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、
すべてのリースについて使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当
額を計上する IFRS 第 16 号と同様の単一の会計処理モデルによることとしている(会計
- 46 -
基準 BC39 項)。
(2)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額
BC36. 本適用指針では、借手は、使用権資産について、リース開始日に算定されたリース負
債の計上額にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務
に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除して算定する
こととしている(本適用指針第 18 項参照)。
ここで、企業会計基準適用指針第 16 号では、リース債務の評価の側面だけでなくリ
ース資産の評価の側面も合わせて考慮し、リース資産の計上額についてリース料総額の
割引現在価値と貸手の購入価額又は借手の見積現金購入価額のいずれか低い額による
としていた。
一方、本適用指針では、ファイナンス・リースに限らず、借手のすべてのリースにつ
いて資産及び負債を計上することを求めることとしたため、使用権資産の計上額につい
ては、企業会計基準適用指針第 16 号における貸手の購入価額又は借手の見積現金購入
価額と比較を行う方法を踏襲せず、借手のリース料の現在価値を基礎として算定する
IFRS 第 16 号と整合的な定めとしている。
(短期リースに関する簡便的な取扱い)
BC37. 短期リースについては、重要性が乏しい場合が多いため、リース開始日に使用権資産
及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として
定額法により費用として計上することができることとした(第 20 項参照)。
BC38. 短期リースについては、企業会計基準適用指針第 16 号及び IFRS 第 16 号のいずれに
おいても簡便的な取扱いが認められていることから、本適用指針においても、簡便的な
取扱いを認めることとした。短期リースに関する簡便的な取扱いは、対応する原資産を
自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと又
は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに適用するか否
かを選択できることとしている(本適用指針第 20 項参照)。
(少額リースに関する簡便的な取扱い)
BC39. 通常の固定資産の取得でも購入時に費用処理される少額なものについては、重要性が
乏しい場合が多いため、短期リースと同様に、リース開始日に使用権資産及びリース負
債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により
費用として計上することができることとした(第 22 項(1)参照)。このときの基準額を
企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設
定することができるのは、借手のリース料には原資産の取得価額のほかに利息相当額が
含まれているためである(第 22 項(1)ただし書き参照)。
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BC40. このほか、事務機器等の比較的少額な資産がリースの対象となる場合があることを踏
まえ、一定の金額以下のリースについては、リース開始日に使用権資産及びリース負債
を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費
用として計上することができることとした(第 22 項(2)参照)。
BC41. 企業会計基準適用指針第 16 号では、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリー
スで、リース契約 1 件当たりのリース料総額が 300 万円以下のリースについて、簡便的
な取扱いを認めていた。一方、IFRS 第 16 号の結論の根拠では、IFRS 第 16 号の開発当
時の 2015 年において新品時に 5 千米ドル以下程度の価値の原資産を念頭に置いて、リ
ース 1 件ごとに簡便的な取扱いを選択適用することができるとの考え方が示されてい
る。企業会計基準適用指針第 16 号における 300 万円以下のリースに関する簡便的な取
扱いと、IFRS 第 16 号における簡便的な取扱いを比較した場合、適用単位の定め方、数
値及び条件が異なるため、どちらの取扱いが広範であるかは一概にはいえないと考えら
れる。
企業会計基準適用指針第 16 号における 300 万円以下のリースに関する簡便的な取扱
いを適用している企業においては、これを継続することを認めることにより、追加的な
負担を減らすことができると考えられる。一方、IFRS 任意適用企業においては、IFRS 第
16 号における簡便的な取扱いを認めることにより、「IFRS 第 16 号の定めを個別財務諸
表に用いても、基本的に修正が不要となる」ことを目指す方針(会計基準 BC13 項)と整
合することになると考えられる。このように、これらの簡便的な取扱いについては優劣
がつけがたいと考えられる。
BC42. 前項を踏まえ、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契
約 1 件当たりの金額に重要性が乏しいリースに関する簡便的な取扱い(第 22 項(2)①参
照)と新品時の原資産の価値が少額であるリースに関する簡便的な取扱い(第 22 項(2)②
参照)のいずれかを選択適用することを認めることとした。
BC43. 本適用指針第 22 項(2)①のリース契約 1 件当たりの金額に重要性が乏しいリースは、
企業会計基準適用指針第 16 号において定められていたリース契約 1 件当たりのリース
料総額が 300 万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として
取り入れたものである。この適用にあたっては、リース契約 1 件ごとにこの方法を適用
するか否かを選択することは想定しておらず、リース契約 1 件当たりの金額を判定する
際に複数の契約を結合する(会計基準 BC24 項)ことまでは想定していない。
BC44. 少額リースに関する簡便的な取扱いは使用権資産及びリース負債の計上に関わるた
め、第 22 項(2)①のリース契約 1 件当たりの金額に重要性が乏しいリースに該当するか
どうかの判定において、その算定の基礎となる対象期間は、原則として、借手のリース
期間とすることとしている(第 23 項参照)。
公開草案に寄せられたコメントの中には、少額リースに関する簡便的な取扱いの適用
にあたり延長オプション及び解約オプションの行使可能性を判断することの実務上の
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負担が大きいとの意見があった。この点、リース契約 1 件当たりの金額の算定の基礎と
なる対象期間を借手のリース期間に代えて契約期間とする取扱いを認めることにより
延長オプション及び解約オプションの対象期間の見積りに関する適用上のコストが軽
減されること、また、当該取扱いを認めたとしても企業の事業内容に照らして重要であ
るリースについては使用権資産及びリース負債が計上されることを踏まえ、当該取扱い
を認めることとした(第 23 項ただし書き参照)。
BC45. 第 22 項(2)②の新品時の原資産の価値が少額であるリースは、IFRS 第 16 号と同様の
方法を認めることを目的として取り入れたものである。当該方法は、IFRS 第 16 号の結
論の根拠で示されている IFRS 第 16 号の開発当時の 2015 年において新品時に 5 千米ド
ル以下程度の価値の原資産のリースを念頭においている。
(指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料)
BC46. 借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、リース開始日
には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数又はレートに基づきリース料
を算定する(第 25 項参照)。IFRS 第 16 号においては、リース負債を計上するにあた
り、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について参照する指数又はレー
トの将来の変動を見積るべきであるとする考え方が示されている。しかしながら、参照
する指数又はレートの将来の変動を見積るためには、企業によっては容易に利用可能で
はない可能性があるマクロ経済情報が必要となる場合があり、見積りに必要な情報を入
手するためのコストが正当化されない可能性があるとして、参照する指数又はレートが
リース開始日以降にリース期間にわたり変動しないとみなしてリース負債を測定する
定めが置かれたとされている。本適用指針においても、指数又はレートの将来の変動を
見積ることにより生じるコスト及び国際的な比較可能性を考慮し、IFRS 第 16 号と整合
的な定めを置くこととした。
BC47. 審議の過程では、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料は、原資産の経
年劣化等により、リース開始日現在の指数又はレートに基づくリース料と比して、リー
ス開始日以降の指数又はレートの変動を反映したリース料の方が小さくなることがあ
り、このような場合にも参照する指数又はレートがリース開始日以降借手のリース期間
にわたり変動しないとみなしてリース料を算定することで、結果としてリース負債が過
大となるとの意見が聞かれた。
BC48. この点、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料が参照する指数又はレー
トについては、必ずしも借手である企業の活動に左右されるものではなく、比較的客観
的なものであることから、参照する指数又はレートの将来の変動を見積るための十分な
情報が入手できる場合や、参照する指数又はレートの将来の変動を見積るためのマクロ
経済情報が容易に利用可能である場合も存在すると考えられる。
BC49. BC47 項及び前項に関する点並びに財務諸表利用者に対する有用な情報を提供する観
- 49 -
点から、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いは
IFRS 第 16 号に置かれていないものの、本適用指針においては、合理的な根拠をもって
指数又はレートの将来の変動を見積ることができることを条件に、リース料が参照する
指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース
料及びリース負債を算定することを、リースごとにリース開始日に選択することができ
るとする例外的な取扱いを置くこととした(第 26 項参照)。
当該例外的な取扱いを選択する場合、決算日ごとに参照する指数又はレートの将来の
変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を見直
すこととした上で(第 49 項参照)、当該取扱いを選択した旨及びその内容を「会計方針
に関する情報」として注記し(第 97 項(2)参照)、また、当該取扱いを選択したリース
に係るリース負債の金額の開示を求めることとした(第 99 項(2)参照)。
(借地権の設定に係る権利金等)
BC50. 我が国においては、土地の賃貸借契約の締結時に借地権の設定対価として権利金の授
受が行われることがあり、また、当該権利金の名目で授受される金銭の性質はさまざま
であるといわれている。本適用指針においては、次の(1)及び(2)を想定して会計処理を
定めることとした。
(1) 借手が貸手と借地契約を締結するにあたり、貸手に対して支払う借地権の設定対
価
(2) 借手が貸手と借地契約を締結するにあたり、当該貸手が借手以外の第三者と借地
契約を締結していた場合に当該借手が当該第三者から借地権の譲渡を受けるとき
の当該第三者に対する当該借地権の譲渡対価
これらの借地権の設定に係る権利金等の授受が行われる場合、借地権を除く底地に対
して毎月支払う賃料が設定され、借地権の価格の土地の更地価格に対する割合が高い場
合には当該賃料は低くなるという一定の関係性があるといわれている。
BC51. 借地権は土地を使用する権利に他ならず、土地の賃貸借においては借手が土地を賃借
しながら借地権のみを第三者に譲渡することはできないと考えられること及び通常当
該権利金等の支払は土地の賃貸借契約と同時又はほぼ同時に行われることを踏まえ、本
適用指針では、借地権の設定と土地の賃貸借とを一体として取扱い、借地権の設定に係
る権利金等の対価は、使用権資産の取得価額に含めることとした。
旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権に係る権利金等に係る取扱い
BC52. ここで、借手の権利が強く保護されている旧借地権又は普通借地権の設定対価につい
ては、次の 2 つの見方がある。
(1) 借地権の設定対価は、減価しない土地の一部取得に準ずるとの見方
(2) 借地契約の期間が長期にわたるとしても無期限にはならないため、借地権の設定
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対価も賃借期間に要するコストであるとの見方
BC53. 旧借地権又は普通借地権は法定更新制度や正当事由制度により借手の権利が強く保
護されてはいるものの、契約で期間を定めている場合には契約期間(契約で期間を定め
ていない場合には法定存続期間)がある上で契約の更新の権利があるものであると考え
られるため、通常、借地権は無期限ではないと考えられる。
本適用指針では、借地権は土地を使用する権利に他ならず土地の賃貸借においては借
手が土地を賃借しながら借地権のみを第三者に譲渡することはできないという一定の
関係性(BC51 項参照)があるもとで前項(2)の見方に基づき、旧借地権の設定に係る権
利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等と当該賃料とを一体で使用権資産の取得
価額に含め、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行うこととした(第 27 項
第 1 段落参照)。
BC54. 審議の過程では、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金
等と賃料とを一体で使用権資産の取得価額に含め減価償却を行う場合、借地権の設定に
係る権利金等について残存価額を考慮すべきとの意見が聞かれた。この点、借手のリー
ス期間の終了時に残存価額があると認められる場合には借手のリース期間の終了時に
おける残存価額を見積った上で残存価額を控除した金額により減価償却を行うことが
考えられる。
しかしながら、次の理由により、借地権の設定に係る権利金等の残存価額を設定する
ことは困難な場合も想定されると考えられる。
(1) 借地権の設定対価は貸手から基本的に返還されない中で、かつ、次の借手との間
で相対取引により譲渡対価が決まると考えられる。
(2) 借地権の取引慣行の成熟の程度によっては売却価額の見積りを行うことが難し
い場合があると考えられる。
また、仮に残存価額を設定する場合、当該残存価額を毎期見直すことになると考えら
れるが、予想される売却価額の見積りを毎期行うことには相応のコストを要するものと
考えられる。
これらの状況により、借地権の承継が行われる可能性を見込むことや借手のリース期
間の終了時に予想される売却価額を見積ることができない場合には、残存価額をゼロと
することも考えられる。
BC55. 一方、審議の過程では、本適用指針 BC52 項(1)の見方、すなわち、我が国の取引慣行
においては、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等の支
払は、減価しない土地の一部取得に準ずるとの見方を支持する意見も聞かれた。この見
方は、旧借地権又は普通借地権に関して借手の権利が強く保護されており契約の更新が
可能であることを踏まえ、減価しない土地の一部取得に準ずると捉えられるものと考え
られる。
我が国における借地権の取引慣行を踏まえ、本適用指針の適用前に旧借地権の設定に
- 51 -
係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、本適用
指針の適用初年度の期首に計上されている当該権利金等及び本適用指針の適用後に新
たに計上される権利金等の両方について減価償却を行わないものとして取り扱うこと
を認めることとした。また、本適用指針の適用初年度の期首に旧借地権の設定に係る権
利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等が計上されていない場合、本適用指針の適
用後に新たに計上される権利金等について減価償却を行わないものとして取り扱うこ
とを認めることとした(本適用指針第 27 項ただし書き参照)。
なお、本適用指針 BC51 項に記載した理由により当該権利金等を別個のものとして取
り扱うことは適切ではないと考えられるため、当該権利金等について減価償却を行わな
い場合においても、当該権利金等は会計基準第 49 項に従って表示することになる。
旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権に係る権利金等に係る経過措置
BC56. 本適用指針が公表される前に締結した土地の賃貸借契約に関して支払った旧借地権
の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等については、これまで我が
国の会計基準において当該権利金等に関する会計処理が明らかではなく、本適用指針
BC52 項の 2 つの見方がある中で、仮に本適用指針における原則的な取扱い(本適用指針
第 27 項第 1 段落参照)を一律に適用することを求める場合、当初の契約の意図が会計
処理に反映されなくなる可能性がある。また、前項に記載のとおり、旧借地権の設定に
係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等について減価償却を行わないもの
として取り扱うことを認める中で、本適用指針の適用後に生じる権利金等に限り減価償
却を行うとしても財務報告の改善が図られる一定の効果があると考えられる。
これらを考慮し、本適用指針第 27 項第 1 段落に定める原則的な取扱いを適用する借
手が会計基準の適用初年度の期首に計上されている旧借地権の設定に係る権利金等又
は普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、当該権利金等のみ償却
しないことができるとする経過措置を定めることとした(本適用指針第 127 項参照)。
定期借地権の設定に係る権利金等の取扱い
BC57. 定期借地権が設定される土地の賃貸借契約は、賃借期間の満了時に当該賃貸借契約が
終了するため、定期借地権の設定に係る権利金等は、賃貸借契約の期間に係るコストと
考えられる。したがって、当該権利金等は、使用権資産の取得価額に含めて借手のリー
ス期間を耐用年数とし、減価償却を行うこととした(第 27 項第 1 段落参照)。
(資産除去債務)
BC58. 資産除去債務会計基準では、「資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を
負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価
額に加える。」(資産除去債務会計基準第 7 項)と定めている。また、資産除去債務会
- 52 -
計基準では、「有形固定資産には、財務諸表等規則において有形固定資産に区分される
資産のほか、それに準じる有形の資産も含む。」(資産除去債務会計基準第 23 項)とし
ている。したがって、関連する有形固定資産が使用権資産の場合、当該負債の計上額と
同額を使用権資産の帳簿価額に加えることとした(本適用指針第 28 項参照)。
(建設協力金等の差入預託保証金)
BC59. 移管指針第 9 号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」とい
う。)では、建設協力金等及び敷金については、これらが金融商品に該当する(金融商
品実務指針第 10 項)ことから、関連する定めは金融商品実務指針に記載されていた。
しかし、これらの項目は、主にリースの締結により生じる項目であるため、これらの具
体的な会計処理の定めについては、金融商品実務指針から削除し、本適用指針において
定めることとした(本適用指針第 29 項から第 36 項参照)。
建設協力金等
BC60. 建設協力金は、建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金であり、契
約に定めた期日に預り企業である貸手が現金を返還し差入企業である借手がこれを受
け取る契約であるため、金融商品である。建設協力金の典型例としては、当初無利息で
あり 10 年経過すると低利の金利が付き、その後 10 年間にわたり現金で返済されるもの
が挙げられる。
BC61. 金融商品実務指針においては、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金
を除く。)について、「建設協力金は、建物等の賃貸に係る預託保証金であり、金利が
付かない期間又は低金利の期間、賃借人にとって機会金利を賃料として計上する方法が
考えられる。また、建設協力金等が、流動化の目的で売却されたときに現在価値で計上
していない矛盾が売却損という形で顕在化する。これに対し、建設協力金等は、売却し
なければ寄託債権という金銭債権であり、取得価額で計上され時価評価されないから、
当初認識は取得価額で十分との考え方もあるが、売却した場合としない場合で整合性の
ある処理を定めるべきと考えた。当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フ
ローを割り引いた現在価値が建設協力金等の時価である。」として、次の会計処理が定
められていた。
(1) 「支払額と当該時価との差額は、長期前払家賃として計上し、契約期間にわたっ
て各期の純損益に合理的に配分する」
(2) 「当初時価と返済金額との差額を契約期間にわたって配分し受取利息として計上
する」
また、「差入預託保証金のうち、将来返還されない額は、賃借予定期間にわたり定額
法により償却する」こととされていた。
BC62. 本適用指針においては、会計基準における借手のリース料の定義(借手が借手のリー
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ス期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払)を踏まえ、金融商品
実務指針において長期前払家賃として取り扱われていたものについては、利息の受取を
低額とすることによる賃料の支払の性質を有すると考えられるため、リース料として使
用権資産の取得価額に含めることとした(本適用指針第 29 項参照)。
また、差入預託保証金(敷金を除く。)のうち、預り企業である貸手から差入企業で
ある借手に将来返還されないことが契約上定められている金額は、借手が賃貸借契約に
基づいて原資産を使用する権利に関する支払である点で、毎月支払われるリース料と相
違はないと考えられるため、当該金額を使用権資産の取得価額に含めることとした(本
適用指針第 32 項参照)。
BC63. 建設協力金に関して、差入企業である借手が対象となった土地建物に抵当権を設定し
ている場合、現在価値に割り引くための利子率は、原則としてリスク・フリーの利子率
を使用する(第 30 項参照)。当該利子率としては、例えば、契約期間と同一の期間の国
債の利回りが考えられる。
敷 金
BC64. 敷金は、賃料及び修繕の担保的性格を有し償還期限は賃貸借契約満了時であり、法的
には契約期間満了時に返還請求権が発生すると解されており、通常無金利である。した
がって、差入敷金については、建設協力金と異なり取得原価で計上することとしていた
金融商品実務指針の取扱いを踏襲している(本適用指針第 33 項参照)。
ただし、本適用指針においては、IFRS 任意適用企業が IFRS 第 16 号の定めを個別財務
諸表に用いても、基本的に修正が不要となる会計基準の開発を行う方針(会計基準 BC13
項)を考慮し、差入敷金について建設協力金と同様の会計処理も認めることとした(本
適用指針第 33 項ただし書き参照)。
BC65. 本適用指針においては、差入敷金のうち、預り企業である貸手から差入企業である借
手に将来返還されないことが契約上定められている金額について、リースの借手が賃貸
借契約に基づいて原資産を使用する権利に関する支払である点で、毎月支払われるリー
ス料と相違はないと考えられるため、当該金額を使用権資産の取得価額に含めることと
した(第 34 項参照)。
(現在価値の算定に用いる割引率)
BC66. 借手がリース負債の現在価値の算定に用いる割引率は、貸手の計算利子率を借手が知
り得るときにはこれによるが、知り得ないときには借手が割引率を見積ることになる。
本適用指針では、後者の場合には借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利
率によるとしており(第 37 項参照)、これには例えば、次のような利率を含む。
(1) 借手のリース期間と同一の期間におけるスワップレートに借手の信用スプレッ
ドを加味した利率
- 54 -
(2) 新規長期借入金等の利率
① 契約時点の利率
② 契約が行われた月の月初又は月末の利率
③ 契約が行われた月の平均利率
④ 契約が行われた半期の平均利率
なお、(2)の場合には、借手のリース期間と同一の期間の借入れを行う場合に適用さ
れる利率を用いる。
(3)利息相当額の各期への配分
BC67. リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額は、利息相当額
として取り扱い、当該利息相当額の各期への配分は利息法による(第 38 項及び第 39 項
参照)。これは、借手については、すべてのリースについて使用権資産に係る減価償却
費及びリース負債に係る利息相当額を計上する IFRS 第 16 号と同様の単一の会計処理モ
デルを採用しているためである。
ただし、実務上の負担に配慮し、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合
には、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法や利息相当額
の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法を認めている(第 40
項から第 42 項参照)。
(使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)
BC68. 企業全体の使用権資産の総額に重要性が見られるケースがある一方、企業全体の使用
権資産の総額に重要性が乏しいケースもあると想定される。
企業全体の使用権資産総額に重要性が乏しいかどうかの判断基準は、未経過の借手の
リース料の期末残高が当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計
額に占める割合が 10 パーセント未満である場合としている(第 41 項参照)。ここで、
未経過の借手のリース料を使用しているのは、割引計算により使用権資産を求める煩雑
さを避けるためである。無形固定資産を判断基準に加えているのは、無形固定資産のリ
ースへの会計基準の適用は任意としているものの、無形固定資産のリースを会計基準の
範囲に含めているためである。
また、使用権資産総額に重要性が乏しいかどうかを判断する割合については、次のこ
とを考慮し算定することが考えられる。
(1) 本適用指針第 20 項又は第 22 項によりリース開始日に使用権資産及びリース負債
を計上せず借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法によ
り費用として計上することとしたものや、本適用指針第 39 項に従い利息相当額を
利息法により各期に配分している使用権資産に係るものがある場合、これらについ
ては未経過の借手のリース料の期末残高から除く。
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(2) 有形固定資産及び無形固定資産の期末残高について未経過の借手のリース料の
期末残高と二重になる場合、未経過の借手のリース料、有形固定資産及び無形固定
資産の期末残高の合計額の算定上、二重にならないように調整を行う。
BC69. これらの判断基準を満たした企業については、使用権資産及びリース負債を計上した
上で、煩雑な計算を避ける意味で、「借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額
を控除しない方法」又は「利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法によ
り配分する方法」を採用することができることとしている(本適用指針第 40 項参照)。
IFRS 第 16 号ではこれらの簡便的な取扱いは定められていないが、実務の追加的な負担
を軽減することを目的として企業会計基準適用指針第 16 号に定められていたものであ
り、実務において浸透していることから、本適用指針においても、これらの簡便的な取
扱いを踏襲することとした。
BC70. 前項の簡便的な取扱いは、企業会計基準適用指針第 16 号では所有権移転外ファイナ
ンス・リース取引のみについて認めていたが、本適用指針においては、これらの対象範
囲は、これまでオペレーティング・リース取引に分類されていたリース及びこれまで所
有権移転ファイナンス・リース取引に分類されていたリースにまで拡大することになる。
審議の過程では、不動産に係るリースとその他のリースを合わせて重要性の判断を行う
場合、これまで簡便的な取扱いが認められていたその他のリースについて、これらの簡
便的な取扱いが認められなくなる懸念があるため、例えば、不動産に係るリースとその
他のリースを分けて重要性の判断を行う取扱いを設けてはどうかとの意見が聞かれた。
この点、企業全体に対する影響に基づいて簡便的な取扱いを適用することの可否を判
断すべきであることや借手の費用配分に単一の会計処理モデルを提案していることと
の整合性から、リースの種類によって重要性の判断基準を分けないこととした。
(4)使用権資産の償却
BC71. 使用権資産の償却については、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移
転すると認められるリースに該当するか否かによって、異なる定めを置いている(会計
基準第 37 項及び第 38 項)。
この点、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリ
ースに該当するか否かの定めについては、基本的に企業会計基準適用指針第 16 号にお
ける所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するか否かの定めを踏襲している(本
適用指針第 43 項参照)。
ただし、購入オプションについて、企業会計基準適用指針第 16 号では、リース契約
上、借手に対して割安購入選択権が与えられており、その行使が確実に予想される場合
としていた。この点、割安かどうかのみではなく他の要因も考慮して購入オプションの
行使が合理的に確実な場合とする方が、借手への所有権移転の可能性を反映して減価償
却費の算定が可能となるため、本適用指針では購入オプションの行使が合理的に確実で
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ある場合に変更している(本適用指針第 43 項(2)参照)。
また、使用権資産の償却にあたり、原資産が特別仕様であって、その使用可能期間を
通じて借手によってのみ使用されるか否かを考慮することについては、IFRS 第 16 号で
は設けられていない定めであるが、原資産が特別仕様であり使用可能期間を通じて借手
によってのみ使用されることが明らかであるリースは、原資産を自ら所有する場合と同
様の期間にわたって使用されるものであるため、企業会計基準適用指針第 16 号におけ
る定めを踏襲し、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と
同一の方法とすることとした(本適用指針第 43 項(3)参照)。
(5)リースの契約条件の変更
BC72. 企業会計基準適用指針第 16 号では、リースの契約条件の変更に関する取扱いを定め
ていなかったが、本適用指針では、当該取扱いを明確にするために、IFRS 第 16 号にお
けるリースの契約条件の変更に関する取扱いを IFRS 第 16 号における主要な定めとして
本適用指針に取り入れることとしている(本適用指針第 44 項及び第 45 項参照)。
BC73. リースの契約条件の変更が第 44 項(1)及び(2)の要件をいずれも満たす場合、実質的
に変更前のリースとは独立したリースが生じるものと考えられる。この場合、変更前の
リース開始日の会計処理と同様に、借手は、当該リースの契約条件の変更を独立したリ
ースとして取り扱い、当該独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更
の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借
手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権資産を計上する(第 44 項参照)。
ここで、契約期間のみが延長されるリースの契約条件の変更は、原資産の追加に該当
しないため、第 44 項(1)の要件を満たさない。
また、第 44 項(2)の要件における「特定の契約の状況に基づく適切な調整」は、例え
ば、類似の資産を顧客にリースする際に生じる販売費を貸手が負担する必要がない場合
に借手に値引きを行うとき、独立価格を値引額について調整することが考えられる。
BC74. 第 44 項に従い独立したリースとして会計処理されないリースの契約条件の変更のう
ち、リースの範囲が縮小されるものについては、リースの契約条件の変更前のリースの
一部又は全部を解約するものと考えられる。したがって、借手は、リースの契約条件の
変更の発効日において、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、また、リースの
一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額し、使用権資産の減
少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合、当該差額を損益に計上する(第 45 項
(1)及び(2)①参照)。このようなリースの契約条件の変更には、例えば、不動産の賃貸
借契約においてリースの対象となる面積が縮小される場合や契約期間が短縮される場
合等が含まれると考えられる。
BC75. 第 44 項に従い独立したリースとして会計処理されないリースの契約条件の変更のう
ち、リースの範囲が縮小されるもの以外のものについては、変更前のリースは解約され
- 57 -
ておらず、借手は引き続き、リースの契約条件の変更前のリースにおいて特定されてい
た原資産を使用する権利を有するものと考えられる。したがって、借手は、リースの契
約条件の変更の発効日において、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、リース
負債の修正額に対応する金額を使用権資産に加減することにより、変更前のリースを修
正する会計処理を行う(第 45 項(1)及び(2)②参照)。このようなリースの契約条件の
変更には、例えば、リース料の単価のみが変更される場合や契約期間が延長される場合
等が含まれると考えられる。
BC76. リースの契約条件の変更に関連して、IFRS 第 16 号は、状況ごとに使用する割引率(変
更前の割引率又は変更後の割引率)を定めている。この点、本適用指針においても、IFRS
第 16 号と同様に使用する割引率を定めることも考えられたが、次の理由から、定めな
いこととした。
(1) IFRS 第 16 号の定めは、使用する割引率について状況ごとに詳細な会計処理を定
めるものである。主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が
高い会計基準を開発するという方針(会計基準 BC13 項)を考慮した場合、IFRS 第
16 号の割引率に関する定めを本適用指針に取り入れないことが、当該開発方針と
整合する。
(2) 本適用指針では、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合に借手のリ
ース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法(本適用指針第 40 項(1)
参照)も認めており、IFRS 第 16 号よりも幅広い割引の取扱いを認めていることと
整合する。
(6)リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し
BC77. 企業会計基準適用指針第 16 号では、リースの契約条件の変更を伴わないリース負債
の見直しに相当する取扱いを定めていなかったが、本適用指針では、当該取扱いを明確
にするために、IFRS 第 16 号におけるリース負債の見直しに関する取扱いを IFRS 第 16
号における主要な定めとして本適用指針に取り入れることとしている(本適用指針第 46
項から第 49 項参照)。
BC78. 借手が原資産を購入するオプションを行使することが合理的に確実であるかどうか
の見直し(本適用指針第 47 項(1)参照)についても、延長オプションを行使すること又
は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの見直しと同様、会
計基準第 41 項(1)及び(2)に示している重要な事象及び重要な状況が生じたときにリー
ス負債の計上額の見直しを行うことになると考えられる。
BC79. リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直しに関連して、IFRS 第 16 号は、
状況ごとに使用する割引率(変更前の割引率又は変更後の割引率)を定めている。この
点、本適用指針においても、IFRS 第 16 号と同様に使用する割引率を定めることも考え
られたが、リースの契約条件の変更と同様の理由(BC76 項参照)から、定めないことと
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した。
(7)短期リースに係る借手のリース期間の変更
BC80. 本適用指針では、短期リースに関する簡便的な取扱いを適用していたリースの借手の
リース期間に変更がある場合に関する定めを置いている(第 50 項参照)。このような
場合には、例えば、当初の契約条件に含まれている延長オプションの対象期間を借手の
リース期間に含めないことを決定していた場合に、当該延長オプションを行使したとき
等が含まれる。
(8)借手のリース期間に含まれない再リース
BC81. 我が国では、再リース期間は 1 年以内とするのが通常であり、再リース料も少額であ
るのが一般的であることから、企業会計基準適用指針第 16 号では、再リース期間をリ
ース資産の耐用年数に含めない場合の再リース料は、原則として、発生時の費用として
処理する取扱いを定めていた。当該取扱いは、IFRS 第 16 号では設けられていない取扱
いである。しかしながら、再リースは我が国固有の商慣習であり、当該取扱いを引き続
き設けることにより、国際的な比較可能性を大きく損なわせずに、財務諸表作成者の追
加的な負担を減らすことができると考えられる。
したがって、借手は、リース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めていな
い場合又は直近のリースの契約条件の変更の発効日に再リース期間を借手のリース期
間に含めていない場合、会計基準第 41 項及び第 42 項にかかわらず、再リースを当初の
リースとは独立したリースとして会計処理を行うことができることとしている(本適用
指針第 52 項参照)。なお、この取扱いを採用しない場合、借手においては、再リース期
間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられる。
我が国の再リースの一般的な特徴は、再リースに関する条項が当初の契約において明
示されており、経済的耐用年数を考慮した解約不能期間経過後において、当初の月額リ
ース料程度の年間リース料により行われる 1 年間のリースであることが挙げられる(会
計基準 BC27 項)。したがって、再リースに該当するかどうかは、通常は明確であると考
えられるが、判断を要する場合もあると考えられる。当該再リースの特徴は貸手の再リ
ースにおいても同様である。
(9)セール・アンド・リースバック取引
BC82. 資産の譲渡とリースバックは形式上別個の取引であるが、これらの取引が組み合わさ
れることで、次のような論点が生じる可能性があると考えられる。
(1) リースバックにより、売手である借手が、買手である貸手に譲渡された資産から
生じる経済的利益を引き続き享受しているにもかかわらず、当該資産を譲渡した時
点で譲渡に係る損益が認識される。
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(2) セール・アンド・リースバック取引においては、資産の譲渡とリースバックが、
パッケージとして交渉されることが多く、資産の譲渡対価とリースバックにおける
借手のリース料との間に相互依存性があると考えられる。資産の譲渡対価及び関連
するリースバックにおける借手のリース料が、それぞれ時価及び市場のレートでの
リース料よりも高い(低い)金額で取引されることにより、一体としての利益の総
額が同じであっても、資産の譲渡に係る損益が過大(過小)に計上される可能性が
ある。
BC83. 前項(1)の論点への対応としてセール・アンド・リースバック取引における資産の譲
渡の取扱いを、前項(2)の論点への対応として資産の譲渡損益を適切に計上するための
取扱いをそれぞれ定めることとした(第 53 項から第 58 項参照)。
(セール・アンド・リースバック取引に該当するかどうかの判断)
BC84. 我が国では、建設工事請負契約と一括借上契約が同時に締結される取引などにおいて、
収益が一定の期間にわたり認識される場合、セール・アンド・リースバック取引の定め
が適用されるか否かについて論点になり得るとの意見が聞かれた。
この点、IFRS 第 16 号においては、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用
される範囲、特に収益が一定の期間にわたり認識される場合であってもセール・アンド・
リースバック取引の定めが適用されるのか否かについて明確にされていない。我が国の
実務において当該論点は重要な論点であり、多様な解釈がなされることを懸念する関係
者からの意見を踏まえ、本適用指針における取扱いについて検討を行った。
BC85. 本適用指針においてセール・アンド・リースバック取引は、IFRS 第 16 号と同様に売
手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から
当該資産をリースする取引と定義している(第 4 項(11)参照)。この定義においては、
譲渡された資産とリースされた資産が同一であることが重要な要素となっている。
BC86. セール・アンド・リースバック取引に該当するか否かを検討する対象となる資産の譲
渡とリースバックにおいて、売手である借手による資産の譲渡が収益認識会計基準など
の他の会計基準等により一時点で損益を認識する売却に該当すると判断される場合、売
手である借手は、当該資産を買手である貸手に譲渡し、譲渡した当該資産をリースして
いるものと考えられる。この場合、譲渡された資産とリースされた資産は同一であると
考えられることから、これらの取引についてはセール・アンド・リースバック取引に該
当するものとして会計処理を定めることとした(本適用指針第 55 項及び第 56 項参照)。
BC87. 一方、セール・アンド・リースバック取引に該当するか否かを検討する対象となる資
産の譲渡とリースバックにおいて、売手である借手による資産の譲渡が次のいずれかで
ある取引については、資産の譲渡により売手である借手から買手である貸手に支配が移
転されるのは仕掛中の資産であり、移転された部分だけでは資産の使用から生じる経済
的利益を享受できる状態にない。これに対し、リースバックにより売手である借手が支
- 60 -
配を獲得する使用権資産は、完成した資産に関するものであるため、譲渡された資産と
リースされた資産は同一ではないと考えられる。
(1) 収益認識会計基準に従い、一定の期間にわたり充足される履行義務(収益認識会
計基準第 36 項)の充足によって行われる場合
(2) 収益認識適用指針第 95 項を適用し、工事契約における収益を完全に履行義務を
充足した時点で認識することを選択する場合
したがって、これらの取引はセール・アンド・リースバック取引として取り扱わない
こととした(本適用指針第 53 項参照)。
BC88. 前項の考え方は、資産の譲渡とリースバックの関係を IFRS 第 15 号と同等である収益
認識会計基準の考え方により整理したものであり、IFRS において認められる解釈の 1 つ
と考えられるため、国際的な比較可能性を大きく損なわせるものではないと考えられる。
ただし、本適用指針におけるこのセール・アンド・リースバック取引の範囲の明確化は、
これが IFRS 第 16 号における唯一の解釈であると示すことを意図するものではない。
BC89. 売手である借手が原資産を移転する前に原資産に対する支配を獲得しない場合、当該
資産の移転と関連するリースバックについては、セール・アンド・リースバック取引に
該当しない(第 54 項参照)。例えば、取引の都合上、借手が貸手を通さずに資産を第三
者から購入して当該資産を貸手に譲渡し当該貸手から原資産としてリースするような
場合、売手である借手が当該原資産に対する法的所有権を獲得したとしても、資産が貸
手に移転される前に借手が当該原資産に対する支配を獲得しないときには、当該取引は
セール・アンド・リースバック取引ではないと考えられる。
(セール・アンド・リースバック取引に該当する場合の会計処理)
BC90. セール・アンド・リースバック取引は、資産の譲渡とリースバックを組み合わせた取
引である。資産の譲渡に係る損益を認識するためには、収益認識会計基準などの他の会
計基準等に従い、売手である借手による資産の譲渡が売却に該当するかどうかを判断す
る。ここで、顧客との契約から生じる収益は、収益認識会計基準の適用範囲に含まれる
が(収益認識会計基準第 3 項)、顧客との契約から生じるものではない場合の固定資産
の譲渡は収益認識会計基準の適用範囲に含まれない(収益認識会計基準第 108 項)。収
益認識会計基準に含まれない固定資産の譲渡については一般的な実現主義の原則(企業
会計原則 第二 損益計算書原則 三 B)が適用されると解されるが、特定の不動産取引
については、譲渡に係る損益の認識時期等の具体的な判断について、次の指針等が定め
られている。
(1) 日本公認会計士協会 監査委員会報告第 27 号「関係会社間の取引に係る土地・設
備等の売却益の計上についての監査上の取扱い」
(2) 日本公認会計士協会 審理室情報 No.6「土地の信託に係る監査上の留意点につい
て」
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(3) 移管指針第 10 号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計
処理に関する実務指針」及び移管指針第 13 号「特別目的会社を活用した不動産の
流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についての Q&A」
(4) 日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会実務指針第 90 号「特別目的会社を利
用した取引に関する監査上の留意点についての Q&A」
BC91. この点、IFRS 第 16 号においては、資産の譲渡が売却に該当するのは、IFRS 第 15 号
における要求事項を満たす場合のみであるとされている。また、IFRS 第 15 号により収
益が認識されると判断される場合、買手である貸手に移転された権利部分については権
利の譲渡に係る利得又は損失を譲渡時に認識し、リースバックにより売手である借手が
継続して保持する権利部分については権利の譲渡に係る利得又は損失を繰り延べるこ
ととされている。
BC92. 一 方 、 売 却 に 該 当 す る か 否 か の 判 断 に つ い て 、 FASB Accounting Standards
Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)の Topic
842「リース」(以下「Topic 842」という。)においてはリースバックが次の(1)から(5)
のいずれかを満たす場合、当該リースバックはファイナンス・リースに分類され、この
とき、Topic 606「顧客との契約から生じる収益」(以下「Topic 606」という。)の収
益認識要件を満たさないものとして、譲渡資産の認識を中止せずに、その他の Topic に
従い受領した金額を金融負債として会計処理を行うこととされている。
(1) リースにより、リース期間終了までに借手に原資産の所有権が移転される。
(2) リースにより、借手が合理的に確実に行使する原資産の購入オプションが借手に
付与される。
(3) リース期間が原資産の残余の経済的耐用年数の大部分である。
(4) リース料総額の現在価値とリース料に反映されていない借手による残余価値保
証額の合計が、原資産の公正価値のほとんどすべてと同額又はそれを超過する。
(5) 原資産が、リース期間終了時に、貸手の代替的な使用が予定されていない特殊な
性質のものである。
Topic 842 における当該定めについては、売手である借手のリースバックがファイナ
ンス・リースである場合、売手である借手が、譲渡した資産を直ちに買い戻しているこ
とと実質的に異ならず、売手である借手による資産の譲渡を資産の売却とすることが適
切ではないと考えられたことが説明されている。
これに対し、資産の譲渡が Topic 606 の収益認識要件を満たす場合には、収益を Topic
606 の取引価格で測定して、原資産の認識を中止、すなわち、譲渡損益の全額を認識し、
リースバックについては、オペレーティング・リースとして会計処理を行うこととされ
ている。
BC93. 本適用指針 BC91 項及び前項に記載した IFRS 第 16 号における会計上の考え方と Topic
842 における会計上の考え方を比較衡量した結果、本適用指針においては、Topic 842 に
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おける定めを参考に、資産の譲渡が売却に該当するか否かに関して、収益認識会計基準
などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売
却に該当しない場合のほか、リースバックにより、売手である借手が資産からもたらさ
れる経済的利益のほとんどすべてを享受することができ、かつ、資産の使用に伴って生
じるコストのほとんどすべてを負担することとなる場合(フルペイアウトのリースの場
合)には資産の譲渡は売却に該当しないこととし、当該資産の譲渡とリースバックを一
体の取引とみて、金融取引として会計処理を行うこととした(本適用指針第 55 項参照)。
一方、セール・アンド・リースバック取引について、売手である借手による資産の譲
渡が収益認識会計基準などの他の会計基準等により売却に該当する場合かつフルペイ
アウトのリースに該当しない場合には、売手である借手は、当該資産の譲渡について収
益認識会計基準などの他の会計基準等に従い損益を認識し、リースバックについて会計
基準及び本適用指針に従い借手の会計処理を行うこととした(本適用指針第 56 項参照)。
これらの定めを置いた主な理由は、次のとおりである。
(1) 資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等の定めにより損益
を認識すると判断する場合、当該資産の譲渡に係る損益が全額計上される。これに
対し、IFRS 第 16 号の定めと同様の定めを本適用指針に含めた場合、資産の譲渡に
ついて収益認識会計基準などの他の会計基準等の定めにより損益を認識すると判
断される場合であっても、当該資産の譲渡に係る損益の調整を求めることになり、
収益認識会計基準などの他の会計基準等の考え方とは異なる考え方を採用するこ
ととなる。
(2) IFRS 第 16 号においては、リースバックにより売手である借手が継続して保持す
る権利に係る利得又は損失は売却時に認識しないため売却損益の調整が必要とな
る分、Topic 842 のモデルよりも複雑となる可能性があると考えられる。このよう
な IFRS 第 16 号における資産の譲渡に係る損益の調整に代えて、セール・アンド・
リースバック取引についての開示を要求することが有用な情報の提供につながる
と考えられる。
BC94. 公開草案に寄せられたコメントの中には、第 55 項(2)におけるフルペイアウトのリー
スの要件を満たすかどうかを判断するにあたり第 62 項を適用して判定するのかどうか
を明らかにすべきとの意見があった。この点、本適用指針では第 55 項(2)におけるフル
ペイアウトの判定の要件を具体的に定めていないが、仮に第 62 項の判定基準を用いて
判断する場合には、売手である借手が当該要件を満たすかどうかを判断することになる
ため、借手のリース期間及び借手のリース料をもとに判定を行うことが考えられる。
BC95. 公開草案に寄せられたコメントの中には、IFRS 任意適用企業の個別財務諸表におい
て IFRS 第 16 号と同様の会計処理の選択適用を認めるべきとの意見があった。この点、
次の理由から、IFRS 第 16 号と同様の会計処理を代替的な取扱いとして定めないことと
した。
- 63 -
(1) 本適用指針 BC93 項(1)に記載のとおり本適用指針におけるセール・アンド・リー
スバック取引に係る会計処理が IFRS 第 16 号と異なっているのは収益認識会計基準
などの他の会計基準の定めとの整合性を優先させるという会計上の考え方の相違
によるものであるため、IFRS 第 16 号と同様の会計処理の選択適用を認めることは
適切ではないと考えられる。
(2) セール・アンド・リースバック取引は日常的に行われるものではないと考えられ
る。
(3) これまでごく一部の例外を除き IFRS 任意適用企業に対してのみ適用される代替
的な取扱いを置いていない。
(資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレー
トではない場合)
BC96. 本適用指針 BC82 項に記載のとおり、セール・アンド・リースバック取引においては、
資産の譲渡とリースバックが、パッケージとして交渉されることが多く、資産の譲渡対
価とリースバックにおける借手のリース料との間に相互依存性があると考えられる。
収益認識会計基準では独立販売価格に基づく取引価格(対価)の配分を定めており(収
益認識会計基準第 68 項)、本適用指針においてもリースを構成する部分とリースを構
成しない部分への対価の配分について独立販売価格に基づく配分を求めることとして
いる(本適用指針第 13 項参照)。
これらの取扱いと整合するように、セール・アンド・リースバック取引において、資
産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレー
トではない場合、当該資産の時価又は市場のレートでのリース料により譲渡損益を計上
する定めを置くこととした(本適用指針第 57 項参照)。セール・アンド・リースバック
取引においては、資産の譲渡対価が時価で、借手のリース料が市場のレートである場合
が多いと考えられるため、本適用指針第 57 項の定めを適用することが求められる場合
は限定的であると考えられる。
BC97. 資産の譲渡対価と借手のリース料がそれぞれ時価と市場のレートでのリース料より
も高い(低い)金額で取引される可能性は、資産の譲渡に係る損益が一定の期間にわた
り認識されるものであるのか一時点で認識されるものであるのかにかかわらず存在す
るため、いずれの場合も同様に取り扱うこととした(第 58 項参照)。
4.貸手のリース
BC98. 貸手の会計処理については、リースの定義及びリースの識別並びに収益認識会計基準
との整合性を図る点を除き、基本的に企業会計基準適用指針第 16 号を踏襲している。
したがって、貸手におけるリースは、ファイナンス・リースとオペレーティング・リー
スとに分類した上で、ファイナンス・リースについてはさらに所有権移転ファイナンス・
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リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類する(会計基準第 43 項及び第 44
項)。
(1)リースの分類
(ファイナンス・リースに該当するリース)
BC99. 本適用指針では、会計基準におけるファイナンス・リースの定義を受けて、「解約不
能」と「フルペイアウト」の 2 つをファイナンス・リースの条件としている(本適用指
針第 59 項参照)。
第 1 の条件の「解約不能」とは、契約期間の定めがあることを前提としている。この
契約期間は、実務上、「拘束期間」、「賃貸借期間」等のさまざまな文言で表現されて
いる。本適用指針では、契約期間中は解約不能であることが明記されているもの以外に、
これと同様に取り扱われる取引として事実上解約不能と認められるリースを 2 つ例示し
ている(本適用指針第 60 項参照)。解約可能であることが明記されていなければ解約
不能として取り扱われるわけではなく、事実上解約不能であるかどうかは、契約条項の
内容、商慣習等を勘案し契約の実態に応じ判断されることになる。
BC100.第 2 の条件である「フルペイアウト」について、「借手が、原資産からもたらされる
経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコ
ストを実質的に負担すること」(本適用指針第 59 項(2)参照)としている。借手が原資
産の使用に伴って生じるコスト(当該原資産の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳
腐化によるリスク等)を実質的に負担する場合、借手は原資産からもたらされる経済的
利益を実質的に享受することになると推定できる。同様に、借手が原資産からもたらさ
れる経済的利益を実質的に享受することができる場合には、通常、借手は原資産の使用
に伴って生じるコストを負担することになると推定できる。本適用指針におけるファイ
ナンス・リースの判定基準については、このような「フルペイアウト」の考え方が前提
となっている。
(具体的な判定基準)
BC101.本適用指針では、ファイナンス・リースの判定基準を、(1)貸手のリース料の現在価値
が、原資産の現金購入価額の概ね 90 パーセント以上であること(現在価値基準)と、
(2)貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数の概ね 75 パーセント以上であること
(経済的耐用年数基準)のいずれかに該当することとしている(第 62 項参照)。
BC102.現在価値基準を適用する場合の貸手のリース料の現在価値は推定額であるが、当該現
在価値が原資産の現金購入価額の概ね 90 パーセント以上の場合、借手が当該原資産の
取得価額相当額、維持管理等の費用等ほとんどすべてのコストを負担することになり、
したがって、ほとんどすべての経済的利益を享受するものと推定できるため、当該リー
スはファイナンス・リースと判定する。
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BC103.経済的耐用年数基準を適用する場合の原資産の経済的耐用年数は、物理的使用可能期
間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数による。経済的耐用年数基準に該当
するリースは、通常、借手が原資産からもたらされるほとんどすべての経済的利益を享
受することができ、したがって、ほとんどすべてのコストを負担するものと推定できる
ため、当該リースはファイナンス・リースと判定する。
BC104.本適用指針では、現在価値基準がフルペイアウトの判定を行う原則的な基準であると
考えているが、現在価値の計算をすべてのリースについて行うことは実務上極めて煩雑
と考えられるところから、簡便法としての経済的耐用年数基準を設けている。リースの
実態から判断すると、貸手のリース期間が経済的耐用年数の概ね 75 パーセント以上で
ある場合、借手がその原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受すると考えら
れることが多い。
しかし、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等により、
借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担することにはならない場合もある
との指摘があり、そのような場合には原則的な基準である現在価値基準により判定を行
うものとした(第 63 項参照)。
なお、現在価値基準と経済的耐用年数基準の具体的数値として、それぞれの基準にお
いて「概ね 90 パーセント以上」又は「概ね 75 パーセント以上」としているのは、現在
価値基準の判定に見積りの要素が多いためであり、例えば、それぞれの数値が 88 パー
セント又は 73 パーセントといった場合でも実質的にフルペイアウトと考えられる場合
には、ファイナンス・リースと判定されることになる。
(現在価値基準の判定における取扱い)
BC105.1 つの契約が多数の原資産から構成されているような場合、個々の原資産ごとに現在
価値基準の判定を行わずに契約全体で判定を行うことも認められる。
BC106.現在価値の算定を行うにあたっては、貸手の計算利子率を用いる(本適用指針第 66 項
参照)。
貸手の計算利子率については、企業会計基準適用指針第 16 号の定めを踏襲しており、
IFRS 第 16 号におけるリースの計算利子率とは主に貸手の当初直接コストを考慮しない
点が異なる。
IFRS 第 16 号のリースの計算利子率は、リース料の現在価値と無保証残存価値の現在
価値の合計額が、原資産の公正価値と貸手の当初直接コストの合計額と等しくなる利子
率である。
本適用指針における貸手の計算利子率は、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額
(貸手のリース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額)の現在価値の
合計額が、当該原資産の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額と等しくなるよう
な利率(本適用指針第 66 項参照)である。
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(経済的耐用年数基準の判定における取扱い)
BC107.本適用指針では、経済的耐用年数基準の判定に用いられる「経済的耐用年数」は、物
理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数によるものとして
いる(BC103 項参照)。この「経済的耐用年数」は、これまでの取扱いと同様に、企業
の状況に照らし、不合理と認められる事情のない限り、法人税法に定められた耐用年数
を用いて判定を行うことも認められると考えられる(日本公認会計士協会 監査・保証
実務委員会実務指針第 81 号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」第 24 項)。
なお、1 つの契約が多数の原資産から構成されているような場合、個々の原資産ごと
に経済的耐用年数基準の判定を行わずにすべての原資産の加重平均耐用年数により判
定を行うことも認められると考えられる。
(不動産に係るリースの取扱い)
BC108.本適用指針では、土地については、第 70 項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合
を除き、オペレーティング・リースに該当するものと推定することとしている(第 68 項
ただし書き参照)。これは、土地の経済的耐用年数は無限であるため、第 70 項の(1)又
は(2)のいずれかに該当する場合を除いては、通常、フルペイアウトのリースに該当し
ないと考えられることによる。
BC109.土地と建物等を一括したリースは、土地が無限の経済的耐用年数を有し建物等と異な
る性格を有することを踏まえ、貸手のリース料を合理的な方法で土地に係る部分と建物
等に係る部分に分割した上で、建物等について、第 62 項(1)に定める現在価値基準の判
定を行うこととしている(第 69 項参照)。貸手のリース料を土地に係る部分と建物等
に係る部分に合理的に分割する方法としては次の(1)又は(2)が考えられ、このうち最も
実態に合った方法を採用する。
(1) 賃貸借契約書等で、適切な土地の賃料が明示されている場合には、貸手のリース
料から土地の賃料を差し引いた額を、建物等のリース料とする。
(2) 貸手のリース料から土地の合理的な見積賃料を差し引いた額を、建物等のリース
料とみなす。合理的な見積賃料には、近隣の水準などを用いることが考えられる。
なお、土地及び建物を一括でサブリースする場合に当該土地と建物がそれぞれ独立し
たリースを構成する部分(第 16 項参照)に該当しないときは、中間的な貸手は、リース
の分類及び会計処理のために、貸手のリース料を土地に係る部分と建物に係る部分とに
必ずしも分割することを要しないと考えられる。
(2)ファイナンス・リースの分類
BC110.本適用指針では、ファイナンス・リースと判定されたもののうち、所有権移転条項の
ある場合、借手に割安購入選択権がありその行使が確実に予想される場合、特別仕様の
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原資産の場合のいずれかに該当するときに、所有権移転ファイナンス・リースに該当す
るものとし、それ以外のファイナンス・リースは、所有権移転外ファイナンス・リース
に該当するものとしている(第 70 項参照)。
このうち、「特別仕様の原資産」の中には、第 70 項(3)において「借手の用途等に合
わせて特別の仕様により製作又は建設されたもの」とされているように、専用性の高い
機械装置等以外に特別仕様の建物等の不動産も含まれる。
(3)ファイナンス・リース
(貸手における収益配分の基本的な考え方)
BC111.ファイナンス・リースは、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行う(会計
基準第 45 項)。本適用指針では、貸手の会計処理について、基本的に企業会計基準適用
指針第 16 号の定めを踏襲する一方、収益認識会計基準との整合性を図ることとしてい
る(会計基準 BC13 項)。
(基本となる会計処理)
BC112.企業会計基準適用指針第 16 号では、ファイナンス・リース取引の会計処理について、
次の 3 つの方法を定めていた。
(1) リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法
(2) リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法
(3) 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法
BC113.会計基準第 45 項では、ファイナンス・リースについては、通常の売買取引に係る方
法に準じて会計処理を行うとされており、本適用指針では、リースの取引実態に応じて
会計処理を行うこととしている(本適用指針第 71 項及び第 72 項並びに第 78 項参照)。
BC114.製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース(本適用指針第 71 項
(1)参照)は、主として製造業、卸売業等を営む企業が製品又は商品を販売する手法とし
て行うリースを想定している。当該リースは、製品又は商品の販売とは必ずしも同一で
はないが、両者の経済的実質は、取引の対象となる資産を使用する権利が移転される点
で類似している。このようなリースについては、原資産の引渡時に貸手は売上高を計上
し同時に販売益相当額を計上することが、収益認識会計基準における収益認識の時期に
関する取扱いと整合的になるものと考えられる。したがって、本適用指針では、製造又
は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースについては、企業会計基準適用
指針第 16 号で定められていた販売益相当額を繰り延べて会計処理を行う方法は踏襲せ
ず、リース開始日に貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額
で売上高を計上し、原資産の帳簿価額により売上原価を計上することとした(本適用指
針第 71 項(1)①参照)。
また、利息相当額の取扱いについても、収益認識会計基準における重要な金融要素に
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関する取扱いと整合的になるように、原則として、リース開始日に貸手のリース料から
これに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、受取リース料のうち
当該利息相当額を各期の損益として処理することとした(本適用指針第 71 項(1)①及び
②参照)。ただし、当該処理が煩雑になる場合があると考えられることから、企業会計
基準適用指針第 16 号では、売上高と売上原価の差額である販売益相当額が貸手のリー
ス料に占める割合に重要性が乏しい場合、当該販売益相当額を利息相当額に含めて処理
する簡便的な取扱いを認めていた。本適用指針では、当該簡便的な取扱いを認めること
により本適用指針の適用によるコストの増加に対応できること及び貸手の会計処理に
ついては基本的に企業会計基準適用指針第 16 号の取扱いを踏襲していることから、当
該簡便的な取扱いを踏襲することとした(本適用指針第 71 項(1)①ただし書き参照)。
BC115.製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースに係る会計処理
については、リース取引が有する複合的な性格の中でも、金融的な側面に着目し、リー
ス料総額とリース物件の現金購入価額の差額を受取利息相当額として取り扱い、リース
期間にわたり各期へ配分するという企業会計基準適用指針第 16 号で定められていた会
計処理を基本的に踏襲している(本適用指針第 71 項(2)参照)。
BC116.企業会計基準適用指針第 16 号では、本適用指針第 71 項の基本となる会計処理のみが
定められていたと考えられる。
公開草案に寄せられたコメントの中には、例えば、貸手が主たる事業の一環以外で行
う不動産を原資産とするファイナンス・リースのように、原資産の取得日とリース開始
日が近接しないことにより原資産の帳簿価額と借手に対する現金販売価額との差があ
るリースに係る会計処理を明らかにすべきとの意見があった。当該リースにおいては、
原資産の帳簿価額と借手に対する現金販売価額の差額である販売益相当額は、製造又は
販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースと同様、リースの開始日に損益と
して計上することになると考えられることから、本適用指針では貸手が事業の一環以外
で行うリースの会計処理を明らかにしている(本適用指針第 72 項参照)。
BC117.企業会計基準適用指針第 16 号では、リース期間中の各期の受取リース料を売上高と
して計上する方法(本適用指針 BC112 項(2)参照)が定められていた。
本適用指針では、収益認識会計基準において対価の受取時にその受取額で収益を計上
することが認められなくなったことを契機としてリースに関する収益の計上方法を見
直した結果、当該方法を廃止することとした。
(利息相当額の各期への配分)
BC118.所有権移転ファイナンス・リースは、原資産の売却とリース債権の回収取引と考えら
れるため、各期のリース債権残高に対して一定の利益率になるように利息法により受取
利息相当額を配分することとしている(第 79 項参照)。
BC119.一方、所有権移転外ファイナンス・リースの場合、その金融的な側面に着目すると、
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所有権移転ファイナンス・リースと同様に利息法により受取利息相当額を配分すること
が整合的であり、また、貸手の原価の大半が資金調達コストである場合には、その費用
配分処理と整合的な処理となる。したがって、所有権移転外ファイナンス・リースにつ
いても、受取利息相当額を利息法で配分することを原則的な取扱いとしている(本適用
指針第 73 項参照)。
しかしながら、企業会計基準適用指針第 16 号では、リースを主たる事業としていな
い企業による所有権移転外ファイナンス・リース取引について、すべての収益配分が各
期の投資額に対して一定の利益率になるようにされているわけではないものとして、重
要性が乏しく、一定の要件を満たした場合には、定額法による受取利息相当額の配分を
簡便的な取扱いとして認めていた。本適用指針では、当該簡便的な取扱いを認めること
で本適用指針の適用によるコストの増加に対応できること及び貸手の会計処理につい
ては基本的に企業会計基準適用指針第 16 号を踏襲していることから、当該簡便的な取
扱いを踏襲することとした(本適用指針第 74 項及び第 75 項参照)。なお、当該簡便的
な取扱いを適用する貸手としてのリースに重要性が乏しいかどうかを判断する割合に
ついては、次のことを考慮し算定することが考えられる。
(1) 本適用指針第 73 項に従い利息相当額を利息法により各期に配分しているリース
に係るものがある場合、これを未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額
の期末残高から除く。
(2) 営業債権の期末残高について未経過の貸手のリース料の期末残高と二重になる
場合、未経過の貸手のリース料及び営業債権の期末残高の合計額の算定上、二重に
ならないように調整を行う。
(3) 本適用指針第 75 項でいう営業債権には契約資産(収益認識会計基準第 10 項)が
含まれる。
(4)オペレーティング・リース
BC120.貸手は、オペレーティング・リースについて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた
会計処理を行うこととしている(会計基準第 48 項)。企業会計基準適用指針第 16 号は、
ファイナンス・リース取引の会計処理のみを示し、オペレーティング・リース取引の会
計処理は示していなかった。この点、貸手のオペレーティング・リースは、通常、貸手
のリース期間にわたり時の経過とともに収益を計上することが取引実態を表すと考え
られるため、原則として定額法により収益を計上することとしている(本適用指針第 82
項参照)。
BC121.また、審議の過程で、実務においては、フリーレント(契約開始当初数か月間賃料が
無償となる契約条項)やレントホリデー(例えば、数年間賃貸借契約を継続する場合に
一定期間賃料が無償となる契約条項)等の無償賃貸期間に関する会計処理が必ずしも明
らかでなく、企業会計基準第 13 号におけるオペレーティング・リース取引の会計処理
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の実務に多様性が生じており、企業間の比較可能性が損なわれているとの意見が聞かれ
た。
貸手のオペレーティング・リースの会計処理について、収益認識会計基準との整合性
を図り、取引価格に相当する貸手のリース料を貸手のリース期間にわたり原則として定
額法により収益に計上することは、リースの会計処理について企業間の比較可能性を高
めることになると考えられる。また、リースの定義を満たさずに収益認識会計基準の適
用範囲に含まれるリースと経済実態が類似した契約の会計処理との整合性が図られる
こととなる。さらに、リース事業における企業の主たる営業活動の成果であるリースの
収益が、収益認識会計基準の適用範囲に含まれる他の事業における企業の主たる営業活
動の成果である収益と比較可能性が高まることも望ましいと考えられる。
ここで、貸手のリース期間については、借手のリース期間と同様に決定する方法(会
計基準第 32 項(1))と借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間にリースが置
かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加
えて決定する方法(会計基準第 32 項(2))のいずれかを選択して決定することを認めて
いる。我が国におけるオペレーティング・リースについては解約不能期間が著しく短い
契約も見受けられることから、企業が後者の会計基準第 32 項(2)の方法を選択する場合
に契約に無償賃貸期間が含まれるときは、当該解約不能期間を基礎としてオペレーティ
ング・リースの収益を計上することは取引実態を正しく反映しない可能性がある。
これらを踏まえ、貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について
貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上することとし、貸手のリース期間に
ついて会計基準第 32 項(2)の方法を選択して決定する場合に当該貸手のリース期間に無
償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額(ただし、将来
の業績等により変動する使用料を除く。)について契約期間にわたり計上することとし
た(本適用指針第 82 項参照)。
(5)建設協力金等の預り預託保証金
BC122.本適用指針 BC59 項に記載のとおり、建設協力金等及び敷金については、これらの項
目が、主にリースの締結により生じる項目であるため、これらの具体的な会計処理の定
めについては、金融商品実務指針から削除し、本適用指針に定めることとした(本適用
指針第 83 項から第 86 項参照)。貸手の会計処理については、基本的に企業会計基準第
13 号の定めを踏襲することとした(会計基準 BC13 項)ことから、預り預託保証金に関
する貸手の会計処理は、金融商品実務指針の定めを踏襲することとした。
5.サブリース取引
(1)基本となる会計処理
BC123.中間的な貸手がサブリースの貸手におけるリースの分類を行うにあたり、IFRS 第 16
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号ではヘッドリースに係る使用権資産を参照して分類するのに対して Topic 842 ではヘ
ッドリースの原資産を参照して分類する違いがある。
本適用指針では、次の理由により IFRS 第 16 号と同様に中間的な貸手は、サブリース
の貸手におけるリースの分類を行うにあたり、ヘッドリースに係る使用権資産を参照し
て分類することとした(本適用指針第 91 項参照)。
(1) 貸手が所有している資産そのものをリースする場合と中間的な貸手が使用権資
産をサブリースする場合では経済実態が異なると考えられる。中間的な貸手がリス
クと経済価値のほとんどすべてを移転するかどうかを判断する対象は当該中間的
な貸手が貸借対照表に計上している資産となると考えられるため、原資産ではなく
使用権資産のリスクと経済価値がどの程度借手に移転しているかによりリースを
分類することが適切であると考えられる。
(2) 借手の会計処理について IFRS 第 16 号と同様の単一の会計処理モデルによる(会
計基準 BC39 項)ことと整合的な取扱いとなると考えられる。
BC124.サブリース取引については、ヘッドリースとサブリースの契約は一般的に別個に交渉
されており、中間的な貸手にとってヘッドリースから生じる義務は、一般にサブリース
の契約条件によって消滅することはないことから、原則として、ヘッドリースとサブリ
ースを 2 つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うこととした(第 89
項参照)。
BC125.IFRS 第 16 号においては、前項の会計処理に対する例外は設けられていないが、本適
用指針の審議の過程では、一部のサブリース取引について、サブリースの締結後もヘッ
ドリースが有効であることからサブリース取引には該当するものの、中間的な貸手がヘ
ッドリースとサブリースを 2 つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行う
ことが適切ではない場合があるとの意見が聞かれ、サブリース取引の例外的な定めとし
て、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取
引の取扱いを定めることとした(第 92 項及び第 93 項参照)。
BC126.中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取
引の取扱いは、それぞれの取扱いにおける適用の要件を定めており、あるサブリース取
引が、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース
取引の取扱いの両方の要件に該当することは想定していない。
BC127.本適用指針では、サブリースがファイナンス・リースに該当する場合、中間的な貸手
はサブリース取引に係る損益を原則として純額で計上することとしている(第 89 項(1)
参照)。ただし、例えば中間的な貸手が財の販売やサービスの提供を行う中でサブリー
スを組み合わせて利用するようなときに、財又はサービスに係る収益とサブリースに係
る収益を整合的に計上する観点から中間的な貸手はサブリース取引に係る損益を総額
で計上する方が適切であると考えられる場合がある。
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(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合
BC128.典型的には我が国の不動産取引において、法的にヘッドリースとサブリースがそれぞ
れ存在する場合であっても、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを 2 つの別個の
契約として借手と貸手の両方の会計処理を行い、貸借対照表において資産及び負債を計
上することが取引の実態を反映しない場合があるとの意見が聞かれた。
BC129.審議の結果、中間的な貸手が、サブリース取引について、法的に別個に存在する借手
及び貸手としての契約を貸借対照表において別個の契約とせずに資産及び負債を計上
しないことができる例外を定めることを目的として、国際的な比較可能性を大きく損な
わせない範囲で我が国における例外的な取扱いを定めるため、次の 3 つの要件をいずれ
も満たす取引のみを例外的な取扱いの対象とすることとした(第 92 項参照)。
(1) 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッド
リースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない。
(2) 中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金
額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である。
(3) 中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない。
① サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む。)
② サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法
(1)及び(2)の要件について、サブリース取引の中には、ヘッドリースにおける支払条
件として、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限りヘッドリースの貸手に
対してリース料を支払う義務を負わず、かつ、サブリースにおいて受け取る金額にあら
かじめ定められた料率を乗じた金額とされる場合がある。中間的な貸手におけるヘッド
リースへの支払義務が、サブリースからの支払を受けた場合にのみ、その一定割合の金
額について生じるとする要件を設けることで、中間的な貸手がヘッドリースに対して一
切のリスクを負わず貸借対照表においてヘッドリースのリース負債を計上しないこと
が適切である限定的な取引を特定することとした。
(3)の要件について、サブリース取引の中には、サブリースの条件についての最終決
定権をヘッドリースの貸手が有する場合や、ヘッドリースの契約が存在している期間に
おいても、中間的な貸手がサブリースの対象となる原資産の使用方法を自由に決定でき
ない場合がある。中間的な貸手が、サブリースの契約条件及びサブリースの借手が存在
しない期間における原資産の使用方法を決定する権利を有さないとする要件を設ける
ことで、中間的な貸手のヘッドリースに対する権利が限定的であり、貸借対照表におい
て使用権資産を計上しないことが適切である取引を特定することとした。
BC130.中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いは、前項のとお
り貸借対照表において別個の契約とせずに資産及び負債を計上しないことができる特
例を定めるものである。しかしながら、前項の要件はヘッドリースに対して一切のリス
クを負わないとする取引を特定するための要件であり、例えば、収益認識適用指針にお
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いて「企業が在庫リスクを有していること」が本人の指標とされていること(収益認識
適用指針第 47 項(2))などに鑑みれば代理人として会計処理を行う場合と同様に純額表
示することが適切となるとの意見も聞かれたため、次の(1)及び(2)の会計処理を行うこ
とを認めることとした(本適用指針第 92 項参照)。
(1) 貸借対照表においてヘッドリースにおける使用権資産及びリース負債を計上し
ない。
(2) 損益計算書において貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料
の差額を損益に計上する。
BC131.収益及び費用の認識時点について、これらの認識は発生時に行うことが原則であるが、
当該例外的な取扱いにおける会計処理を定めるにあたっては、サブリースの借手からリ
ース料の支払を受けない限り、中間的な貸手がヘッドリースの貸手にリース料を支払う
義務を負わないことをこの例外的な取扱いの要件としたことから、当該要件に合わせる
形で、サブリースにおいて受け取るリース料の発生時又はリース料の受領時のいずれか
遅い時点で、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料との差額を損益
に計上する会計処理を行うこととした(第 92 項参照)。
(3)転リース取引
BC132.主に機器等のリースについて仲介の役割を果たす中間的な貸手の会計処理として実
務に浸透している企業会計基準適用指針第 16 号における転リース取引の取扱いは、次
の理由から、サブリース取引の例外的な取扱いとして、本適用指針において企業会計基
準適用指針第 16 号の定めを変更せずに踏襲することとした(本適用指針第 93 項参照)。
(1) 貸借対照表上はリース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上した
上で、収益及び費用を純額とする定めであり、借手のすべてのリースについて資産
及び負債の計上を求めるとする本適用指針の主たる改正目的についての例外を定
めるものではないこと
(2) サブリース取引の会計処理による財務諸表作成者の負担の増加への対応となる
こと
BC133.企業会計基準適用指針第 16 号において、転リース取引は、借手としてのリース取引
及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する取引を対象
としており、本適用指針においてもこの範囲を踏襲することとした。本適用指針におい
ては、借手のリースは分類しないこととしたため、貸手としてのリースがヘッドリース
の原資産を参照して分類する場合にファイナンス・リースに該当する場合として定める
こととした(本適用指針第 93 項参照)。
BC134.企業会計基準適用指針第 16 号は、「セール・アンド・リースバック取引によるリース
物件を、さらに概ね同一の条件で第三者にリースした場合で、当該転リース取引の貸手
としてのリース取引がファイナンス・リース取引に該当し、かつ、その取引の実態から
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判断して当該物件の売買損益が実現していると判断されるときは、その売買損益は繰延
処理せずに損益に計上することができる」取扱いを定めていた。
本適用指針では、セール・アンド・リースバック取引が本適用指針第 55 項を満たす
場合、金融取引として会計処理を行うこととしている。この場合、当該貸手は、このよ
うな一連の取引のうちセール・アンド・リースバック取引を金融取引として会計処理を
行った上で、当該貸手が第三者との間で行うサブリース取引をファイナンス・リースと
して会計処理を行うこととなるものと考えられる。したがって、本適用指針の定めを適
用すると、このような一連の取引においては転リース取引にならないと考えられるため、
企業会計基準適用指針第 16 号における当該取扱いを踏襲していない。
BC135.中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取
引の取扱いは、IFRS 第 16 号では定められていないため、IFRS 任意適用企業が IFRS 第
16 号の定めを個別財務諸表に用いても基本的に修正を不要とする開発の基本的な方針
(BC4 項参照)を考慮して、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場
合の取扱いと転リース取引の取扱いの適用は任意とすることとした(第 92 項及び第 93
項参照)。
(4)サブリースしている場合のヘッドリースに関する簡便的な取扱い
BC136.IFRS 第 16 号においては、借手が資産をサブリースしている場合、ヘッドリースにつ
いて少額リースに関する簡便的な取扱いを適用することができない取扱いとされてい
るが、本適用指針においては、実務負担の増加への対応から、当該取扱いは取り入れな
いこととした。
Ⅳ.開 示 1.注記事項
(1)開示目的
BC137.会計基準第 54 項の開示目的を達成するために必要な情報はリースの類型により異な
るものであるため、注記する情報は会計基準第 55 項に掲げる注記事項に限定せずに、
会計基準第 54 項の開示目的を達成するために必要な情報を記載する(本適用指針第 94
項参照)。借手及び貸手のいずれにも該当する企業は、借手及び貸手としてそれぞれ記
載する情報を検討するにあたって、借手及び貸手のそれぞれの立場から開示目的を達成
するかどうかを判断する。
IFRS 第 16 号では、多くのリースは、変動リース料、解約及び延長オプション、残価
保証など複雑な要素を含んでおり、すべての企業に対する標準的な開示要求のみでは財
務諸表利用者のニーズを満たさない可能性が高いことから、開示目的を満たすために必
要な追加の定性的情報及び定量的情報の例が示されていることが説明されている。本適
用指針においても、リースはさまざまな要素を含む場合があり、標準的な開示要求に加
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えて、開示目的に照らした追加の情報の注記を求めることとした。また、財務諸表作成
者及び監査人の負担の増加を考慮して、追加の情報の注記が必要とされる事項の例を示
すこととした(本適用指針第 95 項及び第 96 項参照)。
ここで、追加の情報を「リース特有の取引に関する情報」として注記することとして
いるのは、追加の情報の注記に関して、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸
表における注記事項の取扱いを明確にするためである(本適用指針第 110 項参照)。
(2)借手及び貸手の注記
(借手の注記)
会計方針に関する情報
BC138.重要な会計方針の注記について、企業会計原則注解(注 1-2)においては、「財務諸
表には、重要な会計方針を注記しなければならない。会計方針とは、企業が損益計算書
及び貸借対照表の作成に当たつて、その財政状態及び経営成績を正しく示すために採用
した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法をいう。」とされている。また、企業会
計基準第 24 号第 4-4 項は、「財務諸表には、重要な会計方針を注記する。」と定めて
いる。重要な会計方針として注記する内容については、原則として、企業会計原則注解
及び企業会計基準第 24 号に照らして企業が判断するものである。
BC139.一方、収益認識会計基準においては、少なくとも、企業の主要な事業における主な履
行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時
点)について、重要な会計方針として注記することを求めている(収益認識会計基準第
80-2 項及び第 163 項)。リースに関する会計方針については、次の理由から、すべての
企業について自動的に企業会計原則注解及び企業会計基準第 24 号に定める「重要な会
計方針」として識別される項目はないものと考えた。
(1) 企業によりリースの利用度合いは異なり、リースの重要性は異なる。
(2) 会計基準における選択肢の多くは、重要性が乏しい場合を対象としている。
BC140.しかしながら、「重要な会計方針」に該当するか否かにかかわらず、企業による選択
を注記することが、財務諸表利用者が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロ
ーを評価する上で有用な会計方針については、「リースに関する注記」として注記する
ことが有用な場合があると考え、次の会計処理を選択した場合、「リースに関する注記」
において、会計方針に関する情報として注記することを求めることとした(第 97 項参
照)。
(1) リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成す
る部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分と
して会計処理を行う選択
(2) 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの
選択
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(3) 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択
リース特有の取引に関する情報
BC141.「リース特有の取引に関する情報」においては、リースが企業の財政状態又は経営成
績に与える影響を理解するための情報を注記することとしている(第 98 項参照)。
BC142.第 99 項(1)に掲げる、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目
ごとの使用権資産の帳簿価額の開示は、借手のリース活動の性質を理解する上で、また、
資産をリースしている企業と資産を購入している企業とを比較する上で有用な情報を
提供すると考えられるため、求めることとした。なお、当該開示を行うにあたっては、
表示科目との関係が明らかである限りにおいて、より詳細な区分により開示を行うこと
を妨げないものとした。また、土地及び建物に係るリースについてそれぞれが独立した
リース(第 16 項参照)ではない場合、当該リースについて土地と建物に区分せずに注
記することが考えられる。
BC143.第 99 項(2)及び(3)並びに第 101 項(2)②及び③に掲げる次の開示は、企業が代替的な
会計処理を選択した場合に求める開示であり、当該注記は、財務諸表利用者が企業の財
務諸表の分析を行うことを可能とし、財務諸表利用者が、企業の財政状態、経営成績及
びキャッシュ・フローを評価する上で有用であると考えられるため、求めることとした。
(1) 第 26 項の定めを適用し指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関
する例外的な取扱いにより会計処理を行ったリースに係るリース負債が含まれる
科目及び金額(第 99 項(2)参照)
(2) 借地権について、第 27 項ただし書き又は第 127 項の定めを適用する場合、償却
していない旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等
が含まれる科目及び金額(第 99 項(3)参照)
(3) 第 92 項の定めを適用し中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない
場合の取扱いにより計上した損益が含まれる科目及び金額(第 101 項(2)②参照)
(4) 第 93 項なお書きの定めを適用し転リース取引に係るリース債権又はリース投資
資産とリース負債を利息相当額控除前の金額で計上する場合の当該リース債権又
はリース投資資産及びリース負債が含まれる科目並びに金額(第 101 項(2)③参照)
BC144.本適用指針第 100 項に掲げる短期リースに係る費用及びリース負債に含めていない借
手の変動リース料に係る費用の開示は、資産及び負債が貸借対照表に計上されていない
リース料に関する情報を提供すると考えられるため、求めることとした。なお、企業結
合日において残りの借手のリース期間が 12 か月以内であるリースについて取得原価を
配分しない場合に企業結合日後に計上した費用を損益計算書において区分して表示し
ていないとき、当該費用について、本適用指針第 100 項(1)に掲げる短期リースに係る
費用の開示に含めて注記する(企業会計基準適用指針第 10 号「企業結合会計基準及び
事業分離等会計基準に関する適用指針」第 61-3 項)。
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BC145.短期リース及び少額リースに関する簡便的な取扱いについては、重要性が乏しいこと
から原則的な取扱いを求めず費用処理する簡便的な取扱いを認めているものであり、重
要性が乏しい項目については開示を要求すべきではないとの意見が聞かれた。
BC146.前項の意見を踏まえ、短期リース及び少額リースに係る費用の開示の要否について検
討した。ここで、短期リースについては、借手のリース期間の判断で簡便的な取扱いの
対象となるかどうかが変更になることから恣意的な操作の対象となる可能性があると
考えられることや、金額的に重要性のあるリース負債がオフバランスとなる可能性があ
るという点から、財務諸表利用者が財政状態及び経営成績を評価するために有用な情報
を提供することになると考え、短期リースに係る費用の開示を求めることとした。一方、
少額リースについては、簡便的な取扱いの対象となるかどうかについて、短期リースの
ような判断は不要であり、また、金額的な重要性が乏しい少額リースを対象としている
ことから、少額リースに係る費用の開示は求めないこととした。
BC147.公開草案に対して寄せられたコメントの中には、短期リースかつ少額リースに該当す
るリースについては短期リースに係る費用の発生額の注記に含めないことを認めるべ
きとの意見があった。前項に記載のとおり、短期リースに係る費用の開示は金額的に重
要性のあるリース負債がオフバランスとなる可能性があることに着目し開示を求めて
いる趣旨及び開示のコストと便益を考慮し、短期リースかつ少額リースに該当するリー
スについては短期リースに係る費用の発生額の注記に含めないことを認めることとし
た(第 100 項(1)参照)。
BC148.第 101 項(1)①及び③に掲げるセール・アンド・リースバック取引から生じた売却損
益並びに第 56 項を適用して会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引の主
要な条件の開示は、セール・アンド・リースバック取引が有する独特の特徴及び当該取
引が借手の経営成績に与える影響をより適切に理解する上で有用であると考えられる
ため、求めることとした。
BC149.また、第 101 項(1)②に掲げる第 55 項を適用して会計処理を行った資産の開示は、資
産の処分に関して自己が所有権を有する他の資産と異なると考えられる資産が貸借対
照表に計上されていることを明らかにする点で、売手である借手の財政状態を理解する
上で有用であると考えられるため、求めることとした。なお、関連する債務を示す科目
の名称及び金額の開示については、資産の処分に制限がある場合、債務の返済に充当す
ることはできない点で、これらの情報の有用性が必ずしも明らかではないことから、求
めないこととした。
BC150.第 101 項(2)①に掲げる使用権資産のサブリースによる収益の開示は、リースに係る
費用に関する開示とともに、企業のリース活動の全体的な損益計算書への影響を表し、
有用であると考えられるため、求めることとした。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
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BC151.第 102 項(1)に掲げるリースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額の注記は、リー
ス負債からのキャッシュ・アウトフローとリース負債に計上されていないリースに係る
キャッシュ・アウトフローの合計額の注記であり、財務諸表利用者にリースのキャッシ
ュ・フローに関する有用な情報を提供する。当該注記は、財務諸表利用者が、当期及び
翌期以降のリースの金額を予測するために有用と考えられるため、求めることとした。
BC152.リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額の注記は、会計期間中に損益計算書
に計上されたリースに係る費用及び会計期間中のリース負債の減少額をリースに関す
るキャッシュ・アウトフローに関連付けて翌期以降のこれらの金額の予測に役立てるこ
とを目的としている。したがって、キャッシュ・アウトフローの合計額の注記は、借手
のリース料の開示と整合したものとすることとした(第 102 項(1)参照)。
BC153.また、第 102 項(2)に掲げる使用権資産の増加額の注記は、使用権資産及び所有資産
に対しての設備投資に関する比較可能な情報を提供し、当期及び翌期以降のリースによ
る設備投資の金額を理解するために有用な情報を提供すると考えられるため、求めるこ
ととした。
BC154.さらに、第 102 項(3)に掲げる、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合
に貸借対照表において表示するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額
の注記は、借手のリース活動の性質を理解する上で、また、資産をリースしている企業
と資産を購入している企業とを比較する上で有用な情報を提供すると考えられるため、
求めることとした。なお、当該開示を行うにあたっては、貸借対照表において表示する
であろう科目との関係が明らかである限りにおいて、より詳細な区分により開示を行う
ことを妨げないものとした。また、土地及び建物に係るリースについてそれぞれが独立
したリース(第 16 項参照)ではない場合、当該リースに係る使用権資産の減価償却の
金額については土地部分と建物部分に区分せずに注記することが考えられる。
(貸手の注記)
リース特有の取引に関する情報
BC155.本適用指針第 104 項(1)及び(2)に掲げるリース料債権部分及び見積残存価額部分の金
額並びに受取利息相当額の開示は、財務諸表利用者がリース債権及びリース投資資産の
構成要素を理解することを可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求める
こととした。なお、企業会計基準第 13 号においては、リース債権の構成要素に係る開
示を求めていなかったが、リース投資資産とは性質の異なるリース債権について、リー
ス料債権部分と受取利息相当額を区分した情報が財務諸表利用者にとって有用である
ことから、リース債権についても構成要素の開示を求めることとした。
BC156.また、第 105 項及び第 108 項に掲げる将来の業績等により変動する使用料に係る収益
の開示は、ファイナンス・リースにおいてリース債権及びリース投資資産に計上されて
いないリース料並びにオペレーティング・リースにおいて定額法で計上する対象となら
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ないリース料に関して、会計期間中に認識されたリース収益について構成要素に分解し
て開示することで、会計期間中に認識した収益の内訳を財務諸表利用者が理解すること
を可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
BC157.本適用指針第 106 項(1)及び(2)に掲げるリース債権及びリース投資資産の残高に重要
な変動がある場合のその内容の開示は、収益認識会計基準において契約資産及び契約負
債の残高並びにそれらに重要な変動がある場合にその内容の注記が求められているこ
とと同様に、財務諸表利用者がリース債権及びリース投資資産の重要な変動を理解する
ことを可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
BC158.前項の注記については、例えば、リース債権及びリース投資資産の残高の重要な変動
が 1 つの要因で発生している場合、金額的な影響額を開示しなくても、当該要因が重要
な変動の主要因であることを開示することにより、財務諸表利用者に有用な情報が開示
される場合もあると考えられるため、当該注記には必ずしも定量的情報を含める必要は
ないこととした(第 107 項なお書き参照)。
BC159.第 106 項(3)及び(4)に掲げるリース料債権部分の回収予定額並びに第 109 項に掲げる
貸手のリース料の受取予定額を一定の期間に区分した開示は、財務諸表利用者が将来の
リースのキャッシュ・フローの予測と流動性の見積りを正確に行うことを可能にする有
用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
2.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項
BC160.これまで当委員会では、原則として、会計基準等の開発を行う際に、会計処理につい
ては、連結財務諸表と個別財務諸表の両方に同様に適用されるものとして開発してきて
いるが、注記事項については、会計基準ごとに、個別財務諸表において連結財務諸表の
内容をどの程度取り入れるかを定めてきている。
BC161.また、金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号)に基づき作成される個別財務諸表に
ついては、2013 年 6 月 20 日に企業会計審議会から公表された「国際会計基準(IFRS)
への対応のあり方に関する当面の方針」の内容を踏まえ簡素化が図られてきている。
BC162.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における会計基準及び本適用指針
に関する表示及び注記事項については、これまでの簡素化の趣旨、財務諸表利用者が個
別財務諸表におけるリースの状況を分析できるようにする観点及び財務諸表作成者の
負担等を考慮し、会計基準第 55 項(1)①に記載した「会計方針に関する情報」について
注記を求めることとした(本適用指針第 110 項参照)。ただし、「会計方針に関する情
報」を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照することができることとし
た(本適用指針第 111 項参照)。
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Ⅴ.適用時期等 1.経過措置
(1)企業会計基準第 13 号を適用する際の経過措置
(リース取引開始日が企業会計基準第 13 号の適用初年度開始前である所有権移転外ファイ
ナンス・リース取引の取扱い)
BC163.会計基準及び本適用指針の開発にあたり、企業会計基準第 13 号を定めたときの経過
措置の取扱いについて検討を行った。
この点、借手及び貸手について、企業会計基準第 13 号を定めたときの経過措置を会
計基準及び本適用指針においても継続する場合、借手のすべてのリースについて資産及
び負債を計上するという、会計基準の主たる目的が一部のリースについて達成されない
こととなる。
しかしながら、これらの経過措置は、企業会計基準第 13 号を定めたときに認めるこ
ととした簡便的な取扱いであり、会計基準の適用に伴い当該簡便的な取扱いを認めない
ことにより、これらの経過措置を適用してきたリースの会計処理についてコストが増加
することが想定される。したがって、企業会計基準第 13 号を定めたときの経過措置を、
会計基準及び本適用指針においても認めることとした(本適用指針第 113 項から第 117
項参照)。
(2)会計基準を適用する際の経過措置
BC164.IFRS 第 16 号においては、適用初年度における実務上の負担を軽減するためにさまざ
まな経過措置が設けられている。IFRS 第 16 号において経過措置が置かれている趣旨を
考慮し、会計基準の経過措置においても、我が国の会計基準を基礎とした場合に関連す
ると考えられる IFRS 第 16 号の経過措置を可能な限り取り入れることとした。IFRS 第
16 号の経過措置を取り入れるにあたっては、企業会計基準第 13 号の会計処理からの移
行であることを考慮し、IFRS 第 16 号の経過措置の一部について修正を行っている(本
適用指針第 118 項から第 126 項及び第 131 項から第 133 項参照)。
(リースの識別)
BC165.会計基準におけるリースの識別の定め(会計基準第 25 項及び第 26 項)は企業会計基
準第 13 号では置かれていなかった定めである。会計基準の適用によってこれまで企業
会計基準第 13 号により会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断され
る場合があると考えられる。ここで、リースの識別の定めに基づき契約がリースを含む
か否かの判断について、経過措置を定めない場合、新たな会計方針を過去の期間のすべ
てに遡及適用することになり、相当のコストが生じることとなると考えられる。したが
って、本適用指針の経過措置では、リースの識別について、次の(1)及び(2)の方法のい
ずれか又は両方を適用することができることとした(本適用指針第 119 項参照)。
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(1) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第
13 号を適用しているリース取引に、会計基準第 25 項及び第 26 項並びに本適用指
針第 5 項から第 8 項を適用して契約にリースが含まれているか否かを判断すること
を行わずに会計基準を適用すること
(2) 適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第 13 号を適用していない契約に
リースが含まれているか否かを、当該時点で存在する事実及び状況に基づいて会計
基準第 25 項及び第 26 項並びに本適用指針第 5 項から第 8 項を適用して判断するこ
と
BC166.前項に記載したリースの識別に関する経過措置に関して、IFRS 第 16 号では、実務上
の便法として、契約がリースを含むか否かを見直さないことを選択できる経過措置が置
かれている。この点について、IFRS 第 16 号の結論の根拠では、従前の基準書と IFRS 第
16 号との適用結果の差異が限定的であり、すべてのリースを見直すことを要求すること
によるコストが正当化されないために、IFRS 第 16 号の経過措置が設けられたことが説
明されている。
一方、前項に記載のとおり、会計基準におけるリースの識別の定めを適用することに
より、これまで企業会計基準第 13 号により会計処理されていなかった契約にリースが
含まれると判断される場合があると考えられる。
このような我が国の会計基準と IFRS との背景の違いを考慮した結果、本適用指針に
おけるリースの識別に関する経過措置について、IFRS 第 16 号とは異なる経過措置を取
り入れることとした。
(借 手)
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
BC167.本適用指針第 123 項(2)①を適用してリース開始日から会計基準を適用されていたか
のような帳簿価額を算定する場合、本適用指針第 123 項(3)及び(4)並びに第 124 項の取
扱いを除き、リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額に係る定め並びにリー
ス開始日後における使用権資産の償却、リースの契約条件の変更等に係る定めを適用し
て算定することになると考えられる。
借地権の設定に係る権利金等
BC168.借手の権利が強く保護されている旧借地権又は普通借地権の設定対価については、減
価しない土地の一部取得に準ずるとの見方がある(本適用指針 BC52 項(1)参照)。これ
まで我が国の会計基準においては、借地権の設定に係る権利金等に係る会計処理は明ら
かではなかった。このため、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係
る権利金等について、仮に使用権資産の取得価額に含めて減価償却を行う原則的な会計
処理(本適用指針第 27 項第 1 段落参照)を一律に求める場合、当該権利金等の支払に
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関する契約の締結時の企業の意図が会計処理に適切に反映されなくなる可能性がある。
また、本適用指針の適用を機に当該原則的な会計処理を行うことは、本適用指針の適
用後において当該権利金等について減価償却を行わないものとして取り扱う例外的な
会計処理(本適用指針第 27 項ただし書き参照)を認めていることから、本適用指針の
適用後に新たに支払う権利金等についてのみ減価償却を行うとしても、財務報告の改善
を図る一定の効果があると考えられる。
したがって、当該原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適用初年度の期首に計
上されている旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等を
償却していなかった場合、当該権利金等を使用権資産の取得価額に含めた上で、当該権
利金等のみ償却しないことができることとした(本適用指針第 127 項参照)。
BC169.旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について、本適
用指針の適用前においては償却しない会計処理を選択していた場合に、使用権資産の取
得価額に含めて減価償却を行う原則的な会計処理(第 27 項第 1 段落参照)を選択する
とき、第 118 項ただし書きの方法を適用すると、当該権利金等の適用初年度の期首残高
をリース開始日から本適用指針が適用されていたかのような帳簿価額により計上する
ことになる。旧借地権又は普通借地権が設定されている土地の賃貸借契約においては、
事後的にリース開始日を確認することが実務上困難である可能性があるため、当該権利
金等を計上した日から借手のリース期間の終了までの期間で償却するものとして、当該
権利金等を計上した日から償却した帳簿価額で算定することができることとした(第
129 項参照)。
なお、第 118 項ただし書きの方法を適用する場合に、当該権利金等に残存価額を設定
する(BC54 項参照)ときには、適用初年度の期首時点において見積った残存価額による
ことができるものと考えられる。
建設協力金等の差入預託保証金
BC170.本適用指針においては、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)
及び差入預託保証金(建設協力金等及び敷金)のうち将来返還されない額について、次
の理由から、本適用指針の適用前に採用していた会計処理を継続することができること
とした(本適用指針第 130 項第 1 段落参照)。
(1) 本適用指針における原則的な会計処理を本適用指針の適用前に締結された契約
に対して一律に求める場合、当初の企業の契約の意図が反映されなくなる可能性が
ある。特に、建設協力金については、2024 年改正前の金融商品実務指針において、
長期前払家賃を償却する期間及び返済額と建設協力金の時価との差額を受取利息
として計上する期間はいずれも「契約期間」として定められており、建設協力金を
伴う賃貸借契約における単一の契約期間により、長期前払家賃の償却及び受取利息
の計上を行うことを前提として契約が行われている場合があると考えられる。
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(2) 財務諸表作成者による遡及適用のコスト及び財務諸表利用者の便益を比較した
場合、必ずしも後者が前者を上回るとは考えられない。
また、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)に係る長期前
払家賃及び差入預託保証金(建設協力金等及び敷金)のうち将来返還されない額につい
て、本適用指針の適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日の帳簿価額を適
用初年度の期首における使用権資産に含めて会計処理を行うことができることとした
(本適用指針第 130 項第 2 段落参照)。
(貸 手)
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
BC171.貸手のオペレーティング・リースの会計処理については、企業会計基準第 13 号にお
いては、「通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う」ことのみを定めてい
た。一方、本適用指針においては収益認識会計基準との整合性も考慮し、原則として定
額法で会計処理を行うこととした(本適用指針第 82 項参照)。この会計処理の変更は、
主に不動産契約におけるフリーレントやレントホリデーの会計処理に影響が生じると
想定しており(本適用指針 BC121 項参照)、オペレーティング・リース取引に分類して
いたリース等の経過措置を置くことで、フリーレント期間が終了している不動産契約は
修正が求められないこととなる(本適用指針第 132 項参照)。
(国際財務報告基準を適用している企業)
BC172.IFRS を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財
務諸表に会計基準を適用する場合には、実務上の負担を軽減する観点から、当該企業が
IFRS 第 16 号を適用した際に適用した経過措置の定めを適用可能とするため、会計基準
の適用初年度において、IFRS 第 16 号の経過措置又は IFRS 第 1 号の免除規定を適用す
ることができるとの定めを本適用指針に含めることとした(本適用指針第 134 項第 1 段
落参照)。
なお、本適用指針はセール・アンド・リースバック取引について IFRS 第 16 号と異な
る会計処理を定めているため、本適用指針第 134 項の経過措置を適用する場合であって
も、本適用指針第 126 項の定めを適用することになると考えられる。
これらの定めを適用する場合、連結会社相互間におけるリースとして相殺消去された
リースに本適用指針第 118 項から第 133 項の定めを適用することができる(本適用指針
第 135 項参照)。
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