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収可能性を検討する必要が生じることにより、企業によっては多大なコストが生
じる可能性がある。
例えば、ある企業集団において、ある地域を統括する連結子会社が当該連結子会
社グループにおける連結財務諸表を作成し親会社に報告している場合、まず当該
連結財務諸表の作成においては、当該連結子会社グループ内の連結子会社間の取
引から生じた未実現利益に係る繰延税金資産の回収可能性を、購入側の企業にお
ける将来の課税所得の見積額により判断し計上することとなる。
その後、当該企業集団の連結財務諸表の作成においては、地域を統括する連結子
会社グループ内の連結子会社と当該連結子会社グループ外の連結子会社の間の取
引から生じた未実現利益に係る繰延税金資産の回収可能性を購入側の企業におい
て判断する必要があるが、この判断にあたって、当該未実現利益に、当該連結子会
社グループにおいて消去された未実現利益も考慮する必要が生じることとなる。
このように、企業によっては決算財務報告プロセスが複雑になり、当該プロセス
及びシステムを変更することによって、多大なコストが生じる可能性がある。
(2) 米国会計基準のように棚卸資産以外の資産の未実現損益の消去に係る税効果会
計についてのみ資産負債法に変更することも考えられるが、その場合、未実現損益
の消去に係る一時差異をシステムで管理しているときは、棚卸資産か棚卸資産以
外の資産かによりシステム上の計算テーブルが異なることとなり、実務が煩雑と
なる。また、棚卸資産か棚卸資産以外の資産かにより未実現損益の消去に係る税効
果会計に関する会計処理を変えることは理論的な根拠が乏しい。
(3) 一般に、棚卸資産に係る未実現損益は短期に実現することや、連結会社間で棚卸
資産以外の資産を取引している頻度は、棚卸資産に比べて高くはないと考えられ
ることを勘案すると、我が国の会計基準において繰延法を採用することにより、国
際的な会計基準との比較可能性を必ずしも損なうことにはならないと考えられる。
(4) 未実現損益の消去に係る一時差異に関する繰延税金資産について、国内企業に
おいては回収可能性適用指針に基づき、スケジューリングの可否や企業の分類に
よって当該繰延税金資産の計上額が決定されることを踏まえると、結果として
IFRS に基づく計上額と異なる可能性があるため、必ずしも両者を整合させる必要
はないと考えられる。
134. 他方、公開草案に寄せられたコメントでは、未実現損益の消去に係る税効果会計につ
いて繰延法を採用すると、例えば、IFRS を任意適用して連結財務諸表を作成している
企業(親会社)の企業集団内に我が国の会計基準に基づき連結財務諸表を作成している
子会社が存在する場合、未実現損益の税効果会計について、子会社の連結財務諸表上は
繰延法により処理したものを、親会社の連結財務諸表上で IFRS の定めに従い資産負債
法により処理する場合があるため、実務上の負担を考慮し、資産負債法の選択適用を認
めるべきとの意見や、同様の理由により資産負債法へ変更すべきとの意見があった。