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として、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のな
い株式を時価評価するように速やかに会計基準を改正すべきとの要望が聞かれた。
こうした状況を受けて、企業会計基準諮問会議から提言がなされ、これを踏まえ、2023
年12月に開催された第516回企業会計基準委員会において、ベンチャーキャピタルファン
ドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を中心とする範囲に限定し、上
場企業等が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に係る会計上の取扱いの
検討を開始することとした。
308-3.まず、対象となる組合等の範囲に関して、ベンチャーキャピタルファンドに相当す
る組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられたため、ベンチャー
キャピタルファンドに相当する組合等を直接的に定義することは行わないこととした。一
方、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するために、(1)
組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること、(2)組合等の決算
において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価してい
ることを要件とすることとした(本実務指針第132-2項参照)。
要件(1)は、市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するためには、組合等の構成資
産である市場価格のない株式の評価者に十分な能力が備わっている必要があると考えら
れることから、組合等の運営者が市場価格のない株式に対する投資を業として行っている
者に限定すべきとして設けた要件である。ここで「組合等の運営者」とは、我が国におけ
るベンチャーキャピタルファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態
においては、無限責任組合員が該当すると考えられる。また、他の法形態に基づく組合等
については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が
該当すると考えられる。
要件(2)は、我が国の実務における市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備
状況についての懸念が監査人、財務諸表作成者及び財務諸表利用者から聞かれている中、
組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもっ
て評価している場合には、市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備がなされて
いることが期待できることから、時価評価に関する懸念を一定程度緩和できるとして設け
た要件である。ここで、「時価をもって評価している」場合とは、組合等が適用している
会計基準により市場価格のない株式について時価評価が求められている場合のほか、市場
価格のない株式について時価評価する会計方針を採用している場合が含まれると考えら
れる。また、時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基
準」に基づいた時価で評価する場合のほか、国際財務報告基準(IFRS)第13号「公正価値
測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)
による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測
定している場合が含まれると考えられる。
308-4.次に、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価し、
組合等への出資者の会計処理の基礎とした場合における評価差額の持分相当額を当期の
損益として処理するか又は純資産の部に計上するかについて審議を行った。この点、組合
等の解散までに現金で清算されることが見込まれるため、組合等への出資者の貸借対照表
において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価したも
のを組合等への出資者の会計処理の基礎とするのは、最終的に得られるキャッシュ・イン
フローの予測に資する観点から有用と組合等への出資者である企業が判断する場合があ
ると考えられる。一方、評価差額の持分相当額を当期の損益として処理するか又は純資産