企業会計基準第 11 号 関連当事者の開示に関する会計基準

平成 18 年 10 月 17 日 企業会計基準委員会

本会計基準は、平成 28 年 12 月 16 日までに公表された次の会計基準等による修正が反映さ

れている。

 企業会計基準第 26 号「退職給付に関する会計基準」(平成 28 年 12 月 16 日改正)

目 次

目 的

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

会計基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

範 囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 開示対象となる関連当事者との取引の範囲・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 関連当事者との取引に関する開示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 関連当事者の存在に関する開示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 適用時期等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 議 決・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

結論の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

経 緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 目 的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 関連当事者の範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 関連当事者の判定基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 主要株主・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

その他の関係会社の親会社及び子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が 議決権の過半数を所有する会社及びその子会社・・・・・・・・・・・・・・・ 19 親会社の役員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 重要な子会社の役員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 主要株主及び役員の近親者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 従業員のための企業年金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 共同支配投資企業及び共同支配企業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

- 1 -

その他の関連当事者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 開示対象となる関連当事者との取引の範囲・・・・・・・・・・・・・・・ 26 連結子会社と関連当事者との取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引・・・・・・・・・・・・・・・ 27 資本取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 無償取引及び低廉な価格での取引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 形式的・名目的には第三者との取引である取引・・・・・・・・・・・・・・・ 30 取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引・・・・・・・・・・・・・ 31 役員報酬・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引・・・・・・・・・・・・・・ 34 関連当事者との取引に関する開示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 取引条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 貸倒懸念債権及び破産更生債権等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 関連当事者の存在に関する開示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 親会社の名称等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 重要な関連会社の財務情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 適用時期・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

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目 的

1. 本会計基準は、財務諸表の注記事項としての関連当事者の開示について、その内容を

定めることを目的とする。

2. 会社と関連当事者との取引は、会社と役員等の個人との取引を含め、対等な立場で

行われているとは限らず、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがある。ま

た、直接の取引がない場合においても、関連当事者の存在自体が、会社の財政状態や

経営成績に影響を及ぼすことがある。関連当事者の開示は、会社と関連当事者との取

引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を財務諸表利用者が把握できるよ

うに、適切な情報を提供するものでなければならない。

3. 平成 18 年 10 月 17 日に、本会計基準を適用する際の指針を定めた企業会計基準適用

指針第 13 号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」が公表されているため、

本会計基準の適用にあたっては、当該適用指針も参照する必要がある。

会計基準

範 囲

4. 本会計基準は、すべての会社の連結財務諸表又は個別財務諸表における関連当事者

の開示に適用する。なお、連結財務諸表で関連当事者の開示を行っている場合は、個

別財務諸表での開示を要しないこととする。

用語の定義

5. 本会計基準における用語の定義は次のとおりとする。

(1) 「関連当事者との取引」とは、会社と関連当事者との取引をいい、対価の有無に

かかわらず、資源若しくは債務の移転、又は役務の提供をいう。また、関連当事

者が第三者のために会社との間で行う取引や、会社と第三者との間の取引で関連

当事者が当該取引に関して会社に重要な影響を及ぼしているものを含む。

(2) 会社と関連当事者との取引における「会社」とは、連結財務諸表上は連結会社(連

結財務諸表作成会社及び連結子会社をいう。以下同じ。)をいい、個別財務諸表上

は財務諸表作成会社をいう。

(3) 「関連当事者」とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事

者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事

者等をいい、次に掲げる者をいう。

① 親会社

② 子会社

③ 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社

- 3 -

④ 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社

(以下「その他の関係会社」という。)並びに当該その他の関係会社の親会社

及び子会社

⑤ 関連会社及び当該関連会社の子会社

⑥ 財務諸表作成会社の主要株主及びその近親者

⑦ 財務諸表作成会社の役員及びその近親者

⑧ 親会社の役員及びその近親者

⑨ 重要な子会社の役員及びその近親者

⑩ ⑥から⑨に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している

会社及びその子会社

⑪ 従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な

取引を行う場合に限る。)

なお、連結財務諸表上は、連結子会社を除く。また、個別財務諸表上は、重要

な子会社の役員及びその近親者並びにこれらの者が議決権の過半数を自己の計算

において所有している会社及びその子会社を除く。

(4) (3)①から⑤及び⑩に掲げる会社には、会社だけでなく、組合その他これらに準

ずる事業体が含まれる。その場合、業務執行組合員が組合の財務及び営業又は事

業の方針を決定しているときには、(3)⑩の「議決権」は「業務執行を決定する権

限」と読み替える。

(5) その他の関係会社には、「共同支配投資企業」(財務諸表作成会社を共同で支配す

る企業)が含まれる。また、関連会社には、「共同支配企業」(財務諸表作成会社

(連結財務諸表上は連結子会社を含む。)と他の独立した企業により共同で支配さ

れている企業)が含まれる。

(6) 「主要株主」とは、保有態様を勘案した上で、自己又は他人の名義をもって総株主

の議決権の 10%以上を保有している株主をいう。

(7) 「役員」とは、取締役、会計参与、監査役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。

(8) 「近親者」とは、二親等以内の親族、すなわち、配偶者、父母、兄弟、姉妹、祖父

母、子、孫及び配偶者の父母、兄弟、姉妹、祖父母並びに兄弟、姉妹、子、孫の

配偶者をいう。

開示対象となる関連当事者との取引の範囲 6. 会社と関連当事者との取引のうち、重要な取引を開示対象とする。連結財務諸表に

おいては、連結会社と関連当事者との取引を開示対象とし、連結財務諸表を作成する

にあたって相殺消去した取引は開示対象外とする。

7. 無償取引や低廉な価格での取引については、独立第三者間取引であったと仮定した

場合の金額を見積った上で、重要性の判断を行い、開示対象とするかどうかを決定す

- 4 -

る。

8. 形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であるこ

とが明確な場合には、開示対象に含めるものとする。

9. 関連当事者との取引のうち、以下の取引は、開示対象外とする。

(1) 一般競争入札による取引並びに預金利息及び配当の受取りその他取引の性質

からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引

(2) 役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い

関連当事者との取引に関する開示 10. 開示対象となる関連当事者との取引がある場合、原則として個々の関連当事者ごと

に、以下の項目を開示する。

(1) 関連当事者の概要

(2) 会社と関連当事者との関係

(3) 取引の内容。なお、形式的・名目的には第三者との取引である場合は、形式上の

取引先名を記載した上で、実質的には関連当事者との取引である旨を記載する。

(4) 取引の種類ごとの取引金額

(5) 取引条件及び取引条件の決定方針

(6) 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高

(7) 取引条件の変更があった場合は、その旨、変更内容及び当該変更が財務諸表に

与えている影響の内容

(8) 関連当事者に対する貸倒懸念債権及び破産更生債権等に係る情報(貸倒引当金

繰入額、貸倒損失等)。なお、第 5 項(3)に掲げられている関連当事者の種類ごと

に合算して記載することができる。

関連当事者の存在に関する開示 11. 親会社又は重要な関連会社が存在する場合には、以下の項目を開示する。

(1) 親会社が存在する場合には、親会社の名称等

(2) 重要な関連会社が存在する場合には、その名称及び当該関連会社の要約財務情

報。なお、要約財務情報は、合算して記載することができる。

適用時期等 12. 本会計基準は、平成 20 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用

する。ただし、平成 19 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度から本会計

基準を適用することができる。

13. 本会計基準の適用にあたり、日本公認会計士協会 監査委員会報告第 62 号「関連当

事者との取引に係る情報の開示に関する監査上の取扱い」については、改廃を検討す

- 5 -

ることが適当である。

議 決 14. 本会計基準は、第 114 回企業会計基準委員会に出席した委員 12 名全員の賛成により

承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。

斎 藤 静 樹(委員長)

西 川 郁 生(副委員長)

石 井 泰 次

猪ノ口 勝 徳

加 藤 厚

神 田 秀 樹

小宮山 賢

逆 瀬 重 郎

辻 山 栄 子

山 田 浩 史

吉 川 満

米 家 正 三

- 6 -

結論の背景

経 緯 15. 我が国における関連当事者の開示は、これまで、特定の会計基準に基づくものでは

なく、証券取引法上の規則に基づき行われてきた。

平成 2 年以前、役員及び支配株主との取引の開示については、有価証券報告書等の「関

係会社に関する事項」の中で行われていたが、平成 2 年 6 月に日米構造協議最終報告の

中で、「関連当事者との取引の開示の充実」が盛り込まれ、関連当事者との取引の開示

範囲を米国財務会計基準書第 57 号「関連当事者の開示」(以下「SFAS 第 57 号」とい

う。)と同様にすることとし、関連会社、主要株主、その他重要な関連当事者との取引

まで開示範囲が拡充されることとなった。これに基づき、平成 2 年 12 月に「企業内容

等の開示に関する省令」の改正が行われ、有価証券報告書等の「企業集団等の状況」に

「関連当事者との取引」の項が設けられた。その改正理由としては、関連当事者との取

引は、一般には見ることのできない条件で行われることがあり、その状況が財務諸表か

ら容易に識別できないため、財務諸表作成会社の財政状態や経営成績に及ぼす影響を、

その利用者が適切に理解できるようにすべきであるという点が挙げられている。

その後、平成 9 年 6 月、企業会計審議会により公表された「連結財務諸表制度の見直

しに関する意見書」において、「関連当事者との取引」を連結財務諸表の注記とする方

針が示されたことを受けて、平成 10 年 11 月及び平成 11 年 3 月に連結財務諸表規則及

び財務諸表等規則等が改正され、「関連当事者との取引」は、連結財務諸表又は財務諸

表の注記事項となり、監査対象になった。また、監査上の実務指針として、平成 11 年

4 月に日本公認会計士協会 監査委員会報告第 62 号「関連当事者との取引に係る情報の

開示に関する監査上の取扱い」が公表された。

このように、我が国における関連当事者の開示は、専ら、証券取引法上の規則に基づ

いて行われてきた。しかし、関連当事者の開示に関する規定は、米国会計基準や国際財

務報告基準などの国際的な会計基準では、会計基準の 1 つとして位置付けられている。

また、関連当事者の定義や開示する取引範囲などについては、我が国の現行の財務諸表

等規則及び連結財務諸表規則(以下「証券取引法関係規則」という。)と国際的な会計

基準には差異が見られる状況にある。

こうした中、関連当事者の開示については、いわゆる「純粋持株会社」(グループ全

体の経営戦略の立案及び子会社管理に専念し、株式所有を通じて、実際に製造・販売な

どの事業活動を行う会社を支配する会社をいう。以下同じ。)の増加を踏まえて見直す

べきではないかという指摘があることに加え、平成 17 年 3 月から開始した当委員会と

国際会計基準審議会(以下「IASB」という。)との会計基準のコンバージェンスに向け

た共同プロジェクトでの検討項目とされ、協議を行った。当委員会は、こうした状況も

踏まえ、現行の証券取引法関係規則と国際会計基準第 24 号「関連当事者についての開

- 7 -

示」(以下「IAS 第 24 号」という。)及び SFAS 第 57 号との比較検討等を行った上で、

会計基準として整備することとした。

目 的

16. 本会計基準の目的は、関連当事者の開示に係る内容を定めることとしている。現行

の証券取引法関係規則では関連当事者との取引に関する開示を規定していることから、

会計基準上の開示内容も関連当事者との取引に限定すべきという意見があった。しか

し、親会社等の情報は、会社の財務諸表を理解する上で有用な情報と考えられるため、

国際的な会計基準と同様に、関連当事者との取引の開示だけでなく、関連当事者の存

在に関する開示として、親会社等の情報も含めることとしている(第 2 項及び第 11 項

参照)。

なお、関連当事者の開示は財務諸表の注記情報であることから、コーポレート・ガバナ

ンスに関する側面は、副次的な位置付けとしている。

関連当事者の範囲

関連当事者の判定基準

17. 関連当事者の開示について適切な開示を求める観点から、関連当事者の範囲は形式

的に判定するのではなく、実質的に判定する必要がある。

主要株主

18. 主要株主とは、一般的には、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の 10%以上

を保有している株主であるが、本会計基準では、証券取引法第 163 条第 1 項(金融商

品取引法施行後は同法第 163 条第 1 項)に規定する主要株主と同様、保有態様等の事

情から主要株主には該当しない者を除外することとしている。この点について、SFAS

第 57 号では、財務諸表作成会社の議決権の 10%以上を保有する株主名簿上の株主又は

知れたる株主を主要株主としている。一方、IAS 第 24 号では、重要な影響を及ぼして

いるか否かに基づき関連当事者かどうかを判断することとしており、関連当事者とす

る株主を議決権で判断することは明示していない。

検討の結果、主要株主については、米国会計基準では関連当事者としており、また、

証券取引法関係規則と異なる定義を設ける必要性は乏しいと考え、本会計基準では主要

株主の取扱いは、証券取引法関係規則の取扱いと同様とすることとしている(第 5 項(3)

⑥及び同項(6)参照)。

- 8 -

その他の関係会社の親会社及び子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半

数を所有する会社及びその子会社

19. 本会計基準は、現行の証券取引法関係規則と同様に、その他の関係会社の親会社及

び子会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半数を所有する会社及びそ

の子会社も関連当事者として明示している(第 5 項(3)④及び⑩参照)。その理由とし

ては、①関連当事者の範囲を可能な限り明確にすることと、②その他の関係会社の子

会社並びに財務諸表作成会社の主要株主が議決権の過半数を所有する会社及びその子

会社は、その他の関係会社や財務諸表作成会社の主要株主の強い意向を受けて取引を

行っている場合も多いと考えられ、その他の関係会社や財務諸表作成会社の主要株主

との取引として開示すべき取引をその子会社などに移管した場合も開示対象とするこ

とが挙げられる。

親会社の役員

20. 親会社の役員の子会社に対する影響力が大きい場合もあることや、IAS 第 24 号にお

いては親会社の役員が関連当事者の範囲に含まれていることを踏まえ、親会社の役員

を関連当事者の範囲に含めることとしている(第 5 項(3)⑧参照)。

重要な子会社の役員

21. 子会社の役員と連結会社との取引が、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす場合もあ

ることから、子会社の役員を関連当事者の範囲に含めるかどうかについて検討を行っ

た。例えば、財務諸表作成会社が純粋持株会社の場合において、実質的に事業活動を

行っている子会社の経営に従事している役員が当該子会社と取引を行っているケース

が考えられる。

この点について、一律に子会社の役員を関連当事者の範囲に含めると、会社グループ

全体の経営には必ずしも重要な影響を及ぼしていない者が含まれるだけでなく、役員の

人数が非常に多くなり、過度な情報収集の負担を財務諸表作成者に強いることにもなり

かねないため、財務諸表作成会社が直接議決権を有する子会社の役員に範囲を限定すべ

きであるという意見があった。その一方、例えば、連結財務諸表に対する影響の大きい

孫会社の役員が除かれるのは適当ではないという意見があった。

検討の結果、関連当事者の開示の趣旨を踏まえ、会社グループの事業運営に強い影響

力を持つ者が子会社の役員にいる場合には、当該役員も関連当事者としている(第 5

項(3)⑨参照)。例えば、会社グループの中核となる事業活動を子会社に委ねている場

合にあっては、当該子会社の役員のうち当該業務を指示し、統制する役員は、会社グル

ープの事業運営に強い影響力を持つものと考えられる。

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主要株主及び役員の近親者

22. 主要株主及び役員の近親者の範囲については、IAS 第 24 号の規定に合わせて、配偶

者などを例示した上で、主要株主若しくは役員に影響を与える又は主要株主若しくは

役員から影響を受けると予測される親族という形で規定すべきという意見があった。

しかし、このような方法での親族の規定では、実務に適用するにあたり、対象者の範

囲の特定が難しいと考えられる。また、現行の証券取引法関係規則と異なる定義を設

ける必要性も乏しいと考えられる。

検討の結果、開示対象を可能な限り明確化する観点から、現行の証券取引法関係規則

と同様、役員の近親者として二親等以内の親族を明示することとしている(第 5 項(8)

参照)。

従業員のための企業年金

23. 国際的な会計基準では、従業員のための退職給付制度(IAS 第 24 号)や従業員の便

益のための信託財産(SFAS 第 57 号)を関連当事者として規定している。これらの規定

は、従業員のための退職給付制度が、資金を提供している会社から強い影響を受ける

ことを考慮したものと考えられる。米国の実際の開示例では、企業年金が会社に不動

産を賃貸している取引が挙げられている。このような国際的な扱いも踏まえ、企業年

金と会社の取引(掛金の拠出を除く。)が会社の財務諸表に重要な影響を及ぼす場合は、

国際的な会計基準と同様に、関連当事者との取引として開示することとした(第 5 項

(3)⑪参照)。

我が国における従業員のための企業年金には、確定拠出年金制度、確定給付企業年金

制度(規約型及び基金型)、厚生年金基金制度などがあるが、いずれの場合でも、掛金

の拠出を除き、会社と直接取引を行わないのが通常である。また、従業員のための企業

年金に対する会社からの掛金の拠出(退職給付信託の設定を含む。)は、関連当事者の

開示の趣旨に鑑み、開示対象の取引には該当しないと考えられる。このため、我が国の

企業年金に関しては、関連当事者との取引として開示対象となるような取引は通常生じ

ないものと考えられる。

ただし、厚生年金基金及び基金型の確定給付企業年金が個別指図による運用を行い、

会社と直接取引を行う場合や、例外として認められている厚生労働大臣の承認を受けた

場合の借入を基金が会社から行う場合、これらの取引に重要性がある場合は開示対象と

なることも考えられる。また、退職給付信託を設定している場合でも、年金資産の入替

えや返還を行うときで、これらの取引に重要性がある場合は、開示対象になるものと考

えられる。

わが国の企業年金制度では、上記のとおり、関連当事者の開示の対象となる取引が生

じることは限定的と考えられるが、海外子会社については、それぞれの国の企業年金制

度に応じて、開示対象となる取引が存在するか否かを検討する必要がある。

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共同支配投資企業及び共同支配企業

24. 「企業結合に係る会計基準」(平成 15 年 10 月 31 日企業会計審議会)(平成 20 年 12

月に企業会計基準第 21 号「企業結合に関する会計基準」として改正されている。)に

おいて、新たに共同支配投資企業と共同支配企業が定められたことを踏まえ、IAS 第

24 号と同様に関連当事者に該当することを明記することとし、共同支配投資企業はそ

の他の関係会社、共同支配企業は関連会社に含まれることを明らかにしている(第 5

項(5)参照)。

その他の関連当事者

25. 現行の証券取引法関係規則では、関連当事者を具体的に列挙して定義する方法を採

用しているが、列挙した者以外に、関連当事者の開示の目的に照らして開示すべき対

象者が生じる可能性を否定できないことから、包括的な規定を設けるべきであるとい

う意見があった。例えば、創業者一族など、役員を退任してからも経営に強い影響力

を持つ者が存在し得るからである。

しかし、この例の場合は、実質的な判定を行うことを明確にすることで、「役員に準

ずる者」に含まれることになると考えられる。また、本会計基準で規定している関連当

事者の範囲は、IAS 第 24 号と可能な限り合致させる方向で検討を行った結果、現行の

証券取引法関係規則よりも拡大することとなる。さらに、子会社や関連会社については、

国際財務報告基準と同様、支配力基準及び影響力基準も加味して定義付けられている。

これらの点を踏まえ、現行の証券取引法関係規則や IAS 第 24 号と同様、包括的な規

定としての「その他の関連当事者」は設けないこととしている。

開示対象となる関連当事者との取引の範囲

連結子会社と関連当事者との取引

26. 連結財務諸表上、連結子会社と関連当事者との間に取引がある場合には、IAS 第 24

号や SFAS 第 57 号と同様、開示対象に含めることとしている(第 6 項参照)。その結果、

例えば、組織再編で純粋持株会社を設立した場合、財務諸表作成会社であった事業会

社が純粋持株会社の連結子会社となり、それまで開示されていた関連当事者との取引

が開示されなくなるという問題は解消されると考えられる。

連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引

27. 連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引を開示することは、企業集団

内の資金の流れをはじめ、各種取引の流れの全体像を把握できることとなり、経営者

と同じ視点で当該企業集団の状況を把握することが可能になるという意見があった。

また、我が国では、子会社の債務を親会社が連帯して責任を負わないなど親子一体の

法制になっていないことを踏まえ、親子間取引の開示のあり方を検討すべきであると

- 11 -

いう意見があった。

しかし、連結財務諸表上の関連当事者との取引の開示は、連結財務諸表にどの程度の

影響を与えているかについての情報を財務諸表利用者に提供するものである。また、国

際的な会計基準も連結財務諸表上では連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引

を開示対象としていない。

これらの点を踏まえ、連結財務諸表上では、連結財務諸表の作成にあたって相殺消去

した取引を関連当事者との取引の開示から除外することとしている(第 6 項参照)。

資本取引

28. 資本取引については、現行の証券取引法関係規則と同様、開示対象の取引に含める

こととしている。会社と関連当事者との間での増資の引受けや自己株式の取得などは、

開示対象の取引となるが、公募増資は、取引条件が一般の取引と同様であることが明

白な取引(第 9 項(1)参照)に該当するため、開示対象外の取引と考えられる。なお、

関連当事者との取引に関する開示項目で求めている期末残高の開示は、資本取引の場

合、債権債務関係とは異なるため、求めていない。

無償取引及び低廉な価格での取引

29. 関連当事者との無償取引(無利子貸付や寄付など)や、有償取引における低利貸付

などのように取引金額が時価に比して著しく低い場合には、財務諸表に重要な影響を

及ぼし、投資判断情報として重要な場合がある。また、無償取引及び低廉な価格での

取引については、実際の取引金額ではなく、第三者間取引であったと仮定した場合の

金額を見積った上で重要性の判断を行うこととしている(第 7 項参照)。

形式的・名目的には第三者との取引である取引

30. 現行の証券取引法関係規則上の取扱いと同様、本会計基準では、第三者との取引に

ついて、当該取引の実質的な相手先が関連当事者に該当することが明らかな場合には、

関連当事者との取引とすることとしている(第 8 項参照)。これは、第三者との取引が

形式的・名目的な場合において適用されるものである。

取引条件が一般取引と同様であることが明白な取引

31. IAS 第 24 号のように、金融機関や政府関係機関など、取引の相手先が誰であるかに

よって、開示対象外の取引とするかどうかを決定することも考えられる。しかし、例

えば、関連当事者の定義に該当する金融機関との取引の全てを開示対象から除いたと

きには、借入などの多額の相対取引が開示対象外となり、企業経営に重要な影響を及

ぼす可能性のある資金貸借取引が開示されないおそれがある。また、関連当事者の定

義に該当する政府関係機関や公共事業体などとの取引の全てを開示対象外とした場合

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には、補助金や利子補給などに関する重要な取引の開示が行われないおそれがある。

本会計基準では、このような点を踏まえ、現行の証券取引法関係規則や SFAS 第 57

号と同様、取引先が誰であるかではなく取引の内容に焦点を当てて、開示対象外の取引

とするかどうかを定めている(第 9 項参照)。

32. また、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引(第 9 項(1)参照)を除

き、第三者との取引と同等な条件(以下「一般的な取引条件」という。)であっても開

示は省略できないこととしてしている。これは、一般的な取引条件に該当するかどう

かの判断が難しい場合もあり、恣意的な判断が介入する余地があると考えられるため

である。

役員報酬

33. 役員報酬の開示については、その必要性が国内外で認識されているが、財務情報と

して位置付けるかどうかについての考え方は分かれている。国際的には、IAS 第 24 号

では主要な経営陣の報酬総額とその内訳の記載を関連当事者の開示として求めている

が、SFAS 第 57 号では求めておらず、米国では非財務情報として開示を求めている。我

が国においても、例えば、現行の「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示

府令」という。)では、非財務情報であるコーポレート・ガバナンスに関する情報の中

で役員報酬の内容の開示を規定している。

検討の結果、我が国や米国での役員報酬に関する現行の開示方法を考慮して、本会計

基準では開示対象外としている(第 9 項(2)参照)。

連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引

34. 例えば、関連会社は連結会社に該当しないが、関連会社と当該関連会社以外の関連

当事者との取引でも連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があるため、開示する

必要があるという意見があった。

しかしながら、連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引については、正確か

つ網羅的な情報の入手が困難であることや、連結財務諸表に与える影響が軽微な場合が

多いと考えられることなどから、現行の証券取引法関係規則と同様、開示対象外として

いる。

関連当事者との取引に関する開示

取引条件

35. 会社と関連当事者との取引条件については、関連当事者との取引が会社の連結財務

諸表にどの程度の影響を与えているかを理解する上で有用な情報であるため、現行の

証券取引法関係規則や国際的な会計基準と同様、開示を求めることとしている(第 10

項(5)参照)。

- 13 -

36. 競争的で自由な取引市場が存在しない場合に、関連当事者との取引が独立第三者間

取引と同様の一般的な取引条件で行われた旨を記載するには、関連当事者以外の第三

者との取引と比較して同等の取引条件であることを要すると考えられる。

貸倒懸念債権及び破産更生債権等 37. 関連当事者との取引による貸倒懸念債権及び破産更生債権等に関する情報は、開示

することにより信用不安を発生させる可能性があるため、開示すべきではないという

意見があった。しかし、投資判断情報として有用な情報であると考えられ、かつ、IAS

第 24 号では開示が求められている。また、我が国の現行実務においても、関連当事者

との取引の中で開示されているケースがみられる。これらの点を踏まえて、本会計基

準では開示を求めることとしている。なお、開示方法については、上記の指摘も考慮

して、関連当事者の種類ごとに合算して記載することができることとしている(第 10

項(8)参照)。

関連当事者の存在に関する開示 親会社の名称等

38. 親会社の存在の有無は、投資家が投資の意思決定をするにあたって有用な情報であ

ると考えられるため、IAS 第 24 号や SFAS 第 57 号と同様、親会社の名称等の開示を求

めることとしている(第 11 項(1)参照)。なお、IAS 第 24 号では、財務諸表利用者が親

会社の財務情報を把握できるようにすることも想定しているものとみられるが、我が

国でも、上場会社等においては、現行の開示府令で親会社の財務情報等の開示が求め

られているので、親会社の財務情報を投資判断情報として利用できるものと考えられ

る。

重要な関連会社の財務情報

39. 連結財務諸表上、重要な関連会社への投資については、持分法で開示されており、

現行の開示の枠組みの下では、これらの情報に関する追加開示を求めることは必ずし

も適切ではないという意見があった。その一方、重要な関連会社の業績が悪化した場

合には、その企業集団の財政状態や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があり、そ

うした関連会社の財務情報の開示が必要であるとする意見があった。また、共同支配

企業に関しては、その形成の際に移転した資産及び負債が当該共同支配投資企業の連

結財務諸表には表示されなくなることから、財務情報の開示が必要であるという意見

もある。この点について、米国では会計原則審議会意見書第 18 号(APB 第 18 号)「持

分法による普通株式投資の会計」において、国際財務報告基準では IAS 第 28 号「関連

会社に対する投資」及び IAS 第 31 号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」におい

て、共同支配企業を含む関連会社に関する要約財務情報の注記開示を求めている。

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検討の結果、国際的な会計基準の開示も参考にして、重要な関連会社については、要

約財務情報の開示を求めることとした(第 11 項(2)参照)。

適用時期 40. 関連当事者の範囲の拡大に伴い、財務諸表作成会社における受入準備が必要である

ことを考慮して、平成 20 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度から本会

計基準を適用することとしている。ただし、平成 19 年 4 月 1 日以後開始する連結会計

年度及び事業年度から適用することもできることとしている。

以 上

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