
-3-
本実務対応報告の公表の経緯
5. 実務対応報告第 34 号は、「退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安
全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、
利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法
のいずれかの方法による」(実務対応報告第 34 号第 2 項)ことを当面の取扱いとして
定めたものである。この実務対応報告第 34 号については、平成 29 年 3 月 31 日に終了
する事業年度から平成 30 年 3 月 30 日に終了する事業年度までに限って適用すること
とし、引き続き検討を行うこととしていた(実務対応報告第 34 号第 17 項)ため、当
委員会は検討を行った。
6. 企業会計基準第 26 号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」と
いう。)第 16 項では、「退職給付債務は、退職により見込まれる退職給付の総額(以下
「退職給付見込額」という。)のうち、期末までに発生していると認められる額を割り
引いて計算する。」としている。当該会計処理は、「退職給付の性格は、労働の対価と
して支払われる賃金の後払いであるという考え方に立ち、基本的に勤務期間を通じた
労働の提供に伴って発生するものと捉えていた。このような捉え方に立てば、退職給
付は、その発生が当期以前の事象に起因する将来の特定の費用的支出であり」(退職給
付会計基準第 53 項)、「将来の退職給付のうち当期の負担に属する額を当期の費用とし
て計上するとともに負債の部に計上する」(退職給付会計基準第 54 項)という基本的
な考え方に基づいている。
7. 退職給付見込額は、退職給付会計基準第 18 項並びに企業会計基準適用指針第 25 号
「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下「退職給付適用指針」という。)第 7
項及び第 8 項では、合理的に見込まれる退職給付の変動要因(退職率、予想昇給率等)
を考慮して見積ることとされており、企業固有の事情を反映した合理的な仮定や予測
(以下「企業固有の見積り」という。)に基づいて見積られる。
他方、退職給付債務の計算における割引率は、「期末における安全性の高い債券の利
回り」を基礎として決定するとされている(退職給付会計基準第 20 項及び退職給付適
用指針第 95 項)ことや、各事業年度において見直される(退職給付適用指針第 30 項)
ことから、割引率については、企業固有の見積りではなく、市場で観察される利回り
が反映されることになる。
8. 割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末におい
てマイナスとなる場合に、前項後段に記載した退職給付債務の割引計算において期末
時点の市場の評価を反映させる側面と前項前段に記載した企業固有の見積りによる退
職給付見込額を費用配分し負債に反映させる側面のいずれを重視すべきかにより、退
職給付債務を計算する上で、次の 2 つの考え方を採り得ると考えられる。
(1) 退職給付債務の額は、「退職給付見込額のうち、期末までに発生していると認め